私にとってこの店の景色は、東京の宝だ。
鶯谷駅南口駅前。
駅前の蕎麦屋というのは他にもあるだろうが
なんとこの南口の駅前には「この店しかない」!
小さなロータリーに面している建物はこの店だけで
駅舎もなんだか小さくて可愛らしい。
後ろには寛永寺の緑が濃く控え、
これが山手線駅の駅前とはとても思えない。
昭和のまま、時間が止まっているようだ。
店内の雰囲気がまた素晴らしい。
普通と言えばごく普通なのだが、この普通さは、なかなかない。
11~19時までの通し営業。
駅前ゆえ外には車が多いし一日中お客さんは絶えないので静かなわけはないのだが
私はここで、ここにしかない静けさ、安らぎを感じる。
外の車の音、厨房から聞こえる仕事の音、客の話し声、
全てが有機的な、あたたかい音に聞こえる。
東京の音に、耳を澄ます。
特に好きなのが厨房と客席をつなぐ木の配膳窓だ。
中の様子は伺えないが、
注文したものが出来上がると右手の木の配膳窓にコトリ、と置かれる。
それを店員さんがテーブルに運んできてくれるわけだが
その「コトリ」は一定の余韻をもって私の胸に響く。
小津映画に出てきてもきっと良いシーンになるであろうと思われるほど
私にはよい眺めであり、よい音なのだ。
創業は昭和21年というが
この木の配膳窓はいつからあるのだろう。
昭和21年と言ったら終戦直後だ。
その当時のこの店は、どんな風だったのだろう。
外の看板には店名より大きく「天下御免そば」と書いてあるのだが
メニューにもまずそれが書いてある。
何が天下御免なのかよくわからないがとにかく何憚らない感じが潔くていい。
「御手打蕎麦いろいろ」というタイトルも
他では見かけない堂々とした感じが好きだ。
(昔はラミネート加工でない、もっといい雰囲気の表紙だった記憶があるのだが
11~19時までの通し営業。
駅前ゆえ外には車が多いし一日中お客さんは絶えないので静かなわけはないのだが
私はここで、ここにしかない静けさ、安らぎを感じる。
外の車の音、厨房から聞こえる仕事の音、客の話し声、
全てが有機的な、あたたかい音に聞こえる。
東京の音に、耳を澄ます。
特に好きなのが厨房と客席をつなぐ木の配膳窓だ。
中の様子は伺えないが、
注文したものが出来上がると右手の木の配膳窓にコトリ、と置かれる。
それを店員さんがテーブルに運んできてくれるわけだが
その「コトリ」は一定の余韻をもって私の胸に響く。
小津映画に出てきてもきっと良いシーンになるであろうと思われるほど
私にはよい眺めであり、よい音なのだ。
創業は昭和21年というが
この木の配膳窓はいつからあるのだろう。
昭和21年と言ったら終戦直後だ。
その当時のこの店は、どんな風だったのだろう。
外の看板には店名より大きく「天下御免そば」と書いてあるのだが
メニューにもまずそれが書いてある。
何が天下御免なのかよくわからないがとにかく何憚らない感じが潔くていい。
「御手打蕎麦いろいろ」というタイトルも
他では見かけない堂々とした感じが好きだ。
(昔はラミネート加工でない、もっといい雰囲気の表紙だった記憶があるのだが
写真がなくて残念)
メニューはザ・お蕎麦屋さんの定番、王道の品揃え。
天丼や玉子丼もある。
昔あった「別製ざる」も今はなくなってしまったんだなあ。
そしてさらに特筆すべきはここの仕事の美しさ。
この玉子焼き、見てください!
「玉子焼き」
輝くばかりの鮮やかな黄色に、こんがりと美味しそうな焦げ目。
ふっくら肉厚の玉子焼き!
ジュワァーッっとジューシー、甘辛濃いめの味が口いっぱいにひろがる。
これぞ正統派の、東京の玉子焼き。
私は甘辛の玉子焼きで育ってはいないのに何故か懐かしさを感じる、ほっとするような味わい。
「そばずし」もここのはお手本のように美しい。
老舗では見かけるメニューだが
「そば」とついているとなんでもつい頼みたくなってしまう私(^o^)
ご飯のお寿司も綺麗に作るのは難しいが、
そばずしはご飯よりさらに難しいのではないかと思われる。
(かーなーり自由奔放な感じのに出会ったことも多いので(^^;;))
「公望荘」の「そばずし」は、この美しさだ。
「公望荘」の「そばずし」は「玉子焼き」の後に食べると
その差に驚くほどスッキリシンプルな味付け。
甘さはほぼなく、きゅうりのさわやかさと海苔の香りが際立っている。
マイ・ファースト蕎麦屋・浅草「尾張屋」の甘ーいカンピョウの入ったそばずしや
かんだやぶのそばずしと比べると、ここのはかなり大人な味付けの「そばずし」だ。
そして圧巻は、個性的で美しい笊に盛られた蕎麦の眺めだ。
「せいろ」
ああああ
なんと美しき東京の景色。
ここにしかないこのしあわせ。
この店のこの空間で、今日の東京の音を聞きながら、
この美しい景色に対峙する。
有り難さに、私はほとんど狼狽えそうになる。
深さのある笊にみっしり盛られた感じがいかにも豊か。
そこから小麦と蕎麦の混じった白い香りがふーっと漂っている。
いわゆる二八ー!というむわぁとした香りより慎ましく上品な香りだ。
口に含むと一本一本の輪郭線がはっきり感じられるが硬さは全くなく
口中で一本一本がハラハラと美しくほどけるのが眼に見えるよう。
噛みしめると程よいコシのなかからほんのりした甘みがうまれ
全てがさりげなく、小気味良く整えられた感じがなんとも粋だ。
汁はいわゆる老舗の汁よりちょっとだけキリッとした濃い目。
私にとって蕎麦湯はお酒で,汁はおつまみ。
汁を舌にチロリ、蕎麦湯をゴクリ。
私はこの店に行く時は必ず混雑を避けた中途半端な時間に行く。
東京の宝のような時間が、そこにあるからだ。
駅前で通し営業ですから東京においでの際はお忙しい平手さんでも行きやすいと思います。ぜひ,素敵な東京時間を(^o^)♪
昨年閉店してしまい、まったく残念でなりません。
たった一度しか行ってなかったのに、印象深いお店で、
もちろん蕎麦も大変美味しかった。
新しいお店もたくさんできていますが、やはり老舗の
お店がなくなるのは寂しいですねぇ。