2012年08月27日

立石「手打そば処 玄庵」


イタリア在住10年の大学時代の友達モトコが、
ご主人のGianと夏休みでご帰国〜♪

お料理上手でおいしいもの好きのモトコと、
和食もお蕎麦も大好きというGianだけに
取っておきの美味しいお店にお連れせねば!
と私、もうめっちゃめっちゃ張り切りました。

外国からのお客様のお連れする時はゆったりできる店のほうがいいし
おつまみがいろいろ豊富で天ぷらが美味しいところがいいし、
お蕎麦の食べ比べもして欲しいのでお蕎麦が数種あるところがいい。
となるとお店選びは結構難しいのだ。

「玄庵」は店内の雰囲気も重厚で素晴らしいが
個室があるので心置きなくゆっくりできるのがいいところ。
(今回ははしゃぎ過ぎてて外観写真も店内写真も全く撮り忘れたが・・)


夏休み明けの玄庵に無事予約が取れてよかったなー


「鴨焼き」
RIMG2749.jpg

初っ端から「日本のガツンとおいしいもの」!
私もこれはおいしい鴨焼きだと思いましたが
お二人はさらに大喜び。
私まで嬉しい〜(^o^)


そして「玄庵」に来たらこれはお見せしたい。
「そばがき(白)」と「そばがき(黒)」。

「そばがき(白)」
RIMG2752.jpg

こちらの心までまんまるく豊かにふくらむような眺め。
「玄庵」のそばがきは、いつ見てもいいなぁ〜

RIMG2755.jpg

正統派、王道の蕎麦の香りが ほわわわ〜 
とたちのぼる。
ふわとろエアリー、なんていうやさしい食感とは対局にあるような、
もちっっ ねちっっ 
と食べ応えのあるそばがき。
碗がきのそばがきのような生生しいたくましさも併せ持ち、
それでいてなめらかな食感だ。
そばがきというのは外国の人には変わった食べ物だと思ったので心配したが
Gianもおいしいって!よかったー



「そばがき(黒)」
RIMG2761.jpg

RIMG2764.jpg

こちらはぐっと粗挽き。
干し草を思わせるような渋く香ばしい香り。
これもまた、もちねちーと重めの食感で
粗挽きのザラつぶ感が「そばがき(白)」との対比を楽しませてくれる。



「天婦羅盛合せ」
RIMG2767.jpg

カリッパリッと美味しい薄衣。
特に海老は見た目以上にふっくらプリプリでおいしい!
日本中どこにでもあるメニューだけに
お二人には是非美味しい天ぷらを食べて欲しかったのだが
玄庵にしてよかったなあー




「鴨つくね串焼き」
RIMG2770.jpg 

さっき立石の商店街で横目でやきとり見たしね♪



「牛タン網焼き」
RIMG2773.jpg

牛タンもおいしいのだが器がまた素晴らしすぎる。
これはこの度「玄庵」が惚れ込んで集めたという有田の現代作家岩永浩氏のもの。
うーん この作家の器、確かに素晴らしい・・私も欲しい!



「卵焼き」
RIMG2780.jpg

関東の玉子焼きは甘くて苦手なことも多いのだが
「玄庵」のは甘くなくてふっくら、おいしい。



お酒は得意でない3人なので浦霞1合を分けあいつつ(こども?!)
ひたすらおいしいおつまみを食べまくり。
さていよいよお楽しみのお蕎麦・・
と思ったところで大事件発生。

かつて岩手「たまき庵」でもやった大失敗を再びかました私。

「ほぼ開店時刻に行ったのにオーダーをのんびりしていて蕎麦が(一部)売り切れました」。


「せいろ」 「十割せいろ」「粗挽きせいろ」のうち、
「十割せいろ」が売り切れちゃったそうで・・・


(T△T) (T△T) (T△T)

私のバカバカ、蕎麦釜に落ちて死んでしまえーー!!


と一時は半ベソ寸前であったが、
これが功を奏して結局は大成功に。

お蕎麦が全種類揃っていたら私のことです、確実に
「せいろ」 「十割せいろ」「粗挽きせいろ」
という「せいろシバリ」なオーダーをしてしまったに違いない。
でも十割がなかったためにお店の人がおすすめしてくれた
「そばサラダ」をオーダーできて、これにGianがとても喜んでくれたのだ。

ああ私、お蕎麦が出てくるまでは
もっと「グローバルな視点」を持てていたのに。(?)
お蕎麦となると猪突猛進「せいろ」しか見えてない。
考えてみればはじめから種物も選ぶべきなんだってば!


「粗挽きせいろ」
RIMG2782.jpg

おお〜 たっぷりの小山盛りがうれしい。

RIMG2785.jpg

むんと押し出すように迫力のある姿。
手繰り上げるとさわやかな香ばしさがふわぁ〜
食感はしっかりめで、食べている間じゅう溢れるフレッシュな香ばしさがうれしい。

モトコは「すごい味!私こんな美味しいお蕎麦はじめて!」と感激してくれる。
やめてー お蕎麦が褒められると嬉しくてニヤニヤしちゃうからー
(私がほめられてるわけじゃないのに)





「せいろ」
RIMG2791.jpg

今度は、するりさらっと粋な眺め。

RIMG2797.jpg

はなやかに、さわやかに香る穀物のかぐわしさ。
見た目以上に密な肌は口中で輪郭がぱきぱきはっきり。
コシもしっかりして食べ応えがあり、それを噛み締めた味わいが濃い!
これまたおいしい〜




「そばサラダ」
RIMG2803.jpg

香味野菜が散りばめられた、さっぱりしたサラダ仕立て。
お蕎麦好きのGianは「粗挽きせいろ」も「せいろ」もよろこんで食べていたが
この「そばサラダ」は特に新鮮だったらしく、
一口食べて「美味しいー!」。
モトコはしきりと「あーほんとに日本はいいなあ・・」と感無量の様子。
私もこういう冷たいアレンジ蕎麦大好き!



おいしいものでお腹いっぱい、久々に会えてしあわせいっぱい。

帰り道は立石の商店街をぶらぶら散歩しながら歩く。


私が今回「玄庵」を選んだ理由の一つには
東京が誇る「観光地らしくない超楽しい観光地」、
立石駅前の飲み屋街をお見せしたかったから。


そこで面白かったのがイタリア人弁護士であるGianの、外国人らしい視点。
日本人から見ると「?」というところで写真を撮りたがるのだ。
床屋さんの赤白青の回転看板を撮るのは分かる。
でも立石の線路端に20台くらい停めてある自転車を
「Tanto(いっぱい).....♡」
と目を輝かせて撮っている姿は衝撃のキュートさでした。
日本人から見ると全く「たくさん」という量ではなかったので
奥さんのモトコが呆れて、お母さんのように
「ほらほらあっちには何百台もあるよ〜」
と線路の反対側にある大きな自転車駐輪場を指さしたら、
びっくり更に目が輝いちゃったGian。
仲良しかわいいご夫婦っぷりにヤラレました。

Milanoにはあんまり自転車ってなかったんだっけー?






posted by aya at 20:03 | Comment(7) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月28日

亀有「吟八亭 やざ和」


この道の先に、美味しいお蕎麦がある。
そしてお腹がとっても空いている。

そんな時、お恥ずかしいことに私はどう踏ん張っても我慢出来ず、
ついつい走ってしまう。
それをひそかに「蕎麦走り(そばしり)」と呼んでいる。

でもお蕎麦が大好きな人とわくわくしながら歩くと
あっという間だなあ!
蕎麦好きのまゆきちと「吟八亭やざ和」。
まゆきちは「初・やざ和」ということでフレッシュなわくわく感を
共有できるのがまた何とも嬉しいのだ。

まんず、「吟八亭やざ和」においては
何が何でも頼まにゃの「そばがき」。

RIMG2568.jpg

可愛らしいデザインながらどこか中世の武具めいた金属製の蓋付き。
「風の谷のナウシカ」にでも出てきそうな魅力的な堅牢さだが
蓋のなかは、もにょぉ〜ん、ふわぁ〜ん
とろけるばかりの世界である。


