<秋田・仙北市 蕎麦の旅その5>
角館という町は言わずと知れた観光地である。
歴史ある武家屋敷と桜並木の風情が特に有名で
「みちのくの小京都」とも呼ばれている。
中でも一番人気のエリアは「武家屋敷通り」。
その「武家屋敷通りの最寄り駐車場の向かい」という、
角館初心者にはありがたすぎる場所に
手打ち蕎麦屋さんがありまーす!

外観だけ見ると、普通の住宅を改造したようにも見える建物。

中に入ると住宅風ではなく店らしい間取りで、
若い店主夫婦が切り盛りしているせいもあって明るい印象の店内。
奥には居心地の良さそうなカウンター席もある。
ここは「そば屋のカレーライス」「そば屋の中華そば」など
面白いメニューがあると聞いていたので
壁に貼られたメニュー書きも気になるところ。
綺麗な字で丁寧に書かれているのがとても感じがいい。

本日のランチ「かけそば+マーボ丼700円」っていうのも
手打ち蕎麦屋さんとしては斬新&おトクだし
「冷たい 比内地鶏南蛮」っていうのも大変気になるなあ〜
お・・?
おおおおナンデスカあれは!?

10食限定「あきたこまちそば」
そば粉とあきたこまち米でできているんだって!
面白いなあ〜〜食べてみたい。
こりゃ大変だ、
「ざるそば(十割)」「ざるそば(二八)」の2枚を食べるつもりで来たのに
3枚になっちゃった(^^)
「手打そば さくらぎ」の蕎麦に使用されているのは全て地粉。
それもこの土地ならではの「富士一号」という
珍しい品種であるというのも楽しみなところ。
しかも蕎麦打ちには秋田駒ケ岳の雪解け水を源とする清冽な田沢の湧水を使用しているそう。
聞いただけで、美しい山頂でかぐわしい蕎麦を鼻にくっつけているような嬉しさに
満ちてきてしまうではないか。
「ざるそば(二八)」

たっぷりとうず高く盛られた端整な姿。
白い器の雰囲気と相まってなんとも凛々しく美しい眺めである。
「ぜんまいの煮物」と「いぶりがっこ」が添えられているのが
秋田らしいもてなしだ。

クッキリと角の立ったシャープな輪郭線。
ふわぁーとただよう淡く香ばしい香り。
口に含むと見た目の通り、極めてシャープな角の立ったパッキパキの舌触りで
そのあとに来る強靭なコシがものすごい。
そのパッキパキをモグモグと噛みしめると
清澄な、すっきり澄んだ蕎麦の味わいが追いかけてくる。
ゆったりのんびり〜ではなく目が覚めるように鮮烈、強靭な蕎麦だ。
そしてこちらがめずらしい、
「こまちそば」

おお〜なにやら少しピンク味を帯びて
二八よりぐっと明るく優しい印象であります。

近づき見入ればこちららもかなりシャープな角を際立たせた輪郭線。
しかし食べてみると独特の、珍しいモッチリ感があり
シャープさは先程の二八のように強く感じないから面白い。
香りや味わいよりも、お米ならではのこのモッチリムッチリ感と
するりんとした喉越しを楽しむ蕎麦。
鰹のきいた甘い蕎麦汁につけると、ほんわか秋田の味わいだ。
いよいよ三枚目、
「ざるそば(十割)」

ぐっと濃いめの肌と、見惚れるほど流麗なライン。
軽くドキドキしつつたぐりあげると・・
うわ おいしいいいい!!(まだ食べていない)
野趣溢れる富士一号のたくましい香りが
ふんだんに、押し寄せるようにただよってくる。
食感はこちらもシャープでコシも強いが「二八」ほどではなく
なにより噛み締めて溢れるその味わいが凄い。
じゅーーーと溢れ続ける、これぞ富士一号の野生の旨み。そしてえぐみ。
ああーなんておいしい・・なんてしあわせ・・
富士一号って面白いなあ!
東京ではまず見かけることのない「富士一号」。
今回仙北のお蕎麦屋さんにおいて私は何度も食べる機会を得たが
この富士一号、十割だとびっくりするくらい野趣に満ちた強い個性の暴れん坊なのに
二八となるといきなりやさしく澄んで個性を消す珍しい種だと思う。
最初は「偶然かな?」と思っていたが何度も食べるうちにそう思えてきた。
私はお蕎麦屋さんではないからよくわからないが
これは使い分け、打ち分けするにはとても面白い個性なのではないだろうか。
その地粉の「富士一号」を
地元の湧水を使って美しい蕎麦に仕立てている「手打そば さくらぎ」。
若き店主はここでしか味わえないものの大切さ、素晴らしさを
まっすぐに表現し続けているのだと思う。
姿勢がよく、蕎麦のイメージとも重なるようなスッキリシャープなイメージの店主は
日本料理出身らしいので、「彩りこーす」「懐石こーす(予約)」っていうのも
美味しそうだなあ〜
次回は夜に来なくっちゃ!