お蕎麦を食べようとあらかじめ電話をしたら
「民芸旅館 深志荘でございます」
と言ったので驚いた。
到着すると、おお〜なるほど・・・

いかにも旅館らしい立派な外観。
看板には「ご宿泊 ランチタイム・手打ちそば 懐石お重」と書いてある。
すぐ脇には水路が流れ、その手前は田んぼ。
リーン、リリーンと涼しげに鳴く夏の虫たち。
素晴らしい環境、日本の夜の風景にうっとりさせられる。
玄関脇には明かりに浮かぶ立派な松!
(松好きなもので・・♡)
電話するまでてっきりお蕎麦屋さんだと思っていた私は
予想外の展開にわくわくしながら中に入る。

入ったらすぐに銀座がありました。

「アルプス銀座」。
宿泊の方の朝食会場でしょうか。
山賊焼応援団って幟の迫力がまた・・・(≧∇≦)

ここは喫茶&休憩スペース?
松本民芸家具がどっしりといい雰囲気。
ここで私はなんだかすごい方とすれ違いました。
その存在感は昭和の元祖セレブタレントを思い出すような、
とにかく声も姿もめちゃくちゃ華やかー!
どうやらここの女将さんらしい。
その女将さんの教育が素晴らしいのか
この「深志荘」はスタッフが全員ありえないほど完璧な接客態度である。
どの人も一歩控えた、しかしぴたっと寄り添う思いやりを感じる接客態度。
これは何だか物凄いところにきちゃったぞ・・・
通されたのは二階のお部屋。

赤じゅうたんの立派なお部屋。
向こうの席では熟年男性グループの賑やかな宴が催されているが
広いので全然気にならない。
しかしここで悲報が!(>人<;)

なんと〜〜〜
土日はそばメニューのみで、おつまみ類は一切ないらしい。
えーん、向こうのおじさんたちは
なんかいろいろ美味しそうなもの食べてるんだけどなあ〜(コラ)
きっと前々からの予約コースとかなんだろうなあ〜(;o;)
宿なので土日は忙しく仕方ないのだろう。
というわけで迷いなく「ざるそば」を。
税抜760円の「ざるそば(小盛り)」でも地物のほうれん草と
漬物がつくのが長野らしくて嬉しい。

「ざるそば(小盛り)」

え、高遠彩子が小盛り??と驚くなかれ。
なんと小盛りでも120gもあるんですよ〜
山葵をすってお待ちくださいということだったが
その横にはなんとお砂糖が( °o°)
「ねばりが出て香りが立って辛味が出るんです」
とのこと。
汁も相当甘めだし、なんだか子供の頃両親がよく連れてきてくれた頃の長野を思い出した。
東京の蕎麦しか知らなかった私は汁の甘さにとても驚いたのだ。

ムワ〜〜
これがまた期待以上にかぐわしくて感激!
むっとたくましく力強く、でもフレッシュな感じが素晴らしい。
食感はちょっと不思議でみずみずしく軽くふるっとした感じがある。
この「ふるっと感」はここから近い唐沢地区の「山法師」の蕎麦をも思わせ面白い。
県によってエリアによって(都市部だと沿線によって)
近いエリアにあるお蕎麦屋さんには不思議な相似性があったりするのだ。
食感はこんなに軽いのに舌の上に旨味がジワーと広がるのがすごい。
うわあ〜おいしいなあ〜
地元・塩尻市片丘の蕎麦とのこと。
土日だけに宿泊客も多いらしく
お手洗いに立つと廊下はいかにも宿の夜らしいムード。
洗面所を使う人あり、嬉しげに廊下を行き来する子供あり。
私まで宿泊するような楽しい気分に。
外に出るとひんやり涼しい夏の夜。
もう信州には秋が来ている。
黒い田んぼを渡る虫達の声に誘われ
私も闇の奥に吸い込まれていく気がした。