2014年11月02日

兵庫・新神戸「そば切り 山親爺」


関西のお蕎麦屋さんでは、
東京にはない美しさに驚かされることがある。

それは坂道の途中にあった。

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外観はカフェか雑貨屋さんのような印象。
看板らしい看板は何もないが隠れ家のような感じではなく
中の様子は通りから全部見えている。



大きなガラス扉の窓辺に座って驚く。

こんな居心地のよい、美しい時間が待っていたとは。

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先客はさりげなくお洒落でやけにかっこいい若い男性が1人ずつ離れて2人と、
姉妹のようなおばあちゃんが2人。
おばあちゃん達は壁際にちょんと並んで座っている。
何ですか何ですか、このニクイ程すんばらしい客層は!!!


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外は霧雨。
無音の店内には店の奥さんの静かな接客の声だけが時折するだけ。
飾らず自然な奥さんの接客はこの店のイメージそのままだ。




メニューはテーブルにはなく
壁に大きくわかりやすく書いてあるだけというのもとてもいい。

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「すじにくの煮込み」
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煮肉好きゆえついつい頼んでしまう大好物。
牛すじ、こんにゃく、人参、大根。




「手挽き」
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わわ わわわわ
このもんのすごいザックザクの風情・・・
と、鳥肌が・・・!

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この、驚くほど個性的な肌。
水分をいっぱいにまとったみずみずしい粗挽き肌は
やや太打ちながら不思議な軽さがあるブワンとユニークな食感。
最初は水分のためか香りがほとんど感じられなかったが
食べ進むうちにちょっと個性的な野生の香りを放ち始めた。
強いて言えば水に近いイメージの香り・・
味は最後まで淡くさっぱりとしている。
ざらついた肌の舌触りは独特で、水泡のような小さな穴が無数にあるような感じ。
私の大好物の、ごく素朴なタイプの手作りこんにゃくにちょっと似ているかも?
みずみずしい軽さの中にジャリッつぶっという刺激が軽やかに混じっている。
稀有な個性!
本日の蕎麦は全て福井だそう。





「細切り」
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木枠のせいろの風情も素晴らしく、
これまたたまらなく美しい眺め・・・


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先程の「手挽き」の肌が強烈だっただけに
こちらはぐっとやさしい印象の粗挽き肌。
口に含むと、こちらも先程の「手挽き」同様水泡のようなざらつきがあり、
しかし「手挽き」よりも食感の密度が濃く味も香りも濃厚。
うわあ 美味しい・・・
落ち着いた石のようなイメージの静かなかぐわしさを追いかけるひととき。




「太切り」
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出たー!
この窓辺の光に浮かぶシルエット、すごい迫力・・・
太打ちを注文した客には
「うどんより太い位ですが・・」
と奥さんがその都度断っている通り容赦ない太さ。
西のお蕎麦屋さんは太いと言ったら本気で太いことが多い。


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角の立っていない、やさしい趣の極太。
この蕎麦もまた表面に水泡のようなざらつきがあるが
みずみずしいため舌触りはするんとしている。
噛み締めるとと先程の「細切り」と同様の
落ち着いた正統派の蕎麦粉のかぐわしさがさらにしっかり感じられ
噛めば噛むほど美味しい〜〜〜たまらない〜〜〜



例によってまたまた何もつけずに食べきってしまったが
気づけば傍らには奥さんが持ってきてくれていた
それぞれの蕎麦用の汁類があった。

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太打ち用にたまり醤油。
手挽きには細かな雪塩。
普通の汁もたまり醤油使用で、
甘み少なくキリッと濃いめの味わいが美味しい。



蕎麦湯。

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器はやちむんをはじめ温かみのある素敵なものばかり。



厨房横の扉の前には、この店にぴったりの雰囲気の縄のれん風の暖簾があった。
帰りがけに訊くとなんと奥さんが作ったという。

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縄紐の間に白っぽい綺麗な石がランダムに縛ってある。
ナチュラルですごく素敵なアイディア。
センスのいい人だなあ〜


ひょいと顔を出した山親爺・・ではなく店主の笑顔も実に素朴で感じが良く
旅先で素敵な場所を見つけた喜びにしみじみ。


店を出ると雨上がりの坂道。


振り返ると看板のない店の時間は
なんでもなさそうに続いていた。





posted by aya at 09:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 関西の蕎麦>兵庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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