その扉は、天空の城の入口なのかトトロの森に続くのか。

はたまた時を超えアントニ・ガウディの書斎にでもつながりそうな外観は
何の建物だとしても大胆なまでに個性的であるのに
これが日本蕎麦屋だというのだからのけぞるしかない。
2015年7月1日、プラチナ通りに誕生した手打ち蕎麦屋「蕎麦 だるぶる」。
近づけば確かに日本蕎麦屋のお品書き。


うはは 楽しいなあ〜、わくわくするーー!! (≧∇≦)
店内もなんとも不思議な、唯一無二の雰囲気。

この場所がフランス料理店だった頃の大谷石の壁やカウンター、
そして壁の絵までもそのまま残したところに自由なセンスを感じる。
しかもこの日はフランス料理店のギャルソンの制服をバシッと着込み
胸に金のソムリエバッジを輝かせたスタッフが迎えてくれたから驚いた。
この日はたまたま上の人気バー「ダルブルズ・バー」のスタッフが
助っ人で一階に来ていたのだ。

開け放した扉から入り込む、初夏の夕暮れの気配。
私は一日のうちで夕暮れ時というのが一番好きだ。
その数秒前の感情とは別の感情に突然連れて行かれるような、時空の隙間のような不思議な時間。
憧憬とか、宇宙とか郷愁とか。
そんな時間にこんな楽しい店に来て
懐かしい人が打った蕎麦やおつまみを食べる。
最初は奥沢の店、その後東山でも恵比寿でも出会った蕎麦。
私と蕎麦との間に流れる長くて短い時間を、夕暮れ時が一瞬で全部連れてきた気がした。
「季節のお浸し」

お浸しから始められるお蕎麦屋さん大好き!
新鮮な三つ葉の青い香り、シャキシャキした歯応えに
味覚や体が澄んでこれから食べるものの吸収がますますよくなりそうな気持ちになる(^o^)
すっきり澄んだ出汁が美味しい〜
「油あげとルッコラのサラダ」

本来は「油あげとクレソンのサラダ」だがこの日はルッコラで。
クレソンもルッコラも大好物なのでどっちでも嬉しい♪
油揚げが焼いてあるのがとてもいい。
ちょっと変わった香りの油揚げ?
「田舎風パテ」

渋谷や恵比寿で大人気の「ビストロ・ダルブル」長年の定番メニュー。
こうして蕎麦屋で出会うのもなかなかいいもの。
日本酒にも合っちゃいそうだけど、やっぱりワインかな〜♪
「牛すじ煮」

「煮肉」というマイナーなジャンルを偏愛する私としては外せない一品。
「だるぶる」の牛すじ煮は私好みのすっきり系♪
「トマトのあっさり漬」

これが素晴らしいアイディアメニュー!
トマトの塩漬けなのだが、生姜と唐辛子をごくさりげなく効かせてあるところがニクイ。
舞うように散らしたシラスと芽ネギが綺麗だし、何より美味しい〜〜
これ大好き〜〜 家でも真似してみよう♡
「鴨焼き」

鴨がネギ背負って・・ではなく鴨がネギに挟まれてやってきました(^o^)
ぎゅうっと肉厚の鴨焼き。
そして今厨房では、心ときめくアノ音が・・!!
カシャカシャカシャカシャーッ
(美味しいそばがきの秘訣は力強さとスピード感!)
「そばがき」

おお〜
菊練り風と申しましょうか、中津川の栗きんとん風と申しましょうか、
きゅっと結んだ唇が素朴な印象の「そばがき」。

もっちりふっくらした肌に浮かぶ無数の蕎麦粒子。
予想に反して香りは淡めだったが、ほわ〜とした湯気の中をさぐると
だんだんとひねたような強い野生の香りが現れてきた。
うーん北海道・・か長野か・・?と思い訊いてみると長野とのこと。
味わいも淡めだが食感はもっちり、ややねっとりと食べ応えあるそばがき。
でもひとりで全部食べちゃったー(^o^)
「せいろ」

やっと出会えたこの眺め・・・
私は蕎麦の景色がどれほど好きなのだろう。
世界中に自慢したくなる「バスケットに盛られた濡れた穀物」のこれ以上ないほどシンプルな眺め。
この空間だからこそそのストイックな美しさが際立つというものだ。
特に蕎麦の盛り付けの理想とされる,「一本一本が踊るような」、
しなやかな曲線が遠目にも鮮やかで美しい。

美しく切りそろえられた端正な輪郭線。
そばがきの時は感じなかったが、やや赤味、黄味の強い蕎麦である。
見た目では少し熟成感も感じたが味わいにそれはなく
そばがき同様長野らしい野性味が、
小麦の甘さにひきたてられてよりシャープに感じられる。
二八らしいしなやかさ、つるり、ややぺたぺたとした肌。
蕎麦汁は甘さの少ないくっきり濃いめ。
蕎麦湯は銅の湯桶で出てきた。
(銅の味の蕎麦湯!)

気づけば店内では数組のお客さん達がそれぞれのこの店の時間を楽しんでいた。
一人蕎麦を手繰る女性、大谷石のカウンターでワインとおつまみを楽しむカップル。
場所柄お洒落な(しかも落ち着いた世代の)人が多いのか
店全体の雰囲気とも相まって日本蕎麦屋としてはどうにも稀有な眺めである。
若い人が始めた新しくピカピカモダンな日本蕎麦屋は増えているが
この店のようにレトロ&ノスタルジックな洋風で
お店の人もお客さんもお洒落なオトナたち、というのは
私には実に新鮮、不思議な体験だった。
なんだかパリ郊外の定食屋にでも迷い込んだような・・
夕暮れ時は去り、扉の外は初夏の夜。
ノスタルジックな夜の気配に誘われて・・・
このあとは、楽しい話にげらげら大笑いしながら
なんと恵比寿の「ビストロ・ダルブル」まで歩いてハシゴしちゃったのであった!
竹イズムっぽいと思ったら、
ナル程. . . そうなんですか〜
恵比寿は閉店なんですか?
恵比寿のお店は今もやっているようですよ〜
そして事情がありまして、現在蕎麦だるぶるは休業しております・・