2018年06月20日
浅草「なお太」
観音裏、という響き自体がすでにいい。
歴史とか伝統とかというものを、これっぽっちも飾らずに
気楽にひょいとひっかけているような趣がある。
浅草寺の真裏のそのエリアは実際に行ってみると
一見普通の住宅街にも見えるが
そこにぽつんぽつんと知る人ぞ知る名店が点在しているのだ。
浅草のどの辺りを真ん中とするかは時代によって判断が分かれるかと思うが
賑やかなあたりからそぞろ歩いて行くに観音裏はちょうどいい。
浅草でちょいと一杯やりながら一枚たぐりたい、
でも観光客でいっぱいなのも、粋過ぎちゃって気が張るような店も困る。
とことん気楽にタラララいい気分〜♪になりたい時にぴったりの、
観音裏のおいしいお蕎麦屋さん。
夏至も近い本日はまだ通りも明るい。
「なお太」と堂々と、わざとのようにヘタくそに(失礼)書かれた提灯。
もうこのあたりから力が抜けてのほほーんと気楽〜〜な気持ちになる。
初っ端から失礼を申しましたが、だってこれはきっと
「気楽にくつろいでってよ!」っていう演出なんです。
近づいた黒板の文字は綺麗なんですから♪
「なーおーた!」ウハハハなんか笑っちゃうようななごむロゴだな〜
店先のボードにはかなり詳しくメニューが掲げられていて早くも釘付け。
おつまみも楽しいんですが
お蕎麦の種ものの美味しそうさが大変なことになってます〜〜
きゃ〜〜〜
私の運命はいつだってせいろ様に決まっているのに
こんなに美味しそうな種ものがいろいろあっちゃあ
お蕎麦何枚も食べなくちゃいけないかもしれなくて
命がいくつあっても足りないじゃないですかー!!(お腹の間違いでは)
店内はカウンターと、奥にテーブル席がいくつか。
壁にかかったテレビの音がまず耳に入り、
カウンター席ではすでに男性二人組と、常連さんらしいお一方がくつろいでいる。
二人組の方の会話は終始釣りの話題であり、つまみはタコウインナーともやし炒めだ。
かー!たまりません。観音裏でこの雰囲気。もうこの時点で完璧だ!
もう飲む気満々の私(酒量だけは小鳥の私ですがやる気は鷹並み(≧∇≦))、
メニューを見るといの一番に見慣れぬお酒が。
「浅草の粋」!?
ベタすぎて笑っちゃうようなネーミングだが
すでに滅法いい気分なのでノリノリでこれに決まり☆
(タコウインナーちょこっと写ってるよ!(≧∇≦))
このお酒がもんのすごーーーく美味しい。てか私好み!
普段私が好きな「入り口すーっとすっきりそのあと中で膨らむような」というのとは違うのだが
最初から最後までストレートに、澄んだ旨味がキューッと駆け抜ける感じ。
私のようなお酒小学生でも飲めるくらい軽やかなのだが味わいはしっかりしていて、
ゴダゴダ変化せずキューッと短く通り過ぎる。
「浅草の粋」たあこういうもんだと言われれば嬉しくなるような、
そんな美味しさだ。
ラベルを見ると、あら名前が違う?
ご本名のほうがずっと粋じゃあないですか〜
日本酒に早朝のイメージの名前というのが斬新で
「始まる感じ」がかっこいー!
「もつ煮」
自称煮肉愛好会会長の私、
このメニューを見て頼まなかったことがかつてあったでしょうか。
「なお太」のはさっぱりめでぱくぱくイケちゃいます〜
そして煮肉愛好会会長はいつだって愛に生き、
暴走をためらいません。
「肉豆腐」
おっほー!お風呂かってくらい大きな器でやってきました。
遠近感もあるとはいえ「もつ煮」の器と比べてこの違い。
この「肉豆腐」がやたらめったらおいしい。
見た目は絹豆腐がつるんと綺麗で野菜もいっぱい入ってて上品ヘルシー系なんですが
美味しさはガッツリ♡ 味付けが素晴らしいです〜〜
こんなに美味しくちゃお酒がすすんで迷惑です〜〜
おいひー!
「そばさし」
これまた見ると頼んじゃう大好きメニュー。
切り方が違うだけで要はお蕎麦と同じでしょ?と私も思うのだが
これがまた味の感じ方が全然違ったりするから面白い。
薄手でなめらかとぅるんとした舌触り。
香りはほとんど感じなかったが噛み締めるとじんわり滋味深い蕎麦の味が
感じられてきて嬉しい。
お塩とかお醤油とかワサビとかいっぱいつけてくれたのに
一度も使わずすみません・・(^^;)
ここでいよいよ、入店前から困ったな〜〜と懸念していた
大問題に向き合います。
お蕎麦をどうするか。
どうするかって拉致したり求婚したりするのではありません。
どのお蕎麦を注文するかってことです(≧∇≦)
ううう・・・・・
この「下町系絶対美味しい種もの」オンパレードに加え、
なんですかソレ絶対食べたい!とソソラレまくる創作種もの。
も〜店主さんセンスあり過ぎ〜〜
こんなことされたらほんとに困るんですけど〜〜
普段はブレずに「もりそば」一筋の私であるが
何せ蕎麦を食べ過ぎて25年(2歳から食べています♡うそ)、
お蕎麦屋さんにおいてどうしたら自分が幸せになれるかという勘だけは
磨かれまくっております。
この「なお太」では絶対に種ものを頼むべし!
しかしやっぱりお蕎麦はお蕎麦だけでも味わいたいので
「〇〇せいろ」みたいな、つけ汁で味わえる種物をひとつは頼んで、
あとは自分のおなかの大きさが許す限り欲望に生きるべし!(いくつ食べる気(^^;))
「トマト鴨せいろ」
鴨汁にトマト!
興味と欲望のままに選んでみましたが
そんなことより私の心を鷲掴み目を釘付けにするのは
いつだってこのお方・・・
極細のやや平打ち。
穀物感のある肌が美味しそう!
細さゆえかみっちり盛られた感じで
手繰り上げてもするするとは解けず束感がある。
かなり冷たくしめられているせいもあり香りはほぼしない・・と言うより
店内は今まさに、美味しそうな居酒屋系つまみがガンガン炒められていて
ホッピー通り級にいろんなおいしい香りのお祭り状態。
しかしそこは私も負けられない戦いである。
全神経を嗅覚のみに集中させ香りを寄せると・・・
おおおお、奥からかすかに、意外にもストイックな
香ばしい蕎麦の香りが伝わってきた。
口に含むと極細の輪郭線がクッキリハッキリと感じられ
質感はみっちり密で歯ざわりも固め。
極細なのに噛み締めても最後までは噛み切らせないが
噛み締めれば味わいが感じられるので幸せに噛み締める。
そしてお楽しみのトマト鴨汁。
うっひょーーーーーー!!
ナニコレ最高すぎます、美味し過ぎます!!
高級鴨肉使ってるとかそういうのではなく、ズバリ味付けのセンスが素晴らしい。
がっつり庶民系、しかもバランスもいい最高に美味しい鴨汁に
トマトの酸味が素晴らしい!
やばいですぅ〜〜〜〜!!
こんなに美味しくちゃあ、お蕎麦が一瞬でなくなります〜〜
というわけでうはははは、お蕎麦お代わり♡
(念のため、本日2名で来ています)
トマトが美味しくてトマトの部分先に食べちゃったけど
トマトなくてもおいしい〜〜
この「トマト鴨せいろ」は「なお太」で一番お高い1500円だが
それだって全然安い!おいし過ぎ!
「なお太」に来たら是非おすすめです(^^)
「冷し肉南」
なんたってここは観音裏、あのヒヤニク様(角萬♡)からも近いエリアなので
頼まないわけにはいきません。っていうか大好物なもので(≧∇≦)
比べると「なお太」のヒヤニクははんなり繊細系。
蕎麦も極細ならお肉も薄切り、水菜がサラダ感覚で
同じヒヤニクでもこうも印象が違うかという感じ。
これまたいい味つけで素晴らしく美味しい!!
でも肉豆腐のがっつりした美味しさにノックアウトされた私としては
あたたかい肉南も食べてみたかったな〜、
次回は「肉南」か「肉せいろ」のどっちかにしよう♡
「トマト鴨せいろ」は絶対ハズせないのでまた食べよう♡
「オリジナルのりそば」
「炒めねぎのりそば」
っていうのも気になるー(≧∇≦)!
2018年06月13日
神田「神田まつや」
日本が誇る、美しき蕎麦の景色。
ビルとビルに挟まれて尚昔のままの姿で佇むそ建物は
私にとってはこれが国宝でなくて何なのかというほど美しい。愛おしい。
店先の樹木やつくばいは清々しく整えられ、初夏の陽に輝いている。
紺地の暖簾に白く小さく染め抜かれた「手打」の文字。
私はシビれ、しばし恍惚と見入る。
なんたって「好きな言葉は手打ち蕎麦」と本気で言い切る私、
「蕎麦」という漢字も「手打」という響きも、
見入るほどに恋人の名のような気がしてくる。
人気者は近所の人にも観光客にも愛されてしまうので
店内はいつも大賑わい。
(人が多い時は天井に向けてコッソリ(^^;;))
店内の印象は昔と変わらず
人々がぎゅうぎゅうひしめく古き良き蕎麦屋の風情。
実は座席のレイアウトは昔とは変わったのだが
先日とある場所で蕎麦関係者&蕎麦好きの会話に加わる機会があり
この店の昔のレイアウトを覚えていたのが
その時たまたま私と、60代?の某名店店主だけだったので
私は自分が一体何歳なのか不安になりました・・(^^;;
まーなんというか、メニューを見ているだけでも心が和みますね!!
隅から隅まで、これぞという直球スタンダードを
余すところなくおさえてくれている感じ♡
おつまみ系もちょいといきたくなる粋なものがバシッと揃って
かっこいいったらありゃしない。
かーっ たまんないねえ(≧∇≦)
店主じゃなくて亭主、なところも
まつやさんに言われるとなんだかグッときてしまう。
いやーん、すすめられたらそのまま素直に倒れます〜
昼間に「まつや」に来たからには当然行くでしょ!(え じゃあ夜は?)
そしてたいして飲めない私でもお酒が進みまくってしまう
超デンジャラスなちっさいカタマリがこちらにはございまして・・・
「うに」
こ〜れ〜が〜ね〜〜〜
地上の旨みを全て凝縮したようなこの犯罪的魔力。
ひと舐めで目ぇかっぴらく!
ひと舐め後3秒以内にお酒が口に入ってこないとぜったいイヤ!!
ってなわけで
うに・・お酒!!
あ”〜〜〜〜〜〜
うに・・お酒!!
あ”あ”〜〜〜〜〜〜
「酒量だけは小鳥」な私は10分で泥酔できてしまうわけなのです。
すみませ〜〜んお水ください〜〜〜(≧∇≦)
これも忘れてはなりません。
「青大豆 冷し豆腐」
初夏の風が心を吹き抜けるかのようなさわやかな薄青緑。
そこに茗荷、白葱、紫蘇、生姜の香り高い薬味4種揃い踏み!
薬味に大喜びした割にお豆腐自体が美味しすぎてぜんぜん使えません。
甘みに走ったイマドキなめらか豆腐と違い
甘みさわやか、旨みは濃厚!
すっきりと、でもじんわり深く舌に溶けていく大豆の旨みを追いかける喜び・・
このお豆腐は本当に美味しい!!
「焼鳥」
ここで修業したお蕎麦屋さんにおいて、まつや風の焼鳥、というメニューが人気を博すほど
一つの地位を確立している「神田まつや」の「焼鳥」。
むっちりと弾力があり柔らかいのに食べ応えがある。
素材も焼き加減も最高で、さすがとしか言いようがない美味しさ。
だいすきー!!
久々に「神田まつや」でゆっくりとした時間を過ごし
時間の流れとか思い出とかいうものが景色の中にひょっこり顔を出す。
学生時代はよくここに一人で来て「もり」だけ食べて帰ったものだ。
相席になった、とある会社グループの女性部長さんが
「この子のぶんはアタシが払う!!」
となぜか「もり」をご馳走してくれたことも。
(その会社のものを見かけると今でも贔屓に買うようにしています(^^))
確かに20歳くらいの女の子が夜一人で「神田まつや」で「もり」をたぐっていたら
目につくのかもしれないがアタシが払うはすごすぎる。
そのくらい席が近くて心も近くなる、お江戸の蕎麦屋「神田まつや」なのだ。
柱時計や「生蕎麦」と彫られた立派なこね鉢を眺めながら
私は今心地よい「まつや」の喧騒の中にいる。
どーん。
うふ。
やっぱり食べたい「そばがき」。
「神田まつや」の「そばがき」は大きな塗りの木桶に入ったザ・老舗スタイル。
「花巻そば」などと同じく
蓋を開けた時のモワ〜という湯気と香りを狙った
江戸のニクイ演出なわけですが・・・・
モワ〜〜〜〜♡
ああああああ
その日初めて体に入る蕎麦成分って液体だろうが気体だろうが
なんでこんなに感動的に私の全身の細胞を駆け巡るんでしょうね〜
本気で麻薬としか思えません!!
老舗らしい、木の葉型がお湯に沈んだタイプのそばがき。
一口食べて、ウワーーー
これは感激!なんという美味しさ!!
青く澄んださわやかさ、ふっくらとした香ばしさ、まろやかな滋味深さ。
蕎麦の王道の美味しさと香りが最高レベルで、
しかもバランス良く私の脳を染めてくる。
もっちりとした質感もネチ過ぎずトロ過ぎず、粋さを失わない絶妙のバランス。
一口ごとに蕎麦の旨みが濃厚に舌に伝わって来て、
だんだんそれが重なってくると「何か味付けしましたか!?」というくらい
出汁のようなはっきりした旨みにすら感じてくる。
はあーー・・・・
奇を衒わぬ「王道の最高形」に射抜かれ
もう何が何だか へにゃ はにゃ・・・・
「もり」
日本が誇るこの絶景。
私ははっと心を奪われる。
その曲線は優美に軽やかに私を誘い、
心を捕らえて離さない。
美しい・・・
穀物を水でこねただけのものが木の器に盛られただけで
なぜここまでの世界に達することができるのだろう。
大げさと言う勿れ、私は茶の湯の美意識に勝るとも劣らぬ美と本気で思っている。
この小さな30cm四方の中に、非の打ち所なき完全な世界がある。
これだけうっとり賛美してきたが
「神田まつや」の蕎麦はぼんやり食べると
ぼんやりしたまま食べ終わってしまいそうに「普通っぽい」。
そこが畏敬せずにおられぬ「まつや」の素晴らしいところと私は思っていて、
「ここ」と狙った最高の「普通の美味しさ」なのだ。
「神田まつや」と比べると某有名老舗は私にとっては個性派だし
結構行くたびに印象が違ったりする(そういうのも大好きだけど♡)。
しかし「神田まつや」の蕎麦はいつ来ても
狙い定めたようにこの感じ。
その一分の隙もない姿には「中庸」の凄みすら感じる。
格別に香り高いわけでもなく、粗挽きの舌触りが楽しめるわけでもない。
ほんわかプンと短く香る蕎麦のかぐわしさとにくいほど完璧な二八ならではのコシ、
すっきりと誠実な味わいのバランスが素晴らしい。参りました。あなた最強です。
ああ〜「まつや」はやっぱりいいなあ〜〜
ちなみに学生時代は手が出なかった「天もり」なんてぇものも
大人になった私は拝めちゃうもんね(≧∇≦)
「天もり」
「神田まつや」の「天もり」はちょっと個性的な二段重ねスタイル。
お蕎麦は下から出て来ます(^o^)
この天ぷらがまた異常なまでの美味しさでありまして!!
この衣のサクサクシャクシャクと細かい軽さ、味わい。
なんちゅう上手な揚げ方・・・
も〜〜〜〜 美味しすぎて困るんですけど〜〜
蕎麦も天ぷらも止まらないんですけど〜〜
(酒量以外は小鳥じゃないもんで(^^;;)
初めてこの店に来たのはいつだったのか、
私はもう覚えていない。
喧騒の中、賑やかな店内を見るともなしに見ていると
たくさんの思い出がその景色の中にひょっこり顔を出す。
そして私にとって一番新しい記憶である今日のこの店で過ごした時間は
何十年後かに私がここ来た時、
また景色の中に愛しく顔を出すのだろう。