2010年12月01日
三軒茶屋「玄そば 東風」
今日は急に思いついて
三軒茶屋「玄そば 東風」へ。
外観も店内も、洗煉された美しいデザインのこの店。
しかし席に通されてみると
あたたかく家庭的な居心地の良さにいつも心が解ける。
昼間の明るい雰囲気も好きだが
やわらかい照明のもと人々が楽しげに憩う夜の時間もとてもいい。
カウンターの一人客である私も
そこにゆったりと身を投げる。
しかし一人のつらいところは
「あまり感激してはおかしい」
というところである。
そんなこと言ったって、こんな蕎麦を出されては・・・
「せいろ蕎麦」
高台付きの工芸品のような笊に盛られた見事な眺め。
まずその美しさに胸打たれ、
手繰りあげて香りを寄せた刹那の衝撃。
ひんやりとした冷気に乗って、
たまらなくかぐわしい香りが私の脳を染める。
「あー!」
とここで声を出してはいけない。
無言で上半身をぴょんぴょんさせてもいけない(よくやるが)。
私はカウンターの一人客である。
しかもまだ食べていない。
口に含むとこれまた素晴らしい。
舌触りに端整な輪郭を感じさせつつ
噛み締めた食感はどんな姿なのかもっと追いかけたくなるようなやさしさ。
しかし追いかけるうち穀物の滋味深き味わいとたまらぬ香ばしさが口中に広がり
もう何がどうだかわからなくなってくる。
「おいしかったですー」
「またどうぞ」
すっかりしあわせ蕎麦オーラをまとい店を出れば
「紅白歌合戦」から「ゆく年くる年」に投げ出されたかのような夜道。
この灯りの中に、あの時間が流れていたのだ。
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