2014年04月28日

栃木・那須塩原「石心」


新緑の中に佇む家。


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午前11時前。
たどり着いた先で出会った美しい光景に、私の心は躍った。

しかしこの後ものすごい展開が待っているとは
この時の私は知る由もない。


静かな朝

誰もいない

風の音 鳥の声

・・・・

と林の風情に浸れたのもほんの5分ほど。

そのあと来るわ来るわ、車が次々と乗り付け
どの人も車を降りて玄関先を覗き込み、まだ開店前であることを確認している。

・・・アレ?

なんだか皆さん手に取ってませんか?!!

これはマズイと私ものんびりを返上し玄関に近づいてみると


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「開店11時30分
番号札をお取りになり開店前にお戻りください」



がーーーーーんっっ!!(lll ̄□ ̄)
知らなかった!!大ショック!!


しかし運良くギリギリで「六」の札を取ることができた。
どうやらこれが最後の一つらしい。
あ〜〜〜あぶなかった。

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「この札は開店(11時30分)にお席に座りたいお客様の為の札です
開店までに必ず玄関前にお戻りください
遅れますと 順番が変わります」

な、なんだかすごいことになってるぞ・・
緊張してきちゃった・・・



いよいよ開店時間。
それぞれに札を持った6組がそのだいぶ前から
競走馬の如く入口の周りに集まってきていた。
競争が苦手な私は、あー6番でよかった、と一番後ろに立つ。

ついに扉が開くというその直前に
中から見ていたお店の奥さんに大声で注意された人が居た。
「枝が折れてしまいます!大切な枝ですからお触りにならないでください!」
玄関前のアプローチを通るときに飛び出していた枝を手でぐいっと避けたらしい。
それにしてもその声はかなり大きな、しかもはっきりとした美声だったので耳に残り
私はすっかり萎縮してしまった。
私も怒られないようにかなりビビりつつ皆さんに続いて大人しく店内に入った。



店内はひろびろと天井が高く、アンティーク調にまとめられいい雰囲気。


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テーブル席がメインだったが6番の私は玄関に入ってすぐの座卓に通された。

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また余計なことではあるがこの時私は相席になっていた。
外で待っている間に「札は1組にひとつ」と聞き
私の次に来てがっかりして回れ右していたご夫婦に声をかけ、
同じ座卓に座ったのだ。
(お節介は江戸っ子の身上でして(^^;;)。)


朝イチ六組のお客さんがドドドッと入店し、注文がいっぺんに入った店はものすごい忙しさ。
厨房はフル回転らしく、奥さんは広い店内じゅうをそれこそ飛び回っている。
しかし忙しいながらも注文の取り方はとても丁寧で親切だ。

ここのメニューはとてもシンプル。

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メニューは4つしかないのだが
奥さんは間違いのないよう大きな声ではっきりと確認しながら、
一人ひとりに思いやりを持って接している。

その間にも何人も新しいお客さんが玄関に立つので
その都度奥さんは玄関に行って今は満席であることを説明しなければならないのだが
またその説明の仕方が独特である。

「お客様がお席におすわりになれる時間は、12:10になります(40分後)。
よく相談なさってお決めください。」

デパートのアナウンスのように大きな美声ではっきりと告げる。
ふっくら色白でお化粧も完璧に綺麗にしている奥さんが玄関に立って
響き渡るような声で告げるその姿は「迫力」と言ってもいい説明っぷりだ。
言われた人はやはりちょっと面食らったようになっている人が多いのだが
それでも奥さんはまたすぐに、店内じゅうを飛び回らなければならない。




私が座っていた座卓からは美しい庭が見えた。

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奥は住居になっているのかな?


待ちながら店内をぼんやり見ているうちにだんだん意外なことがわかってきた。
ちょっと迫力があってコワイ・・?と思っていた奥さんだが
実はとってもおちゃめな人らしい。
それを証拠に今日が初めてでないお客さんにはとても愛されているようで
そんな人達に間違い?を指摘されてキャ〜〜と思わず抱きついたりしている。
意外!

私には何故か子供に言うように
「ごめんね・・もうちょっとだけ、まっててね〜」
と通りがかりに声をかけたりしてくれる。
それもまた大きな美声だ。


私は何だか急に安らいできた。


一生懸命な人なんだなあー



そのうちにテーブル席が空き、私はさっき誘ったご夫婦と一緒に
そのテーブル席に移るよう案内された。



そこで出会った蕎麦にビックリ!!

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写真では私が伝えたい事が何も伝わらないのが悔しいばかり。
この器、洗面器くらい大きくて深いのである!
(真ん中に小さくあるのが一人前の蕎麦の量)
しかも陶器に銀彩を施した大変美しいアーティスティックな器。
その中に蕎麦がほとんど見えないほど野菜が盛られている。

実はこれ、同席のご夫婦の頼んだ「春の白雪そば」なのだが
私のお蕎麦よりも先に来てしまい「入れていただいたのに先で申し訳ない」と
写真を撮らせてくれたのだった。

横から見るとこんな器。

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うっつくしい〜〜〜〜
今日はこの後ここですごい器を沢山見たが結局これが一番気に入ったかも!(^o^)




その後にやって来た私のお蕎麦♪

「もりそば」
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「もりそば」の器はごくスタンダードな正統派。
右上についているのはたっぷりのおろしだ。

