2016年09月28日

大阪・南森町「荒凡夫」


私が関西のお蕎麦屋さんが大好きだと言うと
エッと驚かれることがある。

確かにお蕎麦は関東というイメージがあるだろうし、
実際数で言えばダントツ関東の方が多い。
しかし西には西の風が吹いている。
特に私は西のお蕎麦屋さんの美意識、気概、それぞれの個性が大好き!

一般的な話ではあるが東京には「やらない、飾らない」という粋な心憎さがあり
関西には「バッチリキメる!」かっこよさがあると思う。
日本料理の本場だけあって味の水準がものすごく高いのは言わずもがな。

そんな関西のお蕎麦屋さんの中でもここは・・・キャ〜〜(≧∇≦)だいすき♡


近年蕎麦激戦区となりつつある大阪中心部。
「なにわ橋」駅が最寄だが「南森町」「淀屋橋」「東梅田」
どこからでも歩ける便利さで
すでに名高き「なにわ翁」から数十秒というすごい立地である。


店主が一人で営むカウンター7席の小さな店。
堂々たる看板の文字がかっこいい。

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「あらぼんぷ」という店名の響きはフランス語みたいでユニークだが
個人的にはシビレる漢字三字である。
荒・凡・夫。いいなあ〜〜〜!


店に入ると全然荒くなさそうな、
しかも確実に平凡でもなさそうな店主が一人で仕事をしている。
愛想をふるまう感じではなく真顔で誠実な受け答えはいかにも職人らしい。


こんな小さなお店でしかもその評判はすでに知れ渡っているので
常に混んでいるのだが、蕎麦運だけはやたらついている私は
今日はちょうどお客さんが途切れた時間に遭遇出来た。

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お蕎麦は基本的に三種類。

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「もりそば(二八)」
「十割(生粉打ち)」
「手挽き粗挽き十割」

全部あるのかかなりドキドキしながらやってきたのだが
全部あると聞いて感涙!!
ううう嬉しい・・・・・この幸せを当たり前と思ってはいけない。
お蕎麦の神様にちゃんと感謝しなくては!
(旅先で一種類でも売り切れていたショックはその後何年も続くので(>_<))



まず準備されるセット。


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茶の湯を思わせる完璧な景色に早くも見惚れる。
右に出されたのは岩塩。




「もりそば(二八)」
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えっ
うわああああーーーー!!!なんというものすごい緑!!

落ち着け!落ち着け私!
でもでもでも  こんな強烈に美しいお蕎麦を出されては
心が乱れ狂って・・・・もう・・・・

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美しい曲線を描きみずみずしく重なり合う青緑の肌。
トップノートの素晴らしいフレッシュさに目が覚めるーーー!!
なんというかぐわしさ・・と思ったら不思議とその香りは夢のように儚く消え、
美しい白い香りと味わいだけが浮かび上がってきた。
舌触りは思いのほかしっかり、輪郭線がはっきり感じられ、
みっちり密ですこし固めの食感。
それを噛みしめるとあまり出会ったことのない繊細な粉の感じがあり
それがすべすべした人間の肌のようでもあり(いつもながら表現が(* ̄∇ ̄*))
見た目からすると意外な個性、意外な美味しさ。
福井・丸岡在来種。


「十割(生粉打ち)」
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うわあ〜 これまたどうしたらこんな美しい緑になるのか、
美味しそうすぎる(>_<)
先程の「もりそば」よりやや粗挽き、やややわらかそうかな?


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こちらはすっきりと澄んだ野生の香りがフワーッ。
意外にも舌触りは「もりそば」以上にくっきりはっきりして少し固めの食感。
不思議な繊細な粉の感じはこちらの蕎麦にもあり、
澄んだ青い野生の香りと味わいが軽やかに広がり続ける。
うううーん こっちのほうがさらに好きかも♡



「手挽き粗挽き十割」
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き、きた・・・

もうダメだ

今までのお蕎麦も本当に美しかったけどこのお蕎麦は異常だ!おかしい!

