2010年07月22日

神奈川・大船「手打そば 鎌倉」


JR「大船」駅,「北鎌倉」駅、
湘南モノレール「富士見町」駅、
3つの駅の真ん中のようなのどかな場所に
面白い蕎麦屋がある。

「手打ちそば 鎌倉」。
湘南モノレールで中学高校に6年間通学した私にとっては
何とも懐かしい、この辺り特有のゆるやかな風情。



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店構えは素っ気ないが
引き戸を開けると、テーブル席のよくある雰囲気ではなく、
すっきりと気持ちの良い座敷が現れる。


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靴を脱いで店内に入ると
並べられた座卓が低いので面積以上に広々と感じ、
書道教室か寺子屋かといった印象も。
とにかくこの店内の作りだけでも
湘南ののんびりさを感じ
私などは大いに嬉しくなってしまうのだ。



そしてこの店の何が面白いといって
その個性的な突っ走りぶりである。

個性的と言っても別に
「納豆切り」とか「カスタードそば」とかいう珍メニューがあるとか、
何かパフォーマンスがあるとかではない。
お品書きはいたって普通。
自家製粉,手打ちのお蕎麦は「田舎」「せいろ」「御前」と三種あり、
その他つけとろや、鴨せいろ、天せいろなど、
王道のメニュー揃いである。


では何が個性的か。
この店、本格的な手打ちそば屋ながら
どのメニューも「値段も倍なら量も倍」なのである。
この店で一番安い「御前」「田舎」「もり」と3種類あるもりそばは
各1300円という驚きの高価格。
しかしこの量である。


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せいろからはち切れんばかりに盛り上がり
ぎっしりと「積み上げられた」蕎麦。
なんとかせいろ内におさまっていることに感心してしまうほど
このせいろに対してギリギリの積荷量、
一般道はまず通行禁止である。
女性ならまず食べきれないボリュームゆえ、
「頼むから量も値段も半分にして欲しい」と考えるのが普通だが
いんや!ここの店主の蕎麦への思いはそんなにぬるくないのだ。

量も値段も倍と書いたが、
量は都心の「上品盛り」の店と比較したら倍ではきかず、
3倍、下手すれば4倍近くあるだろうから
逆にサービス価格と言ってもいいのではないだろうか
店主はとにかく、一度この店に入ったからには
「お蕎麦をたくさん食べて満足して欲しい」のだ。
それほど精魂を込め、彼のすべてが詰まった蕎麦なのだ。

値段も量も半分にした方が絶対に客層も広がるし
売り上げ自体も伸びるだろうに曲げない信念、不屈の理想。
かと言ってチラとのぞける店主の横顔は柔和そうで
サービスの奥さんも実に感じよく,
いいですねえー、こういうお店、こういう姿勢が
こんなところでこんなにもまっすぐに、
一見のんびりそうに貫かれていることが、
素晴らしい!





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機械打ちの蕎麦が山盛りというのと違い、
心意気の伝わる手打ち蕎麦がこれだけの山でやってくると
圧倒されるものだ。
ものすごい眺めを眼下にし
「た・・食べきれるのか、自分?」という一抹の不安を抱きつつ
箸をとる私は「食べ始める」というよりは登山に挑むような感覚だ。

案の定、蕎麦に箸を入れると
もちろん箸は底のせいろまでは遠く届かず
表面の幾層かをすくい上げるのみ。

ふんわりとした粉の優しい香りが箸先から伝わる蕎麦。
太さはあるが平打ちのため歯ざわりはやさしい。
粉の甘みがじわーと広がり、噛みしめるごとに深まっていく。


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対する田舎はかなり赤黒く、これも平打ち。
色のせいか威圧感もひとしおである。
運ばれてきて思わず「ウワー」と声を上げたほどの迫力だが
見入ればその眺めは大変美しい。
積み重なる蕎麦の美しい曲線、無数のうねり。
この盛り付けもまた熟練の技なのだということに今更気づく。


箸先に手繰り上げると、おお、これは。
目も覚めるような熟成ではないか。
濃厚な、力強く生々しい香りをきわだたせ
口に含めば熟成の強烈な甘みと味わいが噛まずとも広がってくる。





チョイと寄ってサッとひっかける蕎麦でなく
のんびりやってきて、ゆうるりたっぷり食べる蕎麦。

実際この店に流れるゆっくりした空気は
他にはないものだ。
通し営業ゆえ、北鎌倉の散策の後などにあの座敷で過ごす時間は
どんなに楽しいだろう。



湘南生まれ湘南育ちの親友深雪ちゃんと
のんびりゆったり楽しみすぎて店を出たらこの通り。


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これだけゆっくりしていたのに
「御前」そばまでは到底たどりつけなかったのが少し心残り。

また鎌倉に行くついでにでも、「鎌倉」、行きますよー



posted by aya at 09:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 関東の蕎麦>神奈川 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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