2015年03月15日

大阪・西天満「なにわ翁」


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「浪速の翁ここにあり」。

店名そのまんま過ぎて申し訳ないが、
そうつぶやかずにはおられぬ名店である。
「翁系」蕎麦屋は全国にたくさんあるが浪速にゃなにわの翁がある。


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どっしりと落ち着いた木の質感で統一された店内。
すーっと吸われていくような、
すんなりと癒されていくような感覚を覚える。



蕎麦は二種類。
「ざるそば」980円。
「生粉打ちのざる(十割)」1190円。

どう〜してもメニューを凝視してしまうほどの価格ではある。
しかしこの店を必要とする人、
またはシチュエーションがあるのだ。

いつも蕎麦だけで長居したことはない私にとっても
この店で過ごした時間はひとつの貴い思い出になる。
そんな時間が流れているのだ。



順番はおまかせで頼んだのだが
先にやってきたのは「生粉打ちのざる(十割)」。
使い込まれた塗りのせいろに盛られている。


「生粉打ちのざる(十割)」
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翁系らしい微粉のなめらかな肌、ゆるやかに描く曲線。
見た目は至極穏やかな、美しい蕎麦である。

が、油断するなかれ・・・!!

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ひとたぐりして目がかっ開く。

なんというかぐわしさ、この上もなく美しいこうばしさ!!

口に含めば感動は全身を駆ける。
きめ細かくなめらかな肌は余裕のコシを持ち、
そこからじわっとあふれる味わい、口中に生まれ続ける香ばしさ。

箸先で香りを寄せる時、噛みしめる時、飲み込む時、全ての瞬間に感動がある。
この揺るぎなき安定感。
これぞ、100点満点の十割!



そしてこれだけ完璧な、最高の十割のあとでは
大変に損な出番の「ざるそば」。
私だったらこんな人のあとに歌うのは絶対に嫌だ。
ちゃんと堂々と出てきた「ざるそば」はえらい。

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箸先に手繰り上げると、
案の定たった今十割が魅せてくれたような
全身を吹き抜けるような鮮烈な香ばしさは感じられない。
甘い粉の香りが淡くほんのり伝わってくる。


しかし口に含むとまたもや目が、覚める。

ふはり。

ふわり、をこう表記したくなるような
密でありながら重さのない、絶妙な空気感。
口中を自在にめぐるしなやかな輪郭線と、これまた余裕のコシ。

特にこの「コシ」については最近の自分の感覚を
「すんません、コシってこういうものでした!!」
と反省させられるほど、
二八として王道、最高の食感。
この「王道感」こそ、翁系の醍醐味であると私は思っている。
ここまで感動させてくれる店はそうない。


私の左のテーブルには久々に会ったらしい、
嫁いだ娘さんとそのお父上という上品な二人組。
娘さんは淡い色のスーツに白い綺麗なハイヒールを履いている。
これから二人で、父上の誕生日に贈る本(文学全集)を買いに行くのだそうな。
大阪の言葉だけに「細雪」などを思い出し、私まで優雅な気分になる。


一方隅のテーブルには、
スポーツブランドのツナギのような服に
腰や携帯にメタルアクセサリーを
じゃらじゃらつけた若者グループ。
「蕎麦の究極は、塩で食うんやで」
という話題である。



私がいた時間は30分にも満たない。


心に残る、浪速のとっておきの時間。







posted by aya at 05:45 | Comment(2) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>大阪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
苔生した古〜〜〜い、古〜〜〜い話ですが。縁あって京都と言う場所に三年に及ぶ期間を過ごしました。その当時「蕎麦屋で一杯」なんてものは関西には存在しなかった!それどころか「蕎麦屋で一杯」をやっていようがものなら・・・・  なんだあいつ!? 昼から蕎麦屋で酒飲んでやがる・・・異端児、異星人、変な奴、変態・・・みたいな(ちと大袈裟か・・)目で見られました。
時は流れ、今では関西でも「蕎麦屋で一杯」が定着しつつある、これは!私にとっては!!異常に嬉しいことである!!! っと、同時に関西にも蕎麦の美味しさを分かってくれる人が増えてことも。

>一方隅のテーブルには、
スポーツブランドのツナギのような服に
腰や携帯にメタルアクセサリーを
じゃらじゃらつけた若者グループ。
「蕎麦の究極は、塩で食うんやで」
という話題である。

何か 嬉しいな・・・

余談ですが
 「和」が・・・・
Posted by 而酔而老 at 2015年03月19日 19:19
而酔而老さま
関西における「蕎麦屋で一杯」や「昼酒」については時々年上の方から耳にします。それほど昔はなかったんですね〜!
体感した方にはすごい変化なのでしょうね。
若者グループ最高でした*(^^)
和が、どうしたんですか!?
Posted by aya at 2015年03月26日 08:16
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