行き慣れた森下のあの場所に、
今日は歩いて行ってみることにした。
日が傾いて急に涼しくなり、空が美しい夕方だったから。
どの道を通って行くか迷ったが、
やはりあの橋を渡りたくて、大川端通りを南に歩く。
柳橋。

今日最後のオレンジ色に染まる、思い出の場所。
両国橋を渡り下町の住宅街商店街を抜けていけば森下はすぐだ。
交差点にある、私が長年愛してきた店はいつもと同じようにそこに佇み、
しかし看板だけ別の名前になっている。
「十七」。

ここはつい3年ほど前までは「京金」という超名店があった場所だ。
しかし閉店ではなく、「京金」の店主夫妻はこの同じ建物の上で
隠れ家のような静かな素晴らしい店を始めたので寂しさはない。
寂しさはないのだが、やはり時の流れに体を馴染ませるのには時間がかかる。
森下「京金」2017年2月最高に楽しかった訪問時のブログ
しかし新しい「十七」は、もともと「京金」で働いていた人が始めただけあって
大きく姿を変えることなく・・・と言うより、
嬉しくなってしまうほどそのまんまの形でそこにいてくれた。
「京金」ファンの私は、心底ほっとした。


靴を脱いで上がるスタイルだけは変わったが(今は靴のまま入る)、
テーブルも椅子もレイアウトもそのまま。


メニューはそのままのものもあれば、新顔もあって嬉しい、楽しい。
歩いてきたので、今日はやっぱりコレからですね♡

プハーッ たまりゃ〜〜〜〜ん!! (≧∇≦)
夏らしいメニューをと、まずはこれ。
「焼きなす」

予想よりかなり小さい器で「ちまっ」とやってきたが
この季節、焼きなすとビールは最高!
「新れんこんとゴボウのキンピラ」

こちらも ちまっとサイズ。
一人でつまむならちょうどいい量だろう。
甘みしっかり、家庭的なキンピラ。
天ぷらは「京金のスペシャリテ」と私が勝手に呼んでいた「蓮根の天ぷら」と迷ったのだが、
悩んだ末こちらにしてみた。
「白エビとお野菜 天ぷら」

これが素晴らしく美味しかった!!
サクサクと軽い揚げ方が最高で、
素材の美味しさが鮮やかに感じられるのがすごい。
特に白えびは食べてしまうのが惜しいほど、
一尾一尾大切に味わって食べました!! (≧∇≦)
しかもこの「天つゆ」がまたよかった。
なんてったってまず温度がアッツアツ!
「うちの天ぷらは揚げたてをアッツイまんま食べてくださいねー!」
と言ってくれているかのようである。
甘みはぐっと控えてあるのだが奥深い旨みが長く続く。
まさに、美味しい天ぷらがますますおいしく感じる天つゆだ。
「そばがき」は蓋つきでやってきて、
テーブルで蓋を開けるパフォーマンスが嬉しい。
ホワ〜〜ッとひろがるお蕎麦のオーラたっぷりの湯気がたまりません。
「そばがき」

わーい!「京金」とそっくり!器も雰囲気もまったく同じ!
でも何かが違うと思ったら、4分割にしてくれてありますね(^^)

見た目からはもっちり系かと思ったのだが
意外にもとろけるような舌触り。
その中に優しいざらつきがあり、ざらざらとろ〜〜んとした感じ。
噛みしめるとシャクシャクした繊維感も感じられた。
香りはごく淡く、味わいもほんのりやさしい感じ。
「せいろ」


細切り肌のに浮かぶ、オレンジや褐色の美しいホシたち。
箸先から、シャープな野生の香りが淡く漂ってくる。
口中に含むと極細の輪郭線たちがやさしく束になる感じがあり
噛みしめるとくにゅんとしたコシが受け止めてくれる。
初めはシャープな野生の香りを淡く纏っていたが
食べ進むうちにだんだん小麦らしさが加わった
やわらかく甘い香りになっていった。
味わいは淡くすっきりした感じ。
蕎麦汁は甘み少なくキュッと旨みの効いた個性的な味わい。
少し変わっているのだが、それがなんとも粋で美味しいのだ。
今夜は入店した時にはほぼ満席で、ご近所の人が多いのか回転が非常に早かった。
みなさん慣れた感じで楽しそうにくつろいでいて、
次に見た時には別のカップルが食べ終わるところだったり。
新しいこの「十七」も早くも人気なのだなあ〜と実に嬉しい気持ちになる。
私が行った夜の接客担当は学生さんかな?と見える初々しいスタッフたちが
一生懸命活躍していてとても清々しかったし、
帰り際にすこし話した店主も素朴な印象で感じがよかった。
開け放された入り口の外からは、
よく知っているこの街の晩夏の夜の気配。
こうして私は新しい「十七」に出会い、
時の流れに身を馴染ませたのだ。
京金の店主の名前が なんか 痺れる
渡辺光悦