面白い店だろうなと思ってはいたが本当に面白い店だった!
はるばる電車に乗ってやってまいりました牛久駅、
そこからさらに歩くこと1kmあまり。
しかしこのあっという間さはなんでしょう。
私にとって会いたいお蕎麦に会うまでの時間は喜びでいっぱい、
距離感などは無に等しい。
庭木も立派な、大きな店構え。

この中にどんな蕎麦世界があるのか・・・
うう〜〜ワクワクぅぅぅ〜〜〜(≧∇≦)
アプローチに一歩入ると早速なんとなく不思議さが漂う。

玄関はまだ見えないが奥に橋のような?ものが見える。
その手前の庭には季節のお花が植えられていたり
タヌキなどの置物があったり。

植木屋さんが整えたキメキメの庭ではなく
手作りの趣の可愛らしい庭だ。
著莪。

橋のように見えたもの。

この先に入り口があるらしいのだが・・・
えっ?

これ??
勝手口か、使ってない扉にすら見えるんですが
ここを開けてもいいんですか?
さすがは「竹やぶ」出身の店主の店である。
玄関を入るまでに一度は「注文の多い料理店」がチラと脳裏をよぎるこの感じ!(≧∇≦)
おっかなびっくり古い木の引き戸を開けると
これまた予測不能の摩訶不思議空間が現れた。

幅のある大きなサッシ扉。
赤絨毯にペルシャ風玄関マット。
入り口を入ったところは
待合スペースとなっているらしい。
お蕎麦屋さんとしてどこにもない、なんとユニークな玄関!
客席スペースも独特の雰囲気。

畳に重厚なテーブルセット。
椅子はこれまた赤いベルベットが張られたもの。
つい最近完成したという玄関脇のカウンター席も赤絨毯だ。
うーん独特!

ところが奥を覗くといきなりひっそりとした古民家の趣である。

わ〜どんなお部屋があるのかな?
完全な洋間のお部屋もあった。
素敵な個室!

案内されたのはさらに奥、
アンティークでこれまたちょっと不思議なムードのお部屋。

畳に黒革張りのソファ。
押入れだったらしい部分には本棚やライトが設えられ
よーく眺めるとどこをとっても当たり前でないのが面白い。
簾のかかった窓の外からは
東京ではまだ聞かない虫の歌声が涼やかに聞こえてくる。

素敵なゆうがた。
夜の「季より」はコースのみ。
お酒メニューは壁に張り出されている。

今日は夏のように暑いので、
まずはハートランドでかんぱーい!

いよいよコースのはじまり、楽しみ〜
と、のんびり構えていたら
これまたびっくりなトップバッターがやってきてしまいました。

なんと「そばがき」でスタートとは!!
まず最初にお蕎麦さんと会えちゃうなんて
ああ〜〜なんだか嬉しいやらもったいないやら・・(≧∇≦)
わあーい!

うわあああ
なんという・・・
もはーーっとふんだんに香る、たまらないかぐわしさ。
これ以上ないと思えるほど青くフレッシュで美しい最高の香りが
私の全身を駆けめぐり脳を射抜く。
食感がまた素晴らしく、そっと唇に触れると
触れたか触れていないか一瞬わからないほどの柔らかさ軽さで
微粉のとぅるんと軽くエアリーな恍惚宇宙にうっとりと引きずり込まれる。
うう・・しょっぱなからこんなに素敵な方に会ってしまい
なんの心構えもできていなかったはいきなり耽溺泥酔へなへなである。
最初の一皿でここまで私を溶かしてしまうとはなんというお店・・・
これはもしやというか絶対、常陸秋そばなのでは??と思ったらやはり。
真壁の常陸秋そば、素晴らしいですね〜〜!
そして一皿目でこれだけへなへなに溶かされてしまったところに
容赦無くこんなものすごいものがやってきてしまいます。
もう私は無抵抗です。
だってだって、こんなのって・・・・

嬉しすぎてどうしていいかわかりませんっっっ!!!
どこか山の上に駆け上がってヤッホォォー!!と絶叫したいくらいのこの美味しそうさ。
ひとつひとつを見入るほど
あまりの美味しそうさに顔のニヤニヤが止まらない。
こんな素敵な前菜見たら誰だって嬉しくてそうなりますよね!!??
焼き芋冷製スープ
竹富島のもずく酢の物
蕨のおひたし
菊芋はりはり漬け
切り干し白和え
黒千石大豆
スナップえんどう
新玉ねぎピクルス
なめこ
こごみ胡麻和え
筍煮
丸大豆のたまり醤油おひたし
菜の花おひたし
ミニトマト生姜マリネ
お〜い〜し〜い〜〜〜〜〜!
どれもこれも、研ぎ澄まされたシンプルな調理法で素材の味わいが生かされ
しみじみと体に染み渡るように美味しい。
素材の味が一番好きな私がまさに大好きな世界!
嬉しさ余って違う角度からもう一枚(≧∇≦)

竹富島のもずくの食感、味わいの素晴らしいこと!
菊芋の食感はまるで生姜のようにたくましく噛みしめるほどに美味しい。
切り干し大根の白和えは私もよく作るのだが
さすがはプロの味、クリーミーで贅沢な美味しさ。
何と言っても驚かされたのは真ん中の「焼き芋冷製スープ」。
お菓子のように甘くカスタードクリームのような味がするので
よく考えたらバニラが効いていた。
ところが店主に尋ねてみるとバニラもクリームも一切使っていないという。
材料は紅天使という薩摩芋と、牛乳と藻塩と胡椒だけ。
え〜〜〜!?騙したつもりはないでしょうがすっかり騙されました。
この香り高さ、贅沢な厚みがそんなシンプルな食材から生まれたとは信じがたい。
それだけ食材も腕も素晴らしいということだろう。

壁には「しぼりたて生原酒季節限定」としか書かれていないが
訊けばもちろん今出しているお酒の名前も教えてくれる。
で、聞いたんですが、聞いたんですが・・・
前菜の興奮がすごすぎて忘れちゃいました! (* ̄∇ ̄*)
私にはちょっとオトナながつんと深い味わいのお酒。
「浅利と蕎麦の実のおじや」

蕎麦は蕎麦粉にせず実のまま煮たり炊いたりすると
香りが感じられず私にとっては蕎麦度が低い食べ物になるのだが
このぽこぽことした形の可愛さ、素朴な風味はやはり愛しい。

磯の香りがふわーっと香り、塩気は浅利だけというナチュラルおいしいおじや。
蓋つきの雅な器がやってきた。

なんだろう??
「車海老の出汁の茶碗蒸し」

えーっ
車海老さんはどこにもいません。
すくってもすくってもどこもにいません。
なのにこの香り高さと旨味はニク過ぎる。
もう私ごと車海老に抱きしめられているかのような(怖い)
濃厚な旨味と香りの海!!!
ふるふる〜〜とやわらかくあたたかく、
これは素晴らしくおいしい〜〜〜
「千葉のジャージー牛の時雨煮」

見た瞬間もうほとんど頭にきて?ゲラゲラ笑いながら店主に言いました。
「ちょっとぉーーー!!」
こんなの美味しそうすぎて反則すぎます!
千葉のジャージー牛ってのもすごそうだし、
そこに事もあろうに温泉卵をつけてくるとは。
そんなの美味しいに決まってるじゃないですか・・・
えーんえーん

ウッ
やっぱりおいしい・・・おいしすぎる・・・
これ、この10倍くらい食べたい!!
ほんの一瞬でもこの私にこの後の蕎麦のことを忘れさせそうになる温玉威力、すごすぎる。
「自家製おぼろ豆腐」

一見普通なおぼろ豆腐。
でもこれまた当たり前でないのが、「季より」。

硬さを感じるほどずっしりネトーーーッ、超濃厚な質感。
見た目からは想像できなかったが
この感じはまるきりクリームチーズだ。
沖縄のにがり使用のせいか味わいも独特で、
出汁が入っているんじゃないかと思うほど味が濃い。
「沖縄の車海老の天抜き」

個室と厨房が離れているせいか
走り込むように店主が運んできてくれた天抜き。
一目見て、その見事な衣に驚き呆れる。
まだ食べてませんがこの天抜きは美味しすぎます!!
この店主すごすぎ!
ところが私の興奮以上に店主が熱くなっていて、添えられた汁を今すぐにかけてくださいという。
なるほど、慌てて運んで来てくれた訳がわかった。
でもこれだけ見事な衣はまずはそのままサクッとパリッと食べたいな・・・
と惜しいような気持ちも拭えなかったが
もともとこれは「天ぷら」ではなく「天抜き」である。
作った人の熱い思いと意図はそのままいただきましょうと
素直にハイッと返事をしてエイヤと汁をかけました。
ジュッワ〜〜〜!

もう、言葉はございません。
美味しいにもほどがあります。
これ以上の天抜きがこの世にあるとは思えません。
沖縄の車海老の見事な大きさ、プリプリの食感、香り高さ。
それを包む衣は見た目の通りの素晴らしい美味しさで、
もうもうもう、お蕎麦の前にこんなグデグデにされては、私・・・
お蕎麦に会う時は心澄ませて、捧げるように会いたいのに。
き、きちゃった!
すごいっっ
「手挽き石臼もり」

つい今まで色とりどりの美しい前菜やら天抜きやらで賑やかだった盆の中が
一瞬にして澄んで静まり返る。
それは、一年のうちで私が最もテレビに注目する一瞬、
「紅白歌合戦」から「ゆく年くる年」に切り替わる瞬間にも似ている。
私の心を奪い離さないこの圧倒的な眺め。

まず目を奪う無数の粗挽きの粒達。
超がつくほど繊細な極細でありながらこれだけの粒感、
その震える輪郭線がたまらなすぎる。
この粒ひとつぶひとつぶが手で挽かれたと思うと
全ての粒を目にしたいと思うほど愛しい。
ふーっと漂うフレッシュな香ばしさ。
口に含むとしっとりザラザラさらさらほろほろぷるぷる〜
極細平打ちの食感はどこか寒天にも似た独立感があって
はかないまでの繊細さながらほろほろくっきり。
そっと噛みしめると優しいコシが迎えてくれるのがまた素晴らしい。
味わいは白く上品で甘さはなくすっきりと澄んでいる。
おおおおおいしい・・・・すばらしすぎる!!
北海道キタワセなど4種類をブレンドした蕎麦。
「水腰蕎麦」

わわ、今度はそそり立つような小山盛り!
水腰蕎麦は高さを出して盛ることが多いけど
この球体に近い盛りもいいなあ〜
ちなみに「水腰蕎麦」とは「仁べえ」の石井さんが生み出した
加水率がめちゃくちゃ多いお蕎麦のことである。
なぜこの「季より」で水腰蕎麦?と思ったら
「食べて美味しかったので絶対僕も打ちたくなって、教えてもらったんです!」
と目を輝かせる店主。
美味しいものに対してただひたむきにまっすぐな姿勢。
それこそがこの素晴らしき「季より」ワールドを作っているのが
よくわかります〜〜(≧∇≦)/

シャープに香るさわやかな野生の香り。
こちらも驚くほどの極細だが、さすがは水腰蕎麦だけあって
しなやかでなめらか、見事なつながりだ。
味わいは・・と恍惚と見つめようとしたところに事件?発生。
なんだかジーーッと視線が・・・
アッ汁つけて食べてないの、店主に見つかっちゃった!(* ̄∇ ̄*)
「汁つけて食べてくださいよ〜」
は、ハイ!そうですよね、そうですよね!
私はどこでもお行儀悪くお蕎麦には汁を全くつけず最後まで食べてしまうのだが
それはお寿司屋さんに行ってネタだけ剥がして食べているようなもの。
良い子は真似してはいけません、私も見つかったからには汁つけて食べます!
(でも内心は、ええ〜〜つけるのぉ〜〜〜そのまま食べたいな〜〜〜と思いつつ)
汁をつけてひとくち。
( °o°)
( °o°)
( °o°)
ナンデスカこの汁のおいしさはっっ!?!?
ありえません。
こんな美味しい汁にはひっさびさに出会いました。
私は蕎麦を溺愛するあまり蕎麦と私の間に入るものは水すら空気すら敵視するようなところがあり
先述の通りいつも汁はつけずに蕎麦だけをそのまま食べ、
たまには汁つけてみよっかな!とつけて食べるとやはり
蕎麦と私の愛の世界を邪魔されたような気持ちだけが残って終わることがほとんどである。
しかしここの汁はなんでしょう?
澄んだ出汁とこっくりとストレートな旨み、
それが素直にまろやかにすとんとおさまっていて
どこがどう他と違うのかわからないのだが
私にとっては蕎麦と私の世界の邪魔をしないどころか
より一層の厚みと深みを持った別の世界に連れて行ってくれるような
もう何言ってんだか全然わからないでしょうが
とにかく素晴らしくおいしかったのです!!
「醤油が美味しいんですよ〜」
と店主は楽しそうに笑う。
聞けば福岡のおいしい醤油に出会ったのが運命だったらしい。
この醤油、確かにものすごーーーく美味しくて私にとっても運命の出会いだった。
腕も素晴らしいのだろうが素材を見極める力も本当に大切だし
素材の味わい好きの私としては素材万歳!である。
そしてまたここで事件発生。
今度は嬉し泣きの事件です。
「ハッピーバースデ〜〜♪」

えええーーーー!
当日はお誕生日ではなかったため全く、これっぽっちも予想して居なかったので
もうもうもう、涙出そうに嬉しいサプライズ
ありがとうございます〜〜(T_T)
「季より」特製、ジェラート盛り合わせ♪
(はちみつのジェラートが特に店主のオススメです〜)
嬉しさ余って飾りのもみじを
黒革ソファに「バースデーツリー」として植樹する私。

(≧∇≦)/ (≧∇≦)/ (≧∇≦)/
食後は、お抹茶・・ではなく
抹茶碗で飲むコーヒーというのがまた「季より」らしい遊び心。

入り口に入るまでに「注文の多い料理店」がよぎった数時間前。
そこからめくるめく楽しい世界に連れて行かれて
その全てが私のお腹に入っちゃったと思うと幸せ過ぎて可笑しい。
東京からはちょっと距離があるが
こんな時間に出会えるのなら・・・・
私にとって会いたいお蕎麦に会うまでの時間は喜びでいっぱい、
距離感などは無に等しいのだ。