2016年10月07日

静岡・裾野市「蕎仙坊」


何しろものすごい人気である。

その名も「裾野市」であるから富士山にもほど近い山の中。
開店時間の11:30より少し前に着いたというのに、
なんと駐車場に入れない!?
車でないと来られない立地ゆえかなり広い駐車場が用意されているのだが
停められない車が手前で行列を作っている。
店は木々に隠れて建物はほとんど見えない。

暫く待っていたらすでに停めてある人のご親切も重なって
隅に停められるスペースが出来たのでそこに停める。
ふうーそれにしてもすごい車の数だ。
まだ開店時間前なのになんだか心配になってきちゃった・・・



店はこっちかなと小径を入ったが
店に出逢うより前にこんな看板に出逢った。

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日頃からの大行列を伺わせる案内。


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子供の頃の私は完全にアウトです。(武勇伝多すぎ^^;;)



緑に埋もれる大きな古民家。

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高さのある立派な屋根は唐招提寺にすら似て
静かな迫力を持って緑の中に潜んでいる。


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玄関を入ると

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うわー 靴がこんなに!
すごいー
でも田舎のお祭に来たみたいで楽しいなあ。



玄関入ってすぐの部屋は待合室になっているようだ。

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古民家を利用した店舗ならではの高い天井。
待合室も満員でぎゅうぎゅうだったけれど
高い天井と飾られた民芸品に和む。

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待合室はいかにも古民家らしい薄暗さだったが
店内はひろびろ開放的で素晴らしい雰囲気。

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広い座敷は緑の空気に抱かれるような。

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うーん
こんな素晴らしい雰囲気で手打ち蕎麦なんて嬉しすぎる・・・
大人気なのも頷ける!


宗因の句が書かれたお品書きは
「一茶庵」の流れを汲むこの店らしい細長スタイル。

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私のお目当てはこちら。
うふ♡

「田舎」「せいろ」「さらしな」の3種類のお蕎麦が
全部食べられる「3色そば」と
なんといっても「生粉打ちそば ふじのね」!

「天ぷら付」というのもいいですがやっぱり天ぷらは先にいただいて
お蕎麦さんとはおちついて二人きりで会いたい・・・
というわけで「天ぷら」は別に単品で♪


あとこのページも見捨ておけないですね。

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鴨に対する情熱伝わるこのカモカモしさ!
何事もできるだけ素材そのまんまが好きな私としては
やっぱり一番右のがいいな・・いっちゃう!?
休日の贅沢ってことで〜♡


「鴨焼き」
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うわー さすがにゴージャス、肉厚の鴨肉がたっぷり。
むっちりふっくらすごい弾力で食べ応えがある。
しかもうれしかったのはこちらの鴨焼きは大変珍しく
「味付け一切なし」で焼かれているのです。
そこに汁をつけて食べるスタイル。
素材の味好きの私には自分で味が調節できるのは最高〜\(^o^)/
おろしが添えられているもうれしい。




「天ぷら」
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どどーん
こちらももんのすごい豪華ー!
なんとびっくり大きな海老が4本も入っております。
野菜はおくら、きのこ、茄子、さつまいも、みょうが、
それに豆腐とシソのハサミ揚げのようなもの。
この天ぷらがまた大変個性的でして
写真からも少し伝わるかと思いますがフリットのような見た目と質感。
味わいはどこかかっぱえびせんような?
衣に海老が練りこんであるの??と思うくらいのおいしい香ばしさがある。
時間が経ってもパリッパリのままで、
天ぷらというより大きな田舎家でおやつを食べる気分でパクパク食べてしまった。



「三色そば」
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三色はさすがの壮観!
しかし、アレレ!?
なにやら事件が発生している!?


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こ、これはどう見ても「さらしな」ではない?
と思って確認してみたら
本日は「さらしな」ではなく「ゆず切り」になっているのだそう。
ひー そっそれは・・・

「ゆず切り」に恨みはないが
実は「ゆず切り」が及ぼす他のお蕎麦への影響が非常にひじょーに怖い私。
柚子ってかなり香り高いので同じ釜で茹でた他のお蕎麦も
全部柚子フレイバーになっちゃったりするんです・・・
蕎麦の香りが柚子の香りでくるまれて全然わからなかったという泣ける経験も多く、
全部のお蕎麦が柚子の香りならトクしたじゃないかって思おうよ!
と必死で自分を励ましたりもするのだが、
蕎麦そのものの香りを偏愛する私はやはり立ち直れない。
まあそれも一般的には何も問題のない程度の香りの移りなので
私の異常体質の方がおかしいのだ。

我ながら不思議なのだがとにかく私はお蕎麦そのものの香りを感じたいあまり
お蕎麦が出てくるとその瞬間に突然嗅覚がそれまでの100倍かというほど鋭くなってしまい
その空間中のすべての香りが鼻の中に入ってきてしまうのである。
これをわたしは蕎麦犬現象と呼んでいる。
そして蕎麦犬はいつでもどこでも蕎麦の香りが嗅ぎたい一心なので
ゆず切りがでてくるとついどうしても敵意を覚え身構えてしまうのだが・・・


「せいろ」
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わ!! ラッキー!!
こちらのお蕎麦はもしや釜が別なのでしょうか?
全然柚子の香りに犯されておりません!よかった〜
柔らかそうな見た目に反して
一本一本独立したようなパラパラ感があり噛みしめると程よいコシ。
柚子の香りもしないのだがお蕎麦の香りも味もかなり淡め・・と思ったら
食べ進むうちにだんだんややつんとした野生がひそやか〜に感じられてきた。
北海道のお蕎麦のように感じたが
店員さんはみなさんてんてこ舞いの大忙しなので
訊かずに想像だけで楽しんでおきました(^^)



「田舎」
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バンザーイ こちらも柚子の香りはしません!\(^o^)/
甘皮入りの蕎麦独特の甘く濃い香り。
ネチッとした粘土感のある太打ちなのでモグモグネチネチしっかり嚙みしめる、
正統派ザ・田舎そば!
噛みしめるほどに味わいも甘みも濃くなってくる。



そして他の人に襲いかからない?(^^;;)大変良い子のゆず切りさん!

と思ってよく見てみると・・
いまさらなのですがあなたはゆず切りさんではなく
しそ切りさんではないのでしょうか?
この美しい黄緑は・・

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やっぱりそうだー(^o^)
青く爽やかなシソの香り。
これで訳が分かりました。
しそ切りさんはもともと他のお蕎麦に香りが移りにくいエライ変わり蕎麦さんなので
それで今日は「せいろ」も「田舎」も純粋にその個性を楽しめたわけです(^o^)
こちらは3種の中で一番儚く繊細で乾きも早いので急いで食べました!



そして待ちに待った本命の方が登場しました。

「生粉打そば ふじのね」
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わわわわ 美しい・・・・
遠くから見てすら別格の存在感を感じる
この美味しそうさ!!

うっ嬉しくて胸が・・・ほんとうにふるえる・・・(>_<)♡


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あああああああ

これは

別世界すぎます

このすばらしいかぐわしさ!
在来種的なフレッシュな野生味に加え
甘皮が入ったようなたくましさ香ばしさがある稀有なかぐわしさ。
香りだけで脳が打ち抜かれた思いだが食感も素晴らしい。
これだけの細打ちでありながら粗挽きで素朴な肌、
このたまらんニクさはなんでしょう!
こんなに繊細なのに粗くて素朴。
こんなに繊細なのに心憎いほどのコシがある。
あああ 今日あなたに会えてよかった・・・
今日今までの時間はこの蕎麦に会うためにあったのだと思えるほど
全身を駆けるよろこび。
北海道・名寄の蕎麦。



山中の古民家でのんびりお蕎麦を、というイメージからすると
今日は大行列大混雑に驚かされたので
人気が出すぎてしまうのも大変だなあと思わずにはいられない。
しかしやはり都会での混雑などとは全く違って
ここは席と席の間がうんと広くスペースがとってあるし
座卓もとても大きいので席ではゆったりとした時間を過ごすことが出来た。
混雑してはいたが山の中の大きな古民家だけに
思い返すとみんなで仲良くお祭のように集まっていた感じで楽しい。



でも空いている時に来られたら、
きっと本来の、静かな美しい時間に出会えるんだろうな・・・

ここは11:30〜18:00までの通し営業なのが素晴らしいので
どれかのお蕎麦が売り切れたりさえしなければ
空いた時間を狙いたい!
でも売り切れコワイ!

ああ〜 切ない蕎麦乙女心〜







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(私が座っていた席から見える位置に小鳥さんがあそびにきてくれました♡)


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2016年08月28日

静岡・富士宮市「そばの実 一閑人」


牛乳屋さんに見えるところもお気に入りなんです。

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濃い緑の香りでいっぱいの朝霧高原。
「牛乳と牛乳風呂のお宿」
ってのも大変気になりますが私の目的は一階のこちら!

