住宅街のミシュラン蕎麦屋さん。
そして私にとって「ミシュランの見方が変わったお蕎麦やさん」!
もともとミシュランというものについては殆ど何も知らない。
しかしたまに掲載された店のリストなどを見ると、
少なくともお蕎麦に関して言えば味云々よりまず
「高級志向のお蕎麦屋さん」「おしゃれなお蕎麦屋さん」
というイメージだった。
ところがこのお店は・・・

「稲田堤」駅から歩く、歩く、歩く。
もうこんなところに絶対に店は無いだろうと確信した時に店は現れる。
自宅の2階を改装したらしい簡素な構え。
1階は駐車場になっていてその脇の階段を上る。
店に入ると奥さんが迎えてくれて奥に通される。
店内は店らしくバッチリ改装してある感じではなく
住まいのイメージの名残を感じる作り。
やはり人の家に来たような感覚になり、お邪魔しまーすと言いたくなる。

住宅街の静かな夜。
飾り気のない店内だけに
「特選食材 青森県産 無添加 ちくわの天ぷら 500円」
という張り紙がほのぼのと眼に映る。
定番のお蕎麦メニューはシンプルだが・・

「今月のおすすめ」には美味しそうな楽しいメニューがいっぱい!

「一品」はどうにもこうにも
お酒を飲まないわけにはいかなさそうなものが厳選されている。
いいですねえ〜♪
というわけで「 いづみ橋」「ばくれん」などの中からこれを選んだ。
「楯ノ川 純米大吟醸(山形)」

まろやかフルーティー、ずっしりしたうまみもあるのに余韻はきれいで
あっらーこれは飲んじゃいますね〜 (≧∇≦)
(今夜は大好きなお友達と久々に会えてcatch up& girls' talk!
楽しい夜にぴったりなお酒〜♡)
「挽き立てそばがき」

うわっ
これは・・・・
見るからにものすごーーくおいしそうな超微粉の肌!
これはぜっっっっっったいにおいしい!!
しかし〜ちょっと問題は、だし汁に浸かっていること・・(>_<)
もちろんそれはそれでとってもおいしいだろうと思うのだが
すみません、お蕎麦と私の間に入ろうとするもの全てを敵視するよう
DNAに組み込まれている虫のような私なもので(^^;)
汁さんちょこっとどいてください〜♪と、
なるべく浸ってなさそうなところを選びまして・・・

・・・参りました。
この、スプーンで傷をつけるのも惜しいような超絶美肌。
口に含むと見た目通りの極上なめらか
もったりとぅる〜んとした肌が私に身を投げかけ、とにかくこの食感は最高すぎる!!
微粉系そばがきとしてひとつの頂点に達した素晴らしすぎる質感。
蕎麦の香りはだし汁の奥底にあるイメージでやはり感じづらいが
見つめるとかすかに落ち着いた穀物の香りが見えてくる。
「もつ煮」

もつ煮だーい好きの私(^^)
ここのもつ煮には本当においしい!
味噌仕立ての汁の中に豚もつがたっぷり。
ネギも三つ葉も香り高く全体にさっぱりとして大変においしいもつ煮。
「豚の角煮」

大きな角煮が2かけら。
こっくり濃いめでお酒のつまみに最高♡
脂も美味しく全部いただきました。
「せいろ」

褐色の笊の上にひろびろと盛られた豊かな眺め。

手繰り上げた香に思わず声が出る。いい香りー!
静謐な、石のようなイメージのストイックな香りを
二八らしいふっくらとした小麦の豊かな甘い香りが支えている。
口に含んだ食感にもハッとさせられる。
なめらかな肌はにゅるんとのびるような豊かなコシを持ち、
繊細端正な輪郭線が自在に口中をめぐる。
石のようなストイックな香りはだんだん白くまろやかな香りへと変化し
極上の更科蕎麦にも似たイメージとなってくる。
二八らしいほんのりとした甘みと味わいもあり実に美味しい二八そば。
「十割」

おお〜
十割は珍しい箕のような形の笊で。

なんとわかりやすい、こちらはまさに先程の二八の中の
「ストイックな石のようなイメージ」だけを集めて濃くしたようなかぐわしさ!
二八と比べるとしっかりとくっきり輪郭線を感じる舌触りでかみしめた質感もやや固め。
しかし柔らかなコシがあるため食べやすい。
味わいも甘みも淡いのでこちらのほうは二八よりさらに、うんとストイックなイメージだ。
「石づか」のお蕎麦は見た目以上に量があるので
2枚目となるとこの私ですらかなりお腹がいっぱいになってきた。
こんなにおいしいお蕎麦がこんなにたっぷりで、
しかもおかわりにすると「せいろ 320円」「十割 540円」という安さ!
ちょっとちょっと、いいんですか!?
お蕎麦を出す時だけは茹でたてをすぐに提供するためか
店主も出て来て奥さんと二人で運んで来てくれた。
店に入った時はこちらも人のお宅に来たようでやや緊張していたからかわからなかったが
店主も奥さんもすこぶる感じがいい。
取り立てて愛想を振りまくという感じではなく実に普通〜〜に、大変感じがいい。
こんなミシュラン店があったとは・・・
びっくり!
蕎麦汁は甘さは控えめでちょっと個性的な出汁。
しかし店主の狙い定めた「旨さ」の感じられる大変おいしい汁だった。
ちょっと更科そばのような?上新粉のような?白い趣の香りのそば湯にもよく合う。
奥さんに見送られて店を出ると、静かな川崎市の住宅街。
なんだか本当に「石塚さんち」にお邪魔していたような、
それとも全部夢だったような・・・
新鮮でちょっと不思議な、ほのぼのミシュラン体験の夜だった。