2017年03月01日
福井・越前町「だいこん舎」
思い出すたびに心がもう一度澄んでいく。
あの朝雪の中で出会った時間。
武生市、鯖江市から海の方へ車で30分ほど。
陶芸村というのは福井では有名な観光地らしいが
たどり着いてみると村はただ静かだった。
人影も、すれ違う車もほとんどない。
開店時間を狙って行ったたのでまだ早かったせいだろう。
それが素晴らしかった。
静かすぎてここが店という気がしなかったが
看板と「営業中」という小さな表示に誘われて階段を上がる。
静寂。
ここに立ってこの家を見た時、私は心から嬉しかった。
小雪がちらちら舞う中、あの大きな暖簾は何も言わずに
あたたかく私を迎えてくれているように見えた。
雪の音。
暖簾をくぐり店に入るとさらに嬉しい気持ちになった。
こんなに可愛らしい店とは!
まだ誰もお客さんのいない店内は広々として
外と同じ澄んだ空気に満ちていた。
アイアンの暖炉に畳ベンチ、テーブルに飾られたお花。
キメキメすぎないインテリアが何とものんびりと実に居心地よく可愛らしく感じた。
ウクレレのように小さくつま弾くギターのBGMがよく似合う。
ああ本当に素晴らしい時間に来た。
実は私が「こんなに可愛らしいお店とは」と驚いたのには訳がある。
私が今回福井に来るにあたってこの店を選んだのは
他でもないあの「佐野蕎麦」の店主が修業した店と聞いたからだ。
23年間私が見てきた数あるお蕎麦屋さんの中でも
飛び抜けて「ヘンな名店」である「佐野蕎麦」(* ̄∇ ̄*) 。
(衝撃の「佐野蕎麦」体験はコチラ→http://ayakotakato.seesaa.net/article/436732840.html)
佐野蕎麦店主が修業した頃は「だいこん舎」はまだ鯖江市内にあったらしいが
こうしてこの静かで可愛らしい「だいこん舎」に来てみると
そのつながりがまた愛おしく思える。
今日この店の厨房や店内で働いている若い人たちもみな素朴で感じのいい人ばかりだ。
私のルーツの四分の一は福井なので何となく福井好きな私は
ますます嬉しい気持ちになる。
メニューは福井らしく「越前おろしそば」を中心にシンプル。
しかしここはおろしそばだけでも5種類もある!
その他あたたかいお蕎麦やそばがき、甘味もあり
この店が観光地の中の蕎麦屋として賑わう時間が想像される。
あっこれもいいな♡
空気のいいところで食べる野菜はますます美味しそう。
「旬菜天盛」ぜひいきましょう (≧∇≦)/
「旬菜天盛」
しいたけ、赤かぶ、蕗の薹、さつまいも。
ふんわりした衣がやさしい天ぷら。
そしてすっかりのんびりしていた私に衝撃の出会いがやってまいりました。
5種あるおろしそばの筆頭に「おろしそばの定番」と書いてあった「ぶっかけおろし」!
もともとぶっかけの「越前おろしそば」がだぁ〜〜〜〜い好きな私。
東京の人のイメージだと「おろしそば」というのは
「大根おろしが薬味としてのってるお蕎麦」だと思いますが
「越前おろしそば」は大根の絞り汁で食べるというところが素晴らしいところ。
普段はもりそば一辺倒の私も「越前おろしそば」は我慢できず
かならず「もりそば」と両方頼んでしまいます(≧∇≦)/
なのでよく知っているメニュー、なのですが、ここのは・・・
「ぶっかけおろし」
えっ・・・?
なんですかこの、いまだかつて見た事のない美しいピンクは??
本格的な「越前おろしそば」を出す店ではお客さんに提供する寸前に本節を削っており
それが美味しさの秘訣でもあるわけだが
こんなピンク色のはいくら何でも見たことがないですよ・・
しかもこんなに薄くて幅広!
上手に削ってあるなあ〜
ワクワクとひとくち
( °o°)
( °o°)
いやいや・・・・
いやいやいやいや・・・・
ちょっと衝撃すぎて言葉を失うほどの美味しさなのですが!!
食べた瞬間、あまりにも透き通ったさわやかさに全身が瞬間洗浄された思いがした。
そこまでは今までも感じたことがある感激。(でも今までで一番のさわやかさ、清澄さ!)
今回驚かされたのは私はその爽やかさの中に、ニンニクのようなたまらなくおいしいアクセントを
ごくごくかすかに感じたのだ。
んん?今のナニ!???
もう一口食べてみるとやはり全体はこの上もなく美しく澄んでいるのだが
今度はなんと、またまた超〜〜かすかに「ウインナー・・・?」。
要は本節があまりにもフレッシュで美味しいために発酵の要素を感じさせてくれるのだろう。
それがとびきり澄んだおろし汁のなかで、
さわやかなままほんのりフワリ感じられるこのニクさ。美味しさ。
ええ〜〜〜なんなんですかこの「ぶっかけおろし」は〜〜〜!
まさに衝撃の初体験。おいしすぎる・・・
「盛りそば」
いつもは私にとって不動のアイドル、生涯の大スターである「もりそば」であるが
今日は「ぶっかけおろしそば」で骨抜きにしれてしまい
なんだか浮気後のような罪悪感を覚えつつの対面・・・(^^;;)
ところが、これがまた!!
ふっわーーーーー!!
蕎麦のかぐわしさのあまりも強烈なフレッシュさにびっくり。
ただただフレッシュ。私ごと吹き飛んでしまいそうなさわやかさ。
吹き飛んだまま食べずに倒れていても本望と思えるほどの感激だがそれは口だけで
こんなふうにいつまでも香りだけに浸っていたくなるかぐわしさというのは
そうあるものではない。
ワクワク箸でたぐりあげると最初の印象以上に透明感のある肌で
その中に浮かぶ蕎麦粒子の美しさにも驚かされる。
太打ちで輪郭線は比較的しっかり硬いのだがかみしめると不思議と硬さは全くなく
なんとも言えない軽さと柔らかさ、コシがある。
見つめても見つめても見つめきれない、あまり出会ったのことない稀有な食感。
ことさらではないざらつき、素朴な輪郭線の舌触りも大変素晴らしい。
香りは食べている間に薄まって来るタイプで
全体にすっきりと軽やかな蕎麦・・・しかも十割でびっくり!
またしても最後まで一度も蕎麦汁をつけずに夢中で食べきってしまった大悪党だったが
蕎麦汁は蕎麦湯の時のお楽しみ。
ここの汁は独特のキュンッと尖った甘みの少ないもの。
ここは醤油からしてキュンとシャープで旨味、甘みが少ないようなので
それがあのスーパー爽やかなぶっかけの秘密なのかもしれない。
そして福井では「そばがき」を頼むと最後に出してくれるお店が多い気がするのですが
気のせいでしょうか (≧∇≦)
「そばがき」
うわー、かっわいい!
ありそうであまり見たことないそばがきふた山盛り。
外と同じように澄んだ店の空気に立ち上る湯気が
愛おしさのボリュームをますます上げるばかり。
あああああああ
もう
なんなんでしょうこちらのお店は・・・
これまた最高すぎる「そばがき」でもう胸いっぱいの大感激!!
もは〜〜〜っと濃厚に漂う香りは
先の「盛りそば」の吹き飛ぶような鮮烈なさわやかさよりもう少し落ち着いた、
穀物の誠実でまろやかなかぐわしさ。
食感がまた恐ろしいほどすんばらしい。
このむっちりふっくら少しエアリーな夢!!
こんな静かな雪の中、誰もいない店内で
ここまで鮮やかな世界をのんびりそうに次々と見せてくれるなんて
私はもうどうしていいかわかりません
「だいこん舎」さん素敵すぎる
外には小雪が降っている。
私はストーブに暖められながら
今出会っためくるめく夢に身を溶かしながら
「だいこん舎」の音を聞いている。
(これ買えばよかったな〜!)
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雪降る時分に行ったことは無いな。
「雪」って全ての景色を、否、見た者の受け取る印象、感性、感覚を変えてしまう。
きっと、それもその時行ったお店の味(お店そのものの)として焼き付けられるのだろうな、心に。
時分に行くと、結構な繁盛店ですが 色々はずしても 私は好きな方です 良いお店ですよね
雪が降る時分に行ってみたいな・・
雪もよかったですし、あの朝の空いた時間も最高でした。味も大切ですがその時環境って本当に大切ですよね。素敵なお店ほど繁盛し過ぎてお店の人が当初思い描いていたであろうのんびりしたお店とは程遠い行列店になってしまったりしてあああ・・・とせつなくなります。
>而酔而老さん
>
>「だいこん舎」か・・・
>雪降る時分に行ったことは無いな。
>「雪」って全ての景色を、否、見た者の受け取る印象、感性、感覚を変えてしまう。
>きっと、それもその時行ったお店の味(お店そのものの)として焼き付けられるのだろうな、心に。
>時分に行くと、結構な繁盛店ですが 色々はずしても 私は好きな方です 良いお店ですよね
>雪が降る時分に行ってみたいな・・
まさにそうですね。
あの時あのお店で・・・あの人と 食べたお蕎麦は美味しかった(本当に楽しいと、何を食べたか、美味しかったかも「楽しかった」の記憶に全て打ち消されてしまう時もあるが)
僕のオススメは
おしぼりおろしですd( ̄  ̄)
私はどんなに楽しくても食べたお蕎麦の印象を忘れることはないのですが、それは楽しい時ほどものすごく努力、意識してお蕎麦を見つめているからで、それをしなかったら全部ぱぁ〜っ♡と楽しさにかき消されちゃいます。楽しかったらそうなりますよね〜(≧∇≦)
おしぼりおろし!!
移転してからは裏メニューらしいですね・・今画像検索したらくるみおろしとかも珍しいビジュアル!うーんうーんまた行きたくなりました・・できればまた朝イチ狙いで♡