2012年、年の瀬。
待ち合わせた店前に現れたアンシュの姿。

長めのコートに帽子の伊達な姿は、
永田町黒澤の外観と相まって川瀬巴水の木版画のよう。
いや〜年の瀬にいいもの見たなあ〜
巨大なビル群の中に突如佇む映画のセットのような建物は
まさにあの黒澤映画の黒澤組が内装を手がけムードたっぷり。
普段はしゃぶしゃぶや美味しい手打そばが楽しめる店だが
今日の昼は「永田町黒澤」としての通常営業はなく、
広島「達磨」の高橋邦弘さんがやってきて年越し蕎麦を打つ特別な日である。
去年の今日もここに来る機会に恵まれたが、今年は更に
日本が誇るジャズピアニスト山下洋輔さん(山下庵アンシュ)と
スーパードラマー村上ポンタ秀一さんご夫妻とご一緒に
高橋邦弘さんの年越し蕎麦を食べるという、
濃すぎて楽しすぎて蕎麦食べながらジャズセッションが始まっちゃいそうな企画!
例年の如く、一階では高橋さんが機械のように蕎麦を打ち続け
それに見惚れるギャラリーの輪が出来ていた。

蕎麦打ちの勉強中なのか映像を録画し続ける人もいるし、
素人目にも鮮やかな動きには、時折「わあ・・」とため息が漏れる。

とにかく早いこと早いこと。

手品のような早さで、箱の中が機械で切ったような蕎麦の束でいっぱいになる。

そしてまた次の玉を練りはじめる。

時折お客さんに軽い冗談を飛ばしながら
手の動きは全くリズムを崩さない。
ポンタさんもアンシュも感心して眺めていたが
特にこの会が初めてのアンシュの集中力はすごかった。
まるで見終わったら高橋さんと同じように
トントコ蕎麦打ち始めちゃうんじゃないかってくらい
じーっと子供のような瞳で一つ一つの動きを凝視していた。
井伏鱒二が職人の動きを何時間でも眺め
その詳細をいつまでも記憶していたという文章を思い出す出来事だった。
で、いよいよ・・


ややクリーミーであんかけになっているのでとろとろ〜として
個性的で美味しい茶碗蒸し。
そして私は、朝からこの時を待っていました。
ああ嬉しくて胸がドキドキする。
1枚目

2枚目

3枚目

アハッ (≧∇≦) ♪
おいしいものはどうしてこんなにたくさん食べられてしまうんでしょうね〜
不思議ですね〜
(しかも3枚食べても汁も薬味も手付かずですみません・・(^^;;))
一昨年と同様、12月は2回高橋さんのお蕎麦を食べる機会に恵まれたが
まあ〜どうにもこうにも美味しすぎる!

ここが飛び抜けてすごいとか、こんな個性があるとかいう蕎麦ではない。
何一つ飛び出させないまま、全体が完璧。
ふっと香る穏やかな、美しい香り。
口中での「これが蕎麦である!!」というお手本のようなコシ。
そこからふくらむ香り、味わい・・
ただただ恍惚、あっという間のたのしいひととき。
粉川さん、いつもながら、何もかもありがとうございます〜〜
<おまけ>
店先でアンシュの帽子(一部漆が塗られた京都のもの)を素敵ですね!と言ったら
ポンッとかぶされちゃいました(^o^)

photo by Yosuke Yamashita
2011年12月の 国会議事堂前「永田町 黒澤」高橋邦弘さんの蕎麦
この前、唯一の趣味の夜の単独ドライブ中に、山下達郎さんの
「It's a poppin' time」のCD版を大音量で流していたら、Disc2の最後の
ヤング・ラスカルズの曲の長ーいカバーのドラムソロの出だしで「ポンタ歌えー」と
ヤジが飛んで笑いが起きる部分が耳に入って、思わず連られて笑ってしまいました。
何度も聴いていたCDにも関わらず、そういう掛け合いが収録されていたことに
初めて気付きました。あれ35年も前のライブテイクなんですよね。
でも年末の週刊文春だったか新潮だったかで「40周年だけど、まだ通過点」と
仰っていたのを読んで、相変わらずスゴい方だなあ、と。
達磨さんがそば職人になったのと、ポンタさんがプロデビューされたのが
ほぼ同時期みたいなので、達磨さんに「この道40年ですかー」と訊いても、
ポンタさんと同じことを仰るかも知れませんね。
面白ーーーーい!!!(≧∇≦)/ そんなライブテイクがあったんですか〜!本当に、ポンタさんや山下さんとお会いできたのは私にとっては奇跡のようなうれしいことですが、お話するほどにその奥にある長い歴史、その濃さ深さにクラクラします。高橋さんもそうですが、極めた方の自然な謙虚さには目をみはるばかりです。(お返事遅くなりごめんなさい)