京都・北山通りの至宝、美しき「おがわ」。

その立地。
その佇まい。
その、蕎麦。
店の前に立っただけでしみじみとした気持ちなる。
私はこの店の外観がたまらなく好きだ。
古い家に掲げられた潔く白い暖簾が、
北山通りを抜ける風にかすかにゆらめく。
このまま時が過ぎていってもいい、と思う。

静かな店内。


大きな硝子戸越しの自然の光。
間口そのままの広さのシンプルな間取りもとてもいい。
綴じてあるメニュー本の中の写真はいつも掲載を遠慮しているのだが
この「おがわ」のメニューは本当に可愛らしくて・・
ファン精神に免じてお許しください〜〜


文字も、紙質も、全体のデザインも
隅々まで上質で丁寧。
わかっていたことではあるが、いよいよその時が来てしまった。
えー あのー
ドキドキして
もうどうしていいかわからなくなってきました。
みなさんもドキドキしておいたほうがいいと思います。
何を突然言っているのやらわからないかと思いますが
もうとにかくそんな、ドキドキが爆発して大空に打ち上がってしまうようなものが
今からここにやってくるのです。
こんなに静かな美しい店内で
私の胸を心を鼻腔を三尺玉級の激しさをもって
ときめきで爆発させるような
そんな危険なものが来てしまうのです・・・!
さあ、
いらっしゃいませ・・・・
「おがわ」の「そばがき」!!


(>_<)
こっ
このときめきをどうしろと!!!!!!!
漆黒の器の上の、大胆な存在感。
その肌の無尽蔵の美しさ。
そんなに、そんなに、
その美しさをさらけ出してしまっていいのですか・・・
食べるのがもったいなくてならないが早く食べたくてたまらない。
姿も素晴らしいが味はそれ以上と言っていい。
山駆け登っててっぺんから叫びたいような、最高の美味しさ!!
箸先で香る、ホワッとかぐわしいこうばしさ。
口に含んでその味わいの濃厚さに驚く。目がかっ開く。
まるで出汁でも入ってるかのように濃い、グルタミン酸系の濃厚な旨みが
ぎゅううううううううと舌の上全部に広がるのだ。
どんな魔法を使うと、蕎麦からこんなもの凄い味わいが引っ張り出せるのだろう。
完璧に煎れられた極上の煎茶などにも感じたことのある、自然界の不思議な旨み。
食感はふっくらとしているがエアリーという程ではなく
ザラザラ〜としてもっちりふっくら、
それが全てとんでもなく濃厚な旨みで染まり、私の脳も全部染まり
私の目は開いているのだがもうこの世に居るのだか居ないのだか(こわい)
とにかく、夢のようにおいしい「おがわ」の「そばがき」なのであります(>_<)
すでにこれだけ感激してしまったが
肝心の蕎麦はこれからである。
ああ なんとうれしい
久しぶりの「おがわ」の蕎麦。
「ざる」

その宇宙に、息を飲む。
さきほどの超絶そばがきに勝るとも劣らぬ、美しき粗挽き肌。
穀物の香ばしさを淡くまとい
ざらざら〜と口中をめぐる肌は
噛みしめると思いのほかしっかりとした歯ざわり。
味と香りが淡く澄んでいるぶん、
ザラザラの肌と弾力あるコシを穏やかにピュアに楽しむひととき。
淡い水彩画のなかで穀物の素朴さを見つめるような蕎麦だ。
実は今回私はメニュー本の可愛らしさに誘われて
珍しく「ざる」でなく「とろろ」を頼んだのだった。

案の定、淡き水彩の夢を追いかけるのに夢中で
結局最後までとろろはつけられず・・・
「蕎麦後のとろろ」、美味しかったー(^o^)
人気店ゆえ混んでしまうとこの静寂は味わえないが
時間を外せばこの店の美しさをこれだけ堪能できる。
奥さんの穏やかな接客も、
厨房がカタコト動く音も、
全てがこの店の景色に美しく重なり
ああ このまま時が過ぎていってもいい、
と思うのだ。