2011年08月28日
浅草「吾妻橋やぶそば」
「贔屓の店」というものがある。
理由もなく好きなのか、
それともいろんな要因があって好きなのか
自分でもわからないが、そんなことはどうでもいいことである。
私はただただ、「吾妻橋やぶそば」がだーーーい好きなのだ!
駒形橋のたもと。
まずそう聞いただけでうっとりだ。
しかし移転前の店舗がその店名の通り「吾妻橋」近くにあった時も
「吾妻橋!いいよなぁ〜〜〜」
とうっとりしていたのは確かである。
しかし現在のロケーションは駒形橋のまさに真横の一軒目。
その風情たるや、私にはたまらないものである。
新しく清々しい店内は昼下がりというのに
空いているテーブルがひとつしか無い。
ここは中休みなしの夕方5時まで営業なので
のんびり一人蕎麦、のんびり昼酒組も多い。
一人客が憩いやすいテーブルレイアウトも実に気がきいている。
真夏日に涼感を運ぶ、入り口付近の演出。
白地に染めぬいた「やぶそば」の文字が美しい。
今日は入って右側の「お忍びデート席」に通された。
そんな名前がついているわけではないが
低い壁で小さく仕切られた二人用の席は
ちょっとめずらしくて楽しい。
「お忍びデート席」に一人で虚しい?
とんでもない。
私は、お蕎麦と二人きり
ほかではあまり見かけない、少し横長のざる。
ちょこや薬味皿と共にびしっと並んだ様は茶の湯を思わせる美しさで
私は密かに「藪点前」と呼び愛しんでいる。
瑞々しい蕎麦が、
さざなみのように美しく散らされた盛り方にしばし見惚れる。
甘い香りを漂わせる蕎麦をたぐりあげると
驚くほど「スルスルッ」とした食感。
ツルツルではない、スルスルッと、潔く涼やかな粋な蕎麦なのだ。
噛みしめると程よいコシが心地よく
そして何より、食べている間じゅう私は
「ああー 大好きだー しあわせだー このお店が好きだー」
と無言で吠えている。
汁はまさに藪!な濃厚汁。
これがまた美味しくて、最後の方はしっかり汁につけて楽しむ。
この店は奥さんがまたすんばらしい。
その接客はまるでおひさまのようと言うか野に咲く花のようと言うか
特別な何かをしているわけではないのに
こちらは毎度根っこから癒されてしまう。
店主もとても感じがよく
暖簾を出ると「ああ ここに来てよかった、また来たい」
としみじみと思う。
駒形橋のたもと。
私の密かな、贔屓の店である。
(駒形橋上より)
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