2012年10月27日
2012年10月24日
千葉・国府台「SOBA ISBA いさと」
その宇宙の入口は、国府台の住宅地の一角に突然在る。
「どうぞ中へ」と、にこやかに誘う黄色い暖簾。
私は吸い込まれるように中へ入る。
ごく普通の民家のリビング。
私はこの窓から差し込む光がたまらなく好きだ。
この光が照らす時間が好きだ。
早く「いさと」のお蕎麦に会いたくて、つんのめって早歩きしてきたので
(私はソ走りと呼んでいる)
10月の大汗をかいた。
で、こうなる。
アルコール類については語る資格がないほど弱い私だが
このビールはとても好き。
日本のビールの中では特別な味がすると思う。
いさとの野菜はほとんどが地のもの、また自家栽培のもの。
いぶりがっこも嬉しいなあ〜大好物。
千葉の美味しさ「ゆでピー」。
「佐久の花」
そして、なんといっても
「いさと」のおつまみといえばはこれ。
「玉子焼」
食べたことのない方には一見普通の玉子焼かもしれないが
側面を見れば脳もとろける〜♪
とろ〜り ジュワァ〜
味噌、黒糖、唐辛子で煮込んだ鴨肉が肉厚の玉子焼きの中にたっぷり入った、
「鴨肉入り玉子焼」。
黒糖のがっしりとした甘みと味噌の風味が独特で
私の周りにも熱烈なファンの多い人気メニュー。
何かの真似ではなく「自分の閃きと信念で突き進む店主」ならではの
アイディア玉子焼だ。
そしてこちらはその店主会心の新メニュー。
蕎麦畑がそのままカタマリになったような、
宝物のように繊細で美味しい「いさと」のそばがきを
油で揚げちゃうとは何事だ!と思うのですが・・・
「揚げそばがき」
わ、わ これは美味しい。
カリッと揚げられたそばがきは濃い汁と油の香りがたまらない、ストレートな美味しさ.
揚げ出し豆腐のように誰もが大好きな「日本のおかず」の美味しさである。
しかも何がすごいってその中から現れるそばがきの存在感。
これだけしっかりした味の中では
蕎麦という穀物の「地味な滋味」は薄れて当然なのだが
それがしっかりと感じられる。
汁と油の美味しさの奥に眠るふくよかな蕎麦の香り・・・
添えられた宇和島のあこや貝も風味豊かでおいしい。
しかし、やっぱり私は
「動物と蕎麦は何も着ていないのが一番好き♪」
「そばがき」
「いさと」の「そばがき」はテーブルに運ばれて尚ぐつぐつしているのが凄い。
(以前動画アップしてしまったほど!)
ほわあ〜〜 温かい湯気が運ぶ香り。
青い野性味をまとったかぐわしさが、私の脳を狙い撃ち麻痺させる。
ふわとろざらもにょの舌触りのあと、
その粒子と粒子は口中で粘りつくことなくあっけなくまばらにほどけてゆく。
蕎麦畑に頭をつっこんだかのような夢、ストイックな味わい。
はあぁ おいひい・・・ふわとろざらもにょ・・・
そして宇宙にたどり着く。
「ざる」
透き通る、いさとの宇宙。
私は宇宙を見ているのか、宇宙の中にいるのか。
吸い込まれそうな肌。その重なり。
不規則なざらつきを持ちつつも、はらふるぷるりとした肌は
どこの蕎麦屋でも感じたことのない、まさにここにしかない宇宙である。
独自の理想を追求し続ける店主に選ばれし美しき蕎麦のみが大切に手挽きされ、
そのままやさしく手をつないだかのような特別の食感。
「いさと」では毎度のことではあるが、私は恍惚降参泥酔状態である。
私の脳内をシャキーッと洗うかのような鮮烈な香りの宇宙に浮かぶうち、
記憶の中で何かがうごめく。
この香り・・
聞けば先日「潮」で出会ったのと同じ、北海道・雨竜町の蕎麦であった。
無論同じ蕎麦であっても、その特性を出しきれなければ
まったく違うところにたどり着くだろう。
卓越した技術を持つ二人の蕎麦職人が打った蕎麦が
姿や食感はまるで違えど同じ高みにたどり着いたという事実。
同じ蕎麦なのだから当たり前といえば当たり前のことなのだが、
私は少なからず感無量となった。
その両者に全く違う印象と感動を覚えつつも、
同じ最高のものを掴んでいると感じることが、凄いことに思えたのだ。
食後にはこんなうれしいものが。
