2016年12月09日

奈良・菖蒲池「蕎麦きり 彦衛門」


近鉄「菖蒲池」駅から暗い住宅街を歩く、歩く。

距離としてはそんなにないので実際歩いたのは10分ほどだったと思うが
まっすぐな道が殆どなくなかなか把握しづらい道のりのため
たどり着くまではかなり不安だった。
紺色の空に月が明るかった。


やっと現れたのは予想よりずっと大きな店。

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少し大きい道に面してはいるが周囲は暗く静か。


しかし店に入って驚いた。
外に静けさに反しての大賑わい!
予約してあったので席はあったが、
住宅街にぽつんとあるこんなに大きな店が満席とは。


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ミシュランガイドでも紹介されたらしいのでその影響か、
とにかく賑わっているのはいいことだ(^o^)

私もわくわくメニューを眺めましょう〜


まず目立つようにおいてあった「夜の一品」メニュー。

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うわーい
あれと、あれと、あれは絶対食べたい♡



でもお蕎麦2枚ぶんのお腹はとっておかなくっちゃ。

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「自家石挽 絹びきせいろ」
「玄そば石挽 あらびきせいろ」

なんか名前からしてスゴイでしょう?(≧∇≦)



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お昼はなかなか楽しそうな「おまかせ膳」っていうのがあるんですね。
そしてあったかい「南高梅と磯の香そば」って気になる〜


もうなんか俄然わたくし盛り上がってまいりましたー!
今夜は飲んじゃうもんね!(まいど口だけはりっぱ)

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「上喜元 純米吟醸 超辛口」
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おお〜
入り口はまろやかであとが結構ズシンとくるオトナなお酒、さすが東北。
そしてこれが超辛口というのが私にはたいへんむずかしい。そうなのかなあ〜
いつものことながら辛口とか甘口とかという
ジャンル分けがあまり理解できない私(^^;;)


「お通し」
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「京の生ゆばのお刺身」
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ゆばと一緒にミョウガやパプリカなどの野菜が綺麗に飾られてやってきた。
ふんわり柔らかいタイプでなくうすーくて固めの食感。
たしかにゆばと言うものがこんなに流行る前は
こういうのが「ゆば」の印象だった気がしてきた。
3枚で650円と思うとアラ高級!大事にいただきました(^^)



「塩豚の燻製」
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メニュー表を見た瞬間「食べたいっ」と飛びついた悩殺メニュー名。
塩で、豚で、燻製ですから〜〜(≧∇≦)
もともと「脂ののった魚と、脂が少なく味が濃い赤身肉」が好きな私。
この脂身は見た瞬間ひるんだが燻製の香りが素晴らしく美味しく、
脂身もおそるおそる食べてみると不思議とあまり脂っこさは感じず
パクパク食べちゃいました♪


「あらびきのそばがき」
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うっわー!
なんと可愛らしいこの演出っぷり。
トトロが雨宿りしちゃいそうな葉っぱが大胆にもよく合って
蕎麦の芽のピンクが可愛らしくて
もはやメルヘンなそばがき♡

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見るからにむっちりしっかりしていそうな粗挽き肌。
ムハーッと濃厚に香っているのだが
それが不思議と、ちょっと言葉は悪いかもしれないが
乾麺のお蕎麦(もちろんおいしい十割の)に近い香りなのが不思議!
姿の通り食感はかなりしっかりもっちりとして食べ応えがあり
粗挽きのザラつぶ感が嬉しい。



「馬刺」
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赤身肉好きの私は馬刺しと見たら必ず頼みたくなってしまいます。
うっわー この熊本の馬刺はやたらめったら美味しいですよ〜〜!
固すぎないやわらかい噛みごたえがあり、何もつけなくてもいいと思えるほど味が濃い。
タレも添えられていたのだがお醤油好きの私は
結局お醤油で美味しく食べちゃいました(≧∇≦)
(しゃぶしゃぶもタレ全拒否で醤油か塩で食べるので通常運転)


「鴨のそば粉焼き」
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あっらーこれはおいしいです。
フランス産マグレ・ド・カナール。
しかし私には鴨肉云々よりとにかく調理が上手いように感じました(≧∇≦)
「猫にマタタビ私に蕎麦粉」なので蕎麦粉のせいなのかもしれないが
それにしたってやたらに美味しい。
脳がシビれるようなおいしさは失礼ながら化学調味料かと思ったほどだが
おそらくそうではなくキュッとした赤ワインと塩の使い方の上手さかな?


