2010年02月16日

千葉・我孫子「松風庵」 (衝撃、松風庵)

我孫子というと都心からは遠いイメージがあるが
そんなことを言っている場合ではない。


日暮里から常磐線に乗ればわずか30分。

駅降りて5分も歩けば・・・



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ドカーン、この店構え。



一目見て私はつぶやいた。
「うわー私この店好き。 絶対好き!」。


この渋さ、暖簾の文字の脱力感、間違いない。

美味しい店か否か、半か丁か見極めてこの道16年(?)。
さあそのカンは当たるのか。




扉を開ければこれまた「何?このお店なに?」と戸惑うほど
ムードのある空間。
外観は閑寂な庵のようだが、店内は実に楽しい趣。
小上がりの部分は店主の趣味なのかアンティークな家具や
実用的な古道具が並べられ、芝居のセットのようだ。



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ただセンスがよい、雰囲気がよいというだけでなく
絶対に美味しい蕎麦が出てくるに相違ないと思わずにいられない「何か」が、
店全体にそこはかとなく、しかし濃厚に漂っている。
特別な期待もせずにのんびり訪れたにしては驚きの展開である。





壁に貼られたお品書きによるとお蕎麦の種類は
「せいろ蕎麦」
「極荒蕎麦」
「五霞(ごか)の蕎麦」
「常陸秋蕎麦 限定 常陸葵」



ひぇー!そんなお店だったのでございますか!!

これは・・・
楽しみすぎるではないか・・・




早速こちらが「せいろ蕎麦」。


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せいろで既にこの粗挽きぶり。
見た目だけではなく、大変に素晴らしい蕎麦なのだ。
香りはそれほど濃厚ではないのだが、
実に品のいい蕎麦の香りをまとっている。
これだけ野性的な容貌ながら、極上の更級にも似た
清らかな淡い香りをひそめている意外さ。
粗挽きのざらつきを楽しみつつ、あっという間に食べてしまった。


つづいて「極荒蕎麦」。




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見るからに素晴らしいが食べればそれ以上の感激。

ものすごい、蕎麦なのである。

この太さ、無骨な肌感、そして私の大好きな白い陽炎のようなホシ。
その力強い一本一本を噛みしめると、
この蕎麦もまた濃厚とか、爆発的とかではないのだが
しみじみとした蕎麦の美味しさがジワーーー・・・と、
静かに口の中に広がっていくのだ。 

これだけのインパクトのあるルックスながら、
口に含むとまったく派手なところがない。
極荒とは言えものすごいザラツブ感とか、
粗挽きらしい野趣溢れる香りがプンプン、とかいうのでもない。



地味な滋味。
駄洒落が言いたいだけではなく、私は本気でそう思った。

地味な印象のその奥に、蕎麦という穀物の言わば「醍醐味」が
下塗りされているかのように低く隅々まで感じられる。
一本一本、噛みしめるごとにうなりっぱなし。
こんな極太粗挽き初めて食べた!
朝っぱらからすごい出会いをしてしまったものである。
わたしは、最後に残った2,3センチの切れっ端までも
宝物のように大事に食べた。


お次が続けて、「常陸葵」と「五霞の蕎麦」。


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もう、コリャたまらんでしょ?


私もこうして写真見ながら書いているだけで
今すぐ常磐線に飛び乗りたくなってきましたよ〜



しかもね、壁のお品書きには「かけそば」もあるのですが
かけは「平打ち蕎麦」でがおすすめと書いてあります。
というわけで「ミニかけそば」。



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これがね〜〜〜!
私は少々運命的なものすら感じてしまったほどの美味しさ。

そもそも「もりそば」への愛が宇宙ぐらい巨大すぎて
「かけそば」自体に興味が希薄な私。
その私が、ちょっと「かけそば開眼」してしまいそうなほどの美味しさだったのだ。
やや太めの平打ちの蕎麦は湯の中でもしっかりとした歯ごたえを保ち、
しかし平打ちのためしなやか。
かけ特有の蕎麦の甘い香りを邪魔しないばかりか、
後押ししてくるようなしっかりとした出汁のうまみ。
へー!「かけそば」ってこんなに美味しいものだったの?

何ですか、なんなんデスカこのお店は!




あまり絶賛ばかりしていてリアリティーに欠けるといけないので
そうでもなかった部分も書けば、
「粗挽きそばがき」は、ちょいと不思議なものであった。
木桶で供される演出はとてもよい雰囲気で嬉しかったのだが、食べた瞬間びっくり。
これ、私が食べて育った「萬藤のそばがき」の味がする・・


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萬藤とは浅草の老舗乾物屋で、オリジナル商品のヒットも多いのだが
そこの「インスタントそばがき」なるものを私は食べて育ったのだ。
発砲スチロールの丼に、戸隠の蕎麦粉と添付のつゆが入っていて、
そこにポットのお湯を注いで混ぜればそばがきの出来あがりというもの。
インスタントと侮るなかれ、幼い頃の私はこれが大好物だった。
「松風庵」のそばがきはいわゆる椀がき。鍋で加熱してかいていないため
生の蕎麦粉の風味が強くなり「萬藤のそばがき」に似てしまうらしい。
いや、美味しいのですよ。でも私には、ということである。


松風庵の店主は、これだけの店をやるだけあって、
相当奥の深〜い、一風どころか何風も変わった人物らしいのだが、
何を話しても自然で親切で、店での時間はすこぶる楽しかった。
本当に個性的な人は、個性をひけらかすことなく「自然」なんだな、
と感心させられた。
そう言えばこの店主と、店主の打つ蕎麦は似ているかも知れない。

そうそう、こんなこともやっちゃう店主なのである。


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・・・恐れ入谷の鬼子母神である。
参りやした。



我孫子はここ以外にも「湖庵」「きみ吉」と名店が集中する
千葉の七不思議な街。

行かないと、損しちゃいますよ〜


(ちなみに湖庵はビシッと美しい正統派の、淡い香りがかぐわしい蕎麦。
きみ吉はやさしい甘さの美味しい蕎麦と、是非穴子天を!)





posted by aya at 09:32 | Comment(4) | TrackBack(0) | 関東の蕎麦>千葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ〜、この暖簾の「手打そば」の字だけでもうクラクラきちゃうぅぅ〜

そして種類の豊富さに胃袋が自動式に広がります!
カモォ〜〜〜ン!!!!(笑

写真を見ただけで口のなかで蕎麦の味がはっきり分かってしまいそうな・・・
なんて言ってはおこがましいですが!
そんな蕎麦色です♪

ね、もう一度行きたいでしょう?
行きたいよね??
近々行きたいよね?!
(連れてけ攻撃!)

Posted by まゆきち at 2010年02月17日 01:58

キャーまゆきち!!

書き込みありがとうございます☆
うふふ〜よいお店でしょう?
ご安心下さい、店主に「またすぐ来ます!」と言い残したと時、わたしの心中では「(まゆきちと!)」っていうのがカッコ内ではありますが文字サイズ大きめでくっついていましたから(^o^)。
ご連絡お待ちしておりますよ〜♪


Posted by aya at 2010年02月17日 09:35
父の希望で浅草の天ぷらのお店を検索していたら
あるブログに我孫子松風庵の名前が…
自身、かなり以前に我孫子に住み…
現在も蕎麦好きな父、母と祖母が我孫子におりますが
土地勘ある身で、このお店は知りませんでした…
お店と自分の休日が完全にリンクしていますが
都合を見て早めに伺いたいと思いました!
情報、本当にありがとうございました!
Posted by ケイさん at 2013年01月13日 00:02
ケイさんさま
はじめまして、コメントありがとうございます。御返事がすっかり遅くなりごめんなさい。実はここ、最近「また行きたいウズウズ病」が悪化していた店でして・・(^^;;)刺激してくださってありがとうございます。この弾みで私も行きますよー!
Posted by aya at 2013年01月24日 12:29
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