2012年12月01日
岐阜・下呂「手挽き手打ち蕎麦 仲佐」
また来ちゃったさー、
なかさ なかさ なかさ♪
東京からこんなに遠いのに、恐るべし「仲佐」の吸引力。
下呂の温泉には憧れつつも入ったこともなく
だいたいこの下呂の地で「仲佐」以外に行ったことのある場所は他にない。
毎回、この店に来るためだけに下呂に来て
そのまま帰るのは本当にもったいない話なのだが
東京への道のりを考えると仕方のないことなのだ。
前回はあまりの混みっぷりに驚いたが、
今日は「仲佐」らしい穏やかな時間が流れている。
端正な、くつろぎの空間。
ゆるやかな静謐さ。
「花盛蔵元直送大吟醸生原酒 しずく」
「仲佐」からそう遠くない、同じ岐阜県、八百津のお酒。
甘くてフルーティー。
「お通し」
乗鞍に大切な知り合いがいる私には。
稲核菜はふるさとの味。
今日は運良く「蕎麦掻」も頼めてラッキー!
うれしい〜♪
「蕎麦掻(限定十食限り)」
ああ・・・
いつもながら「仲佐」の蕎麦掻は本当に、いいなあ〜
ほのぼのとたちのぼる、凛としたかぐわしさ。
箸先ではふっくらむっちりとしていながら
口の中に入ると滋味深き味わいとともに、とろ〜ざら〜とやさしく溶けていく。
ウワーン おいしいよう〜
「胡麻豆腐」
つるん とろ〜とした独特の食感が上品な一品。
胡麻といわれればまさに胡麻の風味だが、
それよりも濃厚豆乳のような上品でクリーミーなコクをまず感じる。
甘い味噌ダレに山葵がよく合う。
「飛騨銘酒熟成古酒 天恩」
おおーっと これはさすがに大人のお酒であります。
なめこ入りの蕎麦粥。
少し甘めで鰹と柚子の効いた、まさにお酒のアテ向きの味。
「出し巻き(平日限定)」
曇り無き、黄金色の宝物。
どっしりフワンと重なりあう眺めの豊かなことと言ったら!
出汁の旨味と卵の旨みがぎゅーっと濃くておいしい「出し巻き」。
甘くないのが嬉しい〜♪
フワンフワンではなくしっかり密な食感。
これだけのボリューム感と濃さを持ちながら
非常に洗練された上品さがあるのはやはり出汁の良さだろう。
まさに「さすが」の一言である。
「手挽きざる」
き きた
私の大好きな大好きなひとが
はあー
なんと繊細な素朴さ、なんと貴いたたずまい・・
香りにふれてハッとする。
蕎麦の香りの澄んだところだけをふわりとすくい上げたような、
天女の羽衣のような、どこまでも美しい香り。
しかもそれが濃厚!
ちゅるヒラとした極細ながら、一本一本に凛とした存在感がある、
こんなに細いけれど、春風亭昇太師匠の「ときそば」のように
一本一本を「ちゅ〜〜〜パッ」と楽しむことすら出来そうだ。(^^)
(昇太師匠の「ときそば」の面白さは世界遺産級なのです、超おすすめ!)
ちゅるヒラの内側には無数の蕎麦のザラつぶをはらみ、
それを見つめるうち、天女が舌の上にはらりと横たわり、
そのまま味わいとなって溶けていくかのような。
もうダメです降参です・・・
どうにも 大好きすぎます・・・!!
「仲佐」は接客もまた素晴らしい。
今日は久々に奥さんの接客だったが、
なんともほのぼのとやわらかく、
庭の花壇にポンポンダリヤが並んで咲いたような気分になる。
店を出ると前回も見たこの張り紙が。
この張り紙もいかにも「仲佐」らしくていいんだなあー
帰りは産直で、山のお宝をいろいろ買い込みしあわせ!
