2020年08月10日

埼玉・新座「新座鞍馬」


止まぬ雨の中、圧倒的な存在感。

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立派な造りだが、派手さはない。
無駄を削ぎ落としつつ、堂々とした構え。

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中に入ると、都心ではあり得ない広い玄関に迎えられる。

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田舎家らしいと言うには立派な造り。
うん、ちょっと「お寺に来たような」感覚かもしれない。
右には蕎麦打ち場、奥には製粉スペースがある。

年配の係りの女性が「今すぐ片付けますので」と声をかけてくれたので
玄関で少し待つ。
その抑えた、しかしとても感じのいい声の余韻が、雨音の間に響く。




客席のあるお座敷はさらに広々。

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時節柄、座卓を減らし客席同士を離している、のではない。
ここはもともとこの贅沢な空間なのだ。

雨の音。厨房で働く小さな音。

にほんの家の美しさに、うっとり。



しかしのんびりうっとりしている場合ではない。
ここでは来るたび心千々に乱れさせられる禅問答・・・ではなく
大問題があるのだ。

「蕎麦が4種類+そばがきもある!!」


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「もりそば」
「玄挽きそば」
「粗挽きそば」
「更科そば」
「そばがき」

さあどうしようこっちのお腹は一つである。

来たからには今あるお蕎麦をすべて食べたい。
過去そうしなかったことはどんな蕎麦屋でも一度もない私である。
(そんな恥ずかしいことをバラしてどうする)


しかしありがたいことに
ここには数種の蕎麦を少しずつ食べられるセットものがあるのだ!

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しかしこれがですね・・・
また心千々に乱れる原因でもありましてですね・・・

「もり3種」のセットを頼めば3種類の蕎麦には会えますが
じゃあ後の1種類はどうするかっていう話です。
こういう場合、複数で来ていれば相談して組み合わせて
なんとしても全部食べられるようにするわけですが
例えば「もり3種」と「そばがき2種」を頼んだ場合
微妙に蕎麦の量が違うので
どれをどちらのセットで選ぶかがまた真剣な課題でして。
読んでくださる皆様にはややこしくどうでもいい話かと思いますが
私にはとんでもなく重大な問題なのです!!


ここで、先ほどの感じのいい係りの女性がやってきた。
品が良く、声は小さめで心はこもっている感じが素晴らしい。
そして大変控えめに感じよく、悲報を告げた。

「本日は玄挽きが売り切れでございまして・・・」

(T_T)

(T_T)

(T_T)

その時、午後1時。
今日は朝からずっと大雨だし、大丈夫かな〜〜なんて思ってきたのだが・・・
甘かった(T_T)。
玄挽きは生産に時間がかかるので、もともと量が打てないらしい。


それならそれで、今あるお蕎麦をその分めいっぱい愛そうではありませんか!


というわけで、本日は
「もり3種」
「そばがき2種」
の組み合わせで、お願いします!



少し待つ間に、さっき横目で見た
入り口に展示してある「蕎麦の実と産地名」がもう一度見たくて
確認の旅に出る多動児。
いや、これは見なければ絶対に損なのです。

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ね、すごいでしょう?
特に左の二つ、ご覧ください。

「自家栽培」。

「新座鞍馬」は「地蕎麦」「自家栽培」で有名な店。
畑を持っていて、蕎麦を畑で作るところからやっているのだ。

残念ながら左の「玄挽き」は今日食べられないが
「もりそば」も「粗挽き」もわくわく〜〜!
特に「キタミツキ」って品種は食べたことないので興味津々である。



席に戻ると、お盆の上にこれから使うお薬味やら汁やらが
色々のったお盆がセットされていた。

その真ん中に ことり、と最初の一品が置かれる。

「蕎麦の実がゆ」
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まず、食べる前からこの景色に見惚れてしまう。
この空間にしてこのスタイル、が素晴らしい。
お盆の上に色々並んだその真ん中に ぽん と配置された一品。
それはまるで茶道の盆の中のような、完成された世界だ。



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見た目はシンプルだが中からさつま芋やじゃが芋、人参など
彩り豊かな野菜が出てきた。
出汁がとにかく美味しい。
蕎麦の実はぽろぽろ〜としている。
蕎麦は実ごと炊くと一番蕎麦の香りが感じづらいので
私にはもったいなく感じてしまう調理法なのだが
この蕎麦の実がゆは蕎麦の香りがしなくとも
大変美味しく楽しませてくれた。


「蕎麦豆腐」
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ドンと思いの外大きく、堂々たる蕎麦豆腐。
蕎麦豆腐は味わいが乏しいものも多いのだが
これはほんのり滋味深く香ばしく、とても美味しい。
かかっているのが出汁+ゆる〜〜いそばがき?のような感じで
それがとにかく絶品。
冷たくてもっちりぷるぷるでおいしい〜〜



そしてまた、全世界に自慢したい景色がここに!!


「更科そば」
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この揺るぎなき、完全美。
日本の家、日本の器。
その中で、私の愛する人は、
どうしてどうしてこんなにも完璧な美しさなのだろう。

またこの新座鞍馬の「盆の中」は本当に茶道の世界のようで
ちょこちょこと美しく、楽しい。



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心まで澄み渡る、乳白色の曲線たち。
しかし意外にもその香りは濃厚で、
上品な感じではなくムワ〜〜と甘く濃厚な小麦の香りであった。
ぷにんぷにんとした食感が楽しい。



「もりそば」
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おっほー!
これはまた攻めに攻めた「もりそば」がやってまいりました!!
おおおおおおお なんとふっくら、そそる輪郭線・・・

箸先にたぐりあげて、眼が覚めるような思い。
野生的な草のような香りが弾けるようにこちらに漂ってきた。

口に含むと繊細でありつついびつな輪郭線の舌触りが超個性的。
そして味わいの濃厚さがとんでもなくすごい。
ちょっと蕎麦だけで連続で食べると濃厚すぎるので
蕎麦汁つけようかしらなんて思うお蕎麦は滅多にあるものではない。

これが「自家栽培 新座市あたご産 春のいぶき」かあ・・・
店主が育てた蕎麦だと思うと香りも味わいもひとしおである。


「粗挽きそば」
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す、すごい。
この迫力の輪郭線。
やや平打ちの、不規則な太さ、やわらかそうな粗挽き感は
相当個性的である。

こちらのみ自家栽培ではないらしく埼玉県三芳の
「キタミツキ」という品種の蕎麦である。

どんな蕎麦かとワクワク香りを寄せると、
おおおお これはかなり変わっております。
すこしオイリーな香り・・・強いて言えば芥子の実に近いか?
この手の香りの蕎麦はあるにはあるのだが、久しぶりだ。

見た目は柔らかそうだったが質感は意外と固め。
口内で固め太めの輪郭線が暴れ
それをもぐんもぐんと噛む感じ。
噛み締めた中から滋味深い香りがじわーっと伝わってくる。

ちなみに蕎麦の奥に控えている茶道具・・・ではなく
小皿のうち、右のにごったものは「胡桃だれ」でした。
これは蕎麦湯の時のお楽しみ(^^)



「そばがき」
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粗挽きの美しい肌。
選び抜かれた皿の真ん中の、洗練の佇まいにうっとり・・・

箸先からは青く美しい香りがふわーっ。
素晴らしいかぐわしさだ。

口に含むとザラザラもっちりふっくら。
見た目があまりにも素晴らしいので、これは超〜!エアリーな、
究極ふわとろもっちり系かな?♡と思ったのだが
ザラザラもっちり、全体的に親しみやすい感じのそばがきであった。



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蕎麦湯はすっきり正統の釜湯。
透き通っているがじんわり、美味しい。



食後にはこんなデザートも出された。

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「そばかりんとう」。
写真撮る前に1枚かじっちゃって、慌ててそこを隠して撮影したのだが
バレてませんよね?(^^;;)
甘いものは全体的に苦手な私だが、蕎麦の香ばしさがあるだけで
猫のマタタビ高遠に蕎麦。おいしい♡



止まぬ雨の中、一定の温度、一定のゆっくりした速度を保ったまま
「新座鞍馬」の時間は過ぎた。

その揺るぎなきイメージは心地よく胸に刻まれ
「また来たい」と思わされるのだ。




posted by aya at 15:01 | Comment(1) | 関東の蕎麦>埼玉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハハッ 面白いな・・
そして、すっ 素晴らしい!!
「ムワ〜〜と甘く濃厚な小麦の香りであった。」
とても上手な表現で
 「褒めず けなさず」
じゃなくて
 「けなさず 褒めず」
微妙ですが 
 小学校に戻って国語勉強しなおそう・・
ながいこと伺っていませんが、何か魅力的なメニューが出来ているんですね。
金魚のうんちのように・・こんど行ってこよう
Posted by 而酔而老 at 2020年08月15日 18:48
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