RIMG2579.jpg

はじめて「吟八亭やざ和」の「そばがき」を食べた時の衝撃は忘れられない。
蒸気が運ぶ、この上なくかぐわしい香り。

ここの「そばがき」は一般的なものとは一線を画している。
ぽってりしたそばがきが、澄んだお湯の底に沈んでいるのではなく
「特濃蕎麦湯」の中にジッとしているのだ。
その蕎麦湯の濃厚さときたら
「そばがき」さんが揺らぐことも身動きも全くできないほどの超・特濃。
蒸気からの香りが「特濃」なのも当然なのだ。


唇がまず出逢う、とろぉりかぐわしき濃厚蕎麦湯。
そしてその中の、もったりフワフワのそばがき。
口の中は隅から隅まで、もにょぉ〜ん、ふわ〜ん・・
なんと馥郁たる小宇宙。
冗談ではなく「ココはドコ?」の境地である。

熱いものはアッチアチが好きな江戸っ子の私には今日はちょっとぬるめだったが
(スターバックスでミルク入りを頼むときはエクストラホットでございます)
まゆきちにはちょうど良かった様子。


さて「そばがき」の夢も醒めやまぬうちに
「せいろそば」。

RIMG2591.jpg


RIMG2613.jpg


おお、香りは「そばがき」と同じ、
なんともバランスの良い濃厚なかぐわしさだ。
そして今日の「せいろそば」はこれまた物凄いきめの細かさである。
密着してくるような舌触りすら感じるつるつるの肌。
むにゅーうとちょっとのびるようなコシは
津軽蕎麦を思わせるような食感である。
香りは「そばがき」と同じだが噛みしめるうちに
こちらの方が少し生々しい、力強い味わいを出してくる。


こちらは「田舎そば」。
まゆきち、両方あってよかったねーえ!うれしいねーえ!

RIMG2624.jpg

RIMG2632.jpg

きたー。
これぞ「吟八亭やざ和」の「田舎そば」。
写真からも香りが漂ってきそうではないか・・・・

しかし、最初たぐりあげたときは
期待よりは香りは軽かった。
「そばがき」や「せいろそば」とは全く違う、
香ばしい、たくましい香りをふわっと品良くまとう「田舎そば」。
ところがどっこい、そりゃ最初だけのフェイントで
ざっくりがっしりした歯ごたえを楽しむうちに
何もかもが濃くなる!これでもかと!どうだまいったかと!
そ、そんな四方八方から美味しくされては・・
とっくに白旗降参である。


夢はまだ終わらない。
これまた濃厚スペシャル、「吟八亭やざ和」の蕎麦湯。

RIMG2657.jpg


そうそう、拙著「蕎麦こい日記」の巻頭カラーページ(グラビアと言っちゃおうか)において
私が子供のように口をパカッと開けて嬉しがっているのがこの蕎麦湯だ。
まゆきちも大喜び!


それにしても、私もまゆきちも今日食べたものといえば
「そばがき」「せいろそば」「田舎そば」「特濃蕎麦湯」。
お腹のなかは蕎麦粉だけではないか!!
(ふたりとも全く汁はつけていない・・。
 勿論、蕎麦湯の「おつまみ」にちろっとなめますが♪)


もうこれ以上無理というほど蕎麦浸り、しあわせ浸りの1月の夜。

帰り駅まで全く寒くなかったのは
お腹の蕎麦湯が濃厚だったから、かな?








posted by aya at 23:35 | Comment(4) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月11日

柴又「日曜庵」


先週某日、東京に大風が吹いた日。


RIMG2452-.jpg



風が去った後の掃き清めたような爽やかな青空に
帝釈天の「瑞龍松」の映えること、勇ましいこと!

名木や盆栽、襖絵など、丹精した松の姿に滅法弱い私は
珍しくも「蕎麦屋さんの暖簾をくぐる前からメロメロ」。
食べないうちから、お蕎麦の香りをかいだだけでメロメロってのは
日常茶飯事ですがね・・

ああ瑞龍松さま、惚れてしまうわぁー

小さな駅も、かわいらしい参道も、

柴又、いいとこだあー


しかも金・土・日は、「日曜庵」がある!




RIMG2634.jpg


帝釈天の境内から徒歩1分。
路地に入ったときからもう、店主の演出は始まっている。

南ヨーロッパ風の漆喰の壁に
可愛らしい重厚な扉。
そこにはためくキャンバス地のストライプの暖簾が
なんとも「日曜庵」らしい洒落ぶりだ。


建物も、空間も、料理の一つ一つも。

次々と繰り出される店主の美意識、演出の心憎さ。


RIMG2471.jpg

お酒は直径20cmはありそうな、広々と大きな片口で。
黒い水面は夜の湖。




RIMG2475.jpg

川越のおぼろ豆腐「なごり雪」も、
「日曜庵」の演出でさらに美味しい。
今日のは特に、スーっと羽根のような切り口に見惚れるばかり。




RIMG2484.jpg

今日の蕎麦の実。
何を持ってきてくれても、その時選ばれた皿、分量に
この店のセンスが出てしまう。
若草色の粒たち。




RIMG2500.jpg

「そばがき」。
これがなんとも素晴らしい!
ぽってりと箸先にとり寄せた香りのかぐわしさ。
「おいしいぃぃぃ〜〜〜〜!」
思わず声に出てしまう。
口に含むと、これは夢?
私は雲の上の人?
類を見ない極上エアリー。
ふわっふわっの空気のような天使にひょいと抱き上げられたかのような。
軽いのに、素朴な味わいはしっかり。
ああーおいしいーーー




RIMG2508.jpg

「そばがきはこれでどうぞ」と出してくれた
紫蘇オイルと醤油をブレンドしたもの。
すみません、相変わらず全然言う事きかない不良なので
ウホウホ夢中で食べてたらつけないうちになくなっちゃいました・・・
でもまたまたこの演出ぶり。
素焼き風の皿のせいで、
オイルと醤油が映す天窓の光にも心打たれてしまった。



さて、待ってました御本尊様。

ああ、うれしい。今日はいい日だ。
「大風に清められた青空」、「天に登りだしそうな瑞龍松」、
そして日曜庵の「せいろ」!!

RIMG2523.jpg

RIMG2530.jpg


おなじみの赤いお弁当箱のような蓋付きのせいろ。
どきどき開けると出会えるこの瞬間がたまらない。
素朴な色ムラの美しさに感激しつつ口に含むと
素朴な穀物感が口の中に静かに広がる。
なんと貴い蕎麦だろう。





「粗挽きせいろ」は白木のせいろで。

RIMG2536.jpg

RIMG2559.jpg

この白木のせいろは四隅に銀細工の縁があるのがなんともお洒落。
(こういう銀細工、大変に私好みです)
そして実は銀細工を愛でる心の余裕が出来たのはずっと後のことで、
この魅惑の肌はどうしたらいいのでしょう。
危険なほど美味しそう。ああ早く食べたいでも見つめていたい!
待ちきれず口に含むと、ザラザラした舌触りがたまらなく心地よく、
そっと噛みしめるとふっくらとした蕎麦の甘味が溢れ出す。




そして、「田舎せいろ」。

RIMG2567.jpg

RIMG2587.jpg

圧巻の野趣。悩殺の洗煉。

高台つきの美しい笊の上の小山盛り。
味も然ることながら、ひとつひとつの世界の完璧な演出に
私はいちいちノックアウトされてしまう。
無骨さの全くない、端整な野性味。
むわあーっと力強い香りと濃い味わいを追いかけて
あっという間に食べてしまい、たった今完璧な姿で提示された世界は
私の眼の前から跡形もなく消えてしまった。





