朝の静かな商店街で
毎日繰り広げられる熱い戦い。
事前情報で熾烈な闘いを予想した私は、
開店45分前の10:15に店前に辿り着いた。

よかった、誰もいない。
しかしシャッターが閉まっていると、
本当にここが店なのか心配になるくらい店名を示す看板が小さい。
程なくして、若い女性がやって来て私の後ろについたので
「よかった、ここでいいんだ」と安心して待つ。
10:45には私の後ろに7人の行列が完成。
ところがその後は人数が増えないまま11時の開店を迎え、
シャッターが開き、店内に通された。
45分前から行列ができていたのに開店直前には意外と来ないって、
「気合い入ってる勢」の気合いが熱すぎるということなのか?
この時点で面白い!
(7人全員座れたので全員が11時に来ても同じだったってことだもんね〜。
ってバッフバフで一番に来た私が言うのも何だが笑)

店内は驚くほど広い。
都内の小さな蕎麦屋に慣れている私からしたら迷路みたいに広い。


そして最終的に高級鉄板焼き店みたいな大きなカウンター席に辿り着き、
その1番奥に案内されて座った。


蕎麦屋ではあるが、どうやらこの店では
「天ぷらざる蕎麦セット」がスペシャリティ?
とにかく大人気メニューらしい。
天ぷらはこの大きなカウンターを生かして揚げたてを一つずつ提供するスタイル。
お蕎麦が出るのはその後になる。
でも今日は平日なので、まずコレから行くもんねーー! (≧∇≦)/
「そばがき」(平日限定)
うわっっ
キターーーーーーーー

汁入れが一体になったユニーク&洒落た器も目を惹くが
それについて言及する心の余裕は今全くない。
なんという肌!!なんという絶景!!
これは・・・ぜったい香るぞ・・・

ギャーーーーーーーーー!!
この強烈なフレッシュさ、
素晴らしきかぐわしさよ!!
何と言うか、フレッシュの中でも水分を濃厚に感じるような、
私に出会うまでに一度粉になったとは思えないような、
青い蕎麦の実を今ひねりつぶしましたみたいな、
みずみずしい生命力に満ちた香りが最高すぎる!!
食感は、がっつり大きなザラつぶをはらんだ
ドロドロねちょ〜とした穀物の粘り。
お箸にはくっつきまくるがとにかく香りが最高!
味も最高!
朝イチ食べたものがこれって
罪悪感を感じるほどの贅沢なんですが〜・・・幸せすぎて倒れる。
しかもこのそばがきに添えられた味噌は
「蕎麦の実を三年半熟成」したものだそうで。。
この美味しさにまた私は腰抜かしました。
あちこちの蕎麦屋で出会う美味しい蕎麦味噌の3歩先を行く?3m奥を掘る?
とにかく香ばしさと旨みの質がすごい蕎麦味噌。
ひと舐めして「ウワ美味しい」
ふた舐めで「ナニコレ!?」
とビビるほどの美味しさ。
ひゃ〜〜 参りました!!
しかしこれで腰を抜かしていてはいけない。
この店の真骨頂はここからである。
「くら富」という天ぷら劇場。
その圧倒的な美味しさ。
もうもう、ほんとに、ひっくり返りました!!!
蓮根、かぼちゃ、ブロッコリー、ナス、えび。
舞茸、椎茸、マッシュルーム、どんこ椎茸、花びら茸、松茸。
とにかく記憶の限りでこんなにフレッシュで「鮮やかな天ぷら」を食べたことがない。
限界の薄衣は脂っこさゼロ、でありながら上品で淡い印象のものではなく、
パーン!と弾けるようなド派手な美味しさ、豊かさに満ちている。
一つ一つの野菜の個性が最大限に、花火のように口の中で弾ける。
ナンダコレハ!?
こんな宇宙最上級の天ぷらが
蕎麦屋で出てくる意味のわからなさ(笑)!
とは言え、朝イチ並ぶ人の素早さがわかる要因もあり。
最後の方に揚げられてきたものは、最初とはかなり様変わりして、ずっしり脂感のある感じにはなった。
脂が良いのでそれでももちろん美味しいのだが!
早く来れば来るほど、フレッシュな脂で揚げられた天ぷらが食べられるって。。天ぷらの道は大変だあ〜 (≧∇≦)
天ぷらでベロンベロンに腰砕けだった私だったが
このあとついについに、会いたかったお蕎麦さんに会うのだから
心清めて、身を澄ませて待つ。
「ざるそば」

「最初に、細挽きのお蕎麦です」と置かれて、まずその風情に見惚れる。

細打ちの黒っぽい肌に無数に散る美しいホシ。
そしてこのツヤ感は、もしや熟成かな・・・?と香りを寄せると・・・
ぎゃーーーーーーー
ナンデスカこのとんっっでもなく美しい香りは!!

香ばしいとか甘いとか、香りの形容はいろいろあるが、
同じ形容の中にもやはり優劣はある。
この「澄んだ黒い香ばしさ」は、
この形容の中でも頂点と言っていい美しさだ。
長年蕎麦を食べ続けていると経験豊富過ぎちゃって(笑)
熟成恐怖症にもなったりするのだが、
これは本当に最高の形、熟成万歳としか言いようがない巧い熟成である。
口に含むと素朴なザラつきのある肌と
繊細な細打ちの舌触りがたまらなく心地よく、
食感はややクッキリでポキッと感があるのだが、
噛み締めると不思議としなやかで固さは全然気にならない。
噛み締めた内側から甘さのない硬派な滋味深さがほんのりと広がり、
う〜ま〜い〜〜
なんなのこれ最高すぎるんですけど〜〜!!!
「粗挽きざる」(伊吹在来)


香りを寄せて思わず小さく叫んでしまった。
なにこれ!?
カール(お菓子)カレー味ですか!?!?
例えが悪いようだが、もっと細かく言えば
「カールカレー味から化学調味料を取り除いたような香り」。
(誤解を招く表現を何度も言う(笑))。
もちろんこの蕎麦に何かおかしな味付けしてあるとかではなく、
この伊吹産の蕎麦という穀物から店主がそこまでの香りを引き出しているのだ。
言うなれば
とうもろこしのような香ばしさ+クミンのようなスパイシーさ+穀物の濃厚な甘い香り、
なのかもしれない。
何十年も蕎麦を食べて来ている私は、
今までに「天ぷらの味がする蕎麦」とか「草餅の味がする蕎麦」とか
変わり種に出会ったことはあるが、今回もまた記憶に残るビックリな出会い!
これ、とんっっでもなく美味しいーーーーー!!
ってここまで書いてまだ一口も食べていないんですけどねこの人(笑)

口に含むと感動はさらに!!
口いっぱいに、もういくらでもふんだんに溢れる
澄んだ香ばしさ、甘さ、滋味深さ。
こちらも細挽き同様やや表面にはポキ感があり、
しかも太めなので噛み応えがあるのだが、
これまた不思議なことに全体としてはしなやかで食べやすい。
とにかく香りを寄せては酔い、噛み締めては酔い、
もう食べているうちにグデングデンに泥酔してしまう!!
どちらの蕎麦もあまりにも美味しすぎて、
例によって蕎麦汁をつけることが一度もできないままお蕎麦を完食してしまったが、
ここは蕎麦汁の美味しさもまた頭抜けている。

普段は全体にまろやかで「甘いとか辛いとか、何も思わない汁」が一番美味しい、
なんて思っている私だが、ここの汁はそれにしては酸味がめっちゃ華やか。
キュンッと一番に舌の上にそれが来るのだが、
その後に来る落ち着いた旨みや甘みが、
なんともバランス絶妙でひじょーーーうに小慣れた、
完成された美味しさになっているのだ。
こんなのズルイよ美味しすぎだよ!!
と、一度もつけずにお蕎麦を食べ終わっちゃったお行儀悪い負け犬の遠吠(笑)。
あああ〜これは是非つけて食べてみたかったなああー!
この美味しさの訳は、
目の前で掻き続けているフレッシュな鰹節によるところも大きいんだろうなあ〜
店主は物静かな雰囲気でてきぱきと天ぷらを揚げ、
蕎麦を出し続けている。
きちっとユニフォームを着た奥さんらしい女性が
それをサポートし、少しの暇にも鰹節をかいている。
BGMも何もない、しずかな空間。

朝の誰もいない商店街に、開店45分前からできる謎の行列。
岐阜が誇る天ぷらと蕎麦の名店は実にひっそりと佇み、
どこにもない堂々たる世界を秘めている。


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