夏の思い出。

日本中にその名を轟かす超有名店は
いつ行っても大賑わい。
その古い日本の家で聞いた蝉の声、蕎麦を啜る音。
何度訪れても、そこで過ごした時間は
子供の頃の懐かしい思い出のように胸の中で小さく揺れている。

江戸時代の茅葺き屋根の田舎家。

創業約100年、現在は四代目が蕎麦を打っている。

この建物が蕎麦屋として使われる前の時代のことを思いながら、
暖簾をくぐる。

こんにちは、と言いながら入るが
奥は大賑わいの様子。

この時たまたま全員黒い靴で
なんだか「オシャレな日常」が撮れちゃいました (≧∇≦)
ただお蕎麦屋さんに人が集まって蕎麦を啜っているだけなのに
なぜこんなにも心やすらぐ眺めになるのだろう。

都会で育ったら、こんな景色はなかなか見られるものではない。
座るとまず野のものでおもてなししてくれる。

(嬉しいんだけど少々塩辛すぎました〜(* ̄∇ ̄*))
メニューはとてつもなくシンプル。


「うす毛利」というのが一人前。
以前は大盛りの1.5人倍のものを「むかし毛利」と呼んだが
今はわかりやすく数字で示すようになったらしい。
私はやはり基本の「うす毛利」。
注文をすると、番号札をくれる。
時節柄使い捨てのものということで、ますます素朴〜 (≧∇≦)

そして言わずと知れたここの蕎麦の景色である。
確認するが、私が頼んだのは基本の「うす毛利」。
1人前である。
それがですよ?
さあみなさんでびっくりしましょう!
どーん!

もう泳げるんじゃないかってくらい
プールみたいに大きな板にどあああああーーー!と広がって、
ゴン太のお蕎麦が輝いているのだ。

飛び込み台からプールを見下ろしてる気分(≧∇≦)
さあ今から高遠彩子がダイブしますよ 〜!

のびやかにひろびろ盛られているので
アップの写真だと意外とそんなに太くないように見えるかもしれないが、
しっかり、容赦ない極太である。

ムワァーー!と濃厚に香る、
逞しすぎるくらい逞しい、力強い香り。
食べるとやはりものすごい太さだが硬さはなく、
むっちりとやさしい食感に出会う。素晴らしい。
つるつるさはなく素朴な肌を噛み締め、
モグンモグン食べる。
ごはんのように食べる。
味わいも濃厚だが甘さはあまりなくすっきり、
そこがたくさんの量を食べやすいところかもしれない。

蕎麦汁は甘さしっかりめ、出汁の味わいが良く、
実にまろやかによくまとまった美味しい汁。
食べ終わるとこの景色。
達成感すら感じる眺めである。

難を言えばこの時近くのテーブルで
「にしんの味噌煮」を頼んだ人がいたのだが
それが驚くほど香り高すぎて私の鼻腔内は
「にしんの味噌煮」色一色に染まってしまい、
蕎麦の香りを見つめ愛しみ、
蕎麦と二人切りの世界に浸ることが極めて困難だった(笑)。
同じ茅葺き屋根の田舎家のココで、
新たな呼吸法技を開発した時のことを思い出してしまいました〜
http://ayakotakato.seesaa.net/article/151066818.html

私は隅の席でのんびりしてしまったが、
店内は入れ替わり立ち替わり客が入り始終大賑わい。

蕎麦屋であるから、無論蕎麦を食べにくるわけだが
私にとってはそれよりも「ここで過ごす時間」が宝物のような店。
いつまでもそのままでそこにあってほしい、
日本の宝の店である。