RIMG2593.jpg


RIMG2596.jpg

蕎麦湯と、食後の梅のデザート。

デザート皿の金継ぎは店主の手によるものだが
私は最初山の絵のデザインかと思ってしまったほど、
この皿と梅とに合っている。

全く、「日曜庵」の美意識の高さときたら。


店主は繰り返し言う。

「全部自分の好きなようにできる。こんな面白い商売はない」

こんなにもはっきりと素直に、自分の仕事への純粋な愛着を語る人を
私は久しぶりに見た。

テレビ等のCMカメラマンだった店主。
今は誰の注文にも左右されず、
自分の感性の赴くまま、自分の好きなものだけを追い求め
次々と形にしているのだ。

その一皿一皿は、
それぞれがアングルと状況を計算し尽くされて撮られた映画の1シーン。

眼の前に置かれた瞬間にはじまり
食べてしまうまでの儚い物語なのだ。




RIMG2451.jpg


posted by aya at 11:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月08日

京成立石「蕎麦処 むらこし」


京成線「京成立石」駅から奥戸街道を歩き
本奥戸橋を渡ったところに「蕎麦処 むらこし」はある。


たまたまお客さんのいない時間に行ったため
店内はシンと静か。
テーブルにはスポーツ新聞が置かれている。

RIMG2626.jpg



白いエプロンが甲斐甲斐しい、感じの良い女性に
「せいろ」と「田舎」をお願いすると
年配の店主が出てきて
「田舎は時間がかかりますがよろしいでしょうか・・・」
と申し訳なさそうに言ってくれる。

ん?まさか、今から打ってくれるのだろうか?
たしかにメニューをよく見ると
「ご注文を承って打ち上げる本格そば
 お時間少々ご了承ください」
とある。

待っていますからいいですよと答えると
店主は早速打ち場に入り、
落ち着いた動作で蕎麦を打ち始める。
迅速だが、急ぐ風でもなく、
彼が毎日そうしているように、確実な動作で打っている。


気がつくと私は、うっとりとその職人に見惚れていた。

その人のさっぱりと整った風貌が、
いかにも江戸下町の職人らしく感じられたせいもある。

断りも無く写真を掲載するのはいけないことだが
私がシビレていたイメージを、ほんの小さく。


RIMG2582.jpg


静かな店内にコトコトと聞こえてくる仕事の音。

貴い時間だった。



「おまたせいたしましたー」
長く待たせて申し訳ないという心のこもった声で
女性が持ってきてくれた「せいろ」。
いやいや、今ないものを注文したのはこちらですから・・
とこちらが恐縮したくなってくるほどだ。
というより、「注文を受けてから打つ」ということを当たり前のようにしている
この店が凄すぎる。
「田舎終わりました」「粗挽き売り切れです」という
痛恨ズタズタのショックを週に一度は受けている私には
おとぎの国のような店である。



RIMG2594.jpg

RIMG2596.jpg

甘い粉の香りをふわりとまとい、
ふっくらとしたコシを持つ「せいろ」。
筑波山の麓で栽培された常陸秋そば。
噛みしめるとほくほくとした蕎麦の味わいがやさしく広がる。



そして、たった今打ち上がった「田舎そば」。
もう何だかありがたくってどうしましょう。

RIMG2603_.jpg

RIMG2611.jpg


黒めの肌に小さなホシをまばらに浮かべた
見るからにやさしい風情の田舎。
口に含むとふわんとしたコシが受け止めてくれ
ほのかに野趣の感じられる薫りが広がる。



この、まごころのこもった「せいろ」と「田舎そば」がですよ。

500円。と600円。






もう、本奥戸橋のたもとまでダッシュして泣いてもいいですか。





「蕎麦処 むらこし」。

本奥戸橋東詰からすぐである。



RIMG2633.jpg


posted by aya at 08:43 | Comment(3) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月20日

堀切菖蒲園「手打ち蕎麦 人と木」


いかにも京成線沿線らしい下町情緒あふれる町、堀切菖蒲園。

駅から数分で歩ける範囲に
居酒屋好きやモツ好きの聖地のような店が点在し、
それらがみんな普通の住宅と並んで町に溶け込んでいるのが面白い。

そんな「堀切菖蒲園」駅のすぐそばに
新しく蕎麦屋が出来た。
このあたりに美味しいお蕎麦屋さんがあったらいいなと思っていた私には
嬉しいニュース。

「手打ち蕎麦 人と木」。

RIMG2559.jpg


趣ある扉に洒落た暖簾がよく似合う、
和の心意気の伝わる外観。
何より、そこに乗り付けたママチャリ2台に私はシビレる。
いいじゃあないですか、
早くもご近所に愛されている証拠!