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土佐和紙のような素朴な風情。
無数に散りばめられた褐色や白色のホシに目を見張る。
素朴な粗挽きだが、その肌は表面に水をたっぷりたたえピカピカ輝いている。
やや生々しいようなみずみずしさを感じる香り。
弾むようなコシは感じないが細切り硬めの食感で
手びねりの陶器のような素朴な舌触りが心地よい。
旧馬頭町産の蕎麦粉を挽きぐるみにした二八蕎麦。




「高原野菜そば」
(野菜とゴボウのきんぴらを載せた冷たいそば)

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これも大変に大きな、アーティスティックな器に
蕎麦が全く見えないほど野菜が盛られている。
ものすごく重いので少し動かすのも大変なくらいだ。
お店の人は大変だなあー

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甘めのきんぴらと美しく繊細に切られた野菜がたっぷり盛られた創作蕎麦。



「春の白雪そば」
(春の野菜、山芋、大根おろしをのせた冷たいそば)

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うっわー
この器もめちゃくちゃどっしり大きい!
しかもシマシマが大好きな私にはめちゃめちゃ魅力的なデザイン(>_<)
かわいい〜♡
先程隣のご夫婦が撮らせてくれたのと同じ蕎麦なのだが
器の個性がこんなにも違うので別のメニューに見えてしまう。

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こちらの蕎麦は山ならではの野菜の苦味がとてもおいしい。
ねぎ、せり、なばな、たけのこ 、ふきのとう、ながいも。


そしてね・・食べ終わってビックリしたのはこの器のデザイン!!

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可愛い〜〜シマシマにロケットだあ〜〜〜


ここは汁もとても美味しい。
ちょっと個性的な感じもあるが鰹が効いてとてもよくまとまった美味しい汁だ。
蕎麦湯で割るとまた絶品。
普段は蕎麦湯は蕎麦湯だけで飲んでしまうのだが
美味しそうな汁だとたまーに蕎麦湯に入れてみる。
そうすると美味しい汁は本当にその美味しさを発揮するので
汁とはすごいもの、難しいものだなーといつも思う。



蕎麦湯を飲みながら、まだ目の前にある美しい器たちを愛でるひととき。
窓からは緑を透かした陽射しが柔らかく入り込んでいる。

食後、もう少しゆっくりしていたかったが、
外の林の中に待っている人達がいると思うとゆっくりもしていられない。



いつも、思うのだ。

人気があることは素晴らしいが
人気店ほど、お店の人が表現しようとした世界が
人でぎゅうぎゅう埋め尽くされてしまって大変だ、と。

この店も自然の中でゆったり、大きな器でのーんびり蕎麦を・・
のはずだったんじゃないかなあー

帰り際には奥さんが明るく笑いながら
鐘が鳴るように高らかな声で見送ってくれ、また走るように仕事に戻っていった。


店を出て振り返ると
林の中で店がにっこり笑ってくれたような気がした。



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posted by aya at 23:49 | Comment(7) | TrackBack(0) | 関東の蕎麦>栃木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月24日

神奈川・葉山「蕎麦 恵土」


♪は〜るのおがわは さらさら いくよ

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この川沿いを行けば、大好きなあの家はもうすぐ。




心の中に眠っていた遠い昔の情景が
いま目の前に現れたような。


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「蕎麦 恵土」。





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玄関前の静けさは
古い日本映画の中のよう。



中に入っても人の気配はなく、
ふっと懐かしいような香が漂っているのみ。
奥にいるのでそのまま入るように書いてある。


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「こんにちは」

奥に向かって声をかけると、
古い廊下のきしむ音がし、やっとお店の人が出てくる。
昔の女学生のような雰囲気を残した、可憐な奥さん。

大人気店ゆえいつもはこんな雰囲気ではないのだが
今日は何もかもが映画の中のようにゆっくりと、美しい。



まずは蕎麦湯でもてなされる。

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前菜三種(昼)
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「蕗」
「麦烏賊の煮付けゲソづめ」
「サヨリの昆布締め桜あえ」

しみじみと、美味しいものばかり。



「だし巻き玉子」
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ふるんと軽く、ほんのり甘いだし巻き玉子。
明るく澄んだ黄色がきれい。




「そばがき(手挽き粉使用)」
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わ わわわ
見るからにものすごい美味しそうさ!!

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その粒、その肌、素朴な塊。
見入るほどに美しい、絶対的な存在感。
いつまでも見惚れていたいがかぐわしい香りが私を強烈に誘惑してやまない。
墨のようなヨモギのような、渋い野生の香り!
もっちりネチッと食べ応えがあり
その中で感じる粗挽きのザクザクした食感が楽しい。



「鰊煮」
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やわらかくハラリとした肉質がおいしい鰊煮。
まるで日本画のような、完成された景色。




「あら挽きせいろ」
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ああああ ついに。
もうどうにもこうにも嬉し過ぎる。
久しぶりに出会えた、恵土の「あら挽きせいろ」。
九一の常陸秋そばだ。

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(何せこちらの店内は暗いので、愛を込めて念力で撮りました!!)

深く濃厚に漂う香りは先程の「そばがき」とピタリ同じ、
ヨモギのような墨のような渋いかぐわしさ。
極粗いザリザリした舌触りながら
口中で感じる束は端正に繊細にほどけ
その最後に、ニクイほどやさしく心地よい腰がある。
甘みは少ないのがストイックなイメージのかぐわしさを際立たせ、
もうもうもう、ただ美味しくてたまらない。



「限定あら挽き 手挽きせいろ」
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うわあ〜
今度はぐっとふっくら、やさしい表情。

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たくましく黒いながらも、かすかな透明感のある肌。
上品で清澄な穀物のかぐわしさがフワーッと爽やかに漂い、
見つめるとその下を静かに先ほどの渋い香りが支えている。
食感がまた素晴らしい。
ものすごくやわらかくやさしい印象なのに全くやわらかすぎず、
むしろ凛としている。何ですかコレは!
そこに香ばしさ、甘さ、滋味深さが、見事なバランスで溢れ出してくるのだから
もうただただたまらない恍惚の連続。
さすがは常陸秋そば・・と思わずにいられない。

一枚目の「あら挽きせいろ」も同じ常陸秋そばだが、
皮ごと挽く部分と皮を剥いて挽く部分の配合率が違うそう。

うーん どちらもそれぞれに魅力的だが
今日のところは「限定あら挽き 手挽きせいろ」のほうが好きかなぁ〜!





汁は洗練すっきり、キュッとした感じのおいしい汁だが
もちろん結局最後まで蕎麦にはつけられず・・
ゆっくり、のんびりと蕎麦湯とともに味わう幸せ。

甘いものが苦手な私にとっては蕎麦湯が最高のデザートだが
私の前に座る美女はとても綺麗なデザートを頼んだ。


「桜のブランマンジェ」
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お蕎麦屋さんで出されるデザートして
とても洒落た季節のデザート。
「コレ美味しい〜」とニコニコ食べる、
おゆき坊さん(蜷川有紀さん)のチャーミングなこと。
これ以上ないほど幸せな昼餉。



帰り際にはほぼ満席となったが店の空気はそのまま。

「蕎麦 恵土」に流れる時間を楽しみたい人々が、静かに集っている。



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古いフィルムの中で瞬く

遠い日の情景のように。


「恵土」の景色が私の心に焼き付いている。











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2014年04月22日

神奈川・葉山「手打そば 和か菜」


「彩子ちゃん、和か菜に行きましょうよ」

美しい人にビロードのような声で言われて ぽーっとなってしまったが
よく考えるとそれはお蕎麦屋さんなのであった。

「ハイッ よろこんで!是非!!」

というわけで本日は、
かいぶつ句会でご一緒させていただいている
画家のおゆき坊さん(蜷川有紀さん)と、優雅に昼蕎麦〜♪


海と山に恵まれた、のんびりした田舎のような顔をして、
どっこい文化的に大変にシャレまくっている葉山の地。
田舎道にポツンポツンと現れる古くからある店が
まるでヨーロッパ映画の中のような可愛らしさだったり
(新しい店ならまだわかるが古いというところに仰け反る)
どこでもエシレバターが手に入ってしまったりという
恐るべき土地なのだ。
蕎麦の名店も点在するので私は来る度落ち着かないが
この「和か菜」は初めて。
どんなお店かな〜?


ご近所にお住まいのおゆき坊さんにとっては行きつけの一軒ということで、
ハリウッドスターみたいな車でサーッと連れていってくれる。

車を降りると、わ〜〜〜

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空気が違う!景色がひろい!
なんてのどか〜〜!
地元の野菜を売るおじさんの車がまたいい味出してます。
こんなに静かでのどかなのに、駐車場が車でいっぱい・・?



建物は上品な住宅のような、景色になじむやさしい雰囲気。

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入り口の手前に庭への入り口があったのでちょっと覗いてみる。

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春の緑のにおい。
小鳥のさえずり。

東京からやって来た私にはこのまま溶けてしまいたいほどの安らぎだが
心の半分はもうお店に入ってせいろを頼んでいる。



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外に居る時は小鳥の声しか聞こえず本当に静かだったのに
なんと店のなかはほぼ満席。


それもなんだか来ているお客さんが皆さんなんとも・・
私がいつも行くお店とは違いますよ・・

あちこちの席に目立つのは
「大統領夫人かっ」というくらい完璧に髪を美しくセットした
お年を召したレディー達。
もしくは住宅の広告にでも出てきそうな(?)お洒落な熟年カップル。
どのテーブルもみな楽しそうにおしゃべりをしながら
賑やかに蕎麦を手繰っている。

はあぁー こんな蕎麦文化がありましたか!
なんだか素敵な発見をしたような気持ちだ。


メニューを見るとお蕎麦は
「せいろ」「さらしな」「変わり(ゆず切り)」
の三種類。
メニュー本の細長い形やメニューからして一茶庵系らしい。
残念ながら「さらしな」は売切だったので
私もこの雰囲気に酔って、珍しく優雅に「せいろ天盛」などを♪


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さっくりと軽い、上品な天ぷら。

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「鎌倉一茶庵」や青山「くろ麦」を彷彿とさせる、
背の高い横長のせいろ。

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この店のイメージにぴったりの、明るく美しい肌。
上品な白いイメージの粉の香りをほんのり淡くまとい、
流麗な輪郭線を際立たせて口中をめぐる。
上品なレディー達にも舌の肥えたカップル達にも愛される、
穏やかに澄んだ蕎麦だ。



店の中は賑やかだが
窓の眺めは絵画のよう。


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おゆき坊さんが可笑しそうに言う。


「私、絵を描いたあと、夕方ガラガラの時にしか来たことがないから
 こんなに混んでいるのは初めてよ〜」



平日は17時まで、土日祝日は19:30まで
中休みなしの営業の「和か菜」ならではの贅沢な時間だろう。
 



帰り際、「和か菜」のお隣の「杉山神社」にお参りしてから、
山を抱き海を望むおゆき坊さんの美しいお家へ。




濃い緑の向こうに静かに輝く海と

アトリエで目撃した製作中の絵画の息を飲むような色彩と

おゆき坊さんの優雅な笑顔がコラージュのように切り貼りされ

一日中笑っていた気がする、

豊かな豊かな葉山の一日。






posted by aya at 13:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 関東の蕎麦>神奈川 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月19日

人生初コント


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私が末席を蕎麦色に汚しております「かいぶつ句会」。
一年に一度の「名物かいぶつ祭り」が昨日代々木上原でありまして、
なんと私は蜷川有紀さんと
「人生初コント+歌」で出演させていただきました。

まず有紀さんのコント作家としての才能が本当に可笑しいんです!!
演技指導は有紀さん、歌唱指導(蘇州夜曲)は私という役割分担でしたが
ご指導通りにやるとどんどん面白くなるので
すっかりコントに目覚めてしまった私。
最高に楽しい体験でした〜〜〜またやりたい!!(^o^)


ちなみに恒例「かいぶつ大句会」では
なんと私が「天」をいただいてしまいましたっっ
ウワワァ・・ありがとうございますm(_ _)m!!!

「この星の春を裸足で踏んでみる」

という一句。



posted by aya at 10:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | aya>diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月18日

浅草橋「江戸蕎麦手打處 あさだ」


老舗の魅力。

一概には言えないが、
東京の「老舗の蕎麦屋」というと、ある一定のイメージがある。
いかにもそれらしい趣のある構えで、
接客のプロの花番さん達が甲斐甲斐しくサービスしてくれ、
蕎麦は手打ちでなく機械打ちとか手ごね機械切りの二八蕎麦、
一年365日いつでもビシッと安定した「店の味」が提供され、
中休みなしなのでのんびり昼酒が楽しめるとか
蕎麦も肴も器も酒も「定番の美しさ」が堪能できるとか
とにかく老舗でしか味わえない粋な時間がそこにある、
そんなイメージだ。

中には江戸時代から続く店もある。
100年余もの間伝統を守り抜くということは
時代も客もうつっていく中で並大抵のことではないだろう。


「江戸蕎麦手打處 あさだ」も東京が誇る老舗蕎麦屋の一軒。
創業安政元年。
実に160年の歴史を誇り、現店主は八代目という老舗である。
ところがこの「江戸蕎麦手打處 あさだ」は
老舗としての凄さだけではない、稀有な名店なのだ。

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雨の似合う美しい外観。
大通りのビル街にありながら、その風情はさながら浮世絵の如く。
鍵付きの傘立てには何十本もの傘が並び
扉の奥からは客席の賑わいが漏れ聞こえてくる。

看板には「江戸蕎麦手打處 あさだ」。
メニューには「自家製粉石臼挽き 十割蕎麦」とある。
江戸で老舗で、なのに二八じゃなくて十割・・?
この辺りからも是非ともワクワクしていただきたい店なのだ。


店に入るとさすがの大賑わい。
白割烹着を着た礼儀正しい店員さんがスッと現れ
「いらっしゃいませ」とホテルマンのようなサービスで迎えてくれる。
知らない人は、まさかこの人がここの八代目店主とは思わないだろう。
蕎麦を打っているのはもちろんこの店主だが、
最近は客席を担当することも多いらしい。


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私は冷蔵庫の前のこの席に座ることが多いのでついこの写真を撮ってしまうのだが
「江戸蕎麦手打處 あさだ」には美味しそうなお酒が沢山ある。
なんといっても八代目店主は利酒師。
この冷蔵庫に見えているものだけでなく
「菊正宗樽酒」「立山」「田酒」「磯自慢」「飛露喜」
「〆張鶴」「八海山」「獺祭」「黒龍」等々、
メニューには非常に危険な銘酒がたくさん!!
いやー、偉そうなことは何も言えない「酒量だけは小鳥」な私ですが
ここのセレクションは素晴らしいと思います!!


しかも更に危険なことにここはおつまみがまた大変にすんばらしい。

メニュー本にもぎっしりと定番メニューがある上に
その日その日で
「◯月◯日(曜日) 今夜のおすすめ料理」
というこんなすごいメニューがあるのだ!
どんだけ贅沢なんですか!!

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美味しそうなメニューがズラリ。
しかも全てのメニューに産地が書いてあるというのが凄い。
毎回とても気になっていたのでついに本日聞いてしまったのだが
この美しいメニューを毎日書いているのはなんと七代目なのだそうだ。
これには本当に驚いた。


せっかくですので「今夜のおすすめ料理」より。

「春野菜のお浸し」

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料理本の表紙にしたいような美しい景色。
見た目だけでなく、このおひたしの美味しさに私は感動してしまった。
うるい、菜の花、わらび、ふき、ホワイトアスパラ。
まず吹き抜ける山椒の香り。
その後やってくるそれぞれの野菜のベストな食感、くっきりとした冷たさ加減、
山菜ならではの山の香り、そしてそれを際だたせるようなすっきりとした出汁加減。
何もかもが素晴らしい。
この小さな一皿で春山を転げ落ちた気分になった!



「合鴨ロース赤ワイン煮」
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これまた見るからに美味しそうすぎる。
色っぽさを感じるほどにしっとりと柔らかな肉質。
これが美味しいーー!
私は東十条「一東菴」の鴨ロース煮の大ファンであるが
ここのはそれをしっとりひらりとさせた感じ。
見るからに美味しそうで、食べて美味しく、
噛んでいるうちに口の中で美味しさが高まり続けて
だんだん可笑しくなってきてしまうほど。(我ながらおめでたいのう)



「自家製粉 石臼挽き そばがき」
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お湯の中で身を寄せ合うかわいらしい姿。
この御方がまた、お外に飛び出すと迫力の粗挽きぼこぼこ肌!

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おお〜
しかし試しにひっくり返してみると

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アラッ 別人のような端正な姿。
おもしろい〜(^^)
ほんのり浮かぶ粗挽きの粒の風情が美しい。

香りは正統派の、慎ましく淡いかぐわしさ。
もにょほにょ〜としたやさしい微粉の肌の中に
荒い大きな柔らかい粒が散らしてあるような舌触り。
そこから深い味わいがひろがるのが嬉しい。


「せいろそば」
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老舗らしい黒塗りのせいろの中、くっきりはっきりとした輪郭線が美しい。
蕎麦粉は主に北海道と茨城だそう。

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これだけくっきりとした見た目、その上思いきり冷たくしめられているにもかかわらず
「江戸蕎麦手打處 あさだ」の蕎麦は驚くほどなめらか。
印象はどこまでもなめらかで柔らかいのだが
簡単に最後まで噛み切らせるような柔らかい蕎麦ではなく
噛み締めるとクニュッとやさしいコシがしっかり受け止めるのがニクイ。
十割とは思えないほどツルツルと滑らかなコシ。
これが現店主八代目が伝統を打ち破り独自に始めた「十割の江戸蕎麦」なのだ。

実は先程二階の宴会が終了し、その酔客の一人が
「蕎麦になんか入れてない?ふのりかなんか入れてない?」
と店主に何度も聞いていた。店主は控えめに
「入れてません・・いえ、入れてません」
と答えていたがその酔客の疑問も不思議ではないほど
ツルリッと食べられる江戸な十割蕎麦。
香りは、思い切り冷たくしめられていた最初は北海道らしい野性味を強く感じた。
しかしゆっくり食べすすむうちに香りがなんともいい具合に膨らみ
ふっくら豊かな幅のある、甘く香ばしいかぐわしさとなった。


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蕎麦湯が濃厚で、しかとてもいい粉を溶いてくれているらしく蕎麦粉味が美味しい。
こんなところも老舗らしからぬサービス。
そこにこっくりと濃厚、江戸らしい甘辛汁。
ああしあわせだなあ ヤラレちゃうなあ〜



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今回はメニュー書きや店内の張り紙が全て七代目の書と知って
その才能に驚かされたが、最後にもうひとつのビックリが!

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いつも綺麗だなあ〜と見ていたこの和紙のメニュー本は
なんと八代目の手作りだったのだ。
一冊一冊、細部まで細かく美しく出来ていて
普通に「手先が器用」というレベルではない、完璧な仕上がり。
江戸の昔から蕎麦打ちという細かな作業を極めてきた職人の家系ならではの器用さなのかと思うととても興味深い。
何でも業者に外注に出すことの多い昨今、
親子二代の手作りで店の中をこれだけ完璧に美しく整えていることに感動させられた。


東京の「老舗の蕎麦屋」という一定のイメージがある。

しかしその扉の中には、それぞれの世界がひろがっている。


東京が誇る名店「江戸蕎麦手打處 あさだ」である。


posted by aya at 12:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>台東区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月12日

牛込神楽坂「蕎麦 しおさい」


神楽坂がますます蕎麦過ぎる。

先日「神楽坂が蕎麦過ぎる」と書いたが
どれほど蕎麦過ぎるかイメージできない方のために
ここに並べて書いてみることを思い立った。
「じゃあ神楽坂にお蕎麦を食べに行ってみよう!」という方のために
私の勝手なガイドのようなものも珍しくつけてみた。
私がこのブログを始めてから3年の間に書いた店だけでも
こんなにあるのだ。

「蕎楽亭」
(言わずと知れた有名店。活気ある素晴らしい雰囲気と美しい天ぷら、ひやむぎも美味しい)

「東白庵 かりべ」
(路地の奥にひそむ静かな時間。絶品蕎麦もそばがきも全てが贅沢に美味し過ぎる)

「蕎楽亭 もがみ」
(20代の女性店主が打つ香り高く美味しい個性的な蕎麦。酒肴も気が利いていて美味)

「玄菱」
(「狙っていない究極の渋さ」にのけぞる神楽坂の侍。太打ちの太さは東京屈指)

「そば切り 酒膳 中村屋」
(お酒に合うガッツリ美味しい肴と楽しい三色蕎麦。宴にもぴったり)

「soba dining 和み」
(食用シルクや赤米を混ぜたユニークなお蕎麦や十割蕎麦。肴類も楽しいモダンな店)

「神楽坂 山せみ」
(神楽坂大通りに面した美しい店。蕎麦二種あり、肴も充実で外国人やカップルにも大人気)

「たかさご」
(これぞ大人の余裕、プロの余裕。蕎麦も肴も全てがお手本のように美しくて美味しすぎる)

「芳とも庵」
(製粉工場並みの設備と店主の情熱。香り高い個性豊かな三種の蕎麦が絶品)

「志ま平」
(一見取っつきにくいが個性派、実力派店主の粋な店。料理もすごい)

「Soba Dining 山本」
(路地に輝くピッカピカ綺麗な店。家庭的なほっこり味とサービスに和む)


もちろん私がまだこのブログに書いていない店もあるし、
機械打ちの町蕎麦屋さんもかなり多い神楽坂。
全部合わせたらこの街の蕎麦屋密度は
すごいことになっているに違いない。

ちなみに上に並べた順番に全く意味はないのだが
最後の4店は意図的に並べた。
「たかさご」「芳とも庵」「志ま平」「Soba Dining 山本」。
この4店は「牛込中央通り」のある一角、
「すぐそこに見えるくらい目と鼻の先」に
ギュッとくっついてひしめいているのだ。

もう、もう、このエリアを歩く時の私の身にもなっていただきたい。
まさかこれだけくっついている4店のハシゴなんてとても無理だから
どこかに行ったら残りの数店は前を素通りせねばならない。
この身を切るような辛さ。

その「牛込中央通りエリア」に
またピカピカの新店が生まれちゃったのである。
・・この私のものすごく嬉しいような、どうにもこうにも落ち着かないような気持ちを
どなたか共有してくれませんか?(^^;;)



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道が二股になった三角エリアにぽつんと輝く「蕎麦 しおさい」。
店自体はシンプルで落ち着いた外観だが
「常陸秋そば」の幟が2本、賑やかにはためいている。



入り口には製粉機が。
格子戸の向こう、遊女の横顔のようだ。

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「しおさいの晩酌セット」という看板が出ている。

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生ビール、日本酒、焼酎のうちお好きなお飲物1杯と
焼き味噌、日替わり小鉢、天ぷら(魚介1品、野菜2品)、ミニもりそば
1500円

この看板、実際見るとライティングの関係でなかなか読みづらい。
しかしそんなところに素朴な人柄のようなもの勝手に感じ
(専門の会社に頼んだようなバッチリ完璧過ぎる看板よりずっといい)
微笑ましいような気持ちで店に入る。


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(おっ竹鶴がありますよ〜紋屋三田様〜(^o^))

今日はすでに21時近いが、ここは22時まで(L.O.21時)という
お蕎麦屋さんにしては遅い営業時間がありがたい。
最近は店主一人で切り盛りしているだけあって厨房は大忙しだ。



メニュー本を開くと

「奥久慈軍鶏たたき」
「粗挽きそばがき」
「玉子焼き(栃木県鹿沼産真珠卵)」

など美味しそうなおつまみや蕎麦メニューがズラリ。

それ以外にお酒のメニューが別紙で2枚と、
手書きのおすすめメニューもこんなにあるではないですか〜

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これだけのメニューをひとりでやっているなんてすごすぎる!(>_<)
せっかくならこの手書きメニューの中から頼みたくなってきた。


「菜の花のお浸し」
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「ふきのとうの天ぷら」
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4月も半ばとなったがこの「春のごちそう」は二品とも大好物!
浅いゆで具合がパッキリ新鮮でおいしい菜の花と
香り高いふきのとう。
私は「自然の香り」というものに本当に弱い。


でね、食べたいお蕎麦はもう決まっているのです。

「奥久慈つけ軍鶏せいろ」
「みつせ地鶏南蛮そば」
「炙り鴨南そば」
「九条葱そば」
「けんちんそば」

などの美味しそうな蕎麦メニューの中で
まるで電飾がついているかのようにギンギラ輝き私の目に突き刺さってくる、
「二色もり(もりそば・粗挽き田舎そば)」!


まずは一枚目、
「もりそば」
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端正な極細の平打ち。
輪郭線がくっきりとても綺麗なので固めのお蕎麦なのかな?と思いきや
予想に反してなめらかくにゅんとやさしい食感。
しかし柔らかすぎる蕎麦ではなく、
絶妙のコシがしっかり受け止める感じがとてもいい。

香りはごく淡い・・いや、淡いのかどうかもよくわからなく・・
実はここで事件発生、蕎麦犬的絶体絶命の危機に陥りはじめたのである。

あのー、以前にも何度か「某利き蕎麦会」「某恵比寿の蕎麦店」において
この同じ危機に陥ったことを書いているのですが
私、「お蕎麦が出てくると嗅覚が突然それまでの100倍になる」
というおかしな特技というか病気を持っておりまして・・
要はお蕎麦の香りを嗅ぎたいあまりに店内中の香りが
それまでの100倍の濃度で鼻の中に入ってきてしまうという、
本人にとっては時にかなり困難な蕎麦犬現象なのです。

まさに今「もりそば」に対峙したこの時、
それまで全く気付かなかったやたら強烈に美味しそうな磯の香りが
プ〜〜〜ンと厨房から漂ってきて私の鼻腔を染め脳を染め、
それでも何とか蕎麦の香りを見出したい蕎麦犬は
その磯の香りの隙間をかき分けかき分け、
あ〜、なんか微かに香るような・・
ほのかにやさしい蕎麦の香りがそこにあるような・・・?
とはいえ世界はどうにもこうにも磯過ぎる。
っていうかこの磯の正体は何なのだ??




「粗挽き田舎そば(限定)」

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おお〜「粗挽き田舎そば」はがっつり太打ち。
ちなみに「もりそば」は二八で「粗挽き田舎そば」は外一だそう。

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むっちりとした太打ちの輪郭線。
やや赤みを帯びた明るい肌に浮かぶ粗挽きの白い陰影。
こちらも磯と戦いつつの愛ではあるが
ほんのりとした蕎麦の香りも感じられ
何より噛み締めた時にふっくらふくらむ香りがいい。
これだけの太打ちだがやさしい弾力の蕎麦なので
モゴモゴすることなく粉の味わいを楽しめる。


その時である。
私の後ろのテーブルのお二人に
店主が焼きたてほっかほかの実に美味しそうなものが
運ばれてきた。

「にしん塩焼」!!!

ああああ・・・

アナタだったのですね・・
いいんですいいんです、決してにしん塩焼さんが悪いのではありません、
蕎麦犬がおかしいんです、犬なのにこんなところに入ってくるからいけないんです。
こちらだけでなく全ての干物系をやっているお蕎麦屋さん、
カレー系やっているお蕎麦屋さん、
ゆず切りなど香り高い変わり蕎麦をやっているお蕎麦屋さんなどで
どこでもワンワンのたうち回っているので勝手にのたうち回らせとけばいいんです。

何よりこの店の名前は「しおさい」。
磯の香りがしてあったりまえではないですか〜(^o^)


お蕎麦屋さんで海を連想させる店名は珍しいので帰り際に店主に聞くと
海やサーフィンが好きな店主が思いを込めてつけた名前らしい。
メニュー本の最初にある挨拶文によると
漢字では「潮彩」と書くらしい。


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時に不安定な、蕎麦という素朴で純粋な食材を潮に例えてとらえるとは
私には斬新なロマンティシズム!凄い!
店内に満ちる磯の香りもますます心地よく感じられてくるではないか。




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超濃厚粗挽きポタージュな蕎麦湯も美味しかったですよ〜



(2014年4月から定休日が月曜+月2回の日曜日に変わったそうです♪)
posted by aya at 23:36 | Comment(3) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>新宿区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月10日

牛込神楽坂「Soba Dining 山本」


神楽坂が蕎麦過ぎる。

もともと名店が多いエリアであったが
近年なぜかお蕎麦屋さんが増える一方。
私にとって大変喜ばしいことであるのは確かなのだが
一方で「どこを歩いてもどうにもこうにもキョロキョロソワソワ」
という落ち着かなさもある。
ついどうしてもハシゴしたくなっちゃうもので・・・

でも今日は訳あってハシゴはしないんだー!
早く帰ってやらねばならぬ「しくだい」があるので
牛込中央通りから路地にひょいと入った「山本」さんちへ。

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路地に輝く綺麗な店舗は
パッと見はレストランか、お花が沢山あるのでお花関係のお店にも見えるかも?
「そば」という文字は探さないと見つけられない外観である。

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店内は輝かしいまでに明るく綺麗。

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こんなにピカーッとした店舗でありながら
店全体の印象としては非常に家庭的であるところがこの店のいいところ。
つい「山本さんち」と呼びたくなってしまうのだ。

家庭的と言っても
お店の人のサービスや出されるメニューは皆きちっとしている。
しかし「家庭の温かみ」というものを感じるような、
お店の人の営業的でないのんびりした話しぶりや
ほっこりした美味しさなのだ。


「本日の煮物」
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それぞれを別々に煮た、手間のかけられた煮物。
ギューッと煮しめてあるもの、さらりとしたもの、
ごま油がきいたものなどが綺麗に並べられて
ひとつひとつを味わうのがとても楽しい。
具材を一度に煮た煮物にはない楽しみだ。
しかもですよ、
「今日は一品少ないので100円引きでいいです〜」
こんな手間のかかった美味しい煮物が400円ですか!
う〜んますます美味しく感じちゃいますよ・・


「牛肉のごぼう巻き」
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これまた手間を感じる綺麗なメニュー。
甘辛くしっかり煮られた大きめのごぼう巻き、素直に美味しい!



お蕎麦は「大海老天せいろそば」や「小海老天せいろそば」
「つけとろそば」などと少し(たぶん1秒以内(^^;;))迷ったがやはりここに着地。


「せいろそば」
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ビシッと隙のない、端正な眺め。
東京では比較的珍しい小山盛りだ。

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いびつに揺れる輪郭線、
光を不規則に反射する蕎麦肌の美しさ。
香りや味わいはごくごく淡いのだが、手びねりの陶器のような
手作り感あふれる蕎麦肌の舌触りと噛み締めた歯ざわりがとてもいい。
これは、一秒(以内)迷った「大海老天せいろそば」や「小海老天せいろそば」
「つけとろそば」あたりにすべきだったかなあ〜
この食感の素晴らしさ、肌のざらつきは
絶対種もの等ですごく美味しいに違いない。



って思いつつ、毎回「せいろそば」になっちゃうんですよね〜
アハ(*^ω^*)  


さー早く帰ってしくだいしなくっちゃー!




posted by aya at 01:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>新宿区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月07日

おはなみ


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おはなみ


平和のありがたさ。

ひろい空の下、花に囲まれ

風に吹かれたあの時間。

感謝。



私人生最大規模、50人参加のお花見だったので
こんな機会もなかなかないかと、
卵50個分のだし巻き卵を焼いて持って行きました(^^)



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posted by aya at 23:11 | Comment(3) | TrackBack(0) | aya>diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月02日

新潟・妙高市「くま杉の里・味処そばの花」


都会はすっかり春爛漫だが
お山にゃまだまだ雪がある。


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杉野沢温泉「苗名の湯」に隣接した建物には
「くま杉の里」「味処そばの花」 と2つの店名が見える。
看板やら幟やらがたくさんあるし「生産物直売施設」とも書いてあるので
「お土産センター+食事処」のような感じにしか見えないのだが
私の体は「妙高産 手打ちそば」の文字に吸い寄せられて
勝手に階段を上っている。


はてさてここで美味しい手打ち蕎麦を打っているのかな・・?
覗いてみるとお土産コーナーなどは見当たらず、
1階は全部がお蕎麦屋さんになっている様子。

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雪国らしい二重扉の、一枚目を開けてみる。


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わー 自家製粉しているではないですか〜
お蕎麦屋さんとしては去年リニューアルオープンしたらしい。


一体どんなお店なのか今ひとつつかめないまま店内に入ると
これまたユニークな空間に出会う。

学食や社食のように
机と椅子を横並びにつなげてたくさん並べた広い店内。
厨房の横にはセルフサービスの
「薬味」「蕎麦つゆ」などが置かれていて
その横には「食器返却口」と書いてある。
料金もセルフサービスで、カウンターで前払いするようになっている。

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「薬味」「蕎麦つゆ」は追加ひとり分100円ですからね、
一人で2つとっちゃあダメですよ〜
(あっ使わないとはいえ、私もちゃんと「薬味」「蕎麦つゆ」持ってきましたよ!
 蕎麦湯のとき用(^o^))


店内には先客が1組。
地元の長老たち5人が会合している。
というとかしこまっているようだが
要は地元のじいちゃんたちがまだ明るいうちから盛大に飲んでいる。
雪国のじいちゃんたちは実に元気!いい雰囲気!
お酒のお代わりの声が賑やか(^o^)
地元のこんな方々が、こんな風に集える場所があるっていいなあ〜

おつまみメニューは多くはないが
宴会にはもってこいの品揃え。


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さりげないようでこのメニュー、
なかなか核心をついた少数精鋭メンバーな気がしますよ・・
いいですねえ〜〜〜


お蕎麦のメニューはこんな感じ。

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「妙高産 手打ちそば」の幟に吸引されて入ってきたワタクシは
もう「ざる蕎麦」に決まってるわけですが
じいちゃん達の楽しげな雰囲気につられて
お蕎麦だけじゃもったいない気がしてきた!

というわけで壁の張り紙に「そばの花おすすめ 妙高のかんずり付」
とあった「もつ煮」を頼むことにする。


「もつ煮」
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軽い気持ちで頼んだというのに大きな器にびっくり。
この器、丼くらいあるんですけどー!
もつは少なめだが野菜いっぱいでさっぱりしていて
「もつ入りけんちん汁」みたいでおいしい。
これが400円なんてすごい。
あっ せっかくの「かんずり」撮り忘れちゃった・・




「ざる蕎麦」
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山の店らしくさすがに量がたっぷり。
ふっくら豊かに盛られてやって来た。


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キンと思い切り冷たくしめられた蕎麦。
漂う冷気はほんのりと墨のような慎ましい香りに淡く染まっている。
口に含むとくっきりはっきりとした輪郭線が口中を流麗にめぐり
つるつるの肌を噛み締めるとこれまた墨のような香りがふくらむ。
全てが慎ましいのだがなんだかとても美味しい。
この空気、雰囲気の中で食べる地粉の蕎麦だもの、
ああ うれしいなあ〜

相当キンキンにしめられていたのでちょっと温度が上がったら
香りや甘みが出るかな?と待ってみたが風味は変わらず、
食感だけがふわっ、ふっくらとした。
こういう状態のお蕎麦も美味しい(^o^)

汁はかなりの甘口。
何とも言えない卵のようなコクがあり
(もちろん卵は入っていないと思うが)
それが非常に昔懐かしいような甘辛さである。




先程まであんなに盛り上がっていた長老たちは
私が蕎麦に耽溺している間に宴を終え帰ったようだ。

まだ6時半だが、もうそれぞれの家に帰り着いて寝ているかもしれない。
(私が大好きだった知り合いの「山の爺」も毎晩6時過ぎには寝ていたものだ。)



山の夜は都会よりも早く訪れ、ただ静かだ。


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posted by aya at 20:47 | Comment(2) | TrackBack(0) | 甲信越の蕎麦>新潟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする