愛する蕎麦と私の物語はいつだって
ロマンティックでドラマティックなのだが(本人評価)、
今回ほどドラマティックだったのは久しぶりだ!!


この日、私は新潟の低山二つに登って
春の山のお花を楽しんでいた。
人生最大量のカタクリの群生に出会ったり、
イワウチワ、ショウジョウバカマ、キクザキイチゲ、イカリソウ、雪割草など、
可愛いお花にたーーくさん出会って大満足。

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夜のお蕎麦屋さんに選んだのは「そば処 薬師」。
新潟のお蕎麦屋さんはいろいろ回っているので
「行ったことのないお店で手打ちのお店」ということで選んだのだ。
(新潟はへぎそば国なので「美味しいお蕎麦をたっっぷり出す機械打ちのお店」
が圧倒的に多いのです〜)

事前情報だと営業時間は19:30。
しかし時節柄営業時間変更はよくあることだし
山を降りて温泉に入ってから食べに行って間に合うのか、
二つ目の山の山頂から確認の電話をしてみた。

通し営業の「薬師」さんだが、
電話に出てくれたのは店主らしい男性。
「普段はラストオーダー18:30です。
でも今日はもうあと20食くらいしかないから
もっと早く閉まるかも、予約はできません」
とのこと!
ひえええええ(>人<;) !!

時計を見ると15:12。
私の体は低山と言えど山の頂上にある。
カタクリの群生が揺れ、3分咲きの桜の向こうに白い峰が見える静かな頂上。
あんまり気分が良いので、この後ちょっとお昼寝でもしてやろうと
楽しみにしていたところだったのだ。


でもそのお蕎麦に間に合わせるには、頂上でゆっくりすることも
お蕎麦の前に温泉に入ることも諦めなくてならない。
今日はかなり汗をかいたし、私は同行者に申し訳なくなり、
「大丈夫大丈夫、お蕎麦屋さんはそこだけじゃないんだし!
他にもいろいろ見つけてあるから、なくなっちゃってたら
そっちに行けばいいんだから、せっかくの頂上でゆっくりしましょう!」
と明るく言ったのだが、後にその人から
「顔が完全に蕎麦モードに切り替わっていたので
これは是が非でもその店に行かねばと思った」
と聞かされました(笑)。


というわけでそこから山を下りまくり、
(それでもお目当てのお花達に出会うとつい見入ったり写真を撮ったりして)
駐車場にたどり着いたのは16:35。
「薬師」はここから車で20分の距離になる。
20食は、どうなったのか!?

またまた申し訳ないが電話させていただき
「あの〜〜う、先ほど電話した者なんですが、
あと20分ちょっとで着けるんですが、お蕎麦まだありそうですか?」
とものすごーーくドキドキしながら聞いてみた。

すると、
「う〜〜ん、なんとも難しいところですねー
あと4、5食しか残ってないので。」
という、さらにスリリングなお返事Σ( ̄Д ̄;)!!

さっきは15:12で20食残。
今、16:35で4、5食残。
ご飯時じゃないし大丈夫かな?なーんて思っていたのは甘かった。
すごい人気のお店なんだなぁー!
あと4、5食、20分間、間に合うのか!?!?


とりあえず山の片付けをぶん投げるように済ませ車を発進!
「そば処 薬師」の駐車場に着いたのは16:58だった。

果たしてお蕎麦はあるのか、ないのか。

ああ胸が爆発する!!!!!



そんな、ある意味極限状態の私の前に現れたお店は、
残雪と木々に囲まれ、静かに穏やかに佇んでいた。

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こんなお店なんだ!
なんて可愛らしい建物なんだろう。

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玄関脇には小さな池まであって、
よく手入れされた草花がますますムードを高めている。

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そして何より嬉しいのは「営業中」の看板!!
もしやこれは、間に合ったんじゃないですか!?

恐る恐る扉を開け尋ねると・・・


やったああああああーーーーーー!!お蕎麦ありました!
なんということでしょう、ちょうどラスト2人前だそうです!!
うっっ 嬉しすぎて泣きそう(T_T)



吹き抜けが気持ちの良い店内。
高いところに飾られた神棚や招き猫、達磨さんや宝船も、
この店で見ると清々しい美しさを感じるものだ。

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窓からは遠くに山が見え、
その山肌の赤みが夕暮れが迫っていることを告げている。

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この時の私の嬉しい気持ちは筆舌に尽くし難い。
楽しく素晴らしい登山の後の満足感に加え、
ずっと来たかったお店の、もうないかもダメかもと
ハラハラしまくったお蕎麦にもうすぐ会えるという、
この言いようのないときめき、高揚!



店内中央には先客がおり、そこに今料理が運ばれてきた。
ここの奥さんは可愛らしい小さな声で、一歩控えた素敵な接客である。
先客は地元の人らしいおばあちゃんと、おそらくそのお孫さんらしい、
20代くらいの男性という二人組。
(いや、カップルという可能性だってなくはないのだが)
おばあちゃんが頼んだのは「鍋焼きうどん」(遠目にも巨大な器にビックリ)。
男性は一人で「へぎ盛りそば(2人前)」を食べるんですってよ!!
なるほど、へぎそばが一般的な新潟では
このように「お蕎麦はたっぷり食べる」っていう文化があるんだな〜、
と感心しました。そりゃあお蕎麦なくなるのも早いですよねー!