店内も居心地の良い軽い雰囲気ながら
和の情緒が上手に取り入れられている。
こんな棚で空間を飾りながら
上手に間仕切りしているのもとてもいい。

RIMG2556.jpg


そして「せいろ蕎麦」。

RIMG2534_.jpg

RIMG2542.jpg

ほおおっ
なんだかちょっと縮れておりますよ。
くるくると細かく散らして盛られた美しい姿、
「盛り技」の妙にまず目を見張る。
更に見入ればゆらめくような、穀物の自然の色あいの感じられる肌。
うん、これは美味しそうですよ!

箸先で寄せた香りはやや熟成感のあるしっかりとした香り。
そして口に含むと、かなり強いコシのある固めの蕎麦である。
くるくるひらひらした見た目に反して食べ応えがあり、
モグモグとしっかり噛みしめるうちに蕎麦の甘みが濃厚になってくる。



気がつくと、入り口のところに今入ってきたらしいお客さんが立っている。

いかにも「ご近所の人」といった雰囲気の二人連れ。
片方のおば(ぁ)ちゃんはクマのアップリケがたくさんついた
ピンクの割烹着を着ている。

おばちゃん、大きな声で
「はぁー 昨日に引き続き、」
と言いながらドスンと壁際のテーブルに腰を下ろす。

やって来たお店の人も至極普通の声で、
「あ、そう、そこ? どーぞ。」
と答える。




・・・またまたシビレたね。






もちろんこのお客さんはご近所の常連さんだからこそだと思うが
私にお蕎麦を出してくれた時もマニュアル通りでない、
飾らないが心の伝わる接客だなあと思っていたのだ。



しかもご近所さんが2日続けて来てくれるお店。
実は冒頭の写真は帰り際に撮ったものなので
あの2台のママチャリはこのおばちゃん達の愛車だ。



私も次回は是非ママチャリで乗り付けたい店である。
(何時間かかるんだー!)






posted by aya at 10:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月11日

立石「手打そば 玄庵」


RIMG2356.jpg


相変わらず通りからは全く目立たない店である。

奥戸街沿い、ドラッグストアの派手な看板の横。
自家製粉、手打そばの文字はあるが
素っ気ない1階の入り口からは店の様子は想像できない。
2階の店内に初めて行った人は
その重厚な空間に驚くだろう。

私が行くのは大抵遅い時間なので
ただでさえ贅沢な空間をほぼ独り占め。
育った家と木の色のトーンが似ているせいか、
私には、森の奥にでもいるかのように自然で落ち着く空間だ。


RIMG2338.jpg

RIMG2332.jpg



まずは十割。
そう、ここはドカンと「小山盛り」である。

箸先の香りはそう強くないが、
しっかりと密度濃く、程よい弾力が心地いい。
噛みしめるうちに根底を支えるような香ばしい香りも感じられ、
十割のお手本のような、優等生十割である。


RIMG2346.jpg

RIMG2350.jpg


そして2枚目は粗挽き。

これこれ、これですよ。
1本1本に野生の力が漲っているような、
近く見入れば目を細めずにはいられないような
「玄庵の粗挽き」の眺めである。

箸先で香りを寄せると
野趣あふれる穀物の香りがふわぁとこちらに迫ってくる。
うわあこれは美味しい!!まだ食べてないが。

今日は見た目からして熟成感を感じたのだが
実際の香りにはほぼ熟成感はない。

いよいよ口に含むと
口内に触れるざらついた粗挽きの肌が心地よく、
噛み締めるとまた、その瞬間のジャリッとした刺激がたまらない。
舌に痛いのかと一瞬勘違いしそうな程(無論全く痛くはない)
愉快な刺激である。


