拙著「蕎麦こい日記(飛鳥新社刊)」において
記念すべき第1ページ目、一軒目に書いた、
思い入れある名店。
久々に訪れると相変わらずののんびり〜とした佇まい。

同時にタダモノではない感じもガンガン伝わってくる。
ただいまあ〜、と言いたくなる店内。


今日は奥さんがいなくて残念だが
唯一無二の存在感を放つ三代目店主の屈託ない笑顔に会えてホッとする。
そして今日私が出会うここの蕎麦前と蕎麦は、
この三代目ではなく、三代目の息子さんである四代目の手によるものだ。
現在は四代目が「中清」の厨房を担当しているが、
メニューはほとんど変わっていない様子。
メニュー本の内容は実にここらしいメニューだ。
まず蕎麦だけでも、種物のメニューがやたらに多い。

まるまる1ページ分、ズラーー!
すごいですよね!?
そしてページを進むと、いろんな世界を見せられて、
どんな初めての蕎麦屋でもメニュー理解の速さには自信がある私でも
ここではだんだん頭がぐるぐるしてくる(笑)。

というわけで、実は私はこの店に来て
メニュー本を見たことはほとんどない(笑)。
食べたいせいろ蕎麦の種類が多すぎて
(種物ではなく、粗挽きとか生粉打ちとか田舎とかという話)
ちょっと蕎麦前をつまんだら後はもうこの身を蕎麦に捧げるのみなのだ。
だいたいね、ここのメニューっていい加減で!(大笑)
例えば、メニュー本に出ているそばがきってこんなのなんです(左側)。

お湯に沈んだ、いわゆる老舗スタイル。
しかもなんだかやけに白っぽく写ってますよねえ〜
ところが、この日私が実際に食べたそばがきはですよ!?
びっくりしてくださいね!?
せーの、どーーん!

もう笑うしかないほど違いすぎ!!素晴らしすぎ!!
あのメニュー見て頼んだらこんっなモノスゴイそばがきが出てきちゃうって
タクシー呼んだらジャンボジェットが迎えにきたみたいなもんですよ!
心の準備ができてませんよね!?(笑)
このすんばらしいそばがきのご紹介は後ほど、順にするとして、
まずは、かんぱーーーい!

「ハートランドを置いている店は良い店だ」
私が大好きな方の言葉です (≧∇≦)
こちらはお通し。

「お任せおつまみ盛り合わせ」

鴨ロース、鳥取の赤天(唐辛子入りピリ辛かまぼこ)
チーズカツオ、甘〜〜い卵焼きなど。
その他のものについても、
これはなあに?と聞いても
「知らねえ、オレ作ってねえもん」
と言ってキキキキッと笑う三代目店主の
ひょうひょうとした姿にはいつも笑わされっぱなし。
しかしそこには、自身が長年かかって作り上げたものを全て教え込んだあとは
四代目に対して信頼と敬意を持って、
うるさく押しつけずに店を任せている三代目の凛とした姿勢も垣間見えるのだ。
そしてお待たせしました〜 (≧∇≦)
「そばがき」

ウッヒョーーー!!

キターーーーーー!
なんといううつくしい青緑・・・
息を飲むような粗挽きの肌・・・それでいてこの上品さ。
もう、これは絶対に美味しい!
めっちゃめっちゃ香ってくれる!
と確信して香りを寄せると・・・
アラ・・・意外にも香りは穏やか。
王道、誠実なイメージの蕎麦の香りがごく淡く漂っている。
しかし口に含んで感激爆発。
なんですかこの味の濃さはあああーーー!!