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入り口を入るとこんな美しいスペースが。

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ソトだけどナカなデザインが素晴らしい、美しき待合空間。
普段の行列っぷり人気っぷりが伺える。


店内は客席を詰め込まず
うんとスペースをとって余裕ある空間にしてある。
広々と清潔感にあふれ実に気持ちがいい。

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(この日も大人気につき満席大賑わいだったが
帰り際やっと空いたチャンスに撮影(≧∇≦)/ )

私は限定の「玄挽きせいろ」がまだあるか心配でたまらなかったのだが
まだあるそうでよかったぁー!!
お蕎麦の神様ありがとう(>_<)♡



ここで外せないのはこれ。
このアイディアメニューのインパクトよ!!

「牛すじのそば湯炊き」
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牛すじ大好き、蕎麦湯大好きな私には
そんなのズルイ〜と食べる前からヘナヘナ、絶対逆らえない最強の魅力!!

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ぬっぱぁ〜と超濃厚な蕎麦湯の中の牛すじは脂っこくなくやさしい感じ。
しかし肉の旨味はしっかりとしていて
あたたかくもたーっとした蕎麦湯が食べ応えありつつ全体をマイルド〜にしていて
これは冬に風邪ひいたときに思い出したら食べたくて涙でるかも・・
おいしいなあ〜〜!



「そばがき」
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ふわり折りたたまれた羽衣のような、上品な姿。

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もったりと唇にふれてくる、見た目以上になめらかな肌。
香りは穏やかだが見つめるとやや強い野生が淡く感じられてくる。
味わいもやさしく上品なそばがきだ。




「生粉打ちせいろ(十割)」
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木のお盆、木の丸せいろ。
店の作りもそうだが
美意識の高さを感じる演出で美しい蕎麦がますます美しく輝いて見える。

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最初に感じた香りは穏やかだがそばがき同様だんだん
個性的な野性味がかすかに感じられてくる。
舌触りはハリハリとはっきりくっきりした輪郭線だが
噛み締めると硬さはなくそこからぎゅうううと深まる甘みがすごい。
福井・丸岡の在来種。



「玄挽きせいろ(限定)」
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全世界に誇りたい、圧巻の美しさ。
木の机、木の器、そして素朴な蕎麦の肌。
この店の美意識の高さに、食べる前から胸がときめいてどうにかなりそう!!

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ゴージャスに散りばめられた粗挽きの粒。
ジャリ感はほとんどなく見た目のわりに上品な食感。
箸先で寄せた香りはかすかに熟成味を帯びていて
かみしめた奥からこれまたすごい甘みが現れる。
試しに珍しく汁もつけてみたがその汁の味わいにも全く埋もれないすごい甘みだ。
こちらは茨城の蕎麦。


「そばの実 一閑人」は蕎麦汁が大変美味しい。
出汁の香りがでしゃばりすぎずに深くまろやかで
全体のまとまり感がすばらしい〜おいしい〜〜
うーん これだけつゆが美味しいと
蕎麦湯で長居したくなっちゃうではないですか・・・


蕎麦湯はどっしりポタージュ系。

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デザートです〜と出してくれた
「自家製豆腐黒蜜かけ」。

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これがまたすっごくおいしい!
甘いものは99%苦手な私だけにビックリ。
器もいいし、素晴らしいサービスに感激。


先程まで店じゅうてんてこまいで大忙しのランチ時だったが
今は落ち着いた昼下がり。


それにしてもピーク時のパートの女性(おばちゃま♡)たちの俊敏さ、甲斐甲斐しさは
見ていて気持ちいいほどだったなあ〜〜
「キコゲンガキイチ〜!」
って暗号みたいだけど、メニューから解読できますね(≧∇≦)/



(おまけ)
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入り口の石臼。
なんかちっちゃい方の子がおもしろい〜〜(≧∇≦)♡


posted by aya at 07:25 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月27日

静岡・富士市「蕎麦切りこばやし」さようならの時


好きだったお蕎麦屋さんが閉店してしまうということ。

私にとってそれは悲しいとか寂しいとかという感情を超えている。
もちろん悲しくて寂しいのだが
その店が今まで紡いできたものの尊さを思うと
その時間が終わることもひとつの大きな「仕事」に思え、
身を正して受け止めたいような気持ちを覚えるのだ。

拙著「蕎麦こい日記」にも書いたことだが、なぜ私が蕎麦について書くのかといえば
動いていくものは私には止められないから、
お蕎麦屋さんの時間や味はどこにも残らず毎日流れていってしまうものだから、
それを欠片だけでもすくいあげて何かにそっと仕舞いたい。
そんな気持ちで書いているのだ。



この7月で営業を終える静岡の超名店「蕎麦切り こばやし」。

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名店だけに普段から県外からのお客さんも多い店だが
このところは閉店の噂を聞きつけた長年のファンたちで連日開店前から大行列!
というわけで今日は開店1時間前を目指してやってきてしまいました(張り切りすぎ(≧∇≦))。



案の定開店時間前にはものすごい数の人が集まってしまい駐車場はいっぱい。
すごすぎる〜〜
待合スペースも人でいっぱいなのでみんな名前を書いて車に戻って待っているみたい。


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張り切りすぎた私は一番にご案内いただきました(≧∇≦)/

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心を澄ませて「蕎麦切り こばやし」のメニューを眺める。
これが最後と思うと感無量の思い・・・

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感無量とは書いたがやはり眺めてしまうと一瞬でかき乱される我が煩悩。
だって見てくださいよ、お蕎麦だけで

「香味」
「風味」
「雅(曜日限定)」
「吟醸黒(曜日限定)」
「せいろ」

と5種類もあるんですよ!
この中から「ん〜、私はこれ。」と普通に一つを選べる優雅な人に私はなりたい。
4つあるなら4つ全部食べたい、5つあるなら5つ全部食べたい!!
これがラーメンだったらなんにも知らないし
入門編のをひとつ優雅に注文するんですがね・・(≧∇≦)


店員さんにびっくりされないようできるだけ優雅に(?)今日あるお蕎麦を全部注文して
できるだけ優雅にお蕎麦を待つ。(禁・過興奮)
「蕎麦切り こばやし」名物、テーブルの上の蕎麦粉のディスプレイを眺めつつ・・

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き きた

「手挽き極粗挽き太打ち」の「香味」。
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おお〜なんだか今日のは色が濃いめ!


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うっはー・・・
何度見ても呆れるほどすごい、「蕎麦切り こばやし」の蕎麦肌。
特にこの「香味」は「蕎麦切り こばやし」の数ある蕎麦の中でも代表的な蕎麦であり
私の中でもこの店のイメージとなっている、他にはない美しい蕎麦だ。
太打ちの肌にごろごろと埋められた無数の大きな蕎麦粒子。
でありながら輪郭線はゆるやかな曲線を描き優しい印象だ。
今日のはかなり黄色味の強い肌なのでものすごい香りを想像したが
手繰り上げるとおおお〜っ 意外なほど白く美しい香り!
見た目の通りすこしぬめるような舌触りで
噛みしめると粗挽きの粒と粒がぎっちりしっかりつながった固めの食感。
味わいもすっきりと透明なイメージなのだが
モグモグ噛んでいると後味がいきなり熟成のようにムンと濃厚になってくるのが楽しい。


「手挽き粗挽き細打ち」の「風味」。
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あああああ

なんという なんという その肌の超絶美。

見つめるほどに私は吸い込まれそうになる。
これが最後だなんて信じられない気持ちだ。

手繰り上げるとこちらも白く美しい香り、しかしその中に透き通るような野生を感じる。
しっかり固めの肌に大きな蕎麦粒子を無数にはらみ
ハラハラパラパラとした舌触り。
私はこの蕎麦を食べるといつも、ポコポコとたくさんの芽をつけた雪柳の枝が目に浮かぶ。
噛みしめるとこれまた透明感のある味わいがじわ〜とひろがるのにハッとさせられる。
「透明」と「じわ〜とした味わい」というのは自分の中では共存しない要素に思えるだけに
新鮮な感覚だ。

あああ おいしい・・
嬉しくてありがたくてしあわせすぎる・・・
早起きして来た甲斐があった(≧∇≦)!!



「挽きぐるみ 喉ごしのよい蕎麦 木・金・土曜日のみ」の「吟醸黒」。
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透明感のある黒い肌をつやつやと輝かせてやってきた端整な極細打ち蕎麦。
手繰り上げると わあ〜 これまた面白い。
甘皮を挽きこんだ黒い蕎麦らしい黒い香りとたくましさが、美しい透明感の中にある。
珍しい感覚だが考えてみれば姿そのままの味なのだ。
つるつるムニムニ極細の食感で、姿も香りも味わいも黒く透き通っている・・・



「十割」
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いやーーーん うれしい〜〜!!
粗挽きのイメージが強い「蕎麦切り こばやし」ではあるが
この微粉の「十割」おいしいんですよね〜〜!

極細,繊細な蕎麦をたぐれば
濃厚に香る、ザ・スタンダードな誠実な蕎麦のかぐわしさ。
なめらかで密な肌は私の大好物、中国の干豆腐にも似て
クリーミーで少しパキパキした印象。
味わいも濃厚で、食感のせいか味わいもちょっとミルキーな感じがしてきてしまう。
おいしい〜〜 おいしいよう〜〜・・・


もう今日はどんだけ蕎麦まみれなのかというほど食べまくっておりますが
ついに、スペシャルな蕎麦の登場なのです・・

じゃじゃじゃーん!!


「手挽き極粗挽き太打ち」の「香味(熟成)」。
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このお蕎麦は店主自ら持ってきてくれました。
すごい、遠目にもわかる迫力の熟成感!!


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うっわー これは面白い、すごい!
今日は食べた蕎麦すべてに共通する「蕎麦切り こばやしの透明感」に感嘆してきたが
熟成まで透明感があるとは。
正直言ってかなりキョーレツな熟成にも数限りなく出会ってきた私は
ちょっと熟成恐怖症気味なのだがこれはなんと美しい,澄んだ熟成なのだろう。
アルミ箔にくるまれて4日間7度で眠っていたというのが信じられない清澄さだ。
しかし熟成は熟成なので味わいにはものすごいパンチがあり
噛みしめるとビーフジャーキーをも思わせるようなものすごい旨みがあふれ出てくる。
見つめていくとちょっと味噌感も感じるほどなのに
でもどこまでもすっきり清澄なのが素晴らしい!!



「鴨せいろ」
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最後に普通の「せいろ」を「鴨せいろ」にして頼んでみました。
これがまた凄かった・・・びっくりした!


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二八の「せいろ」は美しく端正な極細切りでのびやか、なめらか。


でもなにより衝撃的だったのはここの「鴨汁」!!

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・・・私、今までの「こばやし人生」を後悔しました。
ここでは沢山あるものすごいお蕎麦達に目移りして蕎麦のみに猛進してしまい、
こういう種物やつけ汁のものを頼んだことがなかったんです。
なのになのに、ナンデスカこの恐ろしいほど美味しい鴨汁はーーっ!!
なんというか、ただただ味付けの妙としか言いようがない。
出汁のうまみ、酸味、甘み、香辛料。
香りをかいだだけで「ウワこれは!」と惹きつけられ
その味のあまりの美味しさに大感激。
今までお蕎麦屋さんで食べてきた鴨汁の中でもベスト3にランクインさせたい
強烈な魅力だった。

うーーーん!!
「蕎麦切り こばやし」はこういう意味でも超名店だったんですね・・
全然知らず大損しておりました。
すごすぎる〜〜!!(>_<)


厨房では店主が千手観音のような早業で仕事しまくっている。

営業中も忙しいがこんなにたくさんのお蕎麦であるから
一体店主は毎朝何時に起きて仕込みをしているのか想像もつかない。

いつも遠くからその姿を眺めてきたが最後なので記念に一枚、
その背中を撮らせていただいた。

これだけの世界を作り沢山の人を喜ばせてきたその姿を忘れたくない。


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名残惜しいが外の行列は長くなる一方なのでもう出なくてはならない。
この店を、去らなくてはならない。


長年お疲れ様でしたとか、悲しい寂しいとかよりも

ただただ、

「おいしかった!!」


忘れられない最高のお蕎麦を、ごちそうさまでした。




(帰り際の駐車場・・・住宅街の奥の奥なのにすごいっ)
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2010年10月の「蕎麦切りこばやし」


posted by aya at 09:40 | Comment(5) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月17日

静岡・葵区「手打ち蕎麦 たがた」


知る人ぞ知る名店ではあるが、
それにしてもものすごい人気である。

開店15分前、11:15。

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行列だぁー!
この暑い中本当に凄い。


15分ほど待ち、いよいよ開店時刻。
ゾロゾロと前の人に続いて入店し、なんと私はギリギリ最後で入ることができた。
入り口で靴を脱いでカウンター席へ通される。

厨房は既に賑やかにフル稼働、その上にまた注文がどんどん入り物凄く忙しそうだ。


ここは何が有名といってやはりその蕎麦である。
店主自ら全国の畑を飛び回り、この店にとっては地粉とも言える「静岡在来種」をはじめ
これはという玄蕎麦を常時多種ストックし、最高の状態で貯蔵、製粉、手打ちしている。

メニューには「もりそば」だけでも
「静岡在来(土曜日・平日)」1000円
「焼畑在来(日曜日)」1500円
「二八」700円
と三種類もある。

本日は平日なので「静岡在来」と「二八」だ。
楽しみだなあ〜〜


お蕎麦だけでなく、メニューには美味しそうなものが沢山あるー♪
「そばがき」「そば刺し」「もつ煮豆腐」「出し巻き玉子(京風)」
など頼みたいものがいろいろあったので張り切ってお願いしようとしたら、
が〜〜〜〜ん。昼は混雑するので全て頼めず残念(>_<)

しかし個々のメニューは見るほどに面白く
珍味の欄にある
「めふん(鮭の腎臓の塩漬け)」
「梅ヶ島わさび漬け」
「かつおの塩辛泡盛漬け」
なんてのも興味深いが、とにかく私の目を惹いたのが玉子焼きの種類の多さ。

「玉子焼き(関東風)小」
「玉子焼き(関東風)大」
「出し巻き玉子(京風)小」
「出し巻き玉子(京風)大」
「三つ葉出し巻き玉子」
「ちりめん出し巻き玉子」
「明太子出し巻き玉子」
「出し巻き玉子 磯海苔あん」

ってどんだけー!
すごい、やっぱり「たがた」さん面白すぎる! (≧∇≦)


厨房にはそれこそ千手観音のように料理しまくる店主の他に
スタッフが三人もいる。
店はそう広くはないのでちょっと多すぎるような印象も受けたがどうやら二階もあるらしい。

私以外のお客さんはほぼ全員と言っていいほど
「平日昼十二食限定ランチ蕎麦セット(天丼+蕎麦)」か
「海老天もり」とか「ぶっかけ冷天おろし(超おいしそう!)」などを食べている。

私もそれらには大変興味がある。すごく食べたい。
でも・・でも・・・私のお腹は本日とっても忙しいんです!


もりそば「二八」

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う うわあ〜〜 きちゃった!
なんてきれいな色・・・ おいしそう!香りそう〜〜〜!!
本日の二八は福井大野。


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あああああ なんてすばらしい・・・
ふっくらと豊かな野生の香り。
口に含んだ瞬間はハラハラと独立した輪郭線から軽い印象を受けるのだが
噛み締めるとむっちり豊かなコシ、重量を感じる。
かすかなジャリ感もあり、そこからじわぁーっっと溢れ出す旨みがたまらない美味しさ!!
 
うわーん おいしいよう〜〜!! 

来てよかったようーーーー
おーん おおーーーん(遠吠え)





もりそば「静岡在来・十割」
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わっ わっ どうしよう、
これはさらに美味しそう、うれしすぎて爆発するーー!
このおいしそうさは危険レベルだ。

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見ているだけで胸が高鳴る、たまらぬ美肌。

箸先にたぐりあげた刹那、煙るような素晴らしい香ばしさが
パシーンと私の脳まで届き目がかっぴらく。
期待していたとは言え、思った以上にものすごい蕎麦!
口に含むと味わいはすっきりなのだが、その香ばしさはずんずん深まり続け
こんな深い香ばしさには近年出会ったことがない。
粗挽きのジャリは二八よりさらに楽しいのに、食感はこちらの方がやさしい。

あああ〜〜〜〜

おおおーーーーーーん

と遠吠えしたいのを無意識に必死で押さえ込んでいたせいか
気づけば私はカウンター席で上半身だけでぴょんぴょんしてしまっていた。
変なお客さんだけど止められないからそれくらいは許して欲しい。

だってお蕎麦がおいしすぎる!!
これは大変な蕎麦に出会ってしまった!!

本日の「静岡在来」は「清水(地区)」だったが
驚いたのはなんと静岡在来だけで全部で9種あるのだそう。
えっそんなに!!( °o°)

店主は、江戸蕎麦のルーツと言う説のある駿府の蕎麦の絶滅を危惧し
その美味しさを残し自然な農法(焼畑)を復活させるための活動を続けてきた人物。
静岡の山間部にわずかに残る幻の、大変珍しい在来種が
ここにそんなにたくさん揃っているのはそういう理由からなのである。



ふと周りを見回すと先程まであんなにぎゅうぎゅうワイワイ賑わっていた店内が
私が蕎麦に耽溺し第三宇宙を彷徨している間にすっかり空いて静かになっている。

千手観音のように忙しかった店主も今は時間がありそうだ。

そこであきらめの悪い私はダメモトで言ってみた。

「あの〜〜う、そばがきは、お昼は、無理でしょうか〜〜」

「あ、今ならできますよ」

( °o°)

(≧ω≦)!!

(≧∀≦)!!

やったぁーーーーバンザイ!!ヽ(≧∇≦)/
言ってみてよかったーーー!


「そばがき」
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きゃ〜〜 うれしい
わ〜〜〜 かんげき
本日は伊那の信濃一号。

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ふぁーっと広がるさわやかな野生のかぐわしさ。
香りも良いのだが食べた時の味わいの濃さに感激。
味わいがぎゅううと舌に濃厚にひろがる!
エアリーではなくふっくらもっちり、食べ応えのあるそばがき。

ああああ なんとめくるめく ものすごい蕎麦達・・・


鰹ががっつり効いたやや甘めの汁とともに蕎麦湯タイム。
あまりの感動にへにゃへにゃだったらしく蕎麦湯の写真がない。


静岡在来だけであと8種類もあり、全国入れたら20種類近くものも玄蕎麦を集めているという店主。
日曜日の「焼畑在来」も食べてみたいし、
もう、もう、どうしてくれる。


誘惑の「手打ち蕎麦 たがた」である。




posted by aya at 11:37 | Comment(8) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月20日

西焼津「そば屋 案山棒」


「案山棒(あんざんぼう)」とは変わった店名である。


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わあー 駐車場もお空も広いなあー
ぽかぽかの春 気持ちいいなあー

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近づいてみると

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わーお
なんですかこのユニークな、ラピュタの城跡みたいな地上絵は!



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面白い・・・・・
楽しいエントランス!!



店内に入ってさらにびっくり。

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えええ

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えええええ

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自由で素敵なデザイン。
楽しいお蕎麦屋さん!!



お蕎麦屋さんだがギャラリーと雑貨屋さんも兼ねているらしい。

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店主は元?舞踏関係者?ということなので、ギャラリースペースは
ダンススペースにもなるのかな?なんて思ったり。
ライブもできちゃいそうだな〜〜♪




面白いのは店舗デザインだけではない。
この「案山棒」はなんたってコレで有名である。

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朝蕎麦体験は何軒かあるけれど、それはそれはたまらなくいいものなのだ!
朝というまっさらな時間に、愛する人にひそやかに逢うときめき・・・
あー ここでも朝蕎麦してみたい(>_<)♪




そして壁のメニューはさらに・・・!!

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謎と期待で頭がぐるんぐるんになってしまうメニューが3つも!!
「白なんばん」って!
「糀納豆そば」って!
「炭くるみそば」って!
これは気になるではないか・・・
どんなものか是非訊きたい・・・しかしそれにはお店が忙しすぎる・・・(>_<)


そしてこんなにも興味深い気になりまくるメニューを差し置いて
何時如何なる時も同じオーダーをする私はやっぱりどこかおかしいに違いない。

「せいろ」
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明るい色の笊の上におおらかにひろがってやってきた蕎麦。
きれいな緑色が嬉しい〜

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ふわーっと軽やかに香るちょっと珍しい野性的な香り。
イメージは干し草のような青畳のような感じで、
フレッシュに吹き抜けるような鮮烈さが素晴らしい!
意外にも水分少なめのピタッとした肌で、
口に含むとこれまた意外にも歯ごたえのしっかりしたコシの強い蕎麦。
とにかく相当足が早い蕎麦のなので、すぐにぺたぺたした感じになってくるのだが
香り濃厚、味わいも深く大変おいしいのであっという間にぺろり!

あーあ どうしていつも私のお蕎麦だけすぐになくなっちゃうのかなあー
私のお蕎麦を奪うソバカマイタチがいるとしか思えない。



「田舎そば」
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こちらはガツンと太い、黒めの太打ち。

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わわわわわ
こちらもまた香りが素晴らしい〜〜〜!
見た目のイメージ通りのこうばしい香りなのだが、
そのこうばしさがまるで焙煎したかのような深くてたまらなくいい香りで
しかも深いのにフレッシュに軽い。この香りはすごい!!
太打ちで固さもしっかりあるので口中で暴れるほどだが
押さえつけてモグンモグンと噛みしめると甘みも味わいも更に濃厚になっていく。
うおーん おいひいなあ〜・・


店舗やメニューのユニークさからすると
お蕎麦は奇をてらわぬまっすぐな美味しさだったが、
蕎麦汁は相当個性的な味わい。



蕎麦猪口の類はこの店にぴったりの可愛らしさ。
しかも名入りのオリジナル♪

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次回は朝そばタイムを狙うか、
今度はもっと空いている昼間に来てあの気になりまくる謎の3メニューを解明するか・・


迷うところだ!!





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2014年10月29日

伊豆急下田「いし塚」


実はかなりの温泉好きの私・・
だって蕎麦の感動は首から上だけで感じますけど
温泉は全身じゃないですかー!
泉質第一、源泉かけ流し命( •̀ .̫ •́ )✧


伊豆の最南端に大・大・大好きな温泉があり、
何度行っても湯船でさめざめと感動泣きしたくなるくらいなのだが
東京からだとやっぱり遠い。
しかも泉質を考えるとなるべく早い時間に行きたいため
いつもお昼のお蕎麦に困ってしまう。


というわけで温泉の前は大抵ここ♪

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休日ともなれば観光客で大行列、大人気の「いし塚」。

店内は大きな座敷になっている。
今日は開店直後だったのでなんとかすぐに座ることができた。


ザ・一茶庵系な堂々たるメニューがかっこいい。

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私たちが座ってすぐにもう入り口付近には行列が出来始めた。


イケる口の親友深雪ちゃんはこんなことしてます。
温泉前に「国光の純米」。イヨッ粋だねっ(^o^)

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深雪ちゃんがとった
「そばとろ」
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うっはー 大きな器にたっぷりとろろの雪景色。
おいしそぉ〜♡


お座敷担当のおばちゃま達は甲斐甲斐しくテキパキ働いているのだが
私たちのテーブル担当になったおばちゃまがなんともおちゃめ。
余計な愛想は使わず、でもついいろいろお世話したくなっちゃうタイプらしく
「これは、これで食べる!」「これはこうして!」と薬味などの食べ方をそれぞれ指導!
しかし言った後であまり断言してしまった自分にハッと気づき
「ごめんね、では、ここに置いていきます」
と言いつつサーッと次の仕事に走っていく。
その生真面目な言い方がなんとも憎めない感じで可笑しい。



そして私は寝ても覚めていつもコレ。

「おせいろ」
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清々しく目に映る端正な姿、明るい色の肌。

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ふーっとただようさわやかな、すこし野生も感じる蕎麦の香り。
繊細な輪郭線、王道のコシ。
二八らしい甘みや味わいもさっぱりと感じられ
ひんやりとした夢は瞬く間に消える。

本当は「そばがき」も注文したかったが混雑時はできないので
次回こそ是非空いている時に来たいものだ。



外の行列もすごいことになっているし長居は禁物。


さぁー 温泉だ 温泉だぁ〜♡





帰り「黒船クルーズ」もしちゃった!
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2012年08月14日

静岡・島田市「某写真撮影お断り店」


あまりにも名高く、大変に美味しく、
雰囲気がまた素晴らしい孤高の名店である。

以前は「写真撮影お断り」ではなかったが
何らか迷惑することでもあったのだろう。
確かに、古い日本家屋の静謐な空間に
カメラのフラッシュやシャッター音は似合わない。

ここはまた奥さんの接客に独特の雰囲気があるので
私としてもその邪魔はしたくない。
静かで、隅々まで丁寧で、しかし威厳すら感じる立派な落ち着き。


でもね、私のカメラは超無音な上に、
いいことだか悪いことだか誰にも気づかれぬよう撮るのは大得意なんです。
名前さえ出さなければ、ゆるしてもらえないかしらん〜


「ざるそば」
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古き良き昭和の映画のワンシーンのような。


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これ以上の新鮮さがあるかと思うほどの新鮮なかぐわしさ。
最上級の美しい蕎麦の香りに一瞬でノックアウトされ
食べもせぬうちから全く降参だ。

きめこまやかな肌はつやつや、つるつるとしているが
いわゆる水っぽくつるんつるんの素麺みたいな蕎麦とは違う。
それは肌の表面の水の輝きではなく、
密度濃くしっかり打ち込まれた肌そのものの静かな輝きなのだ。
恍惚の舌触り。
脳を染め尽くす王道、最高の香り。

はあああ・・・
毎度のことですが、ここの蕎麦には本当に参ります・・・・
(一瞬でこそっと撮るのでなければ最高の美人さんぶりが伝えられたのにな〜)




「手挽き蕎麦」
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うああああ・・

このときめきを私はどうしたらいいのだ!!

むわぁ〜と濃密な香りながら、これまたすんばらしいフレッシュさ。
密度濃くつるつるしているのは「せいろ」と同じだが
こちらは噛みしめても歯が届かない。無論固いのではない。
これだけ繊細な蕎麦ながら見事なまでにぷりんぷりんとしたコシがあるのだ。



言うまでもなくここは汁も最高である。

素晴らしき「まとまり」。
そのあまりの完全さに私はこれ以上の形容ができない。





陶酔。降参。至福。


開店前から行列ができるような店になったことは
店の静謐なイメージには合わないが、
素晴らしいものが多くの人に愛されるのは当然のことなのだ。




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2012年05月08日

静岡・藤枝「手打そば ながいけ」


3月に訪れた際、帰り際に聞いた
「もうすぐびっくりするほど美味しい、珍しいお蕎麦を打つんですよ〜」
という店主の言葉が忘れられず。


ウハッ
来ちゃえばぜんぜん遠くない、

大好きな「手打そば ながいけ」。

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ハイパワー掃除機のように私を東京から吸引した
「美味しい珍しいお蕎麦」とはこれである。

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幻の静岡在来種!
この店からも近い、大井川上流川根本町の在来種で
生産量がごく少ないため、この店でも曜日を限定しての販売だ。




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本日、入り口の「本日の粗挽き」の看板のところには・・

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下に小さく「静岡在来あります」と貼ってある。
ウキャ ときめくー!  (≧∇≦)☆




いつもの、蕎麦味噌から。

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ここのモンゴル岩塩は甘く深くおいしい。

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この塩はこの店の看板とも言える
「粗挽き三兄弟」のために置かれているものだ。


前回も書いた通り「ながいけ」には二八の「せいろ」以外に
「粗挽き三兄弟」がある。

「粗挽きせいろ」
「粗挽き十割せいろ」
「手挽きせいろ」

の三種だが、本日は幻の在来種があるので

「粗挽き十割せいろ」(幻の在来種)
「粗挽き十割せいろ」(福井・茨城ブレンド)
「手挽きせいろ」

の三種類を食べることにする。
   

来たぁー

「粗挽き十割せいろ」(静岡・川根在来種)
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どきどきする・・
自然光に照らされた、端然たるこの景色・・・

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思わず、息を止めてしまうほどの肌。
どんな形容詞も野暮なほど、どうにもこうにもたまらない眺めだが
その香りはもっと凄い。

何デスカこのびっくりフルーティーな香りは!!

