2014年02月27日

京都・北山「じん六」


なぜ蕎麦のことばかり書くのか、と自分でも思う。

私は音楽について語るのは苦手だ。
子供の頃から歌うよろこびは歌うことだけであり
素晴らしい音楽に触れると自分の中がいっぱいになってしまうので
それらを言葉にしたいと思ったことはない。
私には難しすぎる。


しかしお蕎麦は日々私の前を過ぎて行く。
お蕎麦屋さんは毎日自分の追い求める「作品」を作り続け
世界を作り続け、それは一切形には残らない。


その日そのお蕎麦屋さんが作り上げた世界、
その時間そのお店に流れていた時間を
ほんの小さくても何かに残したい。

なくなってしまうお店、
変わって行くお店、
動いていくものは止められないけれど
それをなんとかつなぎとめたかった。



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こんなに早く、こんな日が来るなんて。

京都の名高き名店「じん六」が
この二月であの北山の美しい店での営業を終了する。

そう聞いて私は居ても立ってもいられず、自分のスケジュールを調べ
新幹線のチケットを取った。




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枝垂れ梅が、堂々たる美しい暖簾が胸を刺す。
この店は、ここにこうして居て欲しかった。

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外観は立派な日本家屋ながら、
店内は山小屋のようにひろびろと自然な空間。
建物の中なのに、深呼吸したいような気持ちになる。

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「そばがき」
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微粉ならではの、なめらかな肌。
選ばれし蕎麦ならではの、美しき緑。
この肌の中に「じん六」の宇宙がある。
それを知っているだけに見入らずにいられない。
それほどに、「じん六」の蕎麦粉は凄いのだ。


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口に含んで思わず目を閉じる。
とぅるんとなめらかな肌から
私の舌にギューーーー!!と押し込まれるように
ものすごい蕎麦の味わいが伝わってきたのだ。
だし汁でも入っているのか??と思えるほどの濃厚な味わい。
しかもそれだけ力強い穀物の味わいながら、
どこまでも澄んで清らかであるところがニク過ぎる。

うわぁーん 来てよかったよう〜 美味し過ぎるよう〜
なめらかふわとろで、
エアリーではなくムッチリな食感がまたたまらない・・

「じん六」が扱う福井大野在来の蕎麦の凄さ、ここに極まれり。
畑を見る目、蕎麦の実を見極める目、水を探求する目、
非凡なる厳しい感覚を持つ店主だからこそ到達した、この味。

このあとお蕎麦がなければこれだけいくつでも食べたい・・・






お蕎麦はいつもの、「蕎麦三昧」。
三種類の産地の異なるお蕎麦を食べられる
私にとっては最高のメニュー!!
今日は「茨城産」「京都産」「福井産」らしい。

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1枚目
「京都・深山」品種は信濃一号
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笊の上、ガラスの上の、涼やかな緑。
この蕎麦とこの庭の眺めも、これで最後なのか。


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冷水で締めすぎない肌からむわ〜と漂う、濃厚なかぐわしさ。
香りも味もこんなに濃いのにその印象はどこまでも美しく綺麗!
例えるなら、野の花の香りを寄せているような。
むっちりとふくよかな肌ながら噛み締めた食感はとても優しく
もう美味しくて美味しくてどんなブレーキをかけても
一緒にいられる時間は短すぎる。
おかしい。なんで私のお蕎麦ばっかりこんなに早くなくなるのだーー!





2枚目
「茨城・八千代町」品種は常陸秋そば
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一枚目よりやや細めで
やわらかそうに隙間なく重なっている。


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おおおっっ?
予想した香りよりもキュンと強い野性味のあるかぐわしさ。
しかし味わいはこれまた驚くほど澄んで
穀物の綺麗な旨味が舌の上にひろく、さーーーとひろがるのが目に見えるよう。
常陸秋そばらしさは全くないが全然別のすごい美味しさ!!
繊細な細切りで、やさしくぐったりと口中に寄り添ってくるが食感はもっちり。
もう美味しすぎて何がどうでもよくなってきた・・・





三枚目は田舎。
「福井・大野」品種は大野在来種

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陶器の皿上にぬるりぐったりと重なる、
みずみずしい肌。

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わっ わっ
これは!!
なんという濃厚な、美しいかぐわしさ!!
私の知る限りの福井・大野の蕎麦の美しい綺麗なところだけが
ギュウギュウと圧縮されたように濃厚に香っている!!
私の隅々までみっちりと満たされるような、洗われるような美しいかぐわしさ。
今日ここで食べた全てのものが「濃厚なのに澄んで美しい」という
同じ魅力に到達していたことにもあらためて驚かさせる。
ぬるりやわらか、みずみずしく重い肌は
噛み締めると思いの外しっかりとしたコシを持ち、
そこからムワァームワァーと濃厚な大野のかぐわしさが
いくらでも生まれ続ける。
ああああ美味しすぎてもう溶ける・・・




「じん六」が作り上げてきた、

この世界

この時間。

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流れゆくもの、動いていくものは止められないけれど



また次の季節に別の地で会えるまで

私の「じん六」は、ここにある。


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2014年02月25日

浅草「尾張屋」

心境の変化というのはこういうことをいうのだろうか。
私としては大事件といってもいい感覚。

「今日は尾張屋に行こう。そしていつものざるそばを・・
 アレ?なんだか今日は温ものを食べたいかも」
と思ったのだ!

よちよち歩きの頃から連れられて行った「尾張屋」。
雪が降ろうが槍が降ろうが「ざるそば」一筋で来たこの私が
温ものを食べるのはおそらく初めて。

初めての温もの!と思うと、通い慣れた「尾張屋」が突然新鮮な存在に思え
やたら楽しい気分になってきた。


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席についてメニューを見たらまたまた驚きの事件が。
今まで見たことのない「写真つきおすすめメニュー」がメニュー本と重ねて置いてある。
しかもそこにはこの季節限定の温もの、「あられそば」があるではないですか!
もう今日はこれを食べる運命だったのだ。
流石はマイファースト蕎麦屋、ご先祖の代から通っていたことを思うと
私にとっては子宮のような尾張屋さん。
以心伝心だー!


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これまた今まで見たことのない「ゆば喜のそば豆腐」というのも一緒におすすめされている。
へえーっ これはますます大事件ですよ。
是非とも両方、お願いしまーす!


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これは珍しい、蕎麦が練りこんであるタイプの蕎麦豆腐ではなく
「蕎麦の実が散らしてある豆腐」。
豆の味の中で出逢う蕎麦の実の食感。
蕎麦の風味は感じにくいがさっぱりしてとても美味しい。
今後定番メニューになりそう!
いやー、私と尾張屋の長い歴史の中で、今夜は記念すべき夜だなあ。


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「あられそば」 来たー!

どうしよう、お蕎麦から湯気が出てる!(当たり前)


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海苔の香り

濃い出汁の香り

小柱の香り


湯気の中で、子宮の中で
あったかくておいしくて、
なんだか涙が出てきた。




2013年08月の浅草「尾張屋」 めずらしく本店♪
2012年06月の浅草「尾張屋」
2012年01月の浅草「尾張屋」
2012年01月の浅草「尾張屋」
2011年09月の浅草「尾張屋」& レミ・パノシャン・トリオ!!
2011年06月の浅草「尾張屋」(ここは蕎麦屋ではない )
2010年05月の浅草「尾張屋」







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2014年02月16日

中野坂上「ら すとらあだ」


お酒の味は大好きだがアルコールに弱い体質なので
結局いつも小鳥くらいの量でブレーキをかけてしまう私。

しかしお蕎麦については生まれてこの方ブレーキをかけたことがないので
しょっちゅうぐでんぐでんに酔っ払っている。
特に超絶美味しい蕎麦を複数立て続けに出されると
胸の中で爆発した愛と感激をいちいち片付けることができず(本気で言っています)
いわゆるトランス状態、泥酔状態になってしまうのである。

そんな私の泥酔スポット。

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いつもながら閉店しているとしか思えないこの有様。
看板が壊れたわけでも、天候のせいで今日だけ特別にシャッターを閉めたわけでもない。
通常でこの姿なので、店の真ん前に立ってもここを店と認識することは難しい。
初めて訪れてすんなりたどり着ける人は少ないだろう。

しかし、こ〜んな不思議な構えでこの路地裏にぽそっと現れたこの店が
あれよあれよという間に知る人ぞ知る隠れ有名店になってしまったのだから
いい店というのはいくら隠れていても放っておいてはもらえないものなのだ。


店構えは素っ気ないが店内には店主のセンスが随所に光っている。
ワンカップのグラスにセットされた手ぬぐいで
今日もはじまりはじまり〜♪

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この志賀高原ビールのスーパーフルーティーぶりはすごい!
ホップの香りということだが、
私にはまるっきりマンゴーの香りに感じられる。
なんともさわやかな南国感、おいしい〜〜



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豆の味が濃くて私好みど真ん中♪



「ほうれん草のおひたし」
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おひたしが美味しいというのは私にとって大変重要なポイントだが
「ら すとらあだ」のおひたしはいつも本当に美味しい。
この時も一口食べてつい「美味しいっ!」と声に出して言ってしまったが
ほぼ同時くらいにお隣の方も私と全く反応をしたので大笑い(^o^)




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これは先程のような華やかさはなく、シンプルさわやかな苦味感。
これも好き〜



「土佐しらぎく」
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この酒もおいしい!
入り口はガツッとくるがすぐにディクレッシェンドしてくれて
(すみませんお店来る前歌ってたので音楽モードで)
余韻は澄んでいる。
どんどん飲めちゃいそうで危険危険。



「自家製豆腐」
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今日はできたて!まだほっこりあたたかい〜。

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もともと味の濃いここのお豆腐が、あたたかいせいでさらに味わい濃厚に(>_<)
食感はとろんとやさしいのに味はぎゅー!と力強く舌に染み込んでいくのが凄い。
しかも甘ったるさやしつこさはなく、豆の香りがふわーとしてただただ素晴らしい。
さすがは神田「眠庵」仕込み!





「山廃 本醸造 佐久の花」
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これはガツーン、ズドーンと来ます!
大人の味、私はまだ修行が足らんようです。
この猪口もお立ち台も大好き♪♪



「蕎麦味噌」
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お馴染みの「らすとらあだ」オリジナルメニュー。
いわゆる蕎麦味噌とはかなりイメージが違う異国風アレンジだが、これが非常に美味しい。
ケイジャン風味のマッシュポテトと西京味噌を合わせた上に
バーナーで炙ってあるところがまたニクイ。
ポテトとチーズとクミンの香り〜♪



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今日は全種類味見の勢い(^o^)


「蕪と豚肉のかえし焼き」
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煮詰まった返しが甘辛香ばしい〜
甘い味付けは苦手な私だがこれは素直に美味しい。
豚肉は首の肉だそうでむっちりした食感も大変好み。
蕪と合わせるセンスも素敵。





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ここの山葵はとても綺麗でおいしい。
安曇野からやってきました。



さてここからが、冒頭で言い訳した(つもり)の
泥酔物語の始まりである。
たしかに今日はお酒もちょいちょい味見しすぎた感はあった。
でもお蕎麦が出てくるまでは普通に正気を保っていたのだ。

ところが次から次へと感動最高レベルのものすごいお蕎麦出て来てからというもの
何が何だかわからにゃく・・・・


一枚目「埼玉三芳と益子のブレンド」
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ぶっっ

ナンデスカ

この

恐ろしいほど美しい緑色は!!

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ありえない、この超絶美肌!!美しい緑!!
突き抜けるようにフレッシュな、
蕎麦のかぐわしさの美しいところだけを全部集めたような香りが素晴らしすぎる。
ザラッザラの粗碾き肌ながら表面は滑らかで
スルスル〜 と口中を流れるザラザラの感触がみどりの香りのゆめのなかに埋もれて
もはや言っていることが意味不明すぎる。
とにかくもう、ただただたおいしい!!たまりゃーーーん!!!




二枚目「茨城・笠間 水府在来種」
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うわああ
この肌もまたすんごいんですけど・・

もうそんな、立て続けにやめて下さいと言いたくなるほどのこの眺め。

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(>_<)

む むねがいっぱいで

なにがなんだかわかりません

一枚目「埼玉三芳と益子のブレンド」に比べれば
青いフレッシュさが少ないようではあるが
そのぶん白いまるみがあり、やさしさもあり
でもやっぱり十分青くてフレッシュで・・

はにゃはにゃ・・ゆめのなか・・・



三枚目「松本と摩周のブレンド」
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おー
今度は太打ちであります

もう私相当イカレてるので恍惚の国から薄目で遠く見下ろしている感覚ではあるが
えい、手を伸ばしてたぐってみよう!

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しろくむっちりとした肌からただよう、上品なこうばしさ、たくましさ。
噛みしめるとほんのりした甘みが舌にひろがり、私にひろがり

もう
美味しすぎて
何も形容できません、
目が開きません、

気がつくと体が斜めに・・

「身も脳も蕎麦に捧げて三枚目」

私のデンジャラス・スポット「ら すとらあだ」である。




<おまけ>
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毎回撮らずにおられぬ、理容ムトウの手作り感あふれるポスター。
ムトウ理容師の心に響いた切り抜き、結構マメに張り替えられております。





2012年11月の「ら すとらあだ」
2012年06月の「ら すとらあだ」





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posted by aya at 23:26 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>中野区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月13日

鵜の木「はや川製麺所」


夜景の綺麗なお蕎麦屋さんで
向い合って楽しく話していると、
ふいに声をひそめてささやかれた。

「実は、こんなところで何なのですが・・」

どうやら何かイケナイものをくれるらしい。

なんだろう!?と一瞬ドキドキしたら、




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某製麺所のお蕎麦(^o^)

ヒソヒソは、お蕎麦屋さんにおいて
別のお店のお蕎麦を手渡すことへの気遣いだったのでした。

ちなみにこのお蕎麦は、その方に以前から聞いていた
大田区鵜の木の「はや川」という製麺所のもの。
「はや川」には立ち食いの店舗も併設されていて
ラーメン、タンメン、焼きそば、カレー、丼などが人気らしい!


というわけで早速今日茹でてみまして

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むっはぁ〜と香る、小麦粉と蕎麦粉の混じったほっこりした香り。


香りはムンムン系なのだが、甘みはさっぱりとしているところがとてもいい。
しかもよーく味わっていると蕎麦のこうばしさも感じられてくる。
むっちりと強靭なコシがあるのだが、ふるんふるんとどこか軽さもあるので
するするどんどん箸がすすんでしまう。



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ちなみに今日は黒胡麻を擂って
「擂りたて黒ゴマ+黒練りゴマ+蕎麦汁」という黒胡麻汁を作り
そこに紅芯大根を入れて食べたら馬鹿ウマー!
私ってもしや天才!? (←単純ってしあわせヾ(*´∀`*)ノ)


Kさんごちそうさまでした♪




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巣鴨「手打そば 菊谷」求人情報

以前こちらでお知らせをさせて頂いた、
神田「眠庵」の求人の件は無事決まりました。
名店だけに働きたい人はきっとたくさんいるはずなのに
お知らせが目に触れなかったりタイミングが合わなかったり
難しいものなんですね。
それだけに、世の中で出逢うご縁というのは
本当に有り難いものだなあ〜と思います。

そしてもうひとつの名店、巣鴨「手打そば 菊谷」でも
厨房で働く人とホールスタッフを募集しています。
詳細は↓
http://plaza.rakuten.co.jp/osmsobano1/


「手打そば 菊谷」は、今や押しも押されぬ有名店。
常に新しいことに挑戦し続ける店主のこんなモノスゴイ繁盛店に
人手が足りない、そりゃてぇへんだ!
2013年04月の「手打そば 菊谷」


というわけで、
できるだけひろく、情報シェアをお願いいたしまーす!!


posted by aya at 01:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | aya>diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月12日

神楽坂「玄菱」


久々に訪れる、東京屈指の「渋い手打ち蕎麦屋」。

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狙っているのかいないのか、
その外観の渋さ爆発っぷりはのけぞるほど。

松葉色の暖簾を潜る時は思わず
「江戸で浪人数年目の武士」のようなうらぶれた気持ちになってしまうノリが命の私であるが、
店内には入ればその渋さが本物であることがわかる。


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どこまでも飾らぬ店内。
壁に貼られたメニューの、大胆かつ素朴な文字。

演歌歌手のチラシも貼ってある。

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「せいろ」
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箸先からほわぁ〜と漂う、たくましくふくよかな香り。
みずみずしく、口の中でやや暴れるようなやんちゃなコシ。
これだけみずみずしいと味わいが薄く感じられそうなものだが、
その暴れるみずみずしさの中で
じわぁ〜じわぁ〜と感じる素朴な蕎麦の味わいがしみじみと美味しい。


「田舎」
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懐かしい、玄菱の田舎。
これだけの太さは都内でもトップクラスだろう。

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さきほどのせいろと同じ、ふくよかで素朴な蕎麦の香りに加え、
ぐっとたくましく力強い大地のような香りが押し出されるように感じられる。
あまりの太さに箸でたぐるのも「1本つまんでは引っ張り上げる」という「作業」であり
その食感はギッチリネッチリ、モゴモゴもぐんもぐん。

東京に住んでいるとよく「太い蕎麦はあまり好きではない」という声を聞くのだが
私にとっても毎日太打ちだけという生活はつらいだろう(アゴが)。
しかしそういった太打ち苦手の方には是非一度
「スルスルッと食べる蕎麦のイメージ」を捨てていただいて、
「蕎麦がき」とか「お酒のおつまみ」とか
「雪深い山形でおばあちゃんが打ってくれるおやつ」のイメージで食べていただきたい。
するとアラ〜これはなんと美味しい、面白い、味わい深いものではないですか!
これでもかというギッチリネッチリした食感の中から生まれる
蕎麦の旨みの濃さ、美味しさと言ったらない。
またそれを一本一本汁につけて食べるとまさにお酒のおつまみ、まさにおやつの感覚なのだ。

また「玄菱」の汁は久々に舌にチロッと乗せてみるとビックリするほど個性的なのだが、
この太打ちにつけるとその個性を感じないほど
すんなりおいしいのが不思議だ!魔法だ!


ちなみに遠い昔の記憶であるが
ここの田舎はもともとここまでは太くなかったのだが
店主が常連の要望に答えるうちにどんどん太くなってしまったらしい。
素っ気ないようで、意外とサービス精神旺盛な店主なのかもしれない。


私はいつも一人なので「せいろ」「いなか」「しらゆき」の三色を食べるのが定番だが
2名からなら鍋のコースもある。

ここで熱燗は、タマラナイだろうなあ〜〜!



posted by aya at 12:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>新宿区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月08日

広尾「こうもと」

未だかつて体験したことがないほど
入りにくい蕎麦屋である。

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広尾の路地裏。
四角い箱のような外観には、店名を示すごく小さな灯りがあるのみ。
店なのか住宅なのかすらもわからず、
寡黙な扉の奥にはどんな空間が広がっているのか想像もつかない。


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電話番号非公開。
下町出身の私の父などは「蕎麦は庶民の食べ物」という固定観念を捨てる気配がないが
「こうもと」はそういう蕎麦屋とは一線を画す店である。

だからと言って目が飛び出るような高級店というわけではない。
目安を言ってしまえばこの店の「せいろ」は900円である。
しかも大変に美味しい。


たまには、こんな蕎麦時間。

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ずっしりと重く、美しい酒器の景色。
注ぎ口からこぼれるお酒が美しくて見惚れる。

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石川「菊姫 純米」、
一瞬で深くキュッと来てあとをひかない潔い味わい。


お通し「蟹の焼き湯葉巻き」
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焼き湯葉の食感を残しつつ程よくふんわり。
中の「上品なカニサラダ」もとてもおいしく
洗練と家庭的な感じのバランスがいい。


そして今日はこの盛り合わせが凄かった!

「本日のお刺身」
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魚好きの私は思わず身震い、武者震い。
興奮余ってもうワンカット! (*^_^*)

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金目鯛、寒ぶり、〆サバ、アオリ烏賊、大トロ、赤身。
それぞれが最高の美味しさをヒットしている。

実は今日は昼間、寒ブリが買いたくて
スーパーや鮮魚店を何軒か廻ったのだが終ぞ出会えず。
それがなんとここで出会えてしまった上にその見事な美しさ、美味しさと来たら。
ガッツリ脂が乗っているのに
「これ脂なの?」と目がぱちくりしてしまうような爽やか美しい脂感に感激〜



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ワインセラーが凄い店内。
ではあるが、お刺身が美味しすぎてやはり次も日本酒に♪
生魚と日本酒は合いすぎる!!


富山「満寿泉 純米」
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先程の「菊姫」とは対照的に、旨みが横にひらたくじわーんとひろがる。
「酒量だけは小鳥」の私だがナマイキにも
「このお魚には絶対こっちのお酒、このお魚には絶対あっちのお酒」
ということはわかるのが面白い。
大トロには断固「菊姫」であります!



「千葉ヨーク豚の冷しゃぶサラダ」
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しっとり旨みの濃い豚肉ではなく、ごく薄切りでドライな感じの軽い豚しゃぶ。
野菜もフワンフワンとごく軽く、ごまだれもさらっとしているので
全体に非常にさっぱりした冷しゃぶサラダだ。



「飛騨牛スジと豆腐の煮込み」
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どっしりと貫禄のある、趣の良い大鉢でやって来た。
お刺身の時も思ったが、ここは薬味のひとつひとつに
実に美しい仕事がされていて美味しい。





「そばがき」
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わわわわわ
この美しい青さは一体・・・
どうしよう、ものすごいそばがきが来ちゃったみたい・・!!

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あたたかいそばがきなのに、
「クールビューティー」という印象を受けるほどひんやり美しい青さ。
夢見るように顔を寄せれば、ストイックで端正な印象のかぐわしさに
食べる前から惚れ惚れ・・た、たまらない(>_<)
口に含むとまず感じるもっちり感、
そのあと意外なほどホワッと軽い、エアリーな食感に出会い感激する。
ううううう・・・このかぐわしさ、モチほわエアリー・・・
おいしいよう〜〜 来てよかったよう〜〜




「せいろ」
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四角い大きなせいろに厚みを持ってビッチリ。
雰囲気に似合わずお蕎麦の量はしっかり目で嬉しいなあ〜〜

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この「せいろ」、今日は茨城の蕎麦だそうだが
なぜか先程の「そばがき」ほど色も青くないし、
あのようなストイックで端整なかぐわしさはない。
そのかわり極上の更科蕎麦のような、
蕎麦の香りの美しい上澄みだけのようなかぐわしさを
ふわーーーーーっと羽衣のように軽やかにまとっている。
端正な極細の平打ち。
蕎麦と蕎麦が密な束になって重なっているために、
ふんわり空気感を持って盛られている蕎麦と違い見た目以上に量がある。
口に含むとキンと思い切りしめられた肌は束になっていて、
噛み締めた刹那クチュッと、かすかに伸びるようなコシが絶妙。
そのひんやり束クチュ感を楽しむ間じゅう、
私の全身は天女の羽衣のように透き通るかぐわしさに染まっている。
これは稀有な美味しさ!




「かけ」
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出汁が美味しい!
すっきりと澄み渡る・・という料亭のような洗練のうまみではなく、
いい意味での雑味も含んだしっかりおいしい出汁。
しかし甘みはすっきりとしているところがまたニクイ。
ここにも、最初のお通しで感じた
「洗練と家庭的な良さのバランス」を見つけ感心させられる。


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私にとって、蕎麦湯はお酒で、蕎麦汁は極上のおつまみ。
蕎麦湯を飲んでは蕎麦汁をチロリと舌に載せるのが至福の時だが
ここの汁は蕎麦湯に混ぜる一般的な飲み方の方がより美味しく感じた。
いろいろあっておもしろいなあー


入る前は入りにくいが
入ってしまえばオアシスとも思えるほど
静かで、居心地が良く美味しい空間。

お店の人の対応も実に自然で親切で
心に残る瞬間がいくつもあった。




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(面取に弱い私はこの湯呑との時間もしあわせでしたー♪)





たまには、こんな蕎麦時間。

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2014年02月06日

鐘ヶ淵「生粉亭」


闇の中にポツンと輝く、小さな佇まい。

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格子戸や小さな階段などのしつらいが
お芝居のセットか何かのように可愛らしい。




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おすすめメニューが外に書き出してある。
相変わらずリーズナブルだなあ。



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明るく綺麗な店内では
お客さんのおじいちゃんが酔っ払ってお連れの女性になにやら怒っている。
と思ってよく聞いたら全然怒っていなくてこの店を絶賛している。
「ここはさあー、何食ってもンめんだよ!な?そうだろ!そうなんだよなあ!」
(私の父や市川の某蕎麦屋店主もそうだが、下町出身の人は「うまい」を「ンまい」と発音する)
いかにも温和な「生粉亭」店主夫妻はニコニコと親切にもてなしている。


壁の「本日のおすすめ品」
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メニュー本も合わせて見ると前好きだったものがなかったりして
ちょっとメニューが少なくなっちゃったかな?という気もしたが
まずは外で見て美味しそうだと思ったこちらを。

「カキと千寿ネギの天ぷら」
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黄色い衣がいかにも卵リッチそうな天ぷら。
衣がバリンッと厚くて固くて美味しい。
カキの天ぷらは大好物ゆえ大満足。
これで525円なんて凄い!



「ほたて貝柱天ぷら」
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名前を名乗らずにホタテに付き添ってきた相方が大好物のマイタケ!
うれしい。




ここは「せいろ」525円という良心的価格の店ながら
お蕎麦の種類は
「せいろ」
「田舎せいろ」
「生粉打ちせいろ」
と3種類もある。
さすがは「生粉亭(きごなてい)」と名乗るだけのことはある。


私はもちろん「三色せいろ」で!(^o^)

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うずらの卵がついてくるのが
浅草「尾張屋」育ちの私にはシビレるサービス。
うずらカッターはさみ付きだ。(^^)


せいろ(本日はブレンド)
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ふんわり柔らかいが柔らかすぎず、食べやすくて非常によい食感。
香りや味わいはほとんど感じられないのだが
ふんわり感を楽しみつつ、大好きなうずらで美味しく食べる。



「田舎せいろ」(本日は茨城)
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おおっ この色み、透明感は・・と思った通り、かなりの熟成であります。。
食感は見た目以上にしっかりとしてモグモグ噛みしめる感じ。



「生粉打ちせいろ」(本日は北海道)
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二八より色も濃く密な質感だが、これもとてもよい食感。
端整な細切りで程よいコシがあり、なんとも心地よい歯ざわりだ。
かすかに野性的な、北海道っぽい香りがするなあーと思っていたらやはり北海道だった。
噛みしめると粉の味わいも楽しめ、私はこれが一番好き!



私は行ったことがないが、ここは地下にも客席があるらしい。
誰もいないと思っていたら突然お客さんが出てきたりしてビックリする。

今日は赤ちゃん連れの若夫婦が水入らずで使っていたようで
ゆっくりできて、ヨカッタねー(^^)

posted by aya at 22:52 | Comment(4) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>墨田区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする