茨城というところは恐ろしいところだというのは
私が今まで度々書いてきた通りである。
とんっっでもなく美味しいお蕎麦屋さんが
当たり前のようにゴロゴロしているのだから
お腹がいくつあっても足りやしない。
私などは毎回本気で悲鳴をあげている。
あそこもここも、全部行きたいーー!!
(思えば19年前、初めて私が雑誌の蕎麦記事を書くことになった時
取材先に選んだテーマも”茨城蕎麦旅”でした♡)
そんな超のつく名店だらけの中でも
この店の蕎麦は、やはり図抜けている。

ずいぶん久しぶりになってしまったが
変わらぬ佇まいにホッとする。

入り口入ってすぐのクセの強い張り紙。

仙台・秋保にかつてあった伝説の名店、
「たまき庵」から引っ越してきた張り紙なので
あの方のお顔がチラチラして可笑しくて・・・(笑)
今回私はかなり忙しい時間帯に行ってしまったが
これは帰り際に撮った写真。

メニューはシンプル、少数精鋭。
それだけに、凄みを感じてしまうほど。




食事の前にサービスで出されるお豆腐。

一見、なんの変哲もない一般的な豆腐に見える。
しかし食べてみると、これが実に那由他らしい。
見た目よりずっとやわらかくて、うんとみずみずしく、
それでいて旨味が濃い!
よくある今時の「なめらか系豆腐」のように
やけに甘い感じではないのがまた素晴らしい。
みずみずしく、スッキリと濃いのだ。
体が澄みわたるようなおいしさ!!
そして、蕎麦。
その美しさに、私はほとんど固まってしまった。
東京よりずっと澄んだ空気の中に居るせいもあるだろう。
少し曇った午後のやわらかな窓辺の光のせいもあるだろう。
それにしても、この美しさは全てを超越した世界にある。
「せいろ」

見入るほどに心ごと吸い込まれ、瞬きを忘れる。

輪郭線がどうとか、粗挽きとかホシとか、
世の中にある美味しいお蕎麦のいろんな個性を全部吹っ飛ばして、
私にはただただこの蕎麦がとんでもなく素晴らしいということだけが
ズンと伝わってくる。

箸先から香りを寄せると
案の定ブワーーーッとものすごい濃厚な香りが飛んできた!
フレッシュな青い野生のかぐわしさが素晴らしい。
その野生の中にはちょっひねたウリ系の感じもあるのだが
全てがどこまでも澄んだ青さの中にある。
そして口に含むとさらに感動。
これを完璧と言わずして何を完璧と言うか!!
王道の、最高の食感。
口中で感じる極細の美しい輪郭線・・・それが美しくほどける様がたまらない。
噛み締めるとふんわりしたコシがやさしく受け止めてくれ、
そこから溢れる味も濃い。野生がふくらむ感じ。
もうもうもう、完璧すぎて降参するしかない!!
蕎麦も凄いが蕎麦汁もまた凄い。
がっつりした旨味があるのにとんでもなくスッキリしているところが
ニクすぎる。
お蕎麦の香りを偏愛するあまりお蕎麦はお蕎麦だけで食べたく、
たまに蕎麦汁につけて食べると9割方は後悔でいっぱいになる私だが
(お蕎麦が美味しいほど後悔する)
那由他は、蕎麦と蕎麦汁の調和が素晴らしく、
うわ、これは美味しい!!と納得させられてしまう美味しさであった。
「つけ鴨そば」のつけ汁はこんな感じ。

これがまたね〜〜!流石としか言いようのない美味しさ。
お肉ごろんごろんでガッツリ濃い旨味!
でありながら単なるガッツリ系ではなく
柚子の効かせ方が絶妙に巧かったり
上質なまとまりがあるところにギャフンである。
経験上、蕎麦と蕎麦湯の美味しさは比例しないことも多いのだが
ここはそば湯も素晴らしい。

後から蕎麦粉を足したりはしていない、
サラリとした釜湯そのままの蕎麦湯。
でありながら味が濃い!おおおおおいしいぃ〜!!
素晴らしい蕎麦粉を使っているのがわかる最高の釜湯。
食後はサービスでカステラを出してくれた(^o^)。

いいなあー
和むなあー
今日は久方ぶりのこの店に、楽しみにやって来たのだが
実は私が行った時は運悪く?
スタッフの一人に爆発的にご機嫌の悪い人がいて??
食べたいものが食べられなかったりと、
まあ〜それはそれはかなり稀有な体験をしてしまった。
しかし敢えてその詳細は省き、私は私のこの店への愛を中心に書いた。
その窓辺には、本当に美しい蕎麦があり
私はその蕎麦と美しい時間を過ごした。
心に残る素晴らしく美味しい蕎麦を食べた、
午後の思い出。
やはりここの蕎麦は、茨城の数ある超名店の蕎麦の中でも
私を魅了してやまない蕎麦なのだ。
次回も楽しみに、また来ますねー!