関東の人間である私にとって
京都の街並みはやはり魅力的である。
大きな寺社仏閣や立派なお屋敷街を見学気分で散歩するのも楽しいが
何ということはない裏通りや路地を歩いても
何かしら必ず京都らしいものに出会いこの地にいる喜びを新たにする。
それは建物の造りであったり人の言葉であったり地名であったり、
できるだけ永くそこに留まっていて欲しいと願わずにいられない
美しいものばかりなのだ。
中心のあたりではなかなか忙しい三条通りが
広々とのんびりとしてきたあたりの東山駅付近。
駅からすぐの小道をひょいと入れば店はすぐなのだが
最初にたどり着いたときは「え、ここ?」と少し驚き、
大いにワクワクした。
創業50年以上の老舗と聞いていたので
立派な構えを勝手に想像していたのだが
店は小さな路地にこぢんまりとある。
お隣は和菓子屋さん。
店前に停められた自転車の数が
この店のファンの多さを物語っているではないか。
入り口の引き戸も店舗としては実に小さく、
町屋づくりの住宅を訪ねるよう。
がらがらと開ける時の私の気分は、
お蕎麦屋さんに来たというよりは
小唄だかお三味線だかのお稽古に
おっしょはんのお宅を訪ねてきたような、すっかり京女の気分。
すいません、すぐその気になる性質でして(^^;) 。
間口はこぢんまりだが店内は京都らしく奥行きがあり
奥に入るほどにくつろいだ気持ちになってくる。
座敷などもあまり広々としていないのが
かえって家庭的な雰囲気だ。
「桝富」の蕎麦は2種類。
手打ちのものと機械打ちのものとあるのだが
そのネーミングの妙にはヤラれます。
九一の「自家製粉 石臼挽き 手打ちそば」に対して
六四の機械打ちの蕎麦につけられた名が「京打ちそば」。
老舗だけに、このあたりの人はここでずーっと
この「京打ちそば」を食べてきたんだなあと思わせ、
ついそれも食べたくなってしまうではないか。
つなぎに「丹波産つくね芋」を使っているというのも面白い。
想像よりも個性的な板盛りでやってきた
「自家製粉 石臼挽き 手打ちそば」。
盛り方も大変美しく、やや粗挽きの肌が
ふっくらと間に空気をはらみつつ重なり合う姿にしばし見とれる。
手繰り上げると柔らかい粉の香りがふわぁ〜とただよい、
歯ざわりもやさしく、噛みしめると優しい穀物の甘さがにじみ出てくる。
主張の強過ぎないゆるやかな感じが
この店のこぢんまりとくつろいだ雰囲気にぴったり。
こんなお店に自転車で通えたらさぞいいだろう。
東山付近はのんびりとしていて
歩きまわるにも楽しいエリア。
山県有朋の別荘で、小さな「世界」のような素晴らしい庭園が見学できる無鄰菴や
私が愛して止まない美しき青蓮院も歩いて行かれる。
京都、旅人を魅了する街である。