ということは、私気づいてしまいました。
「あのおばあちゃんこそが私達の神様なんだ!」
だって、あのおばあちゃんが鍋焼きうどんじゃなくてお蕎麦頼んでたら、
私たちのお蕎麦はなかったわけですよね!?
おばあちゃん、ありがとうございます〜〜!(T_T)


神様が座っていた席 (≧∇≦)
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一般的に、新潟の「へぎそば」とはふのりをつなぎに使い
人数分のお蕎麦をこの辺りの名物「へぎ」という大きな器に
独特の盛り付けをするお蕎麦のことである。

「そば処 薬師」のお蕎麦はふのりは使用していないのだが
へぎに盛り付けられたスタイル。
人数によって器の大きさも変わってきます。

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二人なので、もちろん普通の「ざるそば」を二つ、という頼み方も出来るが
せっかくなので「へぎ盛り 二人盛りそば」をお願いした。


へぎ盛りのお蕎麦だけでなく
種物のお蕎麦やうどんメニューもこんなにたくさんある。


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そしておつまみにいいもの発見!

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ふきのとうの天ぷら♡
それと「天ぷら(1人前)」もひとつ、いっちゃおう〜




天ぷらが先に来るかと思っていたが、
まずお蕎麦が来ました!!

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うっわ〜〜〜い!!
新潟に来たって感じだなあ〜
素晴らしい眺めだなあ〜♡


と思っていたら天ぷらも同時に、二つとも来てびっくり。
ええっ

「ふきのとう天ぷら」
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おおおおおお おいしそう〜〜〜!! (≧∇≦)!!


「天ぷら(一人前)」
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あまりにも美味しそうな天ぷらだけに
揚げたてをたった今かぶりつきたいところだが、
その前に私にはしなければならないことがある。


私の舌が天ぷらに泥酔するまえに、
この澄んだ状態で、あなたに会いたい。

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美しいへぎ盛り、
崩してしまうのがもったいないなあ〜

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見入れば手打ちとわかる繊細な素朴さのある輪郭線。
微かに透明感のある肌には細かな凹凸があり
そこに浮かぶ褐色のホシ、白い影が美しい。
素晴らしい香りがしそう!!!


まずは箸先から香りを寄せる。
お?・・・意外にも香らない。
しかし食べ進むうちに黒く香ばしい香りとふっくらした穀物感、
そのふたつが同時に押し寄せてきた!!
なんて美しい香りと味わい!!
見た目ではずっしりした質感に見えたが
食感は軽やかで、繊細でやさしいコシが素晴らしい。
素朴な舌触りの肌を噛み締めると穀物感がますますふくらみ、
もうもうもう、美味しいったらありゃしない。


またまた、一度も汁も薬味も使わぬまま
お蕎麦だけで泥酔完食してしまった大悪党の私。
食べ終わってから見ると、薬味皿に東京では見かけないメンバー発見!

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紫蘇の香りのいいお漬物。

蕎麦汁はガツンと舌に広がる強い甘さがあり、
そんなところにもまた郷土色を感じる。



お蕎麦を完食したと書きましたが
実は天ぷらも揚げたてを食べたくて
途中つまみながら食べました〜

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この天ぷらがまた、激うますぎて目がかっぴらきました!!!
ななななんですかコレ!?
まずこの衣の美味しさ!重さゼロ!激軽!!
その中から現れるふきのとうの鮮烈な香り!
カリッシャクシャクー!
こんな、どうなってもいいほど美味しいふきのとうの天ぷらが
7つも入って700円。
ありえません。幸せすぎる・・・


「天ぷら(一人前)」
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海老、かぼちゃ、茄子、ししとう、紫蘇の葉、
しめじに見えたけど舞茸の味がしたきのこ (≧∇≦)
揚げ方がいいのでどれも大変美味しいが
特に海老もなんとも言えず香ばしく、ぷりぷりで最高だった。


厨房は店主一人だったはずなのに
全てのものが同時にドドドーーーンと出てきたことに改めて驚愕。
こんなに美味しい揚げたての天ぷらたくさんと
手間のかかるへぎ盛りのお蕎麦2人前ですよ?
ここの店主は魔法使いですか!?


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蕎麦湯は蕎麦粉を溶いたりせず、
釜湯そのままのようなのに非常に濃い。

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うわ〜〜 おいっしい〜〜
良質な蕎麦粉を使ったお蕎麦を
大量に茹でているからこその美味しさだろう。



店の外に出ると、まだ雪の残る峰々が今日の最後の光に照らされ
それに対して下界はぐんと暗く見えた。
里山にはもう夜が訪れようとしていた。


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しずかな、しずかな、魚沼の夕暮れ。



「この店は毎日こんな風に店仕舞いするんだなあー」


私にはこの時間が、物語のように美しく感じたのだった。