2010年07月19日

神田「眠庵」(八種もりの蕎麦会)


昨日は、恒例の眠庵「蕎麦会」へ。
産地の違う八種類の蕎麦を食べ比べられる、
それはそれは楽しい会。


毎回楽しみすぎて、体は前日から準備態勢に入り
最近めっきり小さくなったはずの私の胃も、
この時ばかりはやる気と意気込みが人にバレる程
見違えて元気である。


トップバッターは何と珍しくも、
埼玉・三芳町の蕎麦。
浦和の気鋭店「庵 浮雨」の店主の経由の玄蕎麦なので
庵 浮雨では食べたことがあるが
この店では初めての蕎麦。

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確かに。こんな蕎麦この店で食べたことありません。
やや粘土系の淡い香り。
そして何よりこの輪郭線のクッキリハッキリさが
この店においては新鮮である。
埼玉産だが品種はキタワセ。




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お次は宮城、去年の常陸秋蕎麦。
ゆるやかな太めで、面白いことに香りが埼玉に似ている。
こういうのが、面白い。
蕎麦の味は素材の味が一番だが、
素材だけですべてが決まるのではもちろんない。
打ち手にも依るし、気候にも依るし、同じ打ち手でも
その日の「ムード」のようなものを感じることがある。






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3番目は去年の鹿児島。
この蕎麦、品種名が「春の息吹」というのだそうな。
なんと美しい名前だ。
最初のインパクトは淡いが時間が経つにつれ
秘めていた力強さを放ち始める。
すこし置きたいので
なるべくゆっくり食べたいのに、口が、勝手に!!





ここまでいつもの蕎麦会に比べると
やや品の良い味わいの蕎麦が続き、
私もそれほど興奮せずにきちんとした女性としての自意識の元
椅子に座っていたのだが、
4番目の徳島がやってきて、突如緊急スイッチが!!
これ、見るからにものすごく美味しそうではナイデスカー!!

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粗挽きの肌に揺れるかすかなかすかな陽炎のようなホシ。
眠庵の蕎麦のラインには独特のやさしい素朴さがあるが
これはまた、素朴さと繊細さのバランスが
うっとりするような風情を醸し出している絶景蕎麦である。

出てきた時から「あなた、美味しい!」と怪しい占い師の如く
蕎麦に宣告した(?)私であったが、予言は的中。
今日一番の味の濃さ、野趣に富んだ香りの濃さ、
それにぼんやり酔う私を微かなジャリ感が時々撫でていく。
ひゃー たべたくない なくなっちゃうから 
あっ たべちゃった





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5番手は長野、品種は信濃一号、08年もの2年熟成。
念のため、眠庵においての「熟成」とは
打ってからしばらく置いておくあの熟成ではなく、
玄蕎麦を湿度温度管理しつつ寝かせておく
「玄蕎麦の熟成」である。
この長野、見た目はすんなりと品が良いが
大変に個性的なムニュと伸びるような歯ごたえを持っている。
香りは強烈ではないがその歯ごたえを楽しむうちに
現れてくる味わいがなんとも美しい。
信濃1号と聞くと必ず「はーっち時ちょうどのーーっ♪」と
歌い(叫び)たくなる自分がいることは、
まだ誰にも話したことがない。





6番手。もうこの辺から私の心はお通夜です。
だってだって、あと3枚で終わっちゃうの。ちーん。
もう既に300gの蕎麦をたいらげているはずなのに。
全然後ろは顧みない私はなんて前向きなんだろう。

6枚目と7枚目は北海道の個性派蕎麦食べ比べという
店主の楽しい演出。
これは陸別の06熟成。品種はキタワセ。

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箸先で軽く驚く。確かに変わった香り!
「あっ こういう香りかな?」と感じた瞬間
何だか別の方向から違う要素の香りが次々と浮かび上がってくる。
かすかに香ばしく、かすかに生々しく、かすかに優等生で
かみしめた味わいはまた何とも言えず深い。
ああ、こんな美味しさにも出会えるなんて。
しあわせだなあー





