何年か振りなのに
こうして来てみれば前回がつい昨日のよう。
車を降りてまず一番に迎えてくれる山の空気!

川沿いにある「時香忘」は一日中
山の空気と川の音に洗われているかのようだ。

店のエントランスから建物まではだいぶあります

だいぶあります

だいぶあります

とうちゃく〜
来る度に、一体どんな土地の形なのか把握しようと思うのだが
いつものことながら行きはソワソワ、帰りは蕎麦酔いふにゃふにゃで
結局どうなってるのか今もわかりません。
よくわからないままの方が楽しいのかもしれない。
吹き抜けの、気持ちの良い店内。

人気の店だけに午前中から続々とお客さんが集まってくる。
まずは、
「蕎麦がき」


ほわぁ〜と濃厚に漂う、野趣あふれる香り。
極粗挽きの肌がいかにもおいしそう!
噛みしめるとぎっちりと密な食感、モッチリとした歯ごたえ。
ひとつひとつはコロンとコンパクトながら食べ応えのある、
山の地らしい蕎麦がきだ。
そして本日は張り切って予約までしておりまして
3種類のお蕎麦を食べるんだぁー!
うれしいなー!
まずはこちらが前日までに要予約の
「野点そば」


こ、この肌・・・!!
小枝のような輪郭線、ネコヤナギの穂のような白い陰影。
見た目も物凄いだけあってこのお蕎麦、
ただのお蕎麦ではありません。
「蕎麦の実を粉にせず実のまま打ち上げる」というびっくり蕎麦。
蕎麦ウンチクはなるべく知らないままでいようと心がけている私には
さっぱりわからないが何だかものすごいらしい。
つなぎは0.18%だけ「山菜から取り出した葉脈」を使っているそうだ。
「通常の10倍以上の時間をかけてこねあげる
モチモチの食感をお楽しみください」
と説明にある通り、モッチモチの独特の食感。
無数の凹凸が口中を流れ、
ほんのりと野性味のある香りを見つめるひととき。
「夜明け蕎麦」


見たことのない方は必ず驚くであろうこのルックス。
「昼夜蕎麦」という名で呼ばれたりもする、
田舎蕎麦と更級蕎麦を重ねて仕上げた二色蕎麦である。
技術的にとても難しいとされるこの蕎麦を
こちらでは湯捏ねせず小麦粉も入れず
0.12%の葉脈をつなぎとして加え、水だけで打っているそう。
田舎蕎麦のねっとりざらざらした食感と
つるりと流れるような更科の食感が同時に感じられて
何とも珍しい感覚。
田舎らしい力強い香りなどは見た目ほど感じられず
上質の更科蕎麦が持つ上品な美しい味わいが印象的だ。
「極粗挽きおやまぼくち もり蕎麦」


せっかく来たのだから
この店のスタンダードといえる蕎麦もやっぱり食べたい。
極粗挽きの蕎麦粉に0.12%のオヤマボクチを
つなぎとして加え1時間かけこねあげている蕎麦だ。
オヤマボクチとはヤマゴボウとも呼ばれる植物で、
昔から長野の飯山辺りでは
このオヤマボクチをつなぎにした蕎麦が打たれてきた。
今日は「時香忘」の蕎麦としてはどの蕎麦もあっさりめの印象だが
この強いコシとややぬめるような表面のつるり感は
まさにこの店らしい。
噛み締めるごとに淡く浮かぶ香りを追いかけて
じっくり、じわじわ、味わい楽しむ。
素敵な仲間と楽しい蕎麦。
山の中。川の音。
ああ、しあわせなお昼だ。

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