大きな大きな、栗の渋皮煮。
栗は大好きだが甘いものは苦手な私、
そのすっきりさわやかな甘さ加減にびっくり。うわぁ おいしい〜〜
このさわやかさの秘密は?と奥さんに尋ねると
「うふふ〜〜 結構大変なの♪」
とうれしそう。
かわいらしい秘密だな。
静かなリビングに注ぐ、秋の午後の光。
私にとって「いさとの宇宙」とは、その蕎麦なのか
この窓からの光が照らす時間なのかわからない。
ただ思うのは
「いさとの蕎麦にはこのリビングの光の中で出会いたい」
ということだ。
2011年4月の「SOBA ISBA いさと」
2009年12月の「SOBA ISBA いさと」
<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
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2012年10月22日
銀座シネパトス
銀座シネパトス。
2013年3月、閉館。
のどかな円形の外観は古き良き昭和の趣だが、
階段を降りればのどかどころではない。
昭和がぐりぐり煮詰まってものすごい濃い味になって、
この地下いっぱいに染み付いている。
映画館の他に数軒の飲食店が並んだ地下街は
浅草地下商店街ほどではないにしろ、古い建物独特の匂い。
写真に写り込んでしまった人々も
後から見ると驚くほどこの建物にマッチしている人ばかり。
「ここはもう何十年もアタシの遊び場なの」といった感じの
キメキメひっつめ髪に全身ピタピタラメラメおばあちゃんは元不良少女風。
濃い眉と険しい表情が外国の女優のようだ。
古い建物の匂いは映画館の隅々までも染み付いているけれど
劇場内は改装されていて古くなく綺麗。
スピーカーが前にしかないのも
サラウンドスピーカーに慣れている耳には新鮮だ。
ハリウッドが舞台の映画を観て、
アメリカンドリ〜〜ムな世界に2時間浸って出てくると
まず見える現実世界はこんな眺めである。
こっちのほうが夢・・・?
ちなみに今回観た映画はこれ。
80年代ロックンロールミュージカルということでしたが
何よりそのコメディー要素に、声を潜めるのが大変なほど笑ってしまいました。
あっぱれトム・クルーズ、可笑しすぎる・・・!!
銀座のこの場所で、
大手シネコンでは上映していない映画が観られるのも
あともう少しだ。
<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
2012年10月20日
大森「手打蕎麦処 ひらそば」
最近、蕎麦ではないことでちょっと大森づいておりまして・・
その帰り池上通り沿いに見つけた新しいお店。
「平林酒店」と「ひらそば」が2軒並んでいる。
平林さんというお家が経営している2軒かと推測されるが
平林さんが「ひらそば」で平打ちの蕎麦打ってたら超面白いぞ。
うわー ぜったい平打ちがいいな!
俄然平打ちの蕎麦が食べたくなってきた私(^o^)
ピッカピカの新しいお店。
暖簾に描かれた蕎麦の花の絵が、店全体を生真面目すぎず優しい印象にしている。
外観の印象と同様、清潔感にあふれた店内。
奥に長いせいもあってか実に居心地いい空間になっている。
「自家製とうふ」
自家製という言葉に惹かれて頼んだ豆腐。
器とのバランスも非常にいい眺めで、
のんびりといい気分で一口食べてびっくり。
ちょっとちょっと、これは何だか飛び越えた美味しさではないですか。
なめらかクリーミーだけどどこか退屈な流行りの豆腐とは違い、
豆の味の大切な部分がぎゅーっと詰まって、
それでいて程よいなめらか感が心地よい。
これは、次回も絶対頼みたいメニューだ。
「そばがき」
メニューの「もっちりとした食感と蕎麦の香り」と書いてある通りの
もっちりとした粘りと甘い蕎麦の香り。
500円というのも嬉しいではないか。
「自家製とうふ」と「そばがき」の器。
どちらもメニューにぴったりと合っていてとてもいい。
カジュアルなものだが、
大切に選ばれたものであることが伝わってくる。
さていよいよお蕎麦!
平打ちかなあ〜
平打ちだといいなあ〜
「ひらそば」たのしみだなあ〜!
「もりそば」
チガッタ・・・ (^^*ゞ
小さな煮物が添えられているのが
家庭的な優しさを感じて嬉しい。
ちょうど暖簾の蕎麦の花のようだ。
そばがきでも感じた、むんと甘い香り。
口に含むと意外なほど輪郭線がパキッとはっきりとしていて
食感としては(聞こえは悪いが)ちょっと乾麺のようだ。
無論「ひらそば」のは手打ちであるがそれほどつるつると整った肌。
味わいも香りと同様、穀物の甘みがじわ〜と広がる。
一品料理には
「黒むつの西京焼き」
「浅利の酒蒸し」
「岩魚の塩焼き」
「日向鶏の塩焼き」
「鴨ロース煮(フランス産鴨)」
など美味しそうなものが多いし、
「越乃景虎」をはじめ「天狗舞」「八海山」「出羽桜」などの日本酒や
焼酎の品揃えも豊富。
これは夜来るのも楽しそうだな〜
(店内に飾ってあった「六郷とんび凧」。世界に誇りたいデザイン!)
<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
2012年10月18日
代田橋「手打蕎麦 まるやま」
秋だから、美味しいものを食べに「まるやま」に行かなくちゃ!!
新宿から京王線各駅停車でたったの2駅。
「代田橋」駅から歩いてすぐの、私の楽園。
きゃっほー♪♪♪
向こうのテーブルからも「わぁ〜」と嬉しそうな声が聞こえたので
見てみると「玉子焼き」が到着したところ。
ここの「玉子焼き」はファンが多いのだ。
これですコレ!
見るからに美味しそうでしょう?
ふっくらフワン、焼きたての豊かな卵の香りがたまらない「玉子焼き」は
奇を衒わない東京風の甘辛の味付け。
何が違うんだが分かりませんがここの「玉子焼き」はなんだかやたらと美味しい。
普段は関西風の出汁巻きが好きな私だが
「まるやま」の「玉子焼き」は、
ほっこりと心温まるような美味しさがストレートに伝わってくる。
「上喜元 純米」
こういう、ちょっとしたお浸しなどが美味しいのが
「まるやま」の素敵なところ。
そう、お浸しの美味しさというのは非常に大切だと、
私は思う。
鴨も美味しいのだが野菜も美味しい!
そして何が何だって「まるやま」ではコレでしょう!
前にこのブログで「日本一美味しい」と書いたら
「宇宙一です」とコメントをくださった方がいたほどの
「まるやま」の「穴子の天ぷら」。
「穴子の天ぷら」
(これは「穴子天せいろ」の天ぷらだけ先にお願いしたもの〜)
「まるやま」の「穴子の天ぷら」は
まさに直球剛球、バリンガツンとストレートな美味しさ!!
かじりつく刹那の衣の香り高さ。
バリッと潔い音を立てたその衣の美味しいこと。
その中の肉厚の穴子さんの美味しいこと。
ああやっぱり私は、「まるやま」がだーい好きだぁ〜
そして今日はこの人も大好き☆
「ん」
以前にも飲んだことはあるのだが
今日はあらためてこのお酒の美味しさに驚いた。
削ぎ落して奥にふくらむ深い旨味。
そしてさらに「まるやま」で楽しみなのは
壁にかかっている季節のメニュー。
うわあ きのこ、美味しそう!
でもきのこは大好物だけに選べない・・こりゃ選べないよね・・
「きのこのつけ汁せいろ」
「温かいきのこそば」
ってなわけで、両方(^o^)♪
「温かいきのこそば」
もはぁ〜〜〜ん
と温かい湯気が運ぶ秋の香り。
とろみのある汁の中にきのこがたっぷり。
これあたひの分♪
うううう
うううううう
ううううう
うなっております
おいひい・・ハフ あったかい・・・
いっぱいのきのこがめちゃくちゃ美味しいのですが
一緒に食べる蕎麦がまた犯罪的においしい。
こんなにおいしい出汁ときのこの味の中で
何故にこんなにも蕎麦の味がおいしく感じられるのでしょう。
ワーン おいしいよーーーー!!!!