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そしてこちらが「北海道個性派蕎麦食べ比べ」2種目。
もう見た目からしてものすごい、
倶知安の蕎麦、品種は牡丹である。
この龍のように小回りのきく自由自在なライン、
赤みを帯びざらついた肌。
刺青の龍がこちらをニヤリと見やったような迫力ある蕎麦である。
これは今年この店で何度もお目にかかっている、
あのとんでもない、次元違いの暴走族蕎麦のマイルド版の玄蕎麦だとか。
(前回はビーフジャーキーの味がしたというあの例の蕎麦である)。

おおおお、確かに。
あの時の強烈な衝撃を薄めたような味わい。
でもまだまだ十分強烈である。
ビーフジャーキーのような野蛮な香りもはらみつつ、
大地の力強さを感じる香ばしさ、甘さに富み
こういうのを「楽しい蕎麦」っていうんだろうなあー
面白い!楽しい!




そしてファイナルは
この蕎麦会でいつもトリを飾る「福井」。

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この福井、いつもはその見た目といい香りの濃厚さといい、
図抜けた魅力を持った蕎麦なのだが
今回はいつもよりかなり品の良い印象。
しかもあの倶知安の強烈異次元蕎麦の後では分が悪い。
でもやはりこの蕎麦会は福井でしめたいし、
この福井への私の愛は深いのだ。




はああー
眠庵の蕎麦会の帰り道は、いつもちょっと寂しい帰り道。

だって次の蕎麦会が
一番遠い夜だから。








posted by aya at 15:45 | Comment(3) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>千代田区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すみません、最近読み始めさせていただきましたもので、ランダムに行きつ戻りつ...

8種類もの蕎麦を味わえるというような幸せな環境がおありなんですね。
まあ、当方に味わいわけられる感性というようなものがあれば、、、なんで、無いものねだりは止めにします(笑

さて、↑3番目の鹿児島産という「春のいぶき」種ですが、改良種として開発され(ということは、在来種をもとに、様々な加工がなされ、選別された)てから商品化してまだ1〜2年だと思います。つまり、生産量的には国産の中でもさらに僅少ではないでしょうか?

何時も「眠庵」さんの入手ルート(そのようなものがあるとすれば)は凄いなと驚かされます。

このようなことを申すのも、魂胆(笑)が違うからなんでしょうが、当方は同種を栽培してみたくて生産各地(=九州の複数県)の取扱店に問い合わせた結果、総スカンを喰らってしまいましたもので。
そりゃそうだ、これを使って町興しとかって緒に就いたばかりですもの。(実際、他地域生産者からの問い合わせ・引き合いが多いとも聞きました)

でも、入手できたら栽培したいな。恥ずかしながら、目標は二期作なんです。(ぽっ
Posted by よしの at 2011年10月24日 18:46
なんか書き込み方が悪かったようです。

先に入れさせていただいたのは、

・眠庵さんの蕎麦の仕入れについて、常々感心していること

・とても当方では8種類もの蕎麦を堪能できる味覚(=感性)がなかろうこと

・3番目の鹿児島の「春のいぶき」について、出たばかりの改良種なのに、よくぞ入手されたことに感心(↑に同じ)

・当方も同種の種を入手したく、地元(九州各地の 可能性のありそうなところ)に問い合わせたが駄目だったこと(開発されてからまだ数年、実験先でも十分に行き渡っておらず、余所にまで回せる条件にないでしょうね

・当方も、この種の『春蕎麦』を使って、困難な夏蕎麦を栽培したいと思っていること(二期作が目標です)

ってなことを書かせていただいたのでありました。(失礼しました

Posted by よしの at 2011年10月25日 00:14
よしのさま
眠庵ではいろんな種類の美味しいお蕎麦が食べられて本当に楽しいですよね!「八種もり」の会は限られた人だけの会ではなく、お店に何度か通っているお蕎麦が好きなお客さんなら誰でも行かれるはずですよ♪(人気なのでタイミングも難しいかもですが)
前のブログまで読んでくださってうれしいです、ありがとうございます〜(^o^)!
Posted by aya at 2011年10月25日 11:39
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