さていよいよこの時がやって参りました。

本日はどちらのお蕎麦も石狩・沼田産らしい。

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「玄そば石挽 あらびきせいろ」
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おおー

なんだかちょっと予想外のルックス。
店の雰囲気と「玄そば石挽 あらびきせいろ」という名前からすると
ずっとのんびりとした田舎っぽい印象の蕎麦。

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角がなくのんびりした輪郭線。
むわーと深くかおる香りはまさに先程のそばがきと同じで
何故か「美味しい十割の乾麺そば」のイメージ・・・不思議!
口に含むとちょっとブワンとしてうどんのようですらある舌触りだが
噛むとムッチリ、ものすごいコシ!
噛もうとするとパーン!と内側から跳ね返してくるような強靭なコシで弾むようだ。
香りも味も甘みもずっしりと濃い〜




「自家石挽 絹びきせいろ」
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こちらは「玄そば石挽 あらびきせいろ」と比べると細打ちだが
ふっくらずっしりとした印象は似ている。


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かすかに熟成味を帯びた香り。
全体の香りは淡く味わいもあっさりしているのだが甘みがすごい。
見た目の印象以上に繊細さな細切りの舌触りで
まさに絹びきの名に相応しくなめらかな食感だ。



ここは汁も意外な個性でかなり生々しい強さをもった汁である。
ところが汁単体で舐めた印象と蕎麦湯に入れた印象がまるで違った。
濃厚蕎麦湯に入れると意外な美味しさに変貌して
わ〜 これはうれしい〜〜

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まったくの余所者の私は
こんな知らない住宅街の建物の中で過ごしていることに
不思議な楽しさを覚える。


駅からここまでの道のり、ここで過ごした時間。


奈良に来るとなぜか月が恋しくなる。

帰り道もあの月に会えるといいな。



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2015年12月16日

奈良・近鉄奈良「そば切り 百夜月」


奈良にあって「百夜月」とは何とも風雅な店名である。

なんたって「天の原ふりさけ見れば春日なる」の昔から
人が月を愛でてきた土地というイメージがある。


その風雅な店は「近鉄奈良」駅出口から1分以内という超便利な場所にあり
それでいて騒々しさは全くないという奇跡の立地である。


今日は久々に来たのだが
このテントみたいな?ひこにゃんみたいな?布でくるんだようなお店・・
ユニークだなあ

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(ひこにゃん^^)

大きなガラスの向こうに店内が浮かび上がったように全部見えていて
まるで店全体がショーケースのよう。
以前来たのは昼間だったのだが夜眺めるとますます印象的だ。

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ここの店舗デザイナーはかなり攻めているなあ〜


左側の、赤い毛氈が鮮やかに見えているのは待合いスペースらしい。
石を敷いて坪庭風にしてある。

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客席から見てもショーケースな感じが面白い。
道行く人はすぐそこ、すぐ近くを通り過ぎていく。

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そして先程から私の目の焦点はあの右奥の貼り紙に集中している。

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きゃ〜〜〜

本日の蕎麦
「二八・十割」     群馬赤城産
「手挽き(限定十食)」 鳥取・溝口産

だって(≧∇≦)!!
私には

「ドレス」    ジヴァンシィ 
「アクセサリー」 ハリー・ウィンストン

と書いてあるようなまばゆさだ。


「百夜月」はおつまみ類がシンプルで品数は多くないので
とにかく「蕎麦」が入っているものを全部頼んでみました。
だってお蕎麦が入ってると何でも美味しいんだもん〜


「鴨のそば粉焼き」
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しっかり焼いてるのに柔らかく弾力があって、まぶした蕎麦粉が焼けた味もすごくおいしい。
味つけもほっとする美味しさ。
今回関西に来てから鴨を食べる機会が何度かあったのだが
不思議なことにどれも印象が似ていてどれも美味しかった。
「みんなちがって、みんないい」ではなくて
「みんなにていて、みんないい」でした(^o^)



「そばがき」
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墨のようなストイックな渋い香り。
とろとろーんと流れるようにゆるい質感で
食べるとふんわりエアリーな感じもありなめらかでおいしい〜〜
質感が質感なだけに最後は食べるのが結構たいへんだったが
おいしいので意地でも頑張って残さず綺麗にいただきました(≧∇≦)




「ざるそば 二八」
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白木のせいろに簀の質感。
美しい日本の眺め。



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潔く流麗な輪郭線。
むっちりとした弾力のあるしっかりめの食感だ。
香りはごく淡かったが、だんだんかすかにさわやかに甘い、
二八らしい香りが伝わってきた。
味わいも極限まで上品に淡かったが
これもだんだんかすかにほんのりした甘さが感じられるように。
大好きな群馬県赤城の蕎麦。




「ざるそば 十割」
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十割は趣向がうんと変えて楕円の細長いお皿に盛られてやってきた。
こういう演出の変化はこちらも楽しいし、
それぞれの蕎麦に対するお店の思いが伝わってくるようでいい。

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ざっくりと素朴な粗挽き肌、いかにもむっちりとしていそうな流麗なライン。
二八と同じ赤城だがこちらほんのりと葉っぱのような
青い野生を感じる香りが淡〜くふわ〜〜
ウレシイ(*>ω<)♡
味わいもその感じで葉っぱのような野生を淡く感じる。
見た目よりもなめらかな舌触りで、密な質感のため二八よりしっかり固め。




そして最後はいよいよ、私にとって本日のメイン・・!!
十食限定なのであらかじめ電話し今日はまだあること確認して
ウキウキやってきたのです〜♪


「ざるそば 手挽き」
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ギャー

容赦なさ過ぎの物凄い極粗挽き!!


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すすすすごすぎる・・・
見入れば見入るほど攻め攻めなこの肌・・・!

しかも姿だけでなくこちらは香りもたいへんに個性的。
言葉にすると平凡になってしまい残念なのだが強いて言えば干し草のような?
とにかく出会ったことのない個性的な野生の香り。
島根・溝口産ということで期待はしていたが面白すぎる。
食感がまたものすごい。
ゴッツゴツの輪郭線、ツブツブのフシが口中を撫で
噛みしめようとするとギチギチと固く暴れる感じ。
攻め攻めだぁー!
食感はものすごいがそこから溢れる味わいはとても美味しい。
なんともフレッシュで野生的、個性的な穀物の旨みが
ギチギチと溢れてくる本当に稀有な蕎麦。




店内のBGMはジャズ・ヴォーカル。
今サッチモのCheek to cheekに変わった。



亡き人を想いながら、蕎麦湯。

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ここの汁は甘めながらなかなか美味しく、
濃厚蕎麦湯に溶かすとさらに美味しい。


普段は蕎麦湯は蕎麦湯だけで飲むのだが
今日はなんだかいつもしないことをしている。



暖簾出て月無き路地の空凍てる






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2015年10月02日

奈良・近鉄奈良「玄」



夏の名残の夕暮れ時、またこの路地にやってきた。


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大通りにはまだ空の最後の明るみが残っていたが、
路地の奥までそれは届かずもうひっそりと闇が深まっている。

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全国にその名を轟かせる超有名店。
あの芸能人もあの有名人も常連だとか
夜は一日二組限定なので何ヶ月先まで予約が全く取れないとか
そんな派手な噂を他所に、店はひっそりと夕暮れの音を聞いている。


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作務衣姿の店主ににこやかに迎えられ
庭の見える間に通される。


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虫の声。

コチ、コチと時を刻む柱時計の音。

硝子戸の向こうで、奈良の空が暮れていく。

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昼間は何度か来ているが夜は初めて。
昼とは違う表情に早くも心を奪われてしまった。
日本の古い家にだけやってくる夜の色。


いつ何時も笑顔を絶やさない店主が部屋に入ってきて
丁寧に挨拶をし、今日のメニューを紹介してくれる。
夜は「蕎麦遊膳」と名付けられたコース1本。

メニューは毎日変わるので和紙に手書きされたものを見ながら料理の説明を聞き、
それに合わせたお酒を話し合いながらあらかじめ決めてしまうという
ちょっとユニークな趣向である。

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お酒が自慢のこの店だけにとにかくお酒の説明がひとつひとつ長々と詳細に及ぶ。
事前に全て料理の説明を聞き、そこにお酒の説明が加わるので大変に長いと言えば長いのだが
お酒好きの人にはたまらなくワクワクする、序曲のような時間だろう。
実際この店にくるとあまりにもお酒が美味しくて楽しくてつい飲みすぎてしまい
支払いがはねあがってしまうとはよく聞く話だ。
長い説明ももっと営業めいたものだったりしたら話は別だが
驚くほど謙虚で誠実な店主の人柄とお酒への深い愛情が伝わってくる説明だけに
私も楽しく興味深く耳を傾ける。