マスカット・・、いやメロンソーダ・・?
とにかく蕎麦からは感じたことのない、
さわやかフルーティーな香りをほわりとまとっている。
しっとりぴたっとした肌はごくやわらかく、
噛みしめるとふんわりかろやかなコシ。
味わいは、白いイメージの上品なもので
その夢をほんのり、うっとり、追いかけるひととき。
生まれた地で食べる、ちいさな在来種の味・・
会いに来て、本当によかった。



「粗挽き十割せいろ」(福井・茨城ブレンド)
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これまた、時を忘れて見入ってしまいそうな超絶美肌!
うっすらと緑がかった肌の、しっとりとしたざらつき。
蕎麦の粒子達ひと粒ひと粒に目を奪われる。

手繰り上げると干し草のような、
爽やかな野生の香りが淡くふわー
ごくやわらかかかった先刻の川根在来よりは流麗な舌触りで
噛みしめるとこれもふんわりとやわらかいコシ。
はにゃほにゃ・・おいしい・・・・
うっとり・・・



「手挽きせいろ」
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おー
これは今日いちばんの
明るく軽やかな姿である。

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うっ
またこれもなんと素敵な肌・・・(>_<)

透明感の中にめぐる陰影。
乳白色、薄茶、淡赤の粒子たちに目をこらす。

表面は今までの2枚と比べるとしっかりとして
ざらついた舌触りが心地よい。
そしてこれまた、
ほんのりと甘く上品な香りがすばらしい!おいしい!
実はこれが今日一番好きかも・・・
極上の白米にも通ずるほんのりとした香りなのだが
それがだんだん、
私にとってはたまに出会う香りに変化してくるのがまた面白い。
どんな香りかって・・あのー・・・
某有名アイスクリームの香りなんです。。。
この香りの要素を持った蕎麦、たまに出逢うのだが
なんの共通点があるのかなあー
(忘れっぽいのでいつも判明しないまま)


そうそう、前回は「桜えび天せいろ」がとても美味しかったので
今回はひとつを「鴨せいろ」にしてみたんでした。

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おいしいけど、やっぱりあの「桜えび天せいろ」には負けちゃうかなあ

結局蕎麦にはつけられないのに(蕎麦おいしすぎ)
また食べたい「桜えび天せいろ」。

悩ましい奴よのぅ・・・




2012年3月の「手打そば ながいけ」



2012年7月のライブ出演のお知らせ


posted by aya at 12:51 | Comment(4) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月29日

静岡・島田「そばの花」


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病院の前においしいお蕎麦屋さんがあるというのは
素晴らしいことである。

病院の中ではなかなかおいしいものは食べられないし
お蕎麦なら少々食欲がなくても食べられる。(私だけか)

島田市民病院の前にある「自家製粉 手打ち そばの花」。
立地を意識してか栄養がありそうで楽しいメニューが
いろいろ展開されている。

「六菜穀藻鰹(ろくさいこくそうかつおぶし)
 一皿に咲く そばの花」
というのは看板メニューなのだろう。
大根のつま、大葉、そばの実、のり、ごま、かつおぶしが乗った
ぶっかけらしい。

その他2名からの「花膳」は
「せいろ、天ぷら盛り合わせ、そばの実だんご、そばの実ぞうすい、鴨焼き、甘味」
のセット。

デザート類も
おしるこ(そばがき、冷やし白玉、もち)
アイス(抹茶、バニラ)
シャーベット(洋梨、ゆず)

などが揃い、定期的に病院に通う人にも久々に会えた家族にも
これは便利そうだ。
私には宝塚出身の女優だった大叔母がいて、
入院の末先年亡くなったのだが、外食が大好きだった。
私も大叔母とこんなお店に来たかったなぁ。

「田舎」
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ムッワァーとたくましく、力強い香り。
あまりの香りのすごさに一瞬熟成の蕎麦かと思ったが
そうではなく、新鮮な甘皮のたくましいかぐわしさであった。
すべすべした肌、ムチッと強靭なコシ。
モグモグ噛みしめては甘みを楽しむ
「これぞ」と言った感じの田舎蕎麦だ。


「せいろ」
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ふわぁっと香る、草のように爽やかで鮮烈な香り!
見た目からするとザラリとしていそうだが
田舎よりこちらの方がつるつる感がある。
爽やかさな香りを楽しむうちに、それを追いかけるような
ムワァーとこれまたたくましい、
力強い香りが下を支えてくるのがとてもいい。
島田で出会った黒姫の蕎麦。
ああ おいしいなあ

甘めが多い静岡にあって、すっきり洗練の汁も美味しい。


ところで「花膳」の中の
そばの実だんごは、メニューの書き方からして
甘味ではなさそう・・?
どんなのかなあ
気になる〜


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posted by aya at 21:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月09日

静岡・藤枝「手打そば ながいけ」


おいしいものがある場所は
遠くても近く感じる。

東京から近いとは言えない藤枝市だが
この店がある限り全く遠さは感じない。

どこかでふいに「藤枝」と聞いただけでもピョンと耳が反応し
楽しい気持ちになってしまうほど大好きな、

「手打ちそば ながいけ」。


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白い壁に木の風合いが爽やか。
広々とした店内は、山の工房のような印象だ。



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「そば豆腐」
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ぽってり小さなそばがきのような「そば豆腐」。
普通「蕎麦豆腐」といったら四角い胡麻豆腐のようなものがほとんどなので
この形状だけでもアイディアそば豆腐である。
ほんのり淡く、蕎麦粉の香り。
どろーとした舌触りの中に、
かすかな粉感とプルっとした食感が共存しているのがとてもユニークだ。



そして「ながいけ」と言えば「粗挽き三兄弟」。
研究熱心な店主が次々生み出した粗挽きの蕎麦が
3種類もあるのだ。
それぞれメニューの説明とともに、

「粗挽きせいろ」
   皮付きの実を石臼で粗く挽いた粉で打ち上げた芳醇な味が特徴です
「粗挽き十割せいろ」
   皮を剥いた実を手挽き石臼で挽いた極粗い粉のみで打ち上げました。
「手挽きせいろ」
   上記の十割せいろと同じ粗い粉に少量のつなぎを加えてやや細めに打ち上げた
   滑らかな食感のせいろそばです。

この「粗挽き三兄弟」以外に二八の「せいろ」もあるのだから
もう楽しみすぎてどうにかなりそうである。



「粗挽きせいろ」
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はぁー・・
この、ザリッ、ジャクッとハードな姿。
かすかに透明感を帯びた肌に浮かぶ粗い夢、細かい影。
箸先でただよう黒く渋い香ばしさがたまらない。
口に含むとその肌は意外にもしっとりぴたぴたとして
見た目通りのザリッ、ジャクッが実に楽しい刺激。おいしい!!
甘みの少ないさっぱりした味わいの中で
その香ばしさと食感とを追いかけ・・もう早くも夢中だ。




「せいろ」
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打って変わってすべらかつやつやの美人がやってきた。
こちらは「粗挽き三兄弟」ではなく、二八の「せいろ」。
これまたなんて美しいんだろう。

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窓からの光を艶やかにたたえる、きめこまかな肌。
これまたしっとりぴたぴたとした舌触りで
あまりにきめ細かい肌のためか
口の中では蕎麦がぴたーと寄り添い束のように感じられる。
密な蕎麦束に身をあずける夢を見る私は
2枚目にしてもう壊れかけている。
噛みしめるとかすかにのびるような、奥ゆかしくもたしかなコシ。
最初淡く感じた香りはどんどん濃厚になり
草のような爽やかな香りに染まっていく。
ああ おいしい・・・



そしてついに
き、来てしまいました・・・!!

「粗挽き十割せいろ」
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この肌の超絶美。
無限無数の粒達が、粗く、みずみずしく、
蕎麦切りという美しい形でつながっていることが
神秘的にすら感じられる。
ドキドキしながら箸先にたぐると
ほわぁ〜・・と甘い、餅のような極上和菓子のような、
ふくよかな香りがふんだんに漂い来る。
そして何より凄いのはこの食感だ。
口に含んだ瞬間、目の覚めるようなジュワァー、ジューシ〜〜〜
みずみずしい、かといって水っぽい蕎麦とは違う。
この粗挽きの粒感、ジュワァーとしたやわらかさ。
かと言って頼りなさはなく、何と言うか
蕎麦自体は凛としたつながりを持ちつつ、
噛みしめるとふっくらした味わいと共に食感も広がっていく感じ・・・
なんかごちゃごちゃ申してますがとにかく食べている間じゅう
私は美味しすぎて目が開かずずっと相当な角度で傾いてました。
おいしすぎるー




「手挽きせいろ」
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もう「粗挽き十割せいろ」まみれでヨレヨレの私に
またやってきた次の夢。


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香り、味わいは一つ前の「粗挽き十割せいろ」にそっくりだが
食感は2つ前の「せいろ」の要素がある・・まさにメニューの説明通りなのだ。
悶絶の「粗挽き十割せいろ」にすんなりなめらかな輪郭線が加わり、
かみしめるとかすかに小さくのびるようなコシ。
それにしてもこのやわらかな粒感、
ふくよかな香り、ほんのり美しい味わいは夢のようだ。夢のようだ。
私は壊れっぱなしである。

しかもね、実は最初の「粗挽きせいろ」は
「桜えび天せいろ」にしてみたのだ。
普通天せいろと言ったらせいろ蕎麦に天ぷらがついてくるものだが
ここのは天抜き(温かい天ぷら蕎麦から蕎麦を抜いたもの)のような汁がついてくる。
ほらね。

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こーれーが、びっくりするほどおいしい。
天ぷらはカリッとしたものを塩で食べたい私としては
汁に浸っていない方がいいな、と思いがちだが
この「桜えび天せいろ」は違う。
衣のふんわり感と桜えびの食感が素晴らしい。おすすめ!


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今日食べたのがどれだけおいしい蕎麦だったかがわかるような
なんとも言えず味わい深い蕎麦湯。

私はここの蕎麦も、店も、店の人もとても好きだ。


また近々来ますよ!

東京からこんなに近いんだもの。



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posted by aya at 07:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月14日

静岡・沼津「手打ちそば 杉本」


沼津市本田町。
静かな住宅街に突然
「石臼挽き手打ちそば 杉本」「営業中」と大書きされた看板と、
大きな駐車場が現れる。

お蕎麦を愛して18年、多少きくようになった私の鼻ではあるが
この時点では素敵な予感は嗅ぎ取れない。
駐車場は広く、その奥の竹薮の中にあるらしい店はよく見えないのだ。
観光バスが立ち寄る食堂のような大箱店かな?
 
しかし店に近づいて胸が踊った。

この風情。

静けき山の温泉宿に来たかのようではないか。
(大好きな七沢の元湯玉川館を思い出す〜(^o^)♪)

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ハレー。
こんな素敵な店とは思わなんだ。
古民家の風情にすっかり癒される。
硝子戸の外の緑がまぶしい。


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「手打ちそば 杉本」の蕎麦は契約栽培の十勝産。
自家製粉の十割蕎麦である。

「もりそば」
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うわぁ これは!

見るからに美味しそうだと思った方、
大変に素晴らしい鼻(目?)をお持ちです。
萩焼のような粗挽きの肌と
繊細にふるえる輪郭線がたまらなく美しい蕎麦。

美しさは見た目ばかりでなく、
たぐりあげてその香りの「美しさ」に驚かされる。
何と言うか、香ばしくないのだ。
フレッシュなイメージ・・でもない。むわぁーともしない。
とにかく澄み渡るように爽やかで美しい香り!
このままずっと(鼻にくっつけて)かいでいたい恍惚の時。

口に含むとしっとりとやさしい食感。
そしてですよ、それをそっと大切に噛みしめると
そこに絶妙のやさしいコシが待っていてくれまして、
そこから蕎麦の滋味なる味わいと甘みがふくらむ、ふくらむ・・・

あああああ、降参です。
わたくしこのお蕎麦にメロメロになってしまいました。


しかも。


「鴨南蛮」
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ここの鴨南蛮の洗練ぶりときたら何なのだ!

思い切りすっきりとした汁に浮かぶ香ばしい和鴨。
汁の濃さ、味わい、蕎麦のざらつき、ほどよい柔らかさ。
何もかもがピタリ、完璧なおいしさで、
これはどうにもただ事ではない「鴨南蛮」である。

シンプルな朱の器がこの鴨南蛮を
一層引き立たせただただ唸るばかり。
うう・・・ひたすら、参りましたです・・・


帰り際縁側を通りかかると
壁の額に掲げられた一文字、「鴨」。

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成程。
これほどの思い入れがあるからこそ、
あれだけの鴨南蛮に到達できるのだろう。

店の人によればこの店の出汁巻き卵が一切砂糖を使わず
おいしいと人気なのだそうだ。
静岡らしく「みそおでん」もある。

私の鼻に、美味しそうな予感がムンムン!
次回はそのあたりも是非。



posted by aya at 07:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月22日

沼津市「石碾蕎麦 おもだか」


付近は造成中ゆえ
店を見つけるのは最初は少々難しいかもしれない。

たどり着けばまだ広々とのどかな一帯。
1月の陽光が大地を隅々まで照らし、
辺りに人影はなく全く静かである。


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しかし扉をあけてびっくり、
店は大人気の大繁盛、並ぶ人まで出るほどだ。

総木作りの美しい建物。
可愛らしい椅子は流木で作られ、座敷は桐の畳である。
梁が格子の飾りのようにめぐらされた天井も
実に清々しく気持ちがいい。


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ここの人気おつまみは「おでん」。
静岡だしね、そりゃ頼まにゃ!

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牛すじ、玉子,黒はんぺん、大根,こんにゃく。
じっくり味がしみたおでんは
出汁粉をかけて食べるのが静岡風だ。
この辛子、味わいがあっておいしいなあ。


さてこちらのお蕎麦は「もり」の中に
「粗くひいたもの」
「細かくひいたもの」
とありまして、「二種もり」というのもございます。
当然、ぜったい、それを!お願いします!
(こんなに混んでるけどまだあってよかったぁ〜・・(>_<))



まずは茨城は益子産の「細かくひいたもの」。

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美しい・・・
なんという青さ。
眼を見張る若草色である。

うーん、人気の訳はもう十分わかってきましたよ・・・

手繰り上げると干し草のような、野の草のような
個性的な野趣のある香りがふわりと漂う。

それでいて味わいは淡白で
つるつるとした歯ざわりを楽しむ美しい蕎麦だ。



そして2枚目、
「粗くひいたもの」。

先程の「細かくひいたもの」の時は
「美しい!!」
と声に出して言った私であるが
今度は「エエーーッ 何これ!!」と言ってしまった。


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こっこれは・・・

美味しそうにもほどがある。

携帯の待受にしたいくらいである。

薄い若草色に白いホシ。
太さといい、重なる重量感、空気感といい
いつまでも眺めていたいが一刻も早く食べたい、
なんとも悩ましいこの眺め。

同じ静岡だけに富士市の「蕎麦切り こばやし」での衝撃を思い出すほどの
美しい粗挽きの景色である。

手繰り上げると・・
確かに、粉は先程の「細かくひいたもの」と同じであるから
香りは似ている。

こちらの方がやや濃厚に野趣を感じるような。

しかし口に含めば、やはり個性の違いは歴然。
唇ですでに魅了される、その肌の心地よいざらつき。
噛み締める度、そこにほわあんと実にフレッシュな粉の香りが生まれ
それが味わいとしてじわあ〜と舌に溶けていく。
しかも時間が経つにつれ味わいも甘みも深まるのだから、
少しでも時間をもたせたい、何とかしてゆっくり食べたいではないか。
でも、なのに、アレー、もうなくなっちゃった・・・


外は寒いが、この木の家の中に挿す陽射しはあたたかい。
どんなに忙しくてもニコニコ笑顔の奥さんに
明るくもてなされ、なんと楽しい沼津の昼餉。



ちなみに汁も、「辛汁」と「甘汁」がありますよ〜






posted by aya at 16:50 | Comment(5) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月02日

静岡・浜松市「陶そば 正」


東京から行くと静岡県の中でもいちばん遠い浜松市。
その浜松市の中心部からもかなり離れ
もう少しで愛知県という奥まった場所に、店はある。
おいしいみかんで有名な三ケ日町である。

こんなところに店があるのか・・と不安になったころ
道路端にぽっと現れる小さな看板。


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うわーあぶない、
危うく見逃すところだった。
そしてお店はこの奥・・・?



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ジャーン。

どんなに店らしくなくとも、
看板があるからには店なのだろう。
まるで不法侵入者の気分で、
意味もなくワクワクニヤニヤしながら奥へ回ると・・



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こんなところにガラガラーっと入っていくなんて
何とも楽しいではないか。

扉を開けると正面に出迎えてくれるのは
みかんである。

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さすがは三ヶ日、いいですねぇ〜
せっかく「試食用」とあるので
皆、手に手に半分のみかんを持って入店。
食前に生野菜や果物で酵素を摂るって、
とってもいいことなのだ。

今日、夜のお客は私たち4人だけの様子。
静かな夜、たった一人で迎えてくれた店主は
いつもこうして一人きりで営業しているらしい。
「陶そば」と名乗るだけあって店主は陶芸家でもあり
店の器は全て店主の手によるものである。

話好きの店主の一番のおすすめはそばがき。
どろーりとした食感の粗挽きそばがきである。

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そして蕎麦職人であり陶芸家である店主は、
なんと店で出す山菜や野菜も
自分で作っているというのだから驚かされる。
この畑の恵みの楽しいこと!

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海老や蕎麦餅の天ぷらと共に皿を飾るのは、
店主の畑からやって来た
あばしゴーヤ、ぬるっぱ、タラの若葉、
みょうが、ししとう、オニザンショウ(イヌザンショウ)。
聞いた事のない野菜は、店主も最初は聞いたことがなかったそうで
初めて育てた時の話などを聞きながら
採れたての野菜を食べる贅沢。


蕎麦は2種類、「並挽きの二八」と「粗挽きの十割」。
「二八が十割のあとでは味わいとして絶対に物足りなくなっちゃう」
という店主の勧めで、まずは「並挽きの二八」から。

二八は2枚を4人で分けると言ったら
二山ずつの小山盛りにしてくれた。
その心遣いに、皿の上の二つの小山が
一層美しく感じられるではないか。


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店主が陶芸家という先入観があるからか、
二八の肌はさながら信楽のような素朴な風情。

言われた通り味わいは淡いのだが、
香りがとても不思議・・・スイカのような香りである。
瓜に似た爽やかな香りがする蕎麦はたまに出会うのだが
これは初めて。
面白いなあ。




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「粗挽きの十割」は
二八よりもしっかりと、凛とした印象の輪郭を重ねながら
うず高い小山盛りでやってきた。
若干こちらの方が全体の色が濃く
素朴な肌に散る粗挽きのホシが目にまぶしい。

箸先にたぐると、おおー、確かに!
二八にはなかったかぐわしい香りに嬉しくなる。
口に含むと、凹凸のある肌がザラザラーと口中を撫でるのが実にここちよく、
噛みしめると穀物の旨みがじわっと舌の上に広がる。

しかも二八にも添えられてきた正方形の「蕎麦板」、
これがとても美味しい。
蕎麦が売り切れてしまった後に来たお客さんに
食べてもらったら「美味しい」と喜ばれた、というのがはじまりだそうだが、
噛みしめると蕎麦切りよりも味わいが深く感じられ、
なんとも嬉しいおまけである。



店主の楽しい話にすっかりくつろぎ、
ようやく帰るときに見かけた、この店の器たち。

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陶器のプロだけに、
毎日しっかり完全に乾かすという手入れをここでしているそうである。



自分の畑で採れた野菜と、
自分で粉を挽き手打ちした蕎麦。
それを自分の手で作った器に並べ、来た人に食べさせるということを
ここでたった一人で、毎日している店主。

もうすぐこのあたりではこれが採れる季節だ、
来年はこんなものも育ててみようかと思っている、
と実に楽しく忙しそうだ。
語り口はちょっと面倒くさそうながら
人懐こく非常に親切なところが味な店主である。



おいしいものと、楽しい話と、おみやげのみかん。

入るときも店と思えなかったが
店を出ても尚、店だった気がしない。

三ヶ日の、いい夜だった。





(Sさん、こんな遠くまで連れていってくださってありがとう!)

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2010年10月01日

静岡・富士市「蕎麦切り こばやし」


たどり着いてみれば、長年思いを寄せていた店は
住宅街の奥の、自然のままの緑の奥に
ひっそりと動物のように隠れていた。

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しかしいいものはどんなに隠れていても
放っておいてはもらえない。

朝11時、開店直後に入店すると店内はすでにほぼ満員。
最後にひとつ空いていた卓に何とか案内してもらえた。

テーブルには、この店で打ち分けている蕎麦粉のサンプルがおいてある。
「吟醸黒」「風味」「雅」「香味」。
それぞれのネイミングもワクワクを一層あおるではないか。
(板で出来たメニューと言いネイミングといい、ちょっと「たか志」を思い出すなあ♪)

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「吟醸黒」は土日祝のみ、
「雅」は日月火のみとのことで、
本日ある蕎麦は「風味」「雅」「香味」「せいろ」、
それとは別に壁に貼り出された「十割」もあった。

なんと5種類も、「蕎麦切り こばやし」の蕎麦が食べられるなんて!
しかもこんなにお腹空いてるなんて!
これ以上のしあわせがどこにあるだろうか・・
(否いろいろある。こばやしの隣に住むとか)

厨房は開店直後からてんてこ舞い。
店員の女性達と店主とのオーダーのやりとりも真剣勝負だ。


いつものように「順番はおまかせで」と頼んだら、
最初にやって来たのは「十割」であった。
感激の対面。

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陶皿の上にこんもりと、完璧な美しさで盛られた蕎麦。
端正な輪郭が描く、流れるように鮮やかなラインに眼を見張る。
しっかりと、いかにも密度の濃そうな肌だ。

たぐり上げると、フワーッ!
目の覚めるようなかぐわしさ。
美しく清らかな、例えるなら上質のミルクのようなイメージ。
乳製品の香りがするわけではなく、「白くクリーミーなイメージの香り」なのだ。
噛みしめると、見た目以上の非常にしっかりとしたコシが楽しめる。
いやぁー、なんておいしい十割なのだろう。



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2枚目は、「雅」。
な、なんという美しさ・・・・
自然光に透かし見たその肌の衝撃。
繊細に震えるライン、
灯篭にめぐる影のように無数に散りばめられたホシ。
そのあまりに儚く貴い、ビスクドールのような姿に
「この美しさを守らなければ」という保護本能まで働きそうである。
守るどころか頭から(?)食べてしまうのだが。

口に含むと、ひんやりザラザラ〜と口中を流れる心地よい感触。
香りも味わいも淡いのだが、
自分まで磨かれ透き通っていくかのような
清らかな食感である。


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3枚目は「せいろ」。
十割よりもなめらか、やわらかそうな見た目・・・
と思ったら、意表を突かれてつるつるパッキパキの輪郭を持った
これまたすごいコシの蕎麦であった。
味わいは、これはやや熟成かな?
香りにおいても味わいにおいても、
熟成がかったムワッとした甘さが楽しめた。




さあいよいよこの時がやってきてしまいました。
私はあなたに会いたかったのです。
手挽き極粗挽き太打ちの「香味」!

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ウワー・・・

想像以上の美しさに、完全白旗降参である。
平伏したい。でも食べたい。

もったりとふくよかな輪郭が描く、なめらかな曲線。
明るく薄いグレーの肌には純白のホシが無数に浮かび、
見入ればところどころがごく淡くピンク色を帯びている。
その「ピンクがかったグレー」の美しさと言ったらない。
藤田嗣治の「すばらしき乳白色」を思わせる色彩である。

この世に「香味」と私、二人きりとなって口に含めば
ああああ、よかった。
見た目も最高なら味も最高である。
一目惚れした人が自分の理想の人だったような喜び。
ふっくらとした歯ざわりの中からこぼれる、
穀物の品の良い香りと味わい。
あまりのときめきに、もう目はろくに開かず
ショボショボしながらウンウン頷きながら食べる私。
ああーしあわせだぁー



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ラストは「風味」。
手挽き粗挽き細打ちの蕎麦である。

「香味」よりもほんの少し黄味がかった細打ち。
香りは「香味」とは微かに違う表情。
ふくよかで澄み切った味わいの「香味」と比べると
こちらの方が少しくせのある味わいである。
しかしなんといっても「風味」「香味」は手挽き。
それぞれの個性は
きっと日々微妙にうつっていくものなのだろう。
そう思うと、今度は吟醸黒が食べられる土日に来たい、
そばがきが食べられる夜にも来たい、と
今食べ終わったばかりなのにどうにも落ち着かない。


最後まで、全く存在すら忘れていた汁は
(いつもながらすみません・・・)
鰹の風味も濃厚な、こっくり個性的な甘さのもの。
駆け抜けた蕎麦時間に思いを馳せつつ、
蕎麦湯とともに楽しむひととき。



ああ、また会いに行きたい。

住宅街の奥、緑の奥の、あの蕎麦に。




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2010年09月24日

静岡市「ソビスケ」(そびぽぉ!ソビスケ)



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古民家改造の趣ある店、都会的でスタイリッシュなバー風の店、
昔ながらの町蕎麦屋然とした店・・
お蕎麦屋さんが数ある中に、たまに出会って楽しいのが「おかしな店」。
そりゃあ今までにもいろいろ楽しい出会いはあったものだが
こういうおかしな店はそりゃ初めてだ!

私などが多くを語る必要はない。
その名も
「石臼挽手打式蕎麦舗 ソビスケ」。
店名の読みは
「いしうすびき てうちしき そびぽぉ そびすけ」。
そびぽぉ!
なんと可愛らしくも笑っちゃうその響き。
おかげさまでこの日一日、私は頭は「そびぽぉ!」でいっぱいになり
事あるごとに叫ぶことになったほどのインパクトの強さである。

店名の通り、この店ではどういうわけか「そば」は「ソビ」と発音され
メニューは全てカタカナ表記である。

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店内に入ってまず目に付く製粉機の上では何故かチョンマゲが回り、
店主によればそれが石臼の遠心力に作用しているとかいないとか。

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そしてなんと言ってもこの店の最大の特徴は「マゲワリ」である。

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お客さんにとっても働く人にとっても楽しい店にしたい、
若い人にもっと手打ちの蕎麦に親しんでもらいたいという店主の願いそのままに、
店は驚くべき大繁盛!
昼時とはいえ、駅からもICからも遠い小さな蕎麦屋に
行列が途切れないことも驚きなら、
その若いお客さん率の高さはさらなる驚きである。
20代前半のグループなんて普段蕎麦屋で見かけることは少ないのだが
男女グループあり女性同士あり、若い人が並んでまで蕎麦を食べに来ているのは
私まで嬉しくなるような、珍しい眺めであった。

メニューは先程の写真の通り、いたって普通、王道の蕎麦屋メニュー。
椀がきの「ソビガキ」は420円というお手軽価格だ。


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インスタントのカップそばがきで育った私には
なつかしい味わい。



お蕎麦は「セイロ」「ジウワリ」「イナカ」「サラシナ」のうち3種を。

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セイロ

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ジウワリ

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イナカ

粉の甘みが楽しめるセイロ、
ふわぁっと蕎麦の香りがうれしいジウワリ、
味としてはセイロとそっくりだが噛みしめると味わいがしっかりと感じられるイナカ。




え?チョンマゲはつけたのかって?

つけましたとも!
期待されると応えずにはいられない、ノリが命の高遠でございます。
楽しいお店にしたい、お客さんも楽しんで欲しいとあれば
かぶりますとも!楽しみますとも!


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(女性用は町娘(^_^;))

同行のS氏Y氏には似合う似合うと絶賛され
「全然違和感がない。いつもかぶっていた気がする」とまで言われたのには
複雑な思いでございましたが。


3人とも最初から最後までしっかりかぶって見事150円引き!



多忙を極める厨房を一人で切り回す店主の胸には
胸には「2年8組 ソビマシン」の名札。

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てんてこ舞いの中でも
知っている人には人懐こい笑顔で話しかけ、
会計時にはお客さん一人ひとりに丁寧に、済まなさそうに
「お待たせしてすみません〜、どうもありがとうございます〜、またよろしくおねがいします〜」
とどこまでも腰の低い店主。

ただふざけているのではない、
この人柄あってこそ愛される「そびぽぉ!ソビスケ」なのだ。



帰り道も
「次回来る時一人だったら、チョンマゲかぶる勇気はあるか」
「毎日来る常連さんが毎日かぶっていたら店は”もういいですよ”とか言うだろうか」
などと大盛り上がり。

すっかり「ソビスケ」に洗脳された一日であった。

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posted by aya at 15:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月22日

静岡・掛川「手打そば 居尻」


静岡県掛川市。
駅からもICからも程遠く
おまけに土日しか営業していないながら、
予約だけで蕎麦が売り切れてしまうこともある店がある。

そう聞くと何だか忙しないような、
ゆっくりくつろげないような印象を受けるかもしれないが
行ってみれば、店は田舎らしいのんびりした時間の中に
ごくおおらかに佇んでいる。

日程を合わせここにたどり着くまでは
決して便利とは言えない店だが
よい店はどんなに隠れていても例え不便でも、
人が集まってきてしまうものだ。


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たどり着いてみれば暖簾に店名すらない古民家。
道路端に掲げられた「手打ちそば」の幟を除けば店とも思えず、
田舎の民家を訪ねるようなわくわくした気持ちにさせられる。
(写真は退店時なので幟が取り込まれた状態〜)

ここの最大の特徴はやはり、全国各地の蕎麦を取り寄せ、
日によって違う産地のものを打ち分けていること。
いくつかの産地の蕎麦を食べさせてくれる店は都内にもあるが
「居尻」の情熱は半端ではない。

北海道旭川市江丹別  北早生
北海道樺戸郡浦臼町  牡丹
長野県木曽郡開田村  在来種
長野県長野市戸隠村  在来種
茨城県久慈郡金砂郷  常陸秋蕎麦
群馬県利根郡片品村  在来種
山形県新庄市十日町  在来種
福井県福井市丸岡町  在来種
滋賀県米原市甲津原  在来種
島根県出雲市     玄丹蕎麦
島根県大田市石見銀山 在来種 


実に常時10箇所以上もの産地の蕎麦を揃え
その中からその日毎に3種を打っているのだ。
こと蕎麦となると恍惚となりやすい私は
ホワイトボードに掲げられた名産地の名の羅列を見ただけでうっとり。
浦臼町と聞けば浦臼町の、
十日町と聞けば十日町の青い蕎麦畑に遊ぶミツバチとなって
全国各地にブ〜〜〜〜ンと飛んで行ってしまいそうだ。

他店でもよく見かける名高い産地の名に混じって
「滋賀県米原市甲津原  在来種」
「島根県大田市石見銀山 在来種」
なんて珍しい産地があるのも見逃せない。
しかもここに書いていない産地のものもまだあるというのだから
ワクワクを通り越してソワソワモゾモゾ、
挙動不審になってしまうではないか。


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囲炉裏端の席に通され、あらかじめお願いしておいた3種の蕎麦を。
1枚目は、ホワイトボードには「滋賀県米原市甲津原」とあった、
滋賀県は奥伊吹の蕎麦。
これは・・・本当に珍しいですよ聞いた事ないですよ。

ニコニコ甲斐甲斐しい娘さんに運ばれてやってきた
「奥伊吹」に、感激のご対面。

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古民家に差し込む自然光の中、
飾り気のない印象で現れた蕎麦。
ピカピカとした輝きも殊更な粗挽き感もなく
ただしっとりと控えめに、細かい黒いホシをまばらにたたえている。

箸先にたぐり香りを寄せ軽く驚く。
嗅いだことのない香りだ。
なんというか・・・穀物よりもさらに原始的な印象の香りと言うべきか
きのこの一種にでもありそうな香りというべきか
とにかく「こんな蕎麦の香りもあったのか」と
驚かされる香りをまとっているのだ。

口に含むとその香りは一層ふくらんで感じられ
噛みしめれば強い弾力もなくやさしく途切れていく手作りの風情。

「原」。
私には、この漢字が食後のイメージとして浮かんでならなかった。

原始の「原」。
起原の「原」。
奥伊吹の原の「原」。
蕎麦のはじまりの夢を見たような、そんな錯覚を覚える蕎麦。


2枚目は、私の大好きな福井。

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古民家の陰影の中に浮かび上がる繊細な輪郭線。
震えるラインがなんと貴く美しいことか。
淡く青みを帯びた明るい肌は、素朴な奥伊吹と比べるとぐっと清らかな印象である。

香りはふわーっと豊かな、大好きな福井の香り!

・・・?

いやちょっと待てよ、その奥に、その下に確かに横たわるは
先程の奥伊吹で感じた「原」のイメージ・・・

不思議不思議、「居尻」の魔法にかかった思いだが、
この香りは奥伊吹の香りではなく、
まさに「居尻」の魔法の香りなのかもしれない。
奥伊吹同様コシは強くなく、
ハラリと噛み切れるのが儚くもまた「原」の印象。
それでいて、最初に感じたかぐわしさを
最後まで濃厚にたたえ続けるたくましさも感じる蕎麦だ。


最後は、実はこれが一番のお楽しみかもしれない、
「島根県大田市石見銀山」の在来種。

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うひゃぁーーー
み、見るからに美味しそうすぎるこの姿。
運ばれてきた時点でもう大興奮、思わず奇声が漏れてしまった。

黒っぽく、ざっくりとたくましい肌。
素朴な曲線を描きつつ、笊の上におおらかにひろがる様にときめかされる。

たぐりあげれば、うううう・・・・
きましたよ・・・待ってましたよ・・・・
脳がとろけそうに濃厚な、かぐわしさ。
噛みしめると程よい弾力とともにジャリ、という粗挽き感も楽しめ、
その内側からは溢れ出すは穀物の甘みと滋味深き味わい・・・
わたくし、四方八方から喜ばされ過ぎてもう目が開きません。

目を閉じてしあわせにモグモグ・・・
あれれ。
なんとここにも顔を出す、「居尻」の魔法の香り。

楽しいなあ。




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食後の、あまいもの。
蕎麦ぜんざいを出してくれた娘さんが
今ある蕎麦の説明してくれる。
説明用に小分けパウチされた玄蕎麦を見せながらの
楽しい、それぞれの蕎麦の話。

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食べ終わったらすぐ次のお客さん、という
回転優先・儲け優先とは対極の、家庭的なもてなし。
一度来たからにはゆっくりしていってほしい、
楽しんでいってほしいという店の願いが、
またここに来たいと思うお客さんをどんどん増やしてしまうのだ。


無論私もその一人である。






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posted by aya at 12:46 | Comment(3) | TrackBack(0) | 東海の蕎麦>静岡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする