私が見てきたお蕎麦屋さんの中でも
いろんな意味で飛び抜けた店に出会ってしまった。
本人が「入りにくい店」と自覚しているくらいだから
その入りにくさと言ったら尋常ではない。

入口ドアの横の大きな店主の顔写真。
「入りにくいかもしれませんがお気軽にお入りください」
って言われても・・・

「入りたくない」
と私の全身が言っている・・・・
変すぎてコワイよう・・・・(>人<;)
ベニヤ板に無数にベタベタ張り付けられた宣伝写真や
雑誌に掲載された時の記事。
加えてなんと、テレビに出た時のことは
シーン別に、セリフ付きで、全コマ紹介されている!!( °o°)

よほど嬉しかったんですねえ・・
テレビ局や雑誌社の人もこんなに喜んでもらえたら嬉しいだろう。
でも、それにしたってですよ、
こんなに店の外に貼りまくるって・・・やっぱり変!?
加えて、店の前の車道際にはナゾの「歓迎旗」が。

え?

ええええ???
どうやら小田和正さんがここに来たのではなく
「いつでも待っている」ということらしい。
どんだけ可愛らしいファン心なんだ!!
忠犬サノ公かっ!
小さく書かれた「2日とも行きます!」ってのは今度のコンサートか何かの話らしい。
可愛い・・・可愛らしいのだが・・・やっぱりすごく変!?
さあいよいよ、重力に換算したら何百キロもありそうな「入りにくさ」を
押して押して店内に入ります。
だってこのお店に来るために鯖江まで来たんだから
入らないわけにはいかないのだー!
こんにちは〜〜〜
えっ


予想以上に広い店内。
席数も多く座敷席もあるのだが
広さ云々より簾のあたりの雰囲気がなんだかとってもヘンである。
簾だけに海辺の店のような感じでもあるだが
目隠しのような暖簾まであるし、何となくあやしい。気になる。
暖簾をくぐり入ってみると・・


マンガ図書館!!
ここがお蕎麦屋さんの店内であることを余裕で忘れられるほどの
マンガ・マンガ・マンガ!
なるほど、常連らしいお客さんは席に着く前にサッとマンガを手にとって
奥の席に座り早くもくつろいでいる。

面白すぎる・・・
独特すぎる「佐野蕎麦」・・・・
印象はこれだけヘンテコなお店でありながら
実際に迎えてくれた店主はごくごく穏やかな、優しそうな人物である。
何を訊いても柔らかな声で、真面目に親切に答えてくれ
押し付けがましい感じなどは一切ない。
↓この写真からはあまり信じてもらえそうにないが。
各テーブルに置かれた
「佐野蕎麦説明書」「テレビ雑誌等掲載記事」「店主のプロフィール本(?)」

ちなみに店主のプロフィールはこうなっている。

理系の大学卒業、電機メーカー勤務後脱サラというところに
激しく納得してしまった私!(* ̄∇ ̄*)
店主は相当なラーメン好きでもあるらしく
おすすめのラーメン屋さんが大量に、熱く紹介されています。

某「京都のラーメン好き蕎麦屋さん」と話合うかも・・・ラーメンだけでなく(^^)
そして神様が4人いるらしいです。

やっぱり小田さんが一番に来るんですね〜(^^)
さていよいよ何を食べるか、なのですが
メニュー本があまりにも分厚いのでひるんで
まずはラミネート加工されている別紙のものから見ます。

「蕎麦だから」「産まれるから」
なんとなくオフコースの歌詞っぽい!?
まさに今店内には
「♪愛〜を〜!止めないで〜〜〜!♪」
が鳴り狂っている。
その歌詞のロマンティックさとこの店内の雰囲気とがものすごいマリアージュとなり
私はだんだんトランス状態になってくる。

は、はい、そうですね!!
でもたぶん私は塩もつけませんが怒らないでくださいね〜
薬味の使い方についてもこの通り。


「お好きなタイミングで入れていただければいいので
どうしてもではありません、ひとつの提案です」
とした上で店主のアイディアについて熱く語っている。
外観の「熱さ」も強烈だったが
店内もまたどこをとっても(強いて言えば店主以外は)
熱さでみなぎっている。
「♪愛〜を〜!止めないで〜〜〜!!そこから〜〜逃げないで〜〜♪」
さて、いよいよメニュー本に入ります。
あまり自慢になりませんが私は普段
「お蕎麦屋さんのメニューの理解」が非常に早いです(^o^)
お店によってはお蕎麦の種類が数種類あったり土日限定だったり、
+100円で田舎そばに替えられる種物があったり
夜だけしか頼めないおつまみがあったりしますよね。
これだけお蕎麦屋さんに行っているわけですから
そのへんの理解は早い、つもり、なのですが・・
蕎麦を極めた「佐野蕎麦」は、メニューの難解さも極まっている!!
まず1ページ目。
一見わかりやすく書いてあるような気がしたが・・・

1 ダシがぶっかかっていないモノ
2 ダシがぶっかかっているモノ
とあるが、1はお蕎麦が3種あるのに2はお蕎麦が1種しかない。
てことは、お蕎麦を3種類食べたい場合は自動的に1になる?んですよね??
2のお蕎麦は1の中にあるものなのかな?
とにかくあるお蕎麦は全部食べたい私としては何種類のお蕎麦があるのか知りたいので
「お蕎麦は結局全部で3種類、なのかなっ?」と
このページでとりあえず理解する。
ところが次に右のページに行くと
「佐野蕎麦の四種類の十割蕎麦」と書いてある?
だけど写真にあるお蕎麦は三種類??
ページをめくってその次に進むと混乱は更に極まります。

んん?

んんんん???

え〜〜〜〜〜!!?

だめだ・・ギブアップ!!
何をどう頼めばいいのか全然わかりません〜(>_<)
というわけで店主にヘルプを求めると
穏やかな笑顔と共にソフトな声で教えてくれ
以下のことが確認できました。
「お蕎麦は3種類」
「4種類目のお蕎麦というのは超濃厚蕎麦湯である蕎麦〜ジュのこと」
「蕎麦〜ジュは注文しなくてもお蕎麦を頼めばサービスでついてくる」
なるほどー!
3種盛りのお蕎麦は「小1200円、大1500円」というので
迷わず「大で!」と注文。(^o^)
お蕎麦にお塩はついてくるけどダシは別売りなので
一応「醤油味」「塩味」の両方をもらってみる。
あー難しかった・・・
メニューを理解するだけでひと仕事終えた気分だ。
しかし「佐野蕎麦」体験でハードだったのはここまで・・・♡
ここからはじまる佐野蕎麦ストーリー「本編」が凄すぎる!!
「運ばれてきた瞬間、目が点になりました。」
「三種盛り(大)」

( °o°)
( °o°)
( °o°)
えええーーーーっっ!!
全体に淡緑のヴェールをまとったような
恐ろしく美しい肌の色のトーンもものすごいが、
とりあえず目を奪われ目が離せなくなるのは
一番荒い「大地蕎麦(玄挽き粉)」である。

(*ロ*;)
いやいや・・・・
いやいやいやいや・・・・
私もいろんな粗挽き蕎麦見てきましたけどね・・・
ちょっとこれはありえないっていうか
見たことないっていうか・・・
そこまでやるか!?
っていうかできちゃうのか!???
もうもうもう、本当にどうなってるんでしょう「佐野蕎麦」・・・
とりあえずこの「大地蕎麦」は三番目のお楽しみとして
すんなりした方のお蕎麦から、いよいよ・・
「すっきり蕎麦(スムース・細挽き粉 )」

ええええええええ
ウワーーーー!!!
なんというなんという、すんんんばらしいかぐわしさ・・・!!
フレッシュな美しい青い香りが白いヴェールに包まれたような・・・
その奇跡のように美しい淡緑がかった肌色を全く裏切らない
素晴らしいかぐわしさに目がかっぴらく。
最初極粗挽きの「大地蕎麦」に目を奪われていた自分が愚かに思えるほど
この「すっきり蕎麦」は凄い!!美味しすぎる!(まだ食べていません)
口に含むと甘みはなく味はすっきり澄んで、
でも淡くもの足りないのではなく最高の美しい味わいがある。すっばらしー!!絶賛!!
三種類の中では一番すっきり繊細とは言え、切り方そのものは太く
むっちりムチムチー!とした肌をもぐもぐ噛みしめる感じ。
そのねっちりした中から、
白いヴェールをまとった薄緑の美しい味わいが、
その溢れる感じが、
私の頭のネジの全部を完全にゆるんゆるんに・・・
ああああああ おいしすぎる・・・・・
「モーレツ田舎蕎麦(玄細ブレンド粉)」

三種類の真ん中のお蕎麦とは言え、
普通ならこれで十分「超粗挽き」である。
しかも褐色や白やオレンジがかった大きな蕎麦粒子の間に
鮮やかな緑の影が淡く揺らめいているのがタダゴトではない。
どんなお蕎麦なのか,ドキドキしながら手繰り上げると・・
た
た
たまらないーーーーーー!!!!!
なんですかこれは!なんですかこれは!!!
超〜〜フレッシュな黒く香ばしいかぐわしさ。
この香りの素晴らしさは尋常ではない。素晴らしすぎる。
舌触りは見ての通りザラッザラだが全体の食べ心地としてはすべらかでなめらか。
なめらかなザラザラ感を楽しんでいると時々ジャキッ!と
痛いくらいの激しい蕎麦粒が小さく暴れるのが笑えるほど楽しい。
そしてこれは味わいが大変に濃厚でもある。今日の三種類の中で一番濃い。
噛みしめるほどにフレッシュな蕎麦らしい若緑の味わいと
極上の炊きたてご飯のような白く上品なうまみ甘みが深まる深まる・・・
おいしいいい〜〜〜
これ以上はないと言っていいくらいおいしい!だいすき!!
そしていよいよ、その強烈な極粗挽きっぷりで私の度肝を抜いた、
「大地蕎麦(玄挽き粉)」

