美術館には雨が似合う。
雨露の中、板橋区立美術館の森に寄りそうような
「蕎麦 ひびき庵」。

メニューに
「クリームあんみつ」「そばしるこ」「杏仁豆腐」
などもある通り、
美術館帰りのカフェとしても居心地良さそうな店内。
窓を彩る濃い緑がいい。

うどんや海老天重などのごはんもの、
天ぷらやお造りのコース、鍋コースまであるが
なんと言ってもここは蕎麦である。
「せいろ」


あおいゆたかな瓜を思わせる爽やかな香り。
パキッとはっきりした輪郭線で
食感もくっきり硬め。
口中はひんやりさわやかな香りに染まり続け
北海道は音威子府の夢を見る。
そしてこちらが土日限定の
「粗挽せいろ」。

こちらはざる盛りですね。

見るからにじわーと香りそうな
黒く粗い肌、まぶしいホシ。
手繰り上げるとひんやり〜〜とした空気が
何とも香ばしく、かぐわしく染まりこちらに漂ってくる。
「わぁおいしいー!」(まだ食べてない)
こんなにもしめられているのにこんなにも香ってくれているのだ。
見た目はそうでもないが
口に含むと先刻の「せいろ」とは打って変わって
やわらかめの、輪郭のない蕎麦。
なんだか美味しくなさそうな表現で申し訳ないが
これが大変に美味しいのだ。
繊細な細さ、チリッとかすかな刺激を覚える粗挽き感、
表面はざらつきつつもみずみずしいのでつるりと口中を流れ、
その間じゅう溢れ続ける香ばしい香りと味わい・・
おいしいー!
雨は止んだように見えたが店を出るとまだ降っていた。
さーてどの道から帰ろかな。
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