智恵光院通にぽつんと現れる、昭和初期築の京町家。
黒い外観からは中の様子は伺えず寡黙な印象だが
麻の暖簾と簾の風合いがを明るいやわらかさを添えている。

今やすっかり人気有名店となった「にこら」。
久々に訪れてみると、時を経てたたえた自然な風格が清々しく目に映る。
京町家といっても店内はモダンで都会的と言っていい雰囲気。
でありながらやはり京町家らしく
奥の庭の向こうに厠がある作りになっているのが楽しい。

ぐっと照明が落とされた店内。

インテリアはシックだがお酒がズラリと並んだカウンターは賑やかな雰囲気。

人気店だけにこの日も入店時からほぼ満員で
その後も途切れずお客さんがやってくる。
人気の秘密は蕎麦もそうだがやはり料理だろう。
本格的な自家製粉の粗挽き十割蕎麦を出す蕎麦屋ながら
ガッツリと料理に力を入れ、予約のコースも充実。
例えば前日までの予約で食べられる「おまかせ蕎麦コース(4320円)」は
そば寿司
蕗の蕎麦饅頭
京鴨とフォアグラの蕎麦味噌漬けと市田柿のミルフィーユ仕立て
ざるそば or かけそば
仁挽き 杏仁豆腐 or そば白玉入りぜんざい(丹波大納言小豆)
といった内容。
料理に合わせるお酒やワインも充実している。
そして私が大好きなのはこのアラカルトメニュー。
ついずーっと見ていたくなってしまう楽しさ!

おいしそう〜〜〜(≧∇≦)!
特に私には鯖とかブリとかのメニューが
ギンギラ電飾がついているかのように輝いて見えますぅ〜(≧∇≦)!
しかし・・昨年衝撃のアニサキスアレルギーデビューを果たしてしまった私は
エンエン泣きながら見なかったことにしてこちらの方向にまいります・・
「飯蛸桜煮」

桜煮というだけあって美しい色。
盛り付けも綺麗だなあ〜
ふっくら、ほんのり甘く煮られた飯蛸。
「牡蠣酒蒸し(春菊と蕎麦味噌のソース)」

春菊と蕎麦味噌のソースって?
と思ったがこれが実に美味しい。
蕎麦味噌はこってり甘いのだがそれをさっぱりとした春菊が青く打ち消し
ふっくら牡蠣に楽しいアレンジを与えている。
「あぶり鴨(京鴨)九条葱のソース」

この九条葱ソースも美味しい!
さっきの春菊といい、真似したくなっちゃうなあ〜
色もとっても綺麗だし、どうやって作ってるのかな〜
お昼時の人気店はてんやわんやの大忙しだが、
バイトらしい可愛らしいスタッフの女性はくるくるめまぐるしく働き
しかも実に感じがいい。
つい何か訊いてしまった時も忙しいのに一生懸命答えようとしてくれるので
申し訳なくなったほどだ。
「そばがき」

うっわー
きたー
これは美味しい!
絶対に美味しい!

もったりふっくらした肌に浮かぶ、色とりどりのホシたち。
モワモワモワ〜と立ちのぼる湯気だけですでにノックアウト。
目の覚めるようなフレッシュな青いかぐわしさ!
ああああ すばらしい・・・
口に含むと粗挽きのざらつきのあるもったりとした肌。
ざらざらとろ〜〜んっとしてややフワッとエアリーな感じもあり
絶妙なバランスにうっとり。おいしい!素晴らしい!しあわせ〜〜
「ざるそば」

十割で打たれた茨城の常陸秋そば。
笊の中央にみっちりとくっついて盛られてきた。

みっちりぴったりと重なる極粗挽きの肌。
見入るほどに無数の粒の陰影が美しく、しかも漂ってくる香りがすごい。
先程のそばがきと同じ、目の覚めるようなフレッシュな、素晴らしいかぐわしさ!
もうこの箸先の香りだけで食べなくてもいいと思えるほど、このままずっと酔っていられそうだ。
極粗挽きの肌は大きな粒感をポコポコと無数にたたえ、
かなりの水分量なのでぬたーぴたーとくっついて重なるように横たわっている。
加えてかなりの細打ち、かなりの粗挽きなので
その束が口中でほどけるときに泡っぽくショワショワする感じがある。
やさしいコシからあふれくる滋味深き味わいとフレッシュな甘み。
おいひい〜〜〜♪
「にこら」の汁は鰹が強い関西風だが
そんなに薄くないので関西と関東のいいとこ取りのようなイメージ。
実は今回の京都では某料亭の主人と出汁の話をする機会があり
「最近の蕎麦屋やうどん屋は和食のような鰹出汁をひいている、
本来は酸味のしっかりある宗田節が一番美味しいのだ」という話を聞いたのだが
「にこら」の汁はまさに旨みの中に酸味も感じ、甘みもほどよいおいしいもの。
ひょっとしたら宗田節なのかな?

香り高い蕎麦粉を溶いてくれてある濃厚蕎麦湯。
特に底に沈んだ濃いところは悶絶級に美味しかった!
「にこら」ではアラカルトメニューとざるそばしか食べたことがないので
やっぱり一度は予約のコースも食べてみたいもの。
と言いながら
今日見たアラカルトメニューのアレとアレとアレもすごーく気になっているので
やっぱり次回もアラカルトとざるそばになっちゃうだろうな〜(^^)