地図で見れば京都のど真ん中、四条烏丸も目と鼻の先。
住所に従い仏光寺通りを烏丸から東に入れば
すぐにわかると思いきや。
店は、カン蹴りのいたずら小僧でもひそんでいそうな路地を
ずんずん入って行かなければ見つけられない。

古い家を改造したらしい店内は、
四条烏丸からすぐとは思えないほど静かで
京都の人が羨ましい限り。


蕎麦は二八の「ざる」と十割の「せいろ」の2種類。
しかも二八は「韃靼」と「田舎」の2種から選べるという嬉しさである。
まずは十割の「せいろ」から。


箸先にたぐるとひんやりとした冷気に乗って
ごく淡く、野の花のような、かすかに檜のような香り。
口に含むとムチッ、つるプリッ。
よく締められているだけに弾けるようなコシの強さである。
やや粗挽きの肌を噛み締めれば、
香ばしい味わいがほんわり淡くにじみ出てくるのが嬉しい。
もう少し温度が下がった頃も楽しんでみたかったが
つい夢中で食べてしまい待ちきれず・・
お次は二八田舎。


ドカーン。
粗挽きの最高の形と言っていい素晴らしさ!
香ばしさにもいろいろあるが、
実にかぐわしい、うっとりするような香ばしさだ。
これだけ丁寧に、
ギンギンにと言っていい程しっかり締められているにもかかわらず
こんなにも香るのは驚き、感激である。
ひんやり美しい夢を追いかけるように
かぐわしさに酔う時間。
コシは十割よりもさらに強くムッチムチ。
口の中で弾むような歯ごたえを楽しみつつ噛み締めれば
穀物のうまみと甘みがジワーッと舌の上に広がり、
しばらく経つとこれがまた、
味わいも香りも最高のその上、と言いたいほどの濃厚さとなり・・・
ここは京都の路地奥、昼下がり。
ウワー、こんなにしあわせで私どうすんだ。
しかもこれだけの蕎麦で恍惚とさせてくれる店ながら
メニューには、「たこ飯(300円!)」、「鮭いくら丼」、「豚けんちん汁」、
「牛肉そば」なんてのもあり、
これはどんなシチュエーションでも楽しいに決まっているではないか。
こんな店を行きつけに出来る人がうらやましすぎる。
烏丸線「四条烏丸」駅から徒歩3分。
次回行くときは「けんけんぱっ」と入って行きたい、
そんな路地奥の隠れ家である。