ひっそりと目立たぬ蕎麦屋の趣もいいが
街を美しく飾ってくれるような店も好きだ。

神楽坂商店街に面するこの佇まい。
出来た頃はあまりにパリッとしていかにも観光地的な印象も受けたが
今やしっとりと街に溶け込んで来ている様子である。
そう、こういう店がこういう通りにあるのはとても良いことだと思うのだ。
蕎麦屋にしては夜遅くまでやっているので、通りにこぼれる灯りもいい眺め。
間口も小さくはないが店内は奥にずずいと長く、かなり大きな店である。
テーブル席の奥にカウンター席、その奥にまたテーブル席。
近年お蕎麦屋さんが増えに増えた神楽坂であるが
おつまみ豊富お酒も充実、気軽に入りやすい雰囲気の『山せみ」は今夜も大盛況。

竈や釣釜などの演出は、この界隈に多い外国人達にも喜ばれそうだ。
「水茄子」

本来は「水茄子と塩トマトの盛り合わせ」というメニューなのだが
今夜は塩トマトが売切れで残念。
「松輪〆サバ」

この松輪サバはいい!
脂がしっかり乗ってしかもその脂がきれい。さわやか。
〆具合も丁度良くおいしい〜
そしてここにきたらやっぱり「ニショク」♪
「せいろそば」「田舎そば」の「二色そば」。
「せいろそば」

えーっこれはなんだか・・?

目を凝らしてみても機械切りかと見紛う姿。
見事なまでに美しく均一に切りそろえられた蕎麦である。
口に含むとほわっと軽い食感。
しかしなんだかあまりにも均一で優等生過ぎてしまうのか
味としても手作り感が少ない?印象も。
香りもしっかりしているのだがそれもなんとなく素朴さに欠けるような・・。
今までとはだいぶ印象が違う。
この店は他にも系列店があるし、
こういう大きな、しかも営業時間も長い店では
小さな個人店よりも何事もいつも同じ状態にはなりにくい。
蕎麦打ちする人だっていつも同じとは限らず
ここはその日の打ち手の名前を「本日の打ち手」とはり出してあるくらいだ。
蕎麦打ちはその日の天候にも大きく左右されてしまうほど繊細な作業だし、
同じ産地、同じ畑の蕎麦でも毎年出来は全く違う。
ハンバーグやラーメンと違って毎回同じ味にはならないところが
手打ち蕎麦のいいところだと私は思っている。
現に私は以前この店で、目がかっぴらくような超絶品せいろを食べたこともあるのだ。
「田舎そば」

こちらはぐっと黒々と、平打ちの「田舎」。

たぐり上げた箸先からただようたくましい香り。
強いて言えばヨモギを思わせるような、青いたくましさだ。
この「田舎も」また「せいろ」同様、表面があまりにも均一な印象なのが不思議だが
こちらは下を支える野性味がぐわーと強い香りがうれしい。
しかもかみしめた味わいは甘さも味わいも強くなく、
さっぱりとしているのが意外性があっていい。
暖簾を出ると
少し涼しくなった神楽坂の夜。
毘沙門天の闇に、秋の気配が漂っていた。
御返事遅くなってごめんなさい〜
パキパキ、わかります〜そういう時もありました!でもそれは私は一回だけで、毎回結構印象違います。ひょっとしたらこういう大きな店なので何度かにわけて打っていて「昼パキ率」が高いのかもしれませんね(^o^)