おかしいくらい美味しそうすぎて、む、胸がっ


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ここで三尺玉大花火が打ちあがりました・・・・

なんというなんという素晴らしいかぐわしさ。

今までの蕎麦も素晴らしかったけどこれは宇宙を飛び抜けて素晴らしい。
蕎麦の香りの素晴らしさを全方向からかき集めて完璧な形で濃縮したような
このまま私ごと溶けてしまいたいような最高の香り。
見ての通りの粗挽きのため
ここの蕎麦の個性である繊細なざらざらすべすべがますます強調され、
味わいがこれまた・・・もうもう飲み込みたくないくらい美味しい。
味のバランスもすごすぎる。
青さ、フレッシュさ、滋味深さ、こうばしさ、甘さ、全て全方向から
ここにおさまっている。
口中にまあるく旨みが浮かんでいるような感覚があったが次第に
下のほうからギューとそれを支えるたくましさも感じられてきてますますメロメロ。
そしてこの「手挽き粗挽き十割」は先程の2枚より太めで口中で描くラインも直線的なのだが
不思議と硬さはなく優しい絶妙のコシがある。
なんというか、大好きすぎてメロメロすぎて
ああああああ

おおーーん

おおおーーーーーーん・・・・
(蕎麦犬の遠吠え)



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西のお蕎麦屋さんでは蕎麦汁も大好きな私だが
「荒凡夫」の汁は西にしては濃いめ。
お蕎麦を汁に最後まで一度も付けない私が汁について語る資格は何もないが
蕎麦汁は蕎麦湯の時に「チロッと舐める」のを楽しみとしている。
私にとって蕎麦湯がお酒で、蕎麦汁がおつまみ。
蕎麦湯ゴクリ、蕎麦汁チロリが至福の蕎麦湯タイムなのだ。
ここのは鰹がフレッシュに美しくスパーンと香った汁。
私の理想は「何も飛び出していない、まろやかにまるくまとまった汁」なのだが
「荒凡夫」の汁は舌に平たく強くスパーンと広がる出汁がなんともおいしい。

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そして蕎麦犬のあまりの挙動不審、奇行ぶりに店主が何かを察してしまったのか
なんとお昼は食べられないと思っていた
「そばがき」も食べられることになってしまった!
きゃああああああ 嬉しすぎて頭も胸も爆発!!
空いている時で本当にラッキー!!
お蕎麦の神様、そして店主さん、ありがとうございます(T_T) ♡


しかもここのそばがきは「手挽き」なんですよ・・・

「手挽きそばがき」
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ええええ
これまたなんという超絶なおいしそうさ・・・

お蕎麦だけでもうヘナヘナなのでもうヘナヘナヘナですよ・・・
こんなの食べる前から大好きに決まってますよ・・・

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思わず息を止めてしまうほど美しい極粗挽きの肌。
じっと見入ると挽くというよりカットされたような縦長の粒子まで見えるほどの粗さだ。

うれしくてうれしくてしっぽを振りながら口に含むと
うわ おいっしーーーーー!!!
「手挽き粗挽き十割」蕎麦と同じフレッシュで最高のバランスのかぐわしさ、
もうそれだけで腰砕け!メロメロ!
食感はふわとろエアリー系ではなくもっちりぺったりべたべたとして
極粗挽きのシャクシャクした繊維感がまた楽しい。


しっぽ振りまくって感涙にむせぶ蕎麦犬に店主はさらに海苔までくれた。
そんなに甘えていいのか蕎麦犬!

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遠き西の地でこんな御恩に預かって
江戸の蕎麦犬、かたじけなさにまた遠吠え・・イヤ黙ろう、扉が開きお客さんが入ってきた。


高級そうなスーツを着こなしたお洒落なビジネスマン4人。
おほーっ 揃ってビシッとかっこいい〜なんか勢いがある〜〜

と思ったら何やら舶来のセクシーな香水が蕎麦犬の鼻を直撃!


「蕎麦犬はちょっとしっぽをまるめたけれど
親切にしてくれた寡黙な職人に「ありがとう」とつぶやき
東のほうへ帰ったのでした」(新美南吉風)





posted by aya at 12:47 | Comment(3) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>大阪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まさに蕎麦と正対するのにはこれ以上ないお店。ですね。関西の熱さが伝わってきますね〜(゜-゜)☆
Posted by t.nakayama at 2016年09月28日 20:10
すっ 凄〜〜〜いっ!!
〆のデザートが蕎麦掻きとは  (゜◇゜)ガーン
私めの辞書を繰ってみると「蕎麦掻き」= 神聖なる般若湯の友なとなり、寄り添う友なり!
どうもいけませんね・・ (>_<)
何時の日か 蕎麦掻きをデザートとするように頑張んなければ
 その日には・・・HN変えないと・・

今のお店は未訪ですが、以前のお店も立地の悪さでお客さんが・・
  良い店だったな ?
Posted by 而酔而老 at 2016年10月01日 19:43
大坂へ遊びに行くときは、寄ってみたいです。
Posted by Tanaka Susumu at 2016年10月05日 20:16
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