秋の日は釣瓶落とし。

今日は明るいうちから「布恒更科」で、と思ってきたが
もうすっかりあたりは暗い。
この店に来る日は、心が静かに踊る。
この店の時間の中に自分の身を置くことは
特別な喜びなのだ。


完全な、世界。
粋とか風情とかいう言葉は野暮すぎて口が裂けても言いたくない程だ。
厨房から漏れ聞こえる働く人の音までもが、映画のように響く。
今日は「この店に来たら!」と思っている人も多い、
人気の天種「ぎんぽ」が昼で売り切れらしく大変残念・・でも余裕〜
だってここには美味しいものが沢山あるんだから!
「はぜの天ぷら」

景色の美しい食べ物は食べても美しい。
カリッと小気味良い衣、中は繊細にふんわり〜
はぜのほんのりとした味わいがあとをひく。
ここの蕎麦は豊かな量でやってくるので
お蕎麦が全部は頼めないところがちょっとつらい。
「もり」「粗挽き」「生粉打ち」
うーん、今日は「もり」は諦めて
「粗挽き」と「生粉打ち」にしよう!
「粗挽き」

来ました来ました。
「粗挽き」というよりは「太打ち」という印象の
独特の粗挽き蕎麦。
ね、いい盛りっぷりでしょう?

ふっと淡く香る檜のような香り、しっかり噛みしめる食感。
食べても粗いという印象はさほどなく、確かにしっかりと噛む蕎麦なのだが、
これが何だか魔法のように絶妙で
よいしょこらしょと噛まねばならないようなモグモグ蕎麦とは一線を画している。
しなやかで食べやすく、何だかかんだか大変においしい。
この「粗挽き」の汁は「通常の汁」「おろし汁」の2種から選べる。
この「おろし汁」がですね・・大根おろしがざくざくというタイプではなく、
越前おろし蕎麦の汁ようにさらりとした汁で、素晴らしいのでありますよ。
蕎麦だけでこれだけ完全な美味しさであるのに
汁がまたこんなに美味しいというのは私には嬉しくも実に悩ましい。
もー!蕎麦だけで食べたいのに、
こんなに汁もおいしくちゃあ困るではないか・・
ああ しあわせだなあ〜〜 おいしいなあ〜〜
「生粉打ち」

生粉打ちは三つ山盛りでやってくる。
(俳句ではありません)

繊細に重なる細打ちの肌。
こちらはさらに爽やかな檜のような香り!
ほのかにひろがる味わいも、これまた絶妙な食感も素晴らしい。
なんでしょうねえ〜この食感は。
やわらかくふんわりしてるのに全くやわらかすぎず、
コシと意識させないコシは見つめてもそれが何なのか私などには分からない。
ただただ、染み入るようにこの蕎麦の美味しさ、
そしてこの店に流れる時間に浸るしあわせ。
今回は2名で行ったため、ここまでで意外と
「おっ もう一枚いけそう・・?」
ということになり(私がそういう雰囲気に持っていった感もあるが)
最初諦めた「もり」も頼むことに。
わぁ〜い!

見るからに軽やか、自在な曲線を描いて重なる、小慣れた印象の蕎麦。
箸先からほわぁ〜〜と濃厚に香る甘いかぐわしさにまた胸が躍る。
口に含むとやわらかく弾むようなコシが心地よく、味わいもまたしっかりと濃い。
はああ・・参りました。
それぞれがそれぞれに、素晴らしい個性!!
「布恒更科」では夏に「鯵の冷汁」というおいひい〜つけせいろをやっているのだが
今回は時期を逃し残念・・・
ちなみにこれが鯵の冷汁♪

胡麻、ネギ、茗荷と鯵のマリアージュだが
他で出逢うメニューから想像するのとは
ひと味もふた味も違う美味しさに仕上がっているのが
「布恒更科」の奥行というもの。
しかし悩みは、お蕎麦の種類が多い上に盛りがたっぷりなことですね〜
どのお蕎麦も美味しくて盛りたっぷりじゃあ、
種物までたどり着けまへん!!
悩ましさまで完璧な、「布恒更科」なのである。

<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
機会をうかがってはいるのですが。。
お店のファサードも素敵です。
ここの外観は(内観もですが)最高ですよね!
大森海岸駅すぐ、大森駅からだって歩いてものの数分ですから、一回行けば次回はもっと気軽ですよ〜。きのこがおいしいうちに是非♪
「布恒更科」は手打ち蕎麦の美味しさを知ったころ良〜〜く通いました。
生粉打ち不思議ですよね、うまく説明出来ないけども、やたらに美味しくて(笑
数ヶ月前に10数年ぶりにと・・昔は空き地の真ん中にポツンっと佇んでいたので、なかなか辿り着けず、ようやく辿り着いたら閉店後でした(笑
あれ訊かれるんじゃなかったでしたっけ?おろし汁or辛汁どちらにしますか、って。
空き地の真ん中、そうですよね〜!実は私には今だにそういう印象で、人に説明するとしたらまだそう言っちゃいそう。周りに建物は建ちまくりましたが、あのあたりは何だかのどかでいいですね。
Z33さま
わわ、そうでしたね〜ご指摘ありがとうございます。なんだか私今回相当ボケボケ書いていたようで「もり」も食べたのに書いてなかったし、ただいまいろいろ訂正いたしました。なんか最近いろんなお蕎麦屋さんで何種類も食べていて頭がごちゃごちゃに・・・しあわせな秋。
シトシトとそぼ降る雨、気持ち秋らしさを含んだ涼風が身を包む。
安堵と感慨の入り交じった不思議な感覚で木戸に手をやり・・・
見慣れた店内に目をやれば、これは夢か・・ぼんやりと目を運ぶが、夢のような気がする。
着物を粋に羽織ったお年寄りの数人のグループがもの静かに、楽しそうに一献を傾けている。
小上がりにはお茶会か、お花の帰りかとおぼしき数人の女性のグループがいかにも楽しそうに燗酒を楽しんでいる。
いつもなら人の熱気に溢れているであろう時分に、お客さんは着物の二組だけ・・自分がどこか異次元の世界に踏み入れたようで・・・
静かに一献、一献と重ねていると、本当に時代をワープしてしまったような感覚が。
蕎麦は噛み締めてこそ味がわかるとわかってはいたが、二三本をチョット汁に浸し、ツツッと噛まずに喉へ・・
あの日、あの時、心の着物を羽織っていたような気がする。
「粋」 日本の
奇跡の時間だった
こういうロマンティックな文章を読むと、私も着物でお蕎麦屋さん行かなきゃって思いますね〜。着物着ているときはなんとなく一人でお蕎麦屋さん行くのが恥ずかしくて。。
心の着物、素敵ですね。
んんっ 何となくわかる
七五三の気分でしょ・・
いつか、馬鹿旦那と七五三彩子が布恒更科でばったり。
なんてあったら楽しいですね!(^o^)
なんてあったら楽しいですね!(^o^)
いつか、馬鹿旦那が布恒更科でぱったりと・・・
あぶない あぶない (>_<)
あり得そうなこっちゃ
戯れか現実か・・
それにはお馬鹿旦那さまがまず和服をお召しくださいませね、絶対、すごくお似合いですよね。私はしょっちゅう着ていますが、お蕎麦屋さんに行く勇気がないだけです(^^;;)