この歯ざわり。
その中の刺激。
味わい。
舌全体に広がる甘み。

それらを探り、確かめ、
そしてまたうっとりと追いかけ・・


ふと気づいたらアラ不思議、
あんなにどっさりとあった小山盛りが手品のように消えてしまった。

店内は他に誰もいないから、おそらく私が食べたのであろう。



この店は蕎麦打ち教室を兼ねていて、
ここから巣立ち名店に成長していった店も多い。


今日私が食べた蕎麦を打った人にも
いつかまたどこかで出会えるのかもしれない。
そんな風に思うと、
こんな小さな夜もまた大切な夜なのだ。



それにしても、最近立石づいているなあ〜♪





「荒川を渡る夜空に蕎麦の夢」



posted by aya at 22:28 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月01日

立石「土日庵」


立石で「立石らしく飲む!」のが大好きな友人が多い私にとって、
立石のお蕎麦屋さんに誰かを誘うのは至難の業である。

確かに、
「江戸っ子」のもつ煮込みは美味しいし、
「栄寿司」の雰囲気は立石ならではだし、
「ミツワ」の刺し盛りはびっくりだし、
「串揚げ100円ショップ」は笑っちゃうし、
「宇ち多”」に至っては自分が外国人になったかのような
カルチャーショックを覚えるが・・・



でもでもでも、私はやっぱり、
お蕎麦が好きなのだー!




というわけで「土日庵」。

土日でなくても「気まぐれに」やっている、
そんなゆるくて楽しい店。

扉を開けるとそこは立石。
今すぐ私が肩を揉まなくていけないのかと言うくらい
開けたその場所にお客さんの背中がある。
カウンターに7人座ればいっぱいの、小さな小さな店内。

扉を開けた私に

「一人?」
「奥入る?」
「こんなおやじの隣で大丈夫?」

店主よりも先にお客さんが口々に
私をどこに座らせるか世話を焼いてくれる。
しびれるねえ、立石人情。

店主はてんてこ舞いながらも
「どうぞ、よかったら奥へ」と
穏やかな口調で声をかけてくれる。
店内は今店主が焼いている「鴨つくね」のいいにおいでいっぱいだ。


まるで、昔からの知り合いのようにぽんぽんと、
でも本当は一人で酔客の中に入り込んだ私が居づらくないように、
気遣いながら話しかけてくれるお客さん達。

このお客さん達がまた、
みなさん実に「いい顔」をしていらっしゃるのには驚いた。
どの方も、
「どういう人なんだろう?」と興味を持ってしまうような、
目の奥に印象的な輝きがあったり、
実際(年季の入った)美形だったり、
ヒゲもじゃながら私が映画監督ならスカウトしたいような渋い味わいがあったり。

いい店にはいいお客さんが集うんだなあーとしみじみ。

店主は始終忙しそうだが常に自然な気遣いが感じられ
はきはきした奥さんの明るい対応も気持ちが良い。

この小さな宝箱のような雰囲気を壊したくなくて
写真がほとんど取れなかったのが申し訳ないが
かろうじてお蕎麦の写真だけは。


RIMG2311.jpg

RIMG2313.jpg

思わず「わあっ」と声を上げたくなるような、
目にまぶしい一面のホシである。

塵入りの土佐和紙のような素朴な風情。
自然そのままのような姿でありながら、
はっきりと、この国にしかない魅力を感じるのが不思議なほどだ。


香りは淡いが、繊細な歯ざわりと
じんわりと舌の上に広がる穀物の甘みを追いかけながら
もう一口、もう一口と
汁もつけずに夢中で食べる私に

「へえーっっ お蕎麦好きなんだねえ!!」
「アラッほんと〜」
「ここよく来るの?」
「最近は若い人でもお蕎麦食べるようになったんだねえ」
「たいしたもんだ」

と次々に声が。

や、ヤバイ見つかってしまった。
汁を付けなくては!!

と思った矢先、
「汁も美味しいんですよ〜・・」
とこれまた穏やかな店主の声。

あ〜〜ごめんなさいごめんなさい!

お蕎麦屋さんでつゆを付けないのは、
トンカツ屋さんでソースを付けないのとは訳が違い
お寿司屋さんでネタを剥がしてネタだけ食べているような
失礼なことだと思っている私。
(思っている癖に毎回やるのもどうかと思うが・・・)

いま、汁、つけます!
いただきます!

ズルズルッ



アレ

ほんとに美味しい。

ここの汁は東京においては実に個性的。
鰹と、昆布もかな?出汁の香りがふんわりと、
今関西の気鋭の店で楽しめるような汁だ。

あらー
しかもこの蕎麦には実に実によく合っているではないですか。

立石の飲み屋街の蕎麦ってったら
小麦粉味の大盛り蕎麦に
あまから〜〜い、濃い汁を思い浮かべるが
この蕎麦にしてこの汁。
こんな意外さもまた鮮烈でいい。


蕎麦1枚なので他の皆さんよりもさっさと食べ終わってしまった私。
「ああ〜そこ出るから」
と何故か遠くのお客さんが声をかけてくれ
「アラッ通れるかしら」
「オイオイ大丈夫かね」
「いけそう?」
「若い人はねえ〜」

すみませんすみません、よいしょっと、
他の方の背中をかき分け、引っこ抜かれるように店を出た私。

「ありがとうございましたぁ〜」と
実に自然な店主と奥さんの笑顔。





午後7時半。
日曜日の飲み屋街は、がらんと静かである。


posted by aya at 08:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月05日

堀切菖蒲園「五九一」(新年下町蕎麦)

gokui2.jpg


堀切菖蒲園駅出てすぐ右の手打ち蕎麦屋、
その名も「五九一(ごくい)」。



せいろそば550円。
安いです。

しかもせいろ二段重ねでやってきて、
量、多いです。



gokui1.jpg
(店内暗めにつきピンぼけで失礼)

神田藪系なのか、クロレラ緑なつやつやのお蕎麦。
蕎麦粉の香りはほとんど感じられないのだが、
そんなことは全くどうでもよいこの下町情緒。
テレビの音。隣のおっちゃんたちの会話。


おっちゃんたちの会話は、上野と浅草のどら焼きでどこがうまいかという話題で
さっきから20分は保っている。

「浅草のどら焼きはよ、亀十と西むらが2軒並んでんだけどよ、
亀十はアレ300円からするから。どら焼きひとつ300円しちゃんだよ。
それでもみんな行列して買うんだから。
んでよ、そのどら焼きってぇのがよ、なんかこう、焼き損ねぇみてえに、
まだらンみてえになっちゃってよ、でもそれがうめぇんだからしょうがねえよな!
でもよ、隣の西むらは、もっとこう品がよくってよ、俺なんかぁ西むらうめぇんだよ。
値段ももっと安いんだから、西むら、今度俺、買ってきてやるよ」


今年の私の初蕎麦は、そのおっちゃんたちにも大人気の町、浅草の
「尾張屋」だった。

尾張屋は、全国でただ1軒、私が「もり」でなく「ざる」を注文する店。
尾張屋の「ざる」には、ぴかぴか輝く海苔が
たった今ちぎりたてといった風の大きめの破片でお蕎麦の上に散りばめられてきて、
それに鶉の卵もついていくる。

父も、おそらく祖父も通ったであろうこの店には
小さな頃から連れてこられて来ていたため
もうこの味が私のDNAに染みついているようだ。
手打ち機械切り、小麦の香りの美味しいお蕎麦に、
香ばしい海苔と鶉、甘辛いつゆのバランス。
この店で、海苔も鶉もない「もり」を頼むと、
何とも物足りなく寂しい気持ちになってしまう。




2010年は、滑り出しから蕎麦づいてしまい、
気づけばすでに5軒60P600521_DCE.gif



アハハハやっちゃった〜EMOJI_131.gif60P600187_DCE.gif





posted by aya at 13:13 | Comment(0) | TrackBack(2) | 東京の蕎麦>葛飾区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする