2012年03月31日

長野・安曇稲核「手打そば わたなべ」



「はい お待ちどう〜」

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ドカーン!
鍋ごとである。


これがかの有名な「わたなべのナベそばがき」。

しかも有名と思っているのは
圧倒的に県外の人が多いだろう。

事実、ここに近い乗鞍に住む親しい知人は
何十年も、週に何度もこの店の前を通りながら
ノーチェックだったそうだ。

無理もない。
こののどかな外観。

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道から少し高くなったところにあるので
余計目立たない。
それにしても、このシンプル極まりない木の看板。
紺地に白抜きの暖簾。
赤いポスト。
「普通でいる」ということは素晴らしいですねえ〜
狙ったら絶対にできない、たまらぬ風情。

これでは、ここが魔法使いの店だとは誰も気づかない。


お品書きはこんな具合である。

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よく見ると
「ラーメン」「野菜炒め」
なんてのもあるのだが、そばメニューは
「もり」「かけ」「やまかけ」「月見そば」「そばがき」
と実にシンプル。

私はいつも変な時間に行くので
店のおばちゃんは大抵奥の茶の間でくつろいでいる。
愛想はないが、この人が魔法使いワタナベさんなので
そんなことはどうでもいいことだ。

蕎麦とそばがきを注文をすると、
魔法使いワタナベさんは娘さんと思しき人と共に
手際よく動き出す。
すぐに蕎麦が出てくる。

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ちゅるり、ふわぁ〜 いい香り!
慎ましいイメージの、正統派の蕎麦のかぐわしさが
濃厚に楽しめる蕎麦だ。


そして「そばがき」なのだが、
その前にまた魔法使いワタナベさんがやってくる。
「食べて、待ってる間。今、来るから」
とドコドコお皿を置いていく。
(よく考えると今日は「蕎麦→サービスのお惣菜→そばがき」と
 順番がメチャクチャなのだががこれはいつもではない)

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大根とちくわの煮たの。

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白菜。稲こき菜と稲こき菜のかぶ。

ああステキ・・・
和む〜・・
眠くなるほど和んでしまうではないか。

しかし眠くなっている場合ではない。
今まさに、台所(と呼びたい雰囲気)からは
ガタゴトッガタゴトッと魔法をかける素朴な音がしているのだ。

魔法、キターッ

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ほわ〜〜
たちのぼる、超絶のかぐわしさ。

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蕎麦という穀物の香りのいいところを
全てあつめて結集させたようなたくましい香り。
もうもうもう、このままこの湯気と共に
溶けていってしまいたいくらい
どうにもこうにも恍惚のかぐわしさである。
ああ とけるー
脳が染まるー

そして食感がまた素晴らしすぎる。
「ふわふわとろとろ」とかいうのとは違い、
箸先に取り口に入れた瞬間は、
見ての通りのしっかりした感触。

それがほっくりと口に入れると
ほこほこ、ほわわぁ〜
なんともゆっくりとエアリーに溶けるのだ!
そしてその「エアー」がむちゃくちゃかぐわしいのだ!

もう私は安曇の空にぶっ飛んでいってしまいそうだ。

添えられてくるネギダレがまた
よくぞというほど美味しくできているのだが
そばがきが美味しすぎて案の定つけられない。

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でもやっぱりネギダレもすごくおいしいのでつけたい。
でもそばがきはそばがきだけで味わいたい。でも、でも・・
こんなにも私の心をかき乱す、なんて罪な「わたなべのナベそばがき」。

もう大分前のことだが、はじめてこの店のそばがきを食べた時
私は本当に本当に驚いた。
そしてきっとこのそばがきは、なにか特別な蕎麦粉を使っているに違いないと思った。
いや、蕎麦も美味しいのだが、それ以上にこのそばがきは
「おかしいくらい」美味しかったので、蕎麦粉が違うのだと思ったのだ。

意を決して聞いてみると、果たして返事は・・

「同じです」。

一回では頭に入ってこないほど理解できなかった私は
ええっ、と聞き返してしまったのだが

「同じです」。

恐るべし魔法使いワタナベさん。


聞くところによると
ラーメン(醤油)も相当美味しいらしいですよ〜



posted by aya at 10:59 | Comment(8) | TrackBack(0) | 甲信越の蕎麦>長野 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>魔法のそばがき

ということは・・・おばちゃんは魔女??!!(笑

実は、この「掻きっぱなしスタイル」、当方も採用しておりますです。

ぐわ〜っ、ぐんに〜っと掻き廻したら、中央にこんもりとかき集め、全体に熱湯かけちゃいます。

親しい人たちの集まりだと、各自鍋から適当に掬って食べた後、もう一回鍋ごと火にかけて加熱します。場合により、蕎麦粉を追加して掻き混ぜ、ワザとらしいトロミを加えてみたり。
⇒ 卓に戻して蕎麦湯にする。

器に移すのもいいけど、面倒が無くてあとの始末(結構メンドイ)も楽です。
(はい、それです、実は 汗;
Posted by よしの at 2012年04月04日 17:33
よしのさま
魔女です(^o^)
そしてよしのさまのそばがきもおいしそうですねー、食べてみたい!
Posted by aya at 2012年04月04日 21:36
ワ ッ わ っ ゥワ〜〜ッ ぅわ〜たなべだっ \(^O^)/

ワ〜〜イッ わ〜〜いっ わたなべだ


それはそれは 遠い昔の事じゃった

 「・・エ〜〜ッまあ良いですけど・・」
  ガランゴロン ガランゴロン ♫
   何故か自分で作るはめに・・ 
    あの、雪平鍋でそばがきを・・
そのかいあってか、バアチャンの夕飯のおかずの小鯵の南蛮漬け、オマケに炊き立てのご飯まで頂戴しましたが・・
外観であり、店内であり、メニューであり、オバチャンであり、 やはり全てが素朴であり、優しくあり、暖かな、わたなべワールド 
私にとっては掛け替えのない(代わるものの無い)お店です
Posted by 而酔而老 at 2012年04月06日 14:04
而酔而老さま
うひゅひゅひゅひゅ♪
やっぱり而酔而老さまよろこんでくれたー
自分で作ったんですか!?出来たの!?(失礼(^_^;))
魔法も借りたんでしょうか・・
かけがえのないお店。本当にそうですね!
Posted by aya at 2012年04月06日 17:02
フェッフェッフェッフェッ??♫
 ヒィェ〜〜ッ!?
なんでや? なんでワイの喜びそうなところが分かってまうのや・・・
 なんでやねん、ワイのツボを突っつくのや・・
魔法使いか・・魔女か・・鍼灸師か・・按摩しか・・
ツボを突かれて、何故か嬉しくなってしまう
 何か単純なんだな・・ 
  いや、純情なんだろうな・・・ (^_^メ)
Posted by 而酔而老 at 2012年04月11日 10:38
而酔而老さま
>なんでや? なんでワイの喜びそうなところが分かってまうのや・・・

イヤ、だって・・ほかでもない「而酔而純 」さんですもん。。(^o^)
Posted by aya at 2012年04月13日 21:20
子供の頃、ここの蕎麦が好きな父親に連れられて何度も行きましたが、蕎麦は美味しいけど麺つゆが塩辛くて苦手でした。蕎麦が美味しくてもつゆにこだわる店が少ないのは残念です。
Posted by at 2020年06月25日 12:50


>?さん
私は汁をつけずにお蕎麦を完食してしまう大悪党なのであまり困らないのですが、確かに汁が強烈なお店はありますね〜
Posted by aya at 2020年10月17日 16:31
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