大金持ちになった気分だ。
2011年8月の「手挽き手打ち蕎麦 仲佐」
2011年09月01日
岐阜「胡蝶庵 仙波」
名店は住宅街の角地に突然現わる。
料亭のような日本家屋は
当に威風辺りを払うといった体である。
店内に入るとぐっと暗い。
しかし「照明が落とされている」というよりは
これが古来自然な明るさと思える。
待合も兼ねた三和土の空間。
この店の名高さは格調高き佇まいからだけではない。
「そばがき」
無駄も隙も一切ない洗練の空間で出会った、荒々しきうねり。
汁と塩、両方が添えられている。
ふわーっ
とゆたかに香る、ふっくらしたいい香り!
ふっくらしつつも、やや枯れた趣を含んだ香りであるところが
この空間に合っている。
フワフワと軽いタイプでなく、
ざっくりモチッと食べ応えのあるそばがきである。
そして何より、蕎麦だ。
「ざる蕎麦」
これだけの粗挽きながら、はかないまでの繊細さ。
口に含むとこわれてしまうのではないかと思うほどだ。
しかしその肌はやさしく美しくつながったまま、
無数の凹凸が口中をめぐる。魅了する。
大切に噛みしめれば、ハラリこわれそうな絶妙のコシ。
それらが全て、フレッシュなピーナツのような、
最高の香りと味わいの中にあるというこの物語!!(興奮しすぎ)
「おいっしいーーーーーーー!」
と叫びたいのをこらえるのが苦しく
小さく「おいしいーっ おいしいーっ」とうなされたように
言い続けながら食べる。
余計怪しいが悪いのは私ではない。この蕎麦だ。
「手碾き蕎麦」
・・・もうダメ。
たしかにさっき
最高と言いましたがね
これまたあんまりにも
さいこうなのです
このっ
石のような墨のような
渋〜〜〜〜い、
しかもおいし〜〜〜い香りはなんでしょう。
噛みしめてジワジワ深まる
この麻薬のようにおいしい滋味はなんでしょう。
「ざる蕎麦」よりぐっと太くしっかりした肌は
噛みしめるとジャリ感がたのしく、
でもそんなことより
意識を保つのが困難なほど、
ああああ おいしい・・・
蕎麦の余韻を全身に響かせつつ、
蕎麦湯。
この店の座布団は広々ふかふか座り心地が素晴らしい。
何だか私は恍惚としたままこの座布団に乗って
孫悟空のように岐阜の空へ飛んで行ってしまいそうである。
これだけの空間でこれだけの蕎麦が1枚945円。
2枚食べれば1575円。
手碾きでも値段は変わらない。
一食の食事からあれだけの感動をもらった私には
むしろ安いと感じられる。
多い安いの庶民的な蕎麦屋でないことは店構えでわかるし
こういう店に来て怒る人の気持ちが私にはわからない。
(もちろん、こういう展開は非常に珍しくて楽しいが!)
日本中が格調高き蕎麦屋だらけでは困るが
こんな店にたまに行くのは心から楽しい。
楽しみにする時間がまた楽しい。
また次に行く日まで、
私は今日のしあわせを味わい続けるのだ。
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2011年08月30日
岐阜・郡上八幡「蕎麦正 まつい」
のどかな美しい観光地、郡上八幡。
一般に「観光地」という言葉には
賑やかで楽しい、本来のイメージと共に
物価が高い、演出過多で風情に欠けると言った
マイナスイメージの響きもある。
しかしここ郡上八幡は、行政の力を借りず
街の人の力だけで街づくりを行ってきたということで
自然な、美しい観光地である。
街外れにもなると眺めは一層のどかになるが
しかしその中にも手作りの雑貨の店や飲食店などが
ぽつりぽつりと点在している。
その中に一際の存在感を放つ外観。
街全体の情緒を深める、美しい佇まいだ。
家紋のデザイン美に滅法弱い私にとって、
こんな眺めは蕎麦を食べる前から恍惚である。
実は郡上八幡には行列ができる老舗有名蕎麦屋があるのだが
このルーキー「蕎麦正 まつい」の人気も相当なもの。
休日はこちらも大行列である。
どうも、この郡上八幡のような和の景観が美しい街に来ると
人はお蕎麦を食べたくなるのではないでしょうか。
それは実にいいことだ!
