2016年10月07日

静岡・裾野市「蕎仙坊」


何しろものすごい人気である。

その名も「裾野市」であるから富士山にもほど近い山の中。
開店時間の11:30より少し前に着いたというのに、
なんと駐車場に入れない!?
車でないと来られない立地ゆえかなり広い駐車場が用意されているのだが
停められない車が手前で行列を作っている。
店は木々に隠れて建物はほとんど見えない。

暫く待っていたらすでに停めてある人のご親切も重なって
隅に停められるスペースが出来たのでそこに停める。
ふうーそれにしてもすごい車の数だ。
まだ開店時間前なのになんだか心配になってきちゃった・・・



店はこっちかなと小径を入ったが
店に出逢うより前にこんな看板に出逢った。

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日頃からの大行列を伺わせる案内。


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子供の頃の私は完全にアウトです。(武勇伝多すぎ^^;;)



緑に埋もれる大きな古民家。

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高さのある立派な屋根は唐招提寺にすら似て
静かな迫力を持って緑の中に潜んでいる。


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玄関を入ると

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うわー 靴がこんなに!
すごいー
でも田舎のお祭に来たみたいで楽しいなあ。



玄関入ってすぐの部屋は待合室になっているようだ。

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古民家を利用した店舗ならではの高い天井。
待合室も満員でぎゅうぎゅうだったけれど
高い天井と飾られた民芸品に和む。

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待合室はいかにも古民家らしい薄暗さだったが
店内はひろびろ開放的で素晴らしい雰囲気。

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広い座敷は緑の空気に抱かれるような。

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うーん
こんな素晴らしい雰囲気で手打ち蕎麦なんて嬉しすぎる・・・
大人気なのも頷ける!


宗因の句が書かれたお品書きは
「一茶庵」の流れを汲むこの店らしい細長スタイル。

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私のお目当てはこちら。
うふ♡

「田舎」「せいろ」「さらしな」の3種類のお蕎麦が
全部食べられる「3色そば」と
なんといっても「生粉打ちそば ふじのね」!

「天ぷら付」というのもいいですがやっぱり天ぷらは先にいただいて
お蕎麦さんとはおちついて二人きりで会いたい・・・
というわけで「天ぷら」は別に単品で♪


あとこのページも見捨ておけないですね。

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鴨に対する情熱伝わるこのカモカモしさ!
何事もできるだけ素材そのまんまが好きな私としては
やっぱり一番右のがいいな・・いっちゃう!?
休日の贅沢ってことで〜♡


「鴨焼き」
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うわー さすがにゴージャス、肉厚の鴨肉がたっぷり。
むっちりふっくらすごい弾力で食べ応えがある。
しかもうれしかったのはこちらの鴨焼きは大変珍しく
「味付け一切なし」で焼かれているのです。
そこに汁をつけて食べるスタイル。
素材の味好きの私には自分で味が調節できるのは最高〜\(^o^)/
おろしが添えられているもうれしい。




「天ぷら」
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どどーん
こちらももんのすごい豪華ー!
なんとびっくり大きな海老が4本も入っております。
野菜はおくら、きのこ、茄子、さつまいも、みょうが、
それに豆腐とシソのハサミ揚げのようなもの。
この天ぷらがまた大変個性的でして
写真からも少し伝わるかと思いますがフリットのような見た目と質感。
味わいはどこかかっぱえびせんような?
衣に海老が練りこんであるの??と思うくらいのおいしい香ばしさがある。
時間が経ってもパリッパリのままで、
天ぷらというより大きな田舎家でおやつを食べる気分でパクパク食べてしまった。



「三色そば」
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三色はさすがの壮観!
しかし、アレレ!?
なにやら事件が発生している!?


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こ、これはどう見ても「さらしな」ではない?
と思って確認してみたら
本日は「さらしな」ではなく「ゆず切り」になっているのだそう。
ひー そっそれは・・・

「ゆず切り」に恨みはないが
実は「ゆず切り」が及ぼす他のお蕎麦への影響が非常にひじょーに怖い私。
柚子ってかなり香り高いので同じ釜で茹でた他のお蕎麦も
全部柚子フレイバーになっちゃったりするんです・・・
蕎麦の香りが柚子の香りでくるまれて全然わからなかったという泣ける経験も多く、
全部のお蕎麦が柚子の香りならトクしたじゃないかって思おうよ!
と必死で自分を励ましたりもするのだが、
蕎麦そのものの香りを偏愛する私はやはり立ち直れない。
まあそれも一般的には何も問題のない程度の香りの移りなので
私の異常体質の方がおかしいのだ。

我ながら不思議なのだがとにかく私はお蕎麦そのものの香りを感じたいあまり
お蕎麦が出てくるとその瞬間に突然嗅覚がそれまでの100倍かというほど鋭くなってしまい
その空間中のすべての香りが鼻の中に入ってきてしまうのである。
これをわたしは蕎麦犬現象と呼んでいる。
そして蕎麦犬はいつでもどこでも蕎麦の香りが嗅ぎたい一心なので
ゆず切りがでてくるとついどうしても敵意を覚え身構えてしまうのだが・・・


「せいろ」
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わ!! ラッキー!!
こちらのお蕎麦はもしや釜が別なのでしょうか?
全然柚子の香りに犯されておりません!よかった〜
柔らかそうな見た目に反して
一本一本独立したようなパラパラ感があり噛みしめると程よいコシ。
柚子の香りもしないのだがお蕎麦の香りも味もかなり淡め・・と思ったら
食べ進むうちにだんだんややつんとした野生がひそやか〜に感じられてきた。
北海道のお蕎麦のように感じたが
店員さんはみなさんてんてこ舞いの大忙しなので
訊かずに想像だけで楽しんでおきました(^^)



「田舎」
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バンザーイ こちらも柚子の香りはしません!\(^o^)/
甘皮入りの蕎麦独特の甘く濃い香り。
ネチッとした粘土感のある太打ちなのでモグモグネチネチしっかり嚙みしめる、
正統派ザ・田舎そば!
噛みしめるほどに味わいも甘みも濃くなってくる。



そして他の人に襲いかからない?(^^;;)大変良い子のゆず切りさん!

と思ってよく見てみると・・
いまさらなのですがあなたはゆず切りさんではなく
しそ切りさんではないのでしょうか?
この美しい黄緑は・・

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やっぱりそうだー(^o^)
青く爽やかなシソの香り。
これで訳が分かりました。
しそ切りさんはもともと他のお蕎麦に香りが移りにくいエライ変わり蕎麦さんなので
それで今日は「せいろ」も「田舎」も純粋にその個性を楽しめたわけです(^o^)
こちらは3種の中で一番儚く繊細で乾きも早いので急いで食べました!



そして待ちに待った本命の方が登場しました。

「生粉打そば ふじのね」
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わわわわ 美しい・・・・
遠くから見てすら別格の存在感を感じる
この美味しそうさ!!

うっ嬉しくて胸が・・・ほんとうにふるえる・・・(>_<)♡


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あああああああ

これは

別世界すぎます

このすばらしいかぐわしさ!
在来種的なフレッシュな野生味に加え
甘皮が入ったようなたくましさ香ばしさがある稀有なかぐわしさ。
香りだけで脳が打ち抜かれた思いだが食感も素晴らしい。
これだけの細打ちでありながら粗挽きで素朴な肌、
このたまらんニクさはなんでしょう!
こんなに繊細なのに粗くて素朴。
こんなに繊細なのに心憎いほどのコシがある。
あああ 今日あなたに会えてよかった・・・
今日今までの時間はこの蕎麦に会うためにあったのだと思えるほど
全身を駆けるよろこび。
北海道・名寄の蕎麦。



山中の古民家でのんびりお蕎麦を、というイメージからすると
今日は大行列大混雑に驚かされたので
人気が出すぎてしまうのも大変だなあと思わずにはいられない。
しかしやはり都会での混雑などとは全く違って
ここは席と席の間がうんと広くスペースがとってあるし
座卓もとても大きいので席ではゆったりとした時間を過ごすことが出来た。
混雑してはいたが山の中の大きな古民家だけに
思い返すとみんなで仲良くお祭のように集まっていた感じで楽しい。



でも空いている時に来られたら、
きっと本来の、静かな美しい時間に出会えるんだろうな・・・

ここは11:30〜18:00までの通し営業なのが素晴らしいので
どれかのお蕎麦が売り切れたりさえしなければ
空いた時間を狙いたい!
でも売り切れコワイ!

ああ〜 切ない蕎麦乙女心〜







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(私が座っていた席から見える位置に小鳥さんがあそびにきてくれました♡)


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posted by aya at 21:16 | Comment(1) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちゃんとした表題は失念してしまったが「ポケットに入る蕎麦・・?」なる蕎麦屋の案内本を片手に色々な蕎麦屋巡りをしたな・・・
末巻のもの凄く略された地図を見ながら「蕎仙坊」を目指す。
 「うん、ここで高速を抜け・・・うん、うん! これで間違いないぞ!! もうまもなく見えてくるぞ!!! 」
 「エッ!? これって・・・これって 焼き場 火葬場じゃ・・」
たどり着いたところが凄すぎていまだに忘れられない、ある意味楽しかった思い出です。
その当時は通し営業でなく昼の営業、中休み、夜の営業でした。
夏には夜の営業が始まり、席に着きのんびりと酒肴の数々を楽しんでいると、徐々に、徐々に黄昏が訪れ・・・この時間が至福の時でした。帳が降りると入店時とは違ったしっとり湿った空気がお店を包む・・まさに風情、雰囲気、味、酒・・ 今は出来ない至福の時幾度となく味わいました。
Posted by 而酔而老 at 2016年10月08日 16:59
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