2014年02月08日

広尾「こうもと」

未だかつて体験したことがないほど
入りにくい蕎麦屋である。

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広尾の路地裏。
四角い箱のような外観には、店名を示すごく小さな灯りがあるのみ。
店なのか住宅なのかすらもわからず、
寡黙な扉の奥にはどんな空間が広がっているのか想像もつかない。


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電話番号非公開。
下町出身の私の父などは「蕎麦は庶民の食べ物」という固定観念を捨てる気配がないが
「こうもと」はそういう蕎麦屋とは一線を画す店である。

だからと言って目が飛び出るような高級店というわけではない。
目安を言ってしまえばこの店の「せいろ」は900円である。
しかも大変に美味しい。


たまには、こんな蕎麦時間。

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ずっしりと重く、美しい酒器の景色。
注ぎ口からこぼれるお酒が美しくて見惚れる。

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石川「菊姫 純米」、
一瞬で深くキュッと来てあとをひかない潔い味わい。


お通し「蟹の焼き湯葉巻き」
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焼き湯葉の食感を残しつつ程よくふんわり。
中の「上品なカニサラダ」もとてもおいしく
洗練と家庭的な感じのバランスがいい。


そして今日はこの盛り合わせが凄かった!

「本日のお刺身」
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魚好きの私は思わず身震い、武者震い。
興奮余ってもうワンカット! (*^_^*)

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金目鯛、寒ぶり、〆サバ、アオリ烏賊、大トロ、赤身。
それぞれが最高の美味しさをヒットしている。

実は今日は昼間、寒ブリが買いたくて
スーパーや鮮魚店を何軒か廻ったのだが終ぞ出会えず。
それがなんとここで出会えてしまった上にその見事な美しさ、美味しさと来たら。
ガッツリ脂が乗っているのに
「これ脂なの?」と目がぱちくりしてしまうような爽やか美しい脂感に感激〜



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ワインセラーが凄い店内。
ではあるが、お刺身が美味しすぎてやはり次も日本酒に♪
生魚と日本酒は合いすぎる!!


富山「満寿泉 純米」
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先程の「菊姫」とは対照的に、旨みが横にひらたくじわーんとひろがる。
「酒量だけは小鳥」の私だがナマイキにも
「このお魚には絶対こっちのお酒、このお魚には絶対あっちのお酒」
ということはわかるのが面白い。
大トロには断固「菊姫」であります!



「千葉ヨーク豚の冷しゃぶサラダ」
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しっとり旨みの濃い豚肉ではなく、ごく薄切りでドライな感じの軽い豚しゃぶ。
野菜もフワンフワンとごく軽く、ごまだれもさらっとしているので
全体に非常にさっぱりした冷しゃぶサラダだ。



「飛騨牛スジと豆腐の煮込み」
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どっしりと貫禄のある、趣の良い大鉢でやって来た。
お刺身の時も思ったが、ここは薬味のひとつひとつに
実に美しい仕事がされていて美味しい。





「そばがき」
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わわわわわ
この美しい青さは一体・・・
どうしよう、ものすごいそばがきが来ちゃったみたい・・!!

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あたたかいそばがきなのに、
「クールビューティー」という印象を受けるほどひんやり美しい青さ。
夢見るように顔を寄せれば、ストイックで端正な印象のかぐわしさに
食べる前から惚れ惚れ・・た、たまらない(>_<)
口に含むとまず感じるもっちり感、
そのあと意外なほどホワッと軽い、エアリーな食感に出会い感激する。
ううううう・・・このかぐわしさ、モチほわエアリー・・・
おいしいよう〜〜 来てよかったよう〜〜




「せいろ」
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四角い大きなせいろに厚みを持ってビッチリ。
雰囲気に似合わずお蕎麦の量はしっかり目で嬉しいなあ〜〜

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この「せいろ」、今日は茨城の蕎麦だそうだが
なぜか先程の「そばがき」ほど色も青くないし、
あのようなストイックで端整なかぐわしさはない。
そのかわり極上の更科蕎麦のような、
蕎麦の香りの美しい上澄みだけのようなかぐわしさを
ふわーーーーーっと羽衣のように軽やかにまとっている。
端正な極細の平打ち。
蕎麦と蕎麦が密な束になって重なっているために、
ふんわり空気感を持って盛られている蕎麦と違い見た目以上に量がある。
口に含むとキンと思い切りしめられた肌は束になっていて、
噛み締めた刹那クチュッと、かすかに伸びるようなコシが絶妙。
そのひんやり束クチュ感を楽しむ間じゅう、
私の全身は天女の羽衣のように透き通るかぐわしさに染まっている。
これは稀有な美味しさ!




「かけ」
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出汁が美味しい!
すっきりと澄み渡る・・という料亭のような洗練のうまみではなく、
いい意味での雑味も含んだしっかりおいしい出汁。
しかし甘みはすっきりとしているところがまたニクイ。
ここにも、最初のお通しで感じた
「洗練と家庭的な良さのバランス」を見つけ感心させられる。


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私にとって、蕎麦湯はお酒で、蕎麦汁は極上のおつまみ。
蕎麦湯を飲んでは蕎麦汁をチロリと舌に載せるのが至福の時だが
ここの汁は蕎麦湯に混ぜる一般的な飲み方の方がより美味しく感じた。
いろいろあっておもしろいなあー


入る前は入りにくいが
入ってしまえばオアシスとも思えるほど
静かで、居心地が良く美味しい空間。

お店の人の対応も実に自然で親切で
心に残る瞬間がいくつもあった。




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(面取に弱い私はこの湯呑との時間もしあわせでしたー♪)





たまには、こんな蕎麦時間。

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posted by aya at 21:35 | Comment(6) | TrackBack(0) | 東京の蕎麦>港区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おしゃれな雰囲気のお蕎麦屋さんですね〜
たしかに、これは少し入りずらいかも…

さて、どの料理もとてもおいしそうです〜
特に肉厚の金目鯛刺身と日本酒は私も。。。ゴクッ(笑)

しかしやはり気になったのはこの美しい『せいろ』!
この蕎麦肌の質感、タマリマセンね〜
蕎麦のやわらかな香りと甘みがふわわわゎゎぁ〜と伝わってくるようです^^
見た目は、ビシッと角の立った、それでいてしなやかな感じが綺麗です^^
また、この四角い大きなせいろ!ビシッとカッコイ〜ですね〜^^
是非こんど訪問させていただきたいと思います〜

でわでは〜ノ
Posted by てんてん at 2014年02月09日 20:36
いやー写真からも、お料理の美味しさが感じられます。でも、でも高そうな・・じゃなくて高いですよね!
Posted by Tanaka Susumu at 2014年02月11日 09:20
てんてんさま
じっくりご覧いただき光栄です〜
お目の付けどころからわかります(^_-)☆
いろいろとカッコイイお店ですのでそんな気分の時に是非♪


Tanaka Susumu さま
ものすごいワインを開けたりしなければ全く高くないと思いますよ。あの味と雰囲気ならなおさらです。
Posted by aya at 2014年02月12日 14:20
お江戸に上がりました折には、是非ともお店を訪ねてご馳走になりたいものですね!
Posted by Tanaka Susumu at 2014年02月13日 21:14
Tanaka Susumu さま
お江戸に上がりました折には、っていうのが楽しいですね(^^)
ぜひお出かけください♪
Posted by aya at 2014年03月03日 13:15
仕事でお店の入ったところまでは行ったことがあり、
空間と店主がとても素敵な雰囲気でした。
普通にお客さんとして行きたいと強く思っていたお店です!(^O^)/
Posted by Satsumi Miyasaka at 2014年12月28日 18:42
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