お酒の説明書きの中に「春鹿」が二つあるのが目立つ。
これは「春鹿」を作っている酒造会社「今西清兵衛商店」が
「玄」と深い繋がりがあることによるもの。
私が今居るこの「玄」の建物はもともとは今西家の別邸だったのだ。
二つのうち一つ目は大吟醸で、これは食前酒としてお勧めとのこと。
地酒だしそれは楽しそうだと喜んでそれにする。
(さっき奈良公園で鹿と遊んできたしね(^o^)♪)

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香水瓶のような酒器の演出が素敵!
華やかな香りと豊かな味わいながら
後味は意外なほど澄んでいるのが食前酒として素晴らしい。
あーこれからの時間が楽しみだなあー


最初のお料理は店の奥さんが運んできてくれた。
店主の奥さんであるから年齢としてはミドルエイジなのであるが
きっちりと美しく着物を着こなす姿は千代紙人形のように可憐だ。
先程は手が離せませんでおいでになった時ご挨拶できずに申し訳ありません、
と言いながら完璧な作法で給仕してくれる。
店主にしてもこの奥さんにしても
この謙虚さ、丁寧さには目を見張らされる。


「蕎麦豆腐」
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鮮やかな赤い舞台の真ん中に
フレンチのように美しく飾られた蕎麦豆腐。
綺麗!おいしそう〜〜
蕎麦豆腐もところ変われば、である。

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更科粉100%の蕎麦粉で作られた蕎麦豆腐。
奥さんが説明で
「更科粉100%ですから、蕎麦としての風味はほとんどしないかと思います・・」
と言った通り、蕎麦の味は確かにしない。
ぷるっとした食感で、まわりのオクラのすり流しもまた薄味で仕立てられ
繊細な味わいが大変においしい。
そこに醤油豆と雲丹が嬉しいアクセント。




「蕎麦がき」
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ああああ

久しぶりにあなたに会えた・・・・
大好きな「玄」のそばがき!!

この美味しそうさはどうしようもない。
目も心も完全に、100%その塊に奪われてしまい
見つめれば見つめるほど魅力が巨大すぎて地球くらいにも感じられてくる。
もう絶対にぜったいに美味しい!!
あああああ うれしいよう〜〜〜

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蕎麦の実そのままのような青い肌に浮かぶ無数の粗挽き粒。
もっちりふっくら、やわらかそうな佇まい。
最高の素材とセンスと技術がこめられたこの小さな塊に見入り、魅せられ、
私はもう何かも忘れて吸い込まれていくような気持ちだ。

もうこのまま食べずともただ眺めていたい・・
と思ったそばから口に入れてしまうと、

うわあーーーーー
なんっっってフレッシュで素晴らしい香り!!

ざらざらの粗挽きでもっちりべたっとしてるが
食感はふっくらとふんだんに空気を含み、繊細にエアリー。
こんなに粗挽きなのにこんなに繊細にエアリー。感動・・・!!
しかもその肌の全てからたまらなく美味しいグルタミン酸系の旨み成分が
ぎゅーぎゅーと押し出されてきて縦横無尽に口の中いっぱいに広がり続ける。
言葉にならない言葉を叫び畳に倒れ込みたいほどの美味しさ!!(営業妨害)

広島の海塩というのが添えられてきたが全くつけられず・・
蕎麦粉は群馬とその他のブレンドらしい。


「玄」には店主と奥さんの他に若い女性スタッフ達も居るのだが
皆着物風の作務衣のようなものをきっちりと着て
奥さん同様完璧な作法で料理を運んできてくれる。
その若さでよくそこまで自分の気配を消すというくらい控えめで
浮かれて緩みまくっている自分が恥ずかしくなるほどだ。

お料理が運ばれてくるとすぐに続いて店主が入ってきて
ニコニコと目を細めながら料理の説明をしてくれる。



「蕎麦スープ」
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料亭のように蓋付きのこんもりかわいらしいお椀でやってきた蕎麦スープ。
私は日本の赤い塗りの器が大好き。
蓋の中の見えない世界にワクワクするのも
蓋を開けてひろがる香りを楽しむという趣向も大好き。

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なんとこれは「塩で食べる蕎麦スープ」。
塩分が限界まで抑えられていて自分で塩を加えながら食べるようになっている。
鰹と昆布とは思えないほど上品で美しい出汁が素晴らしく
そのなかに輪郭がないほどとろとろになった梅のしらたまがひそめられている。
おいっしーーー!


「真澄」
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ぱっと美しくひろがってスッと切れるこの清澄さ。
私好みのおいしいお酒。


コースはまだまだ中盤だが、ここで早々にお蕎麦に会えてしまうところが
「玄」の「蕎麦遊膳」のユニークなところ。

一枚目のお蕎麦は水で食べるよう、蕎麦猪口には水だけが入っている。
添えられているのは梅干のたたいたもの。

「水蕎麦」
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わあー懐かしや!!
久々の「玄」の蕎麦、超極細切りのこの景色。
あまりにも極細のため蕎麦の束と言うより全てがくっついて
一枚の板のようにも見える独特の景色だ。

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ふーっと漂う、落ち着いたかぐわしさ。
フレッシュとかさわやかとかいう香りでなく
ストイックで静謐なイメージの香り。
水を含んだ糸のような超極細につき
口中でシュクシュク束がつぶれる感じがいかにも個性的。
あまりに極細の糸の束なので柔らかい蕎麦のような印象を受けるが
見つめると蕎麦そのものは硬くも柔らかくもなく
かみしめて広がる濃厚な味わいがおいしい〜〜〜
香りはストイックで一歩控えているのに
旨みはぎゅーと舌に押し込まれてくるような濃厚さ。
そして注意すべきはここのお蕎麦は大変繊細で、大変足が早い。
店主が丁寧に控えめに、しかしニコニコと
「お早めに、お願いいたします・・・よろしくお願い致します・・」
と言って下がっていっただけのことはある。
本日のお蕎麦は群馬と茨城のブレンドとのこと。

店主が「よろしくお願い致します・・・」と言ったと書いたが
店主はすべての料理の前にその料理の説明をし
始終笑顔を絶やさぬまま最後にその言葉を添えるのである。
こんな美味しいものを作っておいて「よろしくお願い致します・・」って
どれだけ腰が低いのでしょー!?
時々仏さまとかお地蔵さまとかの可愛いイラストが脳裏をちらついてしまった・・・

しかしそんな店主のせっかくの謙虚な挨拶を聞きながら
この人全然言う事聞きません。
だってどうしてもお蕎麦にお水なんかつけたくないんだもん・・・
私のお蕎麦の間に割って入ろうとするものは汁でも水でも、空気でも許さーん!
お蕎麦さんとはできるだけくっついてそのまんまを愛でたいのです♡
というわけで例によってお蕎麦はお蕎麦だけでムハムハ食べてしまい
お水は犬のようにごくごく、梅のたたきはおつまみとしていただきました。
梅のたたきは店主が「あの・・私は塩辛いのが苦手なもので、少し甘く仕立ててございます・・」
とはにかんだように言った通り、甘くやわらかい梅干をたたいたもの。




「田舎蕎麦」
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来たー・・・
この思いっっきり黒い、おもいっっっきり細い、
「玄」の「田舎蕎麦」!!

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これまた、水分をたっぷり含んだ糸のような極細。
外皮の黒い風味はこうばしいを通り越して焦げのような渋いたくましさ。
(焦げ風味大好きな私にはたまらない♡)
その渋いたくましさが透き通った水の向こうにある感じが玄らしく上品だ。
これだけ黒くこうばしいのにどこにも強さがない。みずみずしく淡い。
超粗挽きゆえ一本一本がザラザラつぶつぶ、
超極細の粗挽きというのは本当に珍しい食感だ。
店主は「色が出ないので手挽きで三度挽きしました」と言っていたが
このものすごい黒さはちょっとイタリアのピッツォッケリを思い出してしまうほど。
http://ayakotakato.seesaa.net/article/382463559.html
風味もちょっと似ている。おいしい〜〜(≧∇≦)♡


蕎麦も個性的だが汁も相当個性的な「玄」。
たくましいまでの甘さを持った濃厚な汁だ。

「田舎蕎麦」に添えられてきた塩は藻塩。
これは使うタイミングが無かったのだが蕎麦湯の時に不思議なことが起こった。


「蕎麦湯」
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「玄」の蕎麦湯は濃厚とろりだが蕎麦の風味は少ない、
言うなれば更科粉を溶いたような蕎麦湯。
そこに藻塩を入れると美味しいですよと店主が勧めてくれたので入れてみると・・
わー!なんだかいきなり出汁の入ったおいしいスープみたいになっちゃった!びっくり。
更に、そこに梅を溶いても美味しいというので
(この梅は甘いので甘いもの苦手の私はやや抵抗があったが)
入れてみると、あんらま!!これもめちゃくちゃ合う!!
ふしぎフシギ美味しい〜〜♪ 


蕎麦が出てくるとどうしてもシメのように感じてしまうが
コースはまだまだ続く。


「蕎麦の実入りれんこん餅のだだちゃ豆あんかけ」
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美しき日本の景色。
お盆も蓋付きの器も朱塗りも世界中に自慢したい機能美だ。
蓋を開けた時の喜びと言ったら!

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鮮やかな緑が美しいただちゃ豆あんかけ。これが最高の美味しさ!
ひねりのない自然の旨み爆発のソース・・・フレンチのシェフに食べさせたい。
またそこにひそめられたカニの足の部分が反則技的に美味しい。
なんというニクい組み合わせ、ニクすぎる、おいしすぎる。
れんこん餅は蕎麦の実入りなのでやわらかなつぶつぶ感があり
またそれがこともあろうにこんがり香ばしく焦がしてある!!
蕎麦を焦がした香ばしさは私にとってマタタビどころではない大好物。
ウワ〜〜〜ン もう美味しすぎて困るんですけど〜〜〜!


「地どりの粗挽き蕎麦粉焼き」
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だからー・・・
蕎麦粉を焼き焦がしたらマタタビで私がおかしくなっちゃうんですってば!(* ̄∇ ̄*)
奈良の地鶏に粗挽きの蕎麦粉がまぶしてあるので
表面がざらざらというかさらさら?していて焦げた香ばしさがたまらない。
かなり醤油辛い濃い味つけで、お酒のおつまみとしての料理になっている。
またこの椎茸が異様に美味しかった。干し椎茸だったのかな?



「蕎麦米入りみょうがご飯」
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蕎麦ではなくご飯でシメるのがユニークな「玄」の「蕎麦遊膳」。
ご飯は季節によってぐるぐる変わるらしい。
今日は私の大好物、みょうが!
お揚げさんがひそめらているのが嬉しいアクセントでおいしかった〜



デザートは果物と「玄」名物の「蕎麦団子」。

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蕎麦団子も更科粉で作られているため蕎麦の風味はなく
とぅるんとした食感が上品なお団子だ。




コチ、コチと時を刻む柱時計の音。

世の中の時間も時代も遠い世界のことのように
「玄」には「玄」だけの時間が流れている。
最初から最後まで、何から何まで、誠実さに満ちた細やかな心配り。

「どこからおいでになったのですか?」
との質問に東京ですと答えると、
東京には美味しいお蕎麦屋さんがいっぱいあるのに
こんな処にまで足を運んでいただいて申し訳ないと言う店主。

芸能人御用達、予約の取れない高級蕎麦コースの店。
時にそんなイメージを持たれてしまう店の店主と思えない、
むしろ正反対のその心のあり方に私は改めて目を見張った。
確かに蕎麦を出す店としては大変に贅沢な趣向、価格だが
それはこの店のユニークな個性であり、
価格云々よりとにかく「心」がこもっていることに私は感じ入った。


こんな謙虚な姿勢で、来る日も来る日もここでお客さんを迎えているのかと思ったら
私はむしろ心配になってきた。
名店ほど混みすぎてしまい、例えばのどかな場所でゆったりした時間をプロデュースするつもりが
のどかな場所で大行列の店になってしまったりする。
「玄」は予約制で人数を限定しているので目に見える大行列はないにせよ、
常にずっと先までいっぱいの予約を抱えていたら
ほっとひと息つくこともできないし風邪もひけないだろう。


そんな私のおせっかいな心配を打ち消すかのように
店主は最後まで笑顔を絶やさず、奥さんとともに丁寧に見送ってくれた。




すっかり更けた奈良の夜。

月が薄雲の中に、やわらかな動物のように隠れていた。







posted by aya at 09:35 | Comment(5) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>奈良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする