宮城県には数えるほどしか行ったことがない私。
そしてその全てが、ただこの店に行くためだけに行ったものであった。
知る人ぞ知る、東北が誇る名店。

工事中でも車庫でもありません(^o^;;)
名店には到底見えないかもしれないが
実はこの店、通常は昼15時くらいまでで売り切れ仕舞いで、夜は営業していない。
今回はいろいろと事情があり例外的に夜お邪魔したのでこんな写真になってしまった。

とは言え昼間来たってそんなに印象は変わらない。
店は秋保大滝に近い山中の道沿いにある。
お世辞にもきれいとは言えない大きな建物は
まあ古い食堂かドライブイン以上には見えない。
しかし私はこの店の店主ほど
「美味しいものを求める」
「美味しいものをお客さんに提供する」
ことだけ!!それのみ!!に集中している人物を未だかつて見たことがない。
雪深くなる冬場はお店を閉めて全国に美味しいものやいい食材を探し求める旅に出てしまうとか
(しかもかなり長期+車中泊の強行軍)
のし棒で代用できると言って小間板は持ってないとか(!)
いろいろと驚愕の逸話の多い店主。
美味しいものに関する知識の豊富さ、頭の回転の速さには会う度驚かされるし
食材に関して全く妥協というものをせずお金に糸目をつけないので
おせっかいながら見ていてハラハラしてしまう。
当然、製粉に関する知識と情熱も物凄いもので
店の裏にはミニ工場といっていい設備があり巨大な石臼を含む複数の石臼から
こんなものが個人店に?という専門的な製粉機械までが全て揃っている。
その容貌は眼光の鋭い熊のようで、
大真面目に熱く語る姿は私にはどんな小説より映画より面白い。
特にひょうひょうとしながらもやけに丁寧な言葉遣いは、
もしやウケ狙いなのだろうか?と思うほど可笑しくて
私はこの店にいるといつも笑いっぱなしだ。
そして天才の息子というのは得てしてそれを超えられず
かすんで見えてしまうことが多いものだが
この店は息子さんである二代目も素晴らしいときている。
当然、店の進化はますます止まらず蕎麦もなにかも国内最高レベルの美味しさなのだが
店舗そのものは40年前のまま。
そのまんま!
その外観と内容のギャップたるや凄いものなのだ。
この尋常ではない美味しそうさと
大真面目だけどどこかおもしろ可笑しい感じが
伝わるでしょうか・・




普段はメニュー本の中の写真は掲載を遠慮しているのだが
この店の説明は私の筆だけでは追いつかないので掲載させていただきました〜
そしてその実際の美味しさは、是非まずこちらを見てびっくりしていただきたい。
壁の張り紙に「超限定品」「プレミアム」と銘打ってある
「そばがき」

一目見た瞬間、ブッと吹いた。
なななんですかこのド緑のかたまりはぁーーーーーーっっ!!!!
そばがきとしてはありえない、よもぎ餅のように鮮やかな緑。
間違いなく、こんな色のそばがきを見るのは生まれて初めてだ。
しかもちょっとあぶってあるなんてニクすぎる。

見れば見るほど、びっくりで嬉しくて可笑しくて笑いが止まらない。
たまき庵さん・・・何をどうしたらこんなそばがきが作れるんですか・・・

うはははーい
この粒、この肌!
ありえないでしょう?
ニッカニカうっひゃうひゃしながら大興奮で一口。
・・・口が、きけなくなった。
「このそばがき生きてる!?」
人生で食べたそばがきの中でも飛び抜けてフレッシュで
飛び抜けてかぐわしい香りが最高濃度でブワァー!!!!と頭を吹き抜ける。
しかも舌に載せた瞬間、玉露だかグルタミン酸だかのような「生」のウマさが
グワァーー!!と舌じゅうに、口の中いっぱいにひろがった。
生命感あふれる若い青い蕎麦畑が
生きたままそのまま口の中に突っ込んできたような衝撃。
焼きは、いつもは軽く焦げ目がつくほどだが今日のはごく軽い焼き。
しかし表面が焼けて軽く乾いているため、
サクッほわっザラッ そして内側は極上エアリー!
やーん、なんでここでこういうこと(焼き)しちゃうかなあ〜!ニクすぎるでしょう〜
野生、フレッシュな生々しさ、刈り立ての蕎麦畑、宇宙を隅まで満たす香り・・・
頭がどんどん犯されてもどこかから
「高遠さん、さっきから瞳孔が開きっぱなしですよ」
という声が聞こえても私は今この宇宙から抜け出すことはできない。
だいすき だいすき
この愛するお方と、二人きり・・・・
「御前そば」

いわゆる「更科そば」であるが
「たまき庵」のはなんと自家製粉の更科。これは本当に珍しい。
まさに「そこまでやるかたまき庵!」という感じである。
福井・丸岡産自家製粉の御前そば。

ぎょえー
これまた何ですかこのものすごい「御前そば」は!!
一般的に「御前そば」「更科そば」というものにはほとんど香りはなく
のどごしを楽しむ蕎麦、なんて言われているのだが、
ごく限られた極上の「御前そば」のみが、白く上品な美しい香りを
天女の羽衣のようにふわーっと軽やかにまとっている。
ところがこの「たまき庵」の「御前そば」は、その美しい香りを
ふわーっとではなく「ブワァァーーー!!」と激しいまでに濃厚にまとっている!
全く、ブワァーッと濃厚に広がらせないと「味」とは認めないのかこの店は。
御前そばにしては透明感がないんだな、と思ったら
なんとこの時は打ちたてで、打ちたての時には透明感は出ないのだそう。
弾むようなツルスベの肌。
容易には噛み切らせない強靭なコシがあるが固いのとは全く違う。
美しい甘みがダイレクトに舌に広がる。
「ざるそば」

これまた、一目見てびっくり。
そばがきほどではないにせよ、この周囲から浮くほどの鮮やかな緑は物凄い。
こちらも福井丸岡、外二の蕎麦。
丸岡はもともと緑色の綺麗な蕎麦が多いがここまでの緑は
やはり色選(色彩選別機)のなせる技だ。

ストレートにこちらに突き刺さるような強い野生の香り。
私はこの手の香りにはひねたような要素を感じるのだが(ひね蕎麦という意味ではない)
この蕎麦はひねながらフレッシュなイメージもあるのが面白い。
強靭なコシを噛みしめるとこの蕎麦もまた、味わいが舌にブワァーー!!
「たまき庵」ではこれが普通、当たり前らしい・・・全くどうなっているのやら・・
「田舎そば」

田舎は太打ち十割。
こちらは丸岡にちょっと他の産地をミックスしたらしい。

濃厚に香るこうばしく甘い香り。
そしてこれまた舌に載せた瞬間にブワァーと味が広がるのには
もう呆れるほど。揃いも揃ってすごすぎる。
ムッチリした肌は強靭なコシを持ち容易には噛み切らせないので
モグモグ噛みしめ、噛みしめるほどに甘みが濃くなっていく。
おいしいなあ〜〜
「たまき庵」の3種の蕎麦を全て食べて大満足、お腹いっぱい。
ところが〜〜〜
聞けば今夜は二代目がただいま試作中の粗挽き蕎麦があるというではないか!!
いただきますいただきます、私の蕎麦別腹は庫内広々♡なんです!

うわわわ〜〜なんと美しい粗挽き!!
こちらは色選で漏れた「緑じゃない蕎麦」で打ったものだというが
この肌感、輪郭線、私にたまらぬ美しさだ。

見た目にはかなりの粗挽きながら
口に含むと意外にもすんなりとした肌で
クッキリハッキリした輪郭線が印象的。
モッチリ豊かなコシのある蕎麦で味わいや香りはさっぱりとしている。
そしてびっくりはこちら!
色彩選別機で選ばれし緑の超美蕎麦で打ったものだというのだが・・・

いやいやいやいや・・・そりゃ青緑過ぎるでしょ、ありえないでしょ!!
なんですかこの宇宙人のような青さは!!
蕎麦も余程凄い蕎麦なのだろう。
粗挽きの優しげな肌。
これはものすごく美味しそうだ・・・

うわ うわ うわ
香りがブワァーー!!
一体今日は何度私にブワァーと言わせりゃ気が済むんですか「たまき庵」さん!!
全身を吹き抜けるフレッシュな香り。
手びねりの陶器のようなざらざらいびつな輪郭線。
じんわり優しいコシからこぼれる美しい味わい・・・・
うううう 美味しい・・
このまま時が止まってほしいくらい美味しい・・・
「たまき庵」はつゆも独特。
チョンと舌に載せると鰹出汁+甘みを強く感じるのだが
試しに蕎麦をつけてみると不思議とその個性を消し
この店の蕎麦とぴったり合ってとても美味しい。


東北が誇る超名店。
これからは紅葉シーズンでもあるし、
名勝・秋保大滝近くのこの不思議な超名店を
ぜひ体験してみてくださいね〜!