うはははは
もう・・笑っちゃって脱力しちゃうほどの粗さですよね・・・?
みじん切りの野菜が蕎麦型につなげてあるのかっていうくらいの粗さ!
「大地蕎麦」の名前の通り、
大地をみじん切りにしてつなげたような蕎麦に見える。
メニューには
「とにかく塩に合う とにかく短くてスミマセン(笑)」
と書いてあるがこれだけ乱暴なまでの粗さを繋げたにしては
短いどころかむしろ長いと思う!凄い!
たぐりあげるとこちらもまた、超フレッシュな黒い香ばしさがたまらない。
最初、一つ前の「モーレツ田舎蕎麦」と同じ香りかと思いきや
だんだんこちらの方が横に下にズンと広がる感じの香りになってきた。
お煎餅とか煎りたてのゴマとかの香ばしさにも似て、
何より全てがフレッシュな印象であるところが素晴らしい。
そして食感であるが、さすがにかつて食べたことのない強烈なことになっている。
極粗い粒達が、極粗い粒達だけで手をつないでいる。
これでよくつながれると思うほど粗い粒、だけ!!
噛むとボロッと割れる感じがある粗さなんて初めてだ。
そして噛みしめるうちにジャキッバキバキッ!と「モーレツ田舎蕎麦」以上の
痛いほどの刺激が感じられるのがこれまた物凄い。楽しい。
これだけ粗いせいか甘みも味わいはすっきりめ・・
と思っていたら最後の方でおっ!おっ!?と白く美しい味わいがあふれてきて
さらに深遠な美味しさへ・・・あああああ もうどのお蕎麦も素晴らしすぎて
全くもって甲乙つけられません〜〜
んん〜〜でも強いて言えば、一番味わいが濃かった
「モーレツ田舎蕎麦」が一番好きかなあ・・
僅差だが・・
3種のキョーレツ蕎麦に嵐のようにもみくちゃにされて
汁には関しては全く、チラッと見る暇すらなかった私、
今はじめて汁を見ました。(^^;;)

左が「塩味」
右が「醤油味」。

「醤油味」は潔く甘み少なく研ぎ澄まされた感じのシャープな汁。
「塩味」は透明でビックリ!そして塩味と言ったからにはかなり塩分強めです。
なんだかキョーレツお蕎麦で脳がふにゃふにゃで
いつもより更に汁に関して頭がゆるゆる・・・(* ̄∇ ̄*)
私にとっては蕎麦汁はメインディッシュのソースと言うより
デザート・・いや、食後のワインと共に楽しむチーズに近いかも(^^)
しかし「佐野蕎麦ビックリ」シリーズはまだ終わっていなかった。
蕎麦湯が大変な事になっております。
説明書きがついてくる蕎麦湯って見たことないですよね・・・?
ウンチクではなく「取説」に近い感じ。

??
「フタをとって横から注いでください」??
それもそのはず。

ぬっっぱぁ〜〜〜!!
ありえません。
前代未聞のこのぬぱぬぱ濃厚強烈蕎麦湯。
濃厚すぎて固形寸前、蕎麦湯というより
焼く前のホットケーキかお好み焼きのような世界であります。
う〜ん そりゃそうですよねえ〜
これじゃあ湯桶の注ぐ口から注げませんよね〜〜

というわけで注ぎ口は使わずにお客さんは湯桶の蓋をとって
湯桶をひっくり返して横から注ぐシステムとなっております(^^;;)
どんろ〜〜〜と重く生の蕎麦粉感あふれるウルトラ濃厚蕎麦湯。
あっ
「塩で食べる蕎麦」が売りの「佐野蕎麦」なのに
一度もお塩使わなかったლ(ʘ▽ʘ)ლ

左手前が「ノーマル塩」であとは「ワサビ塩」と「梅塩」。
ノーマルは結構辛めの塩で、「ワサビ塩」はフワンフワンの食感が楽しい。
BGMはまだまだどこまでも「オフコース」一色である。
店主は穏やかそうに静かに厨房で働いている。
傍らの簾の奥にはマンガ図書館。
店の外には店主の写真や宣伝の紙がベタベタと貼られ、
大きな赤い看板が静かな古い商店街で異様な存在感を放っている。
今自分が、
福井県鯖江市のこんな面白い超名店に入り込んでいることが
面白くて可笑しくてしあわせで、
にやにやしながらぬぱぬぱの蕎麦湯を飲む私。