蕎麦という穀物の滋味深い味わい、
その旨味の濃さが爆発し、グルタミン酸系の強い旨みとなって
なんだか味付けしてあるみたいな?
塩分さえ感じるような錯覚を起こさせる。
食感がこれまた最高で、こんなに粗挽きなのに
天女の羽衣に抱かれるような上品さ、やさしさ。
エアリーさはないのだが、どろモチふっくら、
この味わい、食感、最高すぎる!すばらしいーーー!
そしてこちらもまた、「そばがき」同様、
メニューには書いていないものすごいもののお出ましです。
「手挽きの粗挽き」

「粗挽き」はメニューにあったが、
「手挽き」って書いてないし!!
すごすぎるんですけどーーー!! (≧∇≦)

うっわーーー・・・
ド派手と言ってもいい粗挽きっぷりに息を飲まずにいられない。
黒く香ばしいかぐわしさにふわあーっと迎えられつつ
口に含むと・・・おー!
なんとびっくり、かなりのバリカタでございます!
ジャッキジャキの粗挽きの舌触りに加えて
強靭な輪郭線と噛みごたえのある硬い蕎麦。
それを噛み締めると豊かな黒い香ばしさと
滋味深い味わいと甘みがあふれまくり、それはだんだん、
ちょっと熟成の蕎麦を思わせるような(熟成ではないのだが)
ナッティーな味わいになってきた。
熟成蕎麦のような重苦しいナッティーではなく美しく軽やかなナッティー。
食感もだんだんすこーしやさしくなってきたのも良いなあー
茨城・筑西市の常陸秋そば。
「生粉そば」

うわあー
「粗挽き」とは打って変わってこちらは美しい青緑!
さきほどの「そばがき」と勝るとも劣らない
フレッシュな美しい色だ。

見入ると、驚くほどの美しい極細の輪郭線にびっくり。
この細さ、微かに震える輪郭線、美しすぎます〜!
意外にも最初の香りはかなり控えめで
口に含むと「粗挽き」同様のバリカタっぷりに驚く。
そうは見えなかったー!
しかし食べ進むうちにちょっと強めの野生の香りがすこしずつ出てきて
食感もやさしくなり、見た目のイメージに近い蕎麦になってきた。
香りの質から、これは常陸秋ではないなとおもっていたら、
やはりこちらは同じ茨城でも、神田山産のキタワセだった。
美しい青緑ときれいな極細にうっとり!
ここまででも普通ならかなりお腹いっぱいだと思いますが・・・
お蕎麦屋さんにおいて「まだお腹に余裕ある?」と聞かれて
「ないです」と答えたことが私の人生にあったでしょうか、否ない。
本日も即答で、「余裕あります〜!♡」
と答えてしまいましたとさ! (≧∇≦)
「更科そば」

純白の天使が舞い降りてきました〜

香りを寄せると美しい〜二八の香りがふわあ〜
小麦粉が連れてきた蕎麦の甘い香りが、ほんわかした気分にさせる。
ちゅるちゅるっとしつつ手びねり感もある輪郭線、食感もとてもいい。
これは蕎麦汁につけて食べたいなあー!と思い(てかそれが普通なんですよ (≧∇≦))
つけて食べてみると、これがめっちゃ合う!アウアウアウ!♡

ここは蕎麦汁がめっちゃ美味しくてですねーえ
出汁の香りも旨みも甘さもすべてがこっくりと深く、
すべてがまあるく合わさっている感じが実に美味しい。
さすがとしか言いようがない。
時代が変わり代が変わり、その変化を遂げようとしつつある老舗の姿。
三代目の話に散々大笑いさせられながらも、
私はここで出会ったたくさんの楽しい尊い時間を思い出していた。
私がここにくるたびに隅の席でトグロを巻いていた(笑)
詩人の清水昶氏の没後十週年イベントも今年行われ、
私は所用で出席できずに残念だったが
今もこうして店主と話していると清水さんが入り口から入ってきそうな気がする。
清水さんだけでなく、驚くほど面白い、凄い、各界の才人が集うこの店。
そう言えば私が俳句の世界に足を踏み入れたのも、
この店で某・超才人にナンパされたからだったのでした (≧∇≦)
今日は久しぶりになっちゃったけど
また今度はお仲間の皆様とでも来たいな〜〜!
(お酒メニューは店主がラベルをお手本に書いたもの。
店主が才人だから才人が集まるんですよね〜)

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