関東の人間からすると「長岡京」という駅名があることからして
御伽の国の世界である。
長岡京ってあの、歴史の時間に習った、桓武天皇の長岡京ですよね??
ドナルド・キーン氏が初めて日本に来た時
夜行列車が「関ヶ原」の駅に停車して思わず涙したという話を聞いたことがあるが
歴史深い街の名前はその響きだけで十分に感動的なものだ。
駅を降りたらそこは8世紀の長岡京、のわけはないが
そんな楽しい妄想に駆られつつ、
でも目的地は例によってまたまたお蕎麦屋さん・・(* ̄∇ ̄*)
ん?お蕎麦屋さん?

路地を入ってすぐの小さな店はご近所の神社の幟のせいもあってか目立たない。
「神足(こうたり)神社」ってなかなか読めないですねえ、
ちなみにここは住所も神足。
外観に「蕎麦」の文字はないし店名はなんとアルファベットだし
何の店かもわからない。
初めてやって来た者にはなかなか入りづらい雰囲気だ。

でも近づけば「蕎麦切り定食」の小さな看板があるので
エイヤと扉を開けてみましょう〜〜

「いらっしゃいませ!」
迎えてくれた奥さんの感じの良い笑顔にホッとする。
店内は玄関で靴を脱いで上がるようになっていて
右手にカウンター、左側が座卓の席。
カウンター内ではどことなく淡々と落ち着いたムードの店主が静かに調理をしている。
何組かの先客は皆常連さんらしくいかにも慣れた雰囲気。
奥さんは見慣れぬ顔である私に
「こちら、初めてですか・・・?」
と笑いかけ、メニューの説明をしてくれた。

説明と言っても簡単です。
こちらのお昼のメニューは「蕎麦切り定食」のみ!
なので入店すると自動的にそのメニューを食べることになります(^^)
しかもここは夜の営業はなく昼のみなので
(以前は予約貸切で夜の会席料理、居酒屋としての営業をしていたそうだが最近はしていないらしい)
現在はとにかくこの「蕎麦切り定食」のみのお店となっております!
おもしろい〜〜〜〜
しかも壁にはあちこちに
「お得な回数券販売してます
蕎麦切り定食チケット 11枚綴り 10000円」
という張り紙があるので、いかに常連さんが多い店かが窺い知れるというものだ。
「蕎麦切り定食」

「冷ざる蕎麦」
「鯛めし」
「かしわと山菜の酢味噌かけ」

ピッカピカに輝く蕎麦は見た目以上に密度が濃く
たぐり上げるとずっしり重量感がある。
重くてツルツルなので箸から滑り落ちそうな感覚すらあるほど。
むわ〜と甘い香りとつるんつるんの舌触りは
乾麺に似た印象を受けるほど整っていて
噛み締めるとふわんと粉の甘みが広がる。
外二、北海道の手打ち蕎麦。
汁はやや甘め、こっくりとした印象のもの。
セットのご飯は日替わりで、今日は「鯛めし」。
京都という土地のイメージからすると魚の香りがガツンと感じられる
ややたくましい感じの鯛めしだ。
「鯛めし」にしても小鉢の「かしわと山菜の酢味噌かけ」にしても
やはりお蕎麦やさんというよりは料理屋っぽいメニューで
本当に個性的な面白いお店だなあ〜
帰り際も奥さんはカウンターから玄関のところまで出て来てくれて
ニコニコと実に感じよく京都産の蕎麦のことなどを話してくれた。
お昼のみ、「蕎麦切り定食」のみの小さなお店。
京都の郊外で、常連が通うこんな蕎麦文化があることに
なんだか私まで嬉しい気持ちになって白い暖簾を潜って出る。