竹林を吹き抜ける春の風。
その葉擦れの音は私の時計を数十年分巻き戻し
サーー、ザーーーーー、と私を埋め尽くしていく。
私が生まれた家は竹林に囲まれていたので
あの家に帰ったような気がするのだ。
知らぬ人はここが蕎麦屋だと言われてもピンとこないだろう。
まして知る人ぞ知る古くからの名店だとは。
人の気配を感じない古い家。
竹林は絶え間なく風の音を奏でている。
近づいてもなお「今日やってるのかな?」と不安になるほどひっそりとした正午。
ガラガラと扉を開ける。
奥まで長く土間になった昔のままの田舎の家。
「こんにちはぁ〜」
静寂の向こうから「はーい」と声がして
奥さんが案内してくれる。
先代から息子さんに引き継がれて久しいが
この家にはずっと同じ色の時間が流れている。
ドロボー、じゃなかった唐草模様の座布団がいい味出してますね〜(^^)
もちろんお目当ては「もりそば」と「十割そば」だが
ここは長野らしく鳥料理が名物だ。
今日は大好きなお仲間と三人で張り切ってやって来たので
「丸泉を丸ごと」堪能すべく端から端までみんないっちゃおうぜということに!
うわーい! (≧∇≦)/
注文を取りに来た真面目そうな働き者そうな奥さんも
やる気満々ノリノリの三人組に思わずニコニコ♪
長野ですからとにもかくにもまずはお漬物。
「きのこのおろし和え」
うわ〜〜
もともときのこ好きの私ではありますがこれは大変においしい。
「こむそう」というきのこで「食感がシャクシャクしますよ」と奥さんが教えてくれたが
シャクシャクだけでは言い切れないなんとも豊かな森の噛みごこち。
そして何よりきのこそのものの味が濃い!
量がすごく多いわけではないのだが食感と味わいの豊かさで
ものすごくたっぷり楽しめてしまった一皿。
これが500円なんてすばらしすぎるー!
「やきとり」
ウッ これは・・・
見るからに私好みな渋い見た目、おいしそーー!!
ガツンと野性味のある味わい、ギッシリとした歯ごたえ。
私は何でもしっかり噛み応えがあって素材そのものみたいなものが好きなのだが
これはまさに私の理想の焼き鳥だ。
放し飼いの鳥だというが素材の良さだけではないだろう。
香ばしい焼き加減も最高!
「つくね(煮込み)」
あらーーーっ
これまたギッチリかためでしっかりした食感。
私はつくねというものが甘くて苦手なことが多いのだが
これが全く余ったるくなく鳥の旨みが激おいしい!!
煮汁がまたおいしい なんだこりゃ!!なんなんですか!
「モツの味噌いため」
甘辛の味噌味、フワフワ柔らかい食感。
これは甘さも味も濃いからキャベツがいいですね〜
「十割そば」
おお〜〜
黒っぽい肌、やや平打ちの極細切り。
個性的かつ独特の迫力を感じる姿にワクワク!
ムワーーー!
濃厚に漂う独特の野生の香り。
表現が難しいがネパールのディド(そばがき)にも似たような
蕎麦畑をそのまま蕎麦にしたような荒々しい野生の香りだ。
質感がまた大変個性的で、表面にだけ膜があるように不思議な硬さがある。
ネッチリ密でコシはなく、しかし極細なのでその食感もまた楽しめ
極細の隙間からいくらでも香りが溢れ出てくる感じ。
面白い〜〜おいしい〜〜〜!
こんなお蕎麦出会ったことない。これぞ旅蕎麦の楽しみ♡
「もりそば」
十割同様極細切り。
こちらの方がすこし肌が明るく水分でつやつやと輝いている。
以前は外一だったが今は外二らしい。
おお〜
香りは先ほどの「十割そば」と同じ個性的な野生でそれがやや優しくなった感じ。
わかりやすいですね〜(^^)
こちらも十割同様独特の硬めの肌。
質感そのものは硬さはないのだが十割よりさらに膜のような肌質のせいで
舌触りはパリパリしていると言ってもいい。
これまた出会ったことのない不思議な美味しさの蕎麦。
楽しいなあーーー!来てよかったなあ〜〜
蕎麦も個性的だが汁も個性的だ。
ご覧のように透き通るほど薄いのだが
これが摩訶不思議な美味しさ。
なんですかこのすっきり澄み渡るべらぼうな旨みは!!
甘さは非常に控えめだが気取った感じがない、シャープすぎない、物足りなくない。
なんと個性的で見事な蕎麦汁・・・
感激したので帰り際店主に聞くと
「煮干し四割と鰹と昆布の出汁」
とのことだった。
煮干しをいれたほうが薬味を入れた時に味が変わらない、
かといって煮干しだけだととっつきにくい味になるのでブレンドしている、と。
へぇー、そうなのですか!
その出汁もすごいがこの「シャープすぎない、物足りなくない」絶妙の感じは
醤油の美味しさもあるのでは?と感じさせられた。
(店は客席以外は暖房がないので大変寒いのだが店主が裸足であることにも驚いた。凄い!)
そしてまだまだびっくりは止まらない。
三人で行ったので
「雉の焼肉とつくねが入った温かい汁」の「きじそば」
も頼んでみたのだが・・
「きじそば」
これがまたのけぞるほどの美味しさ!
先程から繰り返し感激させられている汁の見事さはもちろん、
なによりこの「キジのつくね」を食べた瞬間あまりの美味しさに
「ン−−−−!!!」と口を閉じたまま叫びました。
おつまみで食べた鳥のつくねも激ウマと言っていい美味しさだったが
これはさらにその上を行っている。
小さくてギッチリミッチリ骨っぽい食感、旨味が濃いのがたまらない!
ちょっとちょっと、美味しすぎますって〜〜〜!!
あまりに美味しく楽しいひと時を過ごした私たちだったが
店は昼時だというのにひっそりと静かである。
お客さんが向こうの席にも来たが
ひとりなので座敷には私たちの声しかしない。
静かな春の気配に満ちた午後。
今は全国どこに行くのも便利だし、
東京に居ながらも全国各地の珍しいものが食べられる時代だが、
今日私がここで出会ったものは間違いなくここでしか出会えない味だった。
旅蕎麦の喜びをこんなにも感じたのは久しぶりだ。
距離も時間も、日常とはかけ離れた世界。
竹林の葉擦れの音が、また私の時計にいたずらをしている。
「あの家はどこにあったのだろう」
そう思いたくなるような、お伽話のような午後だった。
先程からつくねの煮汁などがやたらに美味しいわけもわかった気がした。
感激したので帰り際店主に聞くと
「煮干し四割と鰹と昆布の出汁」
とのことだった。
煮干しをいれたほうが薬味を入れた時に味が変わらない、
かといって煮干しだけだととっつきにくい味になるのでブレンドしている、と。
へぇー、そうなのですか!
その出汁もすごいがこの「シャープすぎない、物足りなくない」絶妙の感じは
醤油の美味しさもあるのでは?と感じさせられた。
(店は客席以外は暖房がないので大変寒いのだが店主が裸足であることにも驚いた。凄い!)
そしてまだまだびっくりは止まらない。
三人で行ったので
「雉の焼肉とつくねが入った温かい汁」の「きじそば」
も頼んでみたのだが・・
「きじそば」
これがまたのけぞるほどの美味しさ!
先程から繰り返し感激させられている汁の見事さはもちろん、
なによりこの「キジのつくね」を食べた瞬間あまりの美味しさに
「ン−−−−!!!」と口を閉じたまま叫びました。
おつまみで食べた鳥のつくねも激ウマと言っていい美味しさだったが
これはさらにその上を行っている。
小さくてギッチリミッチリ骨っぽい食感、旨味が濃いのがたまらない!
ちょっとちょっと、美味しすぎますって〜〜〜!!
あまりに美味しく楽しいひと時を過ごした私たちだったが
店は昼時だというのにひっそりと静かである。
お客さんが向こうの席にも来たが
ひとりなので座敷には私たちの声しかしない。
静かな春の気配に満ちた午後。
今は全国どこに行くのも便利だし、
東京に居ながらも全国各地の珍しいものが食べられる時代だが、
今日私がここで出会ったものは間違いなくここでしか出会えない味だった。
旅蕎麦の喜びをこんなにも感じたのは久しぶりだ。
距離も時間も、日常とはかけ離れた世界。
竹林の葉擦れの音が、また私の時計にいたずらをしている。
「あの家はどこにあったのだろう」
そう思いたくなるような、お伽話のような午後だった。