
名店は住宅街の角地に突然現わる。
料亭のような日本家屋は
当に威風辺りを払うといった体である。

店内に入るとぐっと暗い。
しかし「照明が落とされている」というよりは
これが古来自然な明るさと思える。

待合も兼ねた三和土の空間。

この店の名高さは格調高き佇まいからだけではない。
「そばがき」

無駄も隙も一切ない洗練の空間で出会った、荒々しきうねり。
汁と塩、両方が添えられている。

ふわーっ
とゆたかに香る、ふっくらしたいい香り!
ふっくらしつつも、やや枯れた趣を含んだ香りであるところが
この空間に合っている。
フワフワと軽いタイプでなく、
ざっくりモチッと食べ応えのあるそばがきである。
そして何より、蕎麦だ。
「ざる蕎麦」


これだけの粗挽きながら、はかないまでの繊細さ。
口に含むとこわれてしまうのではないかと思うほどだ。
しかしその肌はやさしく美しくつながったまま、
無数の凹凸が口中をめぐる。魅了する。
大切に噛みしめれば、ハラリこわれそうな絶妙のコシ。
それらが全て、フレッシュなピーナツのような、
最高の香りと味わいの中にあるというこの物語!!(興奮しすぎ)
「おいっしいーーーーーーー!」
と叫びたいのをこらえるのが苦しく
小さく「おいしいーっ おいしいーっ」とうなされたように
言い続けながら食べる。
余計怪しいが悪いのは私ではない。この蕎麦だ。
「手碾き蕎麦」


・・・もうダメ。
たしかにさっき
最高と言いましたがね
これまたあんまりにも
さいこうなのです
このっ
石のような墨のような
渋〜〜〜〜い、
しかもおいし〜〜〜い香りはなんでしょう。
噛みしめてジワジワ深まる
この麻薬のようにおいしい滋味はなんでしょう。
「ざる蕎麦」よりぐっと太くしっかりした肌は
噛みしめるとジャリ感がたのしく、
でもそんなことより
意識を保つのが困難なほど、
ああああ おいしい・・・
蕎麦の余韻を全身に響かせつつ、
蕎麦湯。

この店の座布団は広々ふかふか座り心地が素晴らしい。
何だか私は恍惚としたままこの座布団に乗って
孫悟空のように岐阜の空へ飛んで行ってしまいそうである。
これだけの空間でこれだけの蕎麦が1枚945円。
2枚食べれば1575円。
手碾きでも値段は変わらない。
一食の食事からあれだけの感動をもらった私には
むしろ安いと感じられる。
多い安いの庶民的な蕎麦屋でないことは店構えでわかるし
こういう店に来て怒る人の気持ちが私にはわからない。
(もちろん、こういう展開は非常に珍しくて楽しいが!)
日本中が格調高き蕎麦屋だらけでは困るが
こんな店にたまに行くのは心から楽しい。
楽しみにする時間がまた楽しい。
また次に行く日まで、
私は今日のしあわせを味わい続けるのだ。

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先日から東海地方の美味しい蕎麦屋さんを軒並み荒らし回ってますね。(爆)
お店の佇まいは、島田市の「宮本」と肩を並べる位、良い雰囲気ですよね。
↓のお店、知りませんでした。
09年9月開業なので、丁度丸2年なんでんね。
せせらぎ街道の紅葉が見頃になったら、伺ってみます。
よい情報をありがとうございます。
香りが届いてきました。
食感も・・・、
食べた気になりました。
島田と同じくらい、そうですね!島田はあの奥さんの雰囲気も大きい・・
せせらぎ街道の紅葉って素敵そうですね〜、見てみたいですー!
夢八 さま
嬉しいうれしいコメントをありがとうございます!!
何よりのお言葉です!
でも食べた気にまでなっていただけるのは、 夢八さまが美味しいお蕎麦をたくさんご存知だからですね♪
こういう店に来て怒る人の気持ちが私にはわからない。
ンン〜ッ
何故か その一人かもしれない
きっと 私が おかしいのかもしれないが
抜群の風情、雰囲気・・
大人気無いが 入店時に頂いたお店の名刺を何十年部売りかにお店を出た後ツイスト踏み絵にしてしまった
破れ鍋に綴じ蓋じゃないですが、そう、男女関係のように、それぞれの感性に、思いに、舌に、考えに・・・ きっと、合う、合わない、ってあるんでしょうね。
もうチョット大人にならないとな・・ でも 無理かも・・
「気持ちがわからない」と書きましたが、ある意味痛いほどわかります。万物は一期一会。同じ場所同じスタッフ同じ蕎麦でもその時々で印象は全く違うはずです。特に「格調高き」「誇り高き」「名高き」店ほど。私も10年以上前、大変評判のよい小さなお店に初めて行った時、あまりにも嫌な思いをして店を逃げるように出て泣いちゃったことがあります。その後数年空けて恐る恐る再訪しましたがその時は特に問題なく美味しく食べられました。蕎麦喰い師さまもいつかまたニコニコ美味しいちょうちょ蕎麦たぐれるといいな。