2013年03月29日
秋田・仙北市角館町「手打そば 野の花庵」
<秋田・仙北市 蕎麦の旅その2>
東京からやって来た者にとっては、車通りの多い国道沿いに立ってさえ
深呼吸したいほど空気が美味しい。
「手打そば 野の花庵」はそんな場所に建っている。
青い空に映える山小屋風の建物。
黒木の外観はシックな印象だ。
扉をあけると一変、明るい春に「こんにちは」と迎えられたような気がした。
玄関の内側で、自分の名を大きく明るく名乗っているからかもしれない。
丸太の大きな看板の前に桜の枝が飾られている。
天井が高く気持ちのいい店内は昼時のためかほぼ満席。(写真は退店時)
すごい人気である。
ここに来たら「せいろ」を頼むのはもちろんだが、
やっぱりあの超人気メニュー「肉そば」も頼まずにはいられない。
しかも今日「野の花庵は天ぷらがまた絶品」との噂を聞きつけまして・・
というわけで「野菜天せいろ」と「肉そば」、おねがいしまーす!
厨房では真っ白な割烹着に身を包んだ店主がフルスピードで働き
奥さんはそれこそ駆け巡るように厨房と客席を出たり入ったりしている。
それだけ聞くとちょっと落ち着かない店という印象を受けるかもしれないが
全く逆である。
普段から、それこそ野の花のような雰囲気の店主夫妻。
次々と注文をとり料理を運び、片付け、会計と目まぐるしく働く奥さんの
一生懸命な声、姿の感じの良いこと。
見るともなしについ目で追ってしまい
気がつくと何とも言えないやすらいだ気持ちになってくる。
そして白割烹着の店主が厨房で働く姿がまた印象的だった。
釜の湯気が揺らめく中、私にはまるで神事のひとつか何かのように
清らかな眺めに見えてしまった。
無心に働く人の姿は美しい。
「野菜天せいろ」
「優等生」「お手本」という言葉が浮かぶ、端整な姿。
くっきりと際立つ輪郭線が、美しいラインを描いて軽やかに重なっている。
淡く静かに漂う穀物の香ばしさ。強い甘さや激しさのない、真面目な滋味深い味わい。
そう、なんとも「真面目で誠実な印象」の蕎麦である。
輪郭パッキリ、コシもしっかりめだが軽やかな空気感のある食感。
しかも食べ進むうちに、二八らしい甘さと香ばしさがぎゅーっと濃くなってきた。
すっかりくつろいでしまい「野菜天」のアップの写真を撮るのを忘れてしまった!
「今日は春菊です」と店主が運んできてくれた通り、
「野の花庵」ではその時々の旬の野菜と定番野菜を組み合わせて揚げるらしい。
噂通り、この天ぷらがたいへんおいしい。
これまたお手本のようにキチッとパリッと揚げられていて
サクッとした衣が香ばしくて、特に春菊好きの私は嬉しかった〜
窓の外は静かな田園の雪景色。
国道沿いとは思えぬほどのどかな眺めだ。
そしてついに・・
大変悩ましい方の登場であります。
もう本当に罪深いほどの存在であります。
私を苦しませる、「野の花庵」の、「肉そば」!!
「肉そば」
温かい「肉そば」も選べますが、おすすめは冷たい方の「肉そば」。
「肉そば」は本来秋田ではなく山形で有名なメニューであるが
ここの「肉そば」は店主がその山形で修行し学んできたものである。
メニューには「鶏肉のダシつゆ・肉は硬め」との説明が添えられている。
山形の「肉そば」は元々種物としてとても好きなメニューなので
きっと美味しいんだろうな、と期待はしていた。
しかし「野の花庵」の「肉そば」ははるかその期待をぶっ飛んで美味しすぎる。
大袈裟でなく他のことが考えられなくなるくらい美味しい。危険です。反則です。
見ての通り鶏肉に埋め尽くされた姿。
汁を見つめれば油分も見えて、なかなか食べ応えがありそうだ。
ところがひとくち、食べてびっくり目がかっぴらく。
この、雪解けの清流に出会ったかなような超スッキリ澄んだ冷たいスープ。
最初の印象は「薄味?」と錯覚を覚えるほどだ。
しかしその清流に身を埋めて泳ぎだすと、肉の旨味が、ネギの香りが、たまらぬダシが!
四方八方から押し寄せてきてもう私全部が美味しさでいっぱいになる。(食べないでね!)
メニュー説明に書いてある通り鶏肉は硬めで、
さっぱりなのだが脂身もしっかりあり(不思議)
それを噛むしあわせったらない。
お蕎麦はこの冷たいスープの中できゅっと締まって
細いが歯ざわりしっかりめ、それが澄みきった味わいのなかでまた素晴らしい。
うーーーーーーーん
この店の主役はやはり「せいろ」だとは思うのですけれどね・・
この、主役を凌ぐ勢いの存在感。
悩ましい、悩ましすぎる。
だってこんなに美味しかったら、
私一人で来ても来る度に「せいろ」と「肉そば」、
2人前食べなくちゃいけないじゃないですか!
こまったなあー(^^;)
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