こちら、メニューはぐっと絞られておりまして、
なんと蕎麦メニューは「ざるそば」と「おろしそば」のみ。
壁の張り紙に
「絶品 大人の味 おろしそば」
と書いてあるのが微笑ましい。
ここの辛味大根はかなりしっかり辛いので
その意味もあるのだろう。
隣席の4人家族連れのお父さん、家族を仕切って大張り切りで
大声で注文を始めたがお父さんが一番混乱していて可笑しい。
彼らが頼んだ「ざるそばの大盛り」が
物凄い山盛りに見えたのでびっくりしたが
普通盛りもやや多めかな?
「ざるそば」
奥に長い店内は、京都の町家のように客席の奥に中庭があり
その庭を越えたまた奥も客席になっている。
しっとりと重なる肌に
黒い小さな、はっきりとしたホシがまぶしく浮かんでいる。
手繰り上げるとふわぁーと枯れた情緒の、藁のような香り。
しっとりぴたぴたとした食感と心地よいコシを楽しむうちに、
その香りが口中を隙間なく染めてゆく。
あーおいしい・・と、汁無しであっという間に食べてしまう。
私は好きな人と一緒にいられる時間が
どうしてこうも短いのでしょう。
汁は結構甘めだが、越前おろしそばに代表されるように
こういう汁は辛味大根と食べると非常によく合うのだ。
欲を言えは「ざるそば(900円)」
もうちょっと安いと嬉しいんだけどな〜
郡上八幡だからこそ!
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2011年08月23日
岐阜・下呂「手挽き手打ち蕎麦 仲佐」
どんなに遠くても行きたい、大好きな店である。
ゆったりとした風情の中、
季節の料理と美味しいお蕎麦を楽しむ
静かなひととき・・・
のはずが!
開店時刻に、この有様である。
ハレー
他に店らしい店もない、のどかな下呂の裏通りにこの大異変。
私は開店時刻より少し早く到着していたので
ここまで並ばずに済んだが、それにしたってすごい。
桜や紅葉の季節に来たこともあるが
こんな行列は初めてである。
さぞかし店内はテンヤワンヤ・・
と思いきや。
なんとなんと、
中は満員でありながら騒々しさは一切ない。
皆、ただただここのお蕎麦が食べたくて、
ひっそりとそれを楽しんで帰っていくのだ。
やっと席に通されメニューを。
今日は誠に残念ながら蕎麦三昧は売り切れ。
ではせっかくだからと「手挽きざる」と
もう一枚、「冷やしかけそば」を注文することにする。
店内は次々とお客さんが入れ替わっているだけに
さすがに接客の女性たちは忙しそうだ。
しかし実に感じがよく気配りの細かい人ばかりで
こちらはゆったりとした気持ちでいられる。
窓際の席。
丹精した庭が、曇り空が反射する白い光を浴びている。
私の蕎麦が運ばれてきた。
「手挽きざる」
茶の湯の置きあわせを思わせる程の
揺ぎ無き佇まい。
見つめれば、宇宙。
みずみずしい艶。
透明感のある黒っぽい肌に浮かぶ、
粕入りの和紙のような美しいホシ。
何ともやわらかいラインを描いて落ちる、
控えめな姿。
私は吸い込まれるように見入る。
貴さに、目を細める。
口に含みびっくり。
予想以上のちゅるつる、表面はぬるりとすべるようだ。
そして今日の蕎麦はいつもよりぐっと品の良い香り。
まるい、澄んだ、美しい香りを羽衣のようにまとっている。
やわらかくやさしい、ひんやりちゅるぬる、天女の夢。
香り爆発でも味わい濃厚でもないのに
何だかどうにも美味しくて無我夢中にさせられてしまうのは、
「魅力」としか言いようがない。
しかも「冷やしかけそば」がまた美味しい!
私は常々、柚子の香りの使い方は難しいと訴えて(?)いるものだが
この「冷やしかけそば」の柚子のニュアンスは絶品。
主役の邪魔をしないどころか、
主役の美しさを際立たせるさわやかさ。
これまた、ひんやりちゅるぬる、恍惚のひととき。
(美味しすぎて本当に一瞬に思えた!)
また会える日を思いながら暖簾を出る。
どんなに遠くても行きたい、大好きな店なのだ。