半ばトランス状態でせいろに突っ込みます。
いつも「まるやまの記事を書くときは落ち着いて、平常心で」と心しているのですが
今回もすでにして大失敗です。
目も、心も、奪われる。
透明感のある肌に繊細に散りばめられた無数の粒子、しろき陽炎。
もう、私などが語らずとも写真が十分に語ってくれていると思いますが、
私はこの「せいろ」をたぐりあげたとき
そのあまりの美しい野性味、さわやかなかぐわしさに目がかっぴらいて固まりました。
こんな香り、こんな蕎麦には久しぶりに出会った。
蕎麦という尊い穀物への新鮮な感動。
そして「まるやま」の蕎麦の真骨頂とも言える、美しいざらつき。
ああ困った美味しすぎる。
私はこの蕎麦とずっと一緒にいたい。
この香りと味と美しいざらつきの中にいたい。
「田舎せいろ」
どこかクリーミーな印象の肌。
見た目はごっつく太いが食感はふっくらやさしい。
味わいもほんのりと甘くやさしい。
ウン 今日のはスーパーやさしい「田舎せいろ」だ。
そして先程「両方食べたい」と欲張った
「きのこのつけ汁せいろ」のつけ汁をここでいただきまーす♪
すみません・・頑張ったのですが
どうしてもお蕎麦はつけられませんでした・・・
あんな国宝みたいにだいじなものをドブンなんて、どうしても出来ませんでした・・
つけ汁だけ食べてもすごく美味しかったけど、
やっぱりお蕎麦つけて食べたかったなあー
2012年6月の「手打蕎麦 まるやま」
2011年12月の「手打蕎麦 まるやま」
2011年07月の「手打蕎麦 まるやま」
2010年10月の「手打蕎麦 まるやま」
2010年3月の「手打蕎麦 まるやま」
<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
2012年10月17日
リハーサル for 10/31(Wed.)☆
10月31日(水)Giulietta Machineライブ@渋谷クラシックス
リハちゅう!
どの曲も名曲過ぎる、大好き過ぎる。
一体この気持をどうしてくれようと思いつつ
海のように大きなおいしい水をごくごく飲むように
その中に溶けてゆく。
本当に素晴らしい音楽の中に居る時は
自分なんてものはどこにもなくなる。
あるのは音楽だけ。
自分がなくなって体の中をその音楽が洪水のように流れて
その音楽が私の声帯から音を出している。
今度のライブはニューアルバム「Machina Nosalgia」からの新曲はもちろん
Giuliettaファンにはお馴染み曲の新しいアレンジなども
カッコ良すぎてどうしましょう!!
ほんとにもー、ただただベタボレなのです。
<1012/10/31 Giulietta Machineライブ・出演のお知らせ>
2012年10月16日
大森海岸「布恒更科」
秋の日は釣瓶落とし。
今日は明るいうちから「布恒更科」で、と思ってきたが
もうすっかりあたりは暗い。
この店に来る日は、心が静かに踊る。
この店の時間の中に自分の身を置くことは
特別な喜びなのだ。
完全な、世界。
粋とか風情とかいう言葉は野暮すぎて口が裂けても言いたくない程だ。
厨房から漏れ聞こえる働く人の音までもが、映画のように響く。
今日は「この店に来たら!」と思っている人も多い、
人気の天種「ぎんぽ」が昼で売り切れらしく大変残念・・でも余裕〜
だってここには美味しいものが沢山あるんだから!
「はぜの天ぷら」
景色の美しい食べ物は食べても美しい。
カリッと小気味良い衣、中は繊細にふんわり〜
はぜのほんのりとした味わいがあとをひく。
ここの蕎麦は豊かな量でやってくるので
お蕎麦が全部は頼めないところがちょっとつらい。
「もり」「粗挽き」「生粉打ち」
うーん、今日は「もり」は諦めて
「粗挽き」と「生粉打ち」にしよう!
「粗挽き」
来ました来ました。
「粗挽き」というよりは「太打ち」という印象の
独特の粗挽き蕎麦。
ね、いい盛りっぷりでしょう?
ふっと淡く香る檜のような香り、しっかり噛みしめる食感。
食べても粗いという印象はさほどなく、確かにしっかりと噛む蕎麦なのだが、
これが何だか魔法のように絶妙で
よいしょこらしょと噛まねばならないようなモグモグ蕎麦とは一線を画している。
しなやかで食べやすく、何だかかんだか大変においしい。
この「粗挽き」の汁は「通常の汁」「おろし汁」の2種から選べる。
この「おろし汁」がですね・・大根おろしがざくざくというタイプではなく、
越前おろし蕎麦の汁ようにさらりとした汁で、素晴らしいのでありますよ。
蕎麦だけでこれだけ完全な美味しさであるのに
汁がまたこんなに美味しいというのは私には嬉しくも実に悩ましい。
もー!蕎麦だけで食べたいのに、
こんなに汁もおいしくちゃあ困るではないか・・
ああ しあわせだなあ〜〜 おいしいなあ〜〜
「生粉打ち」
生粉打ちは三つ山盛りでやってくる。
(俳句ではありません)
繊細に重なる細打ちの肌。
こちらはさらに爽やかな檜のような香り!
ほのかにひろがる味わいも、これまた絶妙な食感も素晴らしい。
なんでしょうねえ〜この食感は。
やわらかくふんわりしてるのに全くやわらかすぎず、
コシと意識させないコシは見つめてもそれが何なのか私などには分からない。
ただただ、染み入るようにこの蕎麦の美味しさ、
そしてこの店に流れる時間に浸るしあわせ。
今回は2名で行ったため、ここまでで意外と
「おっ もう一枚いけそう・・?」
ということになり(私がそういう雰囲気に持っていった感もあるが)
最初諦めた「もり」も頼むことに。
わぁ〜い!
見るからに軽やか、自在な曲線を描いて重なる、小慣れた印象の蕎麦。
箸先からほわぁ〜〜と濃厚に香る甘いかぐわしさにまた胸が躍る。
口に含むとやわらかく弾むようなコシが心地よく、味わいもまたしっかりと濃い。
はああ・・参りました。
それぞれがそれぞれに、素晴らしい個性!!
「布恒更科」では夏に「鯵の冷汁」というおいひい〜つけせいろをやっているのだが
今回は時期を逃し残念・・・
ちなみにこれが鯵の冷汁♪
胡麻、ネギ、茗荷と鯵のマリアージュだが
他で出逢うメニューから想像するのとは
ひと味もふた味も違う美味しさに仕上がっているのが
「布恒更科」の奥行というもの。
しかし悩みは、お蕎麦の種類が多い上に盛りがたっぷりなことですね〜
どのお蕎麦も美味しくて盛りたっぷりじゃあ、
種物までたどり着けまへん!!
悩ましさまで完璧な、「布恒更科」なのである。
<1012/10/31 ライブ出演のお知らせ>
2012年10月09日
西国分寺「潮」
毎度おなじみのこの景色。
この外観をこの角度から撮る夕暮れ時は
私の胃の中はほぼ空っぽである。
そのくらい期待でいっぱいの、気合の空腹。
この「たまの贅沢」を最大限に愉しむために、もちろん昼食は食べていない。
(今日は昼間、すごーく楽しいところに行ったのに頑張って我慢した!)
早めの集合であるから、私の胃の中と同じく店内はまだ誰もいない。
私の胃の中がしあわせに満ちてくる頃には
この店内もしあわせなお客さんでいっぱいになるのだ。
梁の上には、空腹の6人をニコニコ遠くから見下ろしているような
店主手彫りの仏さまたち。
さあー こちらも負けないくらいニッコニコで、乾杯!
(今日は一口飲んじゃってから撮ったのではなくあまりの空腹にセーブしました(^^;;))
先付
「秋茄子丸煮 隠元 茗荷」
この、たったひとつの野菜の美しさ、美味しさに初っ端から驚かされる。
夜空のような濃紺の、絵のような茄子は
美しい出汁の風味とともに実に端整に口の中に現れ消えていく。
私が煮た田舎くさい代物とは別物で、姿も高貴なら食感も高貴。
ぐじゃっとしたところがまるでなく、繊細な輪郭を際立たせながら
その身の味わいを繊細に伝えてくる。
秘密は美しく刻まれた肌。
店主が後で「茶筅に包丁を入れる」という言葉を教えてくれた。
さて次の前肴が毎回お楽しみなんだなあ〜
来たー!全長60cmほどの長皿に、3人分ずつ!
前肴
この、宝のような眺め。
皆それこそキャッキャとはしゃぎながら自分の分を取皿に。
これあたひの分♪(≧∇≦)♪
右からご紹介〜
「名残り鮎煮浸し 新鮭子」
名残り鮎は子持ち。
こんがりと遠火で焼いて、黄金色になったところを番茶で下茹ですると渋みが抜けるそう。
山椒の香りが素敵〜
新鮭子は蕪とともに。
「穴子煮凝り 名月玉子」
「うちは穴子の煮凝りは一本でやるんだけど、今は若い人の練習でバラのがあるから、それで」
という穴子の煮凝り。
穴子の煮凝り大好きの私には、
とろーんと「本物の」煮凝り感が大変にうれしい。
刻んで入っている牛蒡の香りが大変に良い組み合わせ。
名月玉子はものすごい出汁のような旨みだったが
聞けば「5分30秒から6分茹でて手のひらの上で切ってお正油を” ひとったらし ”」
それだけ!
魔法である。
「松茸昆布 鱧の卵、煮凝り」
たまり醤油と砂糖で煮た松茸と昆布の美味しさに
日本酒好きチームはびっくり大感激!
鱧の煮凝りは汁を多めにしないとゴムみたいになってしまうほどの凄いゼラチンだそう。
卵も煮凝りも美味しい〜
椀盛り
「雲丹満月 すすき牛蒡 海老麺」
すすきに見立てた牛蒡が楽しい秋景色。
これまたどうにもこうにもノックアウトの逸品である。
私は常々「椀物の汁を一口飲んだ瞬間が日本料理の一番の醍醐味」と思っているのだが
まずその感動が素晴らしかった。二の腕がしびれるような出汁の美味しさ。
その上この椀物の手の掛かっていること、その手間が辿りついた深い美味しさときたら!
アワビのスープで作り塩うにで味つけしたという、めちゃらくちゃらにおいひい玉子豆腐。
その中には生うにが入っちゃっている。
その贅沢なカタマリが全体に蒸されてほにょほにょとあたたかく極上の汁の中に浮かんでいる。
汁と、アワビスープな玉子豆腐とたっぷりのウニが、とろもにょぉ〜といっぺんに口に入ってくる。
もうどれだけ美味しくしたら気が済むのかという美味しすぎ祭。
そこに添えられた海老麺が、これまた手のかかりまくった一品。
卵の白身を加えて作ったという、人生始めての食感。
はああー 毎日これ食べてダメ人間になりたい・・・
向付け
「名残り鱧 あつ湯引き 梅正油 山葵」
桔梗の見事な椀の中。
あつあつ、ふかふかの「名残り鱧 あつ湯引き」。
出来立てを、ということで3名分ずつ運ばれてくれるのがまたうれしい。
わからず屋の私は、今ひとつ鱧の湯引きというものに理解が持てないことが多いのだが
(まず梅肉つけるのがよく分からない、お醤油つけても今ひとつなことが多く、
そのままだとやはり物足りない)
これは大変に美味しい!
ふっくらほこほこ、味が濃いのでそのままがものすごく美味しい。
あまりに美味しくてパクパク食べちゃったところで皆さんから
「梅肉と正油、両方つけると別世界に!」
という聞き捨てならない情報が。
えーやってみたかった! もう全部食べちゃったよー(>_<)
焼物
「紙やき かます 松茸 銀杏 すだち」
テーブルに、秋のお山がそのままやってきたぁ〜♪
テーブルの周りのみならず、店中が豊かな秋の香りにつつまれる。
みんなして猿山の猿のようにドタドタ大喜びしてしまう。
葉っぱの影に、トトロのお土産みたいな紙包み・・・(^o^)
紙包みをウキウキ紐解くと、わーっっ!
こんなに大きな、肉厚のかます!松茸!銀杏!
(お皿に盛りつけてみました)
このかますがまた美味しすぎる。
通常かますは1匹150~160gほどらしいのだがこれは300という極上もの。
だけあって、肉厚で味が濃くその味がやたらにおいしい。
焼き目部分も、中のふっくらした肉質も人生最高と言っていいかます体験。
松茸は「酒で洗って塩振って焼く」。日本料理の人の言葉はかっこいいなあ。
さて、メインともいうべき、本日の鍋!
鍋 「軍鶏 木の子」
この鍋に投入された木の子たちの贅沢さがまたスゴイ。
花びら茸、ショウゲンジ茸、ハナイグチ茸、花弁茸、平茸、アワビ茸、舞茸!!
店主が全国から集めてきた秋のお宝だ。
山椒の効いた汁の、バチーーッと強烈な旨み。
軍鶏まるごととこれだけの木の子から出た出汁であるからその旨みは凄いほど。
軍鶏は全部の部位が入っているのでかけらごとに形も味もぜんぜん違う。
焼き目がまた美味しい!
そして木の子は食べるのも採るのも大好きな私は「鍋の中のキノコ狩り」に夢中!
全部は解明できなかったが
左上のひらひらしたのが花びら茸。
中央上の形も食感もあわびに似たのがアワビ茸。
その右のサンリオのシュガーバニーちゃんみたいなお耳のがハナイグチ。
(乗鞍でたくさん採ったイグチとは味も姿もぜんぜん違う)
左下のまっ黄色のが花弁茸。
ひとつひとつ香りも食感も全然違って、シャクシャクしたりつるつる密だったり
木の子は本当に素晴らしい、妖精のような山の恵みだ。
こちらはおまけで突然握ってくれた、
鰹 握り鮨
脂は乗っていないけど色が大変に鮮やかで美しい鰹。
店主が脂の乗っていない鰹を選んだのもその理由からと聞いて納得だ。
もう、もう、これだけの贅沢、これだけの御馳走を食べたらですよ。
お蕎麦への思いがちょっとくらいオロソカになったっていいものだと思うのだが。
全っ然ならない!
これっぽっちもならない!!
一番好きな人に会えると思うと、私の心は
もうここにはあまり具体的に書きたくないほどドラマチックにときめいてしまう。
あああ 来たぁー・・
しかも今日はまた一段とうつくしい・・ なんておいしそうなのだろう
止「そば」
北海道・雨竜町のキタワセ。
これがまたブッチギリに美味しい・・・!!
今まで食べたもの全部美味しいがやっぱりこれが一番美味しい!!
・・・もう、私は壊れました。
この素敵な香り。
とてつもなく美しい畳。かぐわしき墨。
きっちりと密で自在なコシが、ひんやり奥へと導いていくストイックな味わい。
もう何言ってんだかさっぱり分からないと思いますが
壊れた世界の中では完全な表現となっております。
大変に美味しいということさえお伝えできたらそれでマルでございます。
(もんのすごいお腹いっぱいなのに、食べきれない方からまたまた奪ってしまった私。
それを怖そうに?眺める同席の皆様。どうして蕎麦なら入っちゃうんでしょうね〜(^^;;))
食後のデザートは、一同が最初からどんなものかと
楽しみにしていた注目のケーキ。
甘味
「山葵のレアチーズ」
甘いもの通の方もこの美味しさにはびっくり。
意外な組み合わせのようだが
山葵の爽やかな香りがチーズと大変よく合っている。
辛味はかすかで、ワインにもお酒にもぴったりだろう。
同じケーキを作っている京都有名料理屋のものより「潮」の方が美味しいと言った人がいる、
と聞いたがそれはそうだろう。これはバランスが大変難しそうなケーキである。
もうひとつ、おまけの甘味
「和栗のモンブラン」
「潮」の「和栗のモンブラン」は熱心なファンの多い大人気ケーキ。
栗の味の濃い、濃厚なマロンクリーム。
「こんなに栗の味が濃いのは他にはない!」と皆で唸りながら食べる。
中のメレンゲのような白い生地も無論店主の手づくり。
これはふたりでひとつのおまけのデザートであったから
みんなで仲良く奪いあってニッコニコ。
今夜もまた、店主作や店主コレクションの美しい器にいろいろ見惚れたが
この湯呑には、まいっちゃったなあー
素晴らしい・・
2012年5月の「潮」
2012年2月の「潮」
2012年10月03日
赤羽橋「蕎麦切宮下 三田綱町」
港区三田の坂道にドーンと現わる、広大な西洋屋敷風の構え・・
これは何だろう?
イエ、まさかお蕎麦屋さんではありませぬ。
答えは
なるほど。
元は松平隠岐守の中屋敷があった場所に建てられたイタリア大使館。
広大な庭は澤庵和尚の設計による17世紀造園当時の面を残し
今も東京有数の名園だそう。
日本庭園好きとしては是非見たいものだ。
そのイタリア大使館のまさに真向かいの闇に
鮮やかに浮かぶ白い暖簾がある。
「蕎麦切宮下 三田綱町」。
今やどんどん店舗を増やしている「暗闇坂宮下」が出した蕎麦屋である。
揺るぎなき歴史を持ったイタリア大使館に対峙しても見劣りせぬ存在感。
ここに、こんな簡素で美しい和の洗練を現してくれたことに
感謝したいような気持ちである。
簡素と書いたが空間としてはかなり贅沢である。
入り口付近のスペースのがすでに贅沢。
店内も広々ゆったり。
奥には予約専用らしい個室風の空間が2部屋?もある。
夏のビールは美味しいが秋のビールも美味しい。
(ビールは毎度ひと口飲んじゃってから慌てて撮影する私(^^;;))
「ざる豆腐」
ざると言ったからにはざるで出してくれる。
日本の器ってすごいなあ、美しい演出だなあ
イタリア大使館の人にも見せたいなあ。
クリーミーで甘いなめらかな豆腐。
「そばがき」
かなり大きな器に盛られてきたそばがき。
でもその向こうの片口型の取皿がえらく気に入ってしまい釘付けの私。
蔓植物の絵柄に弱い。形もいい。
ねっちりと密な珍しい質感。
香りや風味は今ひとつなのだが、
粉感もすこし感じる食べ応えのある感じが
田舎らしい趣・・かな?
本日のおすすめメニューより
「津軽鴨 タタキ」
極薄いけれど脂が甘く濃厚。
これはお酒のおつまみとして素晴らしい。
「ざる豆腐」と「そばがき」についてきた汁が蕎麦汁だったので
普通の蕎麦汁がつく「せいろ」ではなく
胡麻汁がつく「胡麻せいろ」を頼んでみる。
むむむっっ
この蕎麦の色は!?
そしてこのツヤ、輪郭線は!?
東京ではあまりお目にかからぬ、やや黒緑がかった色。
なめらかそうに光る肌。
あなた、もしかして・・・?
ふわりと鼻腔をくすぐる香り。
つるりぬるりと口中を巡る、パッキリとした輪郭線。
まさに「布海苔」を用いた新潟の郷土蕎麦である「へぎ蕎麦」にそっくりなのだ。
親切な店員さんが担当してくれたので思い切って聞いてみた。
「これは普通のお蕎麦と大分違いますね〜、布海苔が入っているんですか?」
「それは企業秘密でして」
(◎_◎;) (◎_◎;) (◎_◎;)
もともとは日本料理がメインの宮下の経営であるから
汁がたのしみなところ。
胡麻汁は香り高く甘さもボリューム感も程よく美味しい。
つけて食べていたらつるつるお蕎麦があっという間に無くなってしまった。
がっっ
普通の蕎麦汁はものすごい個性派であります。
なんというか・・・鰹が爆発しております。
それもかなり生々しい感じです。
料理屋さんの出した蕎麦屋ということで
個性を出しているのかな?
こちらは「けんちんせいろ」のつけ汁。
脂が全く浮いていないすっきりと澄んだ汁が印象的。
豆腐は入っておらずそのかわりに一口大のそばがきが入った、
「蕎麦屋のけんちん汁」だ。
食べてみると・・この汁がまた個性ぶっちぎり!!
おそらく先程の蕎麦汁とベースは同じだと思うのだが、
温かくなると鰹の生々しさがより拡大され・・・
具としては精進風なのだが、香りは容赦ない漁師風であります。
この「蕎麦切宮下 三田綱町」は店舗としては
自由が丘にかつてあった「蕎麦 衾」が移転したもの。
自由が丘の古民家の佇まいもすごかったが、
今度のお店も相当ユニークだ。
入り口の風情から店内の雰囲気、お蕎麦まで、いろいろ驚きが多かったが、
こういうちょっと変わったお店があるのも面白いんじゃないかな〜
でも一番のびっくりは
「蕎麦粉がひとかけらも見当たらない、ショーウィンドウのような蕎麦打ちスペース」
だったかも!
外国の人には、何のための空間か
想像つかないでしょうね〜
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