2013年03月27日
秋田・仙北市「そば食べくらべの会・タベクラーベ」
<秋田・仙北市 蕎麦の旅その1>
3月23日。
東京の私の家の前の桜は満開を過ぎ、
上着を脱いでYシャツ姿の男性が春の日差しを楽しんでいたが・・
秋田新幹線から降り立った角館は
一面の銀世界であった。
「仙北市」という市の名前はあまり知られていないかもしれないが
秋田県仙北郡の田沢湖町、角館町、西木村が合併して2005年に誕生した市である。
角館駅から、小雪の散る中向かったのは
「そばきり 長助」。
今夜はここでそれはそれは楽しいイベントが開催されるのだ。
「そばの郷仙北市・そば食べくらべの会(タベクラーベ)」。
仙北市内の5軒のお蕎麦屋さんが集まって仙北産の6種の蕎麦を打ち、
それを食べ比べる会である。
事前の参加募集に応募して集まった方々は遠くは仙台からも。
ゲストとして呼んでいただいた私はもう何ヶ月も前から楽しみにして
はるばるスーパーこまちに乗ってやって来たのである。
この蕎麦会の大きな特徴は、
参加する5軒のお蕎麦屋さんのうち4軒が「農家の蕎麦屋」であること。
それも「蕎麦屋のかたわら蕎麦栽培も始めました」というのなら
他でもたまに出会う形式なのだが、仙北市の場合は違う。
「もともと農家さんだった人がお蕎麦屋さんも始めた」という、
どうにもこうにも筋金入り、生粋の農家さんたちなのだ。
故にもちろんこの会で使用される蕎麦粉は全て仙北市内で栽培された地粉である。
今回のタベクラーベは第一回ということでみなさんウキウキ大張り切り!
奥左から、
「手打そば すが家」「農家のそば屋 一助」「手打そば さくらぎ」
「そばきり長助」「手打ちそば 野の花庵」
の皆さん。
長くなるのでさっぱりめに書きますが、
この皆さんおひとりおひとりの素敵さときたら・・
私などはもう思い出しただけで愛しさ余って一人ニヤニヤしてしまうほど、
ほんとーうに素敵な方々ばかりなのであります。
ちょ、ちょっと皆さん、
今夜は第一回ということで試験的に会費1000円なのですが・・・
この蕎麦前の豪華さ、ちょっと張り切りすぎではないでしょうか・・(^_^;)
私は今夜は「仙北産の6種のお蕎麦食べくらべ」を楽しみにしてきたはずなのだが
この蕎麦前には意表を突かれた。
さすがは各お蕎麦屋さんの自信作とあって、
ひとつひとつが本当に、完全に美味しいのだ
「根曲り竹の子のピリ辛味噌炒め」
「鴨肉のマリネ白髪葱添え」
「ハタハタ寿司」
「玉子焼き」
「ヤマトイモの揚げびたし」
「鯛とタラの芽の昆布〆(正油ジュレ掛け)」
地のものを使ったり、郷土料理のアレンジだったり
ひとつひとつが本当によく考えられていて、しみじみと美味しい。
もったいなくて「一口でぱくっ」なんてとても食べられず
ちびちび心から楽しんで食べた私(^^)。
お酒は鈴木酒造店の「秀よし」。
この会の蕎麦に合うようにと鈴木酒造店の方が選りすぐった三種類である。
秋田杉のとっくりがまた素晴らしい演出。
このお酒がですね〜〜、どれもあんまり美味しくて私びっくりしてしまいました。
秋田のお酒ってガツンッととにかく強いイメージがあったんですが
この「秀よし」は入り口は清澄で、奥に向かって湖に沈んでいくように深くなる。
キリッとしているんだけれども、美しくふくらんでいく。
おいひーーーい(≧∇≦)/ !!
いけないいけない、お蕎麦の前だしブレーキブレーキ(^^;)。
今回の「タベクラーベ」で出されるお蕎麦は6種類。
全て仙北産、品種は以下である。
「富士一号」
「キタワセ」
「常陸秋そば」
「会津在来」
「階上早生(はしかみわせ)」
「高嶺ルビー」
「富士一号」というのは相当蕎麦の品種に詳しい人でも知らないであろう珍しい品種。
私は昨年11月の神田・眠庵の蕎麦会で
一度食べて、その味わいの珍しさ、初めて出会う野生味に大変に驚いたものだ。
「高嶺ルビー」とは、赤い花をつける蕎麦として知られる品種である。
(通常、蕎麦の花は白い)
この6種類の蕎麦が今夜は全て二八で出される。
参加している5軒のお蕎麦屋さんの中には二八の店あり
十割で出している店ありいろいろなので
今回は第一回ということで全て二八に統一したのだそうだ。
それでは、いよいよ!
1枚目「富士一号」
明るめの肌に散る黒いホシ、やわらかそうな輪郭線。
前回、神田「眠庵」で食べた時の記憶があるので
さぞかし野性味のある味わいだろうと思いきや、
これが拍子抜けするほど品の良い、美しい香りと味わいである。
それでいて物足りなさは全くなく、その品の良さも美しさも「濃厚」。
細切り、つるつるの肌はムニぷるっとした弾力があり、
かみしめると伸びるようなコシがある。
ああー 1枚目からおいしいなあ〜うれしいなあ〜
2枚目「キタワセ」
クッキリピカピカ、パッキパキの輪郭線と、
うっすら緑がかった濃いめの肌。
箸先にたぐると二八らしい甘い香りがむわぁ〜と濃厚に香る。
特に水分が多いわけではないのに驚くほどつるんつるんの肌で
かみしめた弾力がすごい。
コシが強い分、そこから溢れ出す甘さと味わいが存分に楽しめる。
濃いなあ〜
3枚目「常陸秋そば」
やや緑がかった明るめ、細かな粒子を浮かべた肌に思わず見入る。
香りはこれも二八の甘い香りだが
その奥に、ああああ素晴らしい、見つめずにいられない
かぐわしさ、こうばしさ、美しい味わいがある。
常陸秋そばってやっぱりすごいなあ。
見た目はゆるやかに落ち着いた印象だが、これも凄いコシである。
歯が届かないほどの弾力!
4枚目「会津在来」
会津在来と言っても仙北に来て大分経っている種であるので
仙北仕立ての会津在来種である。
これが、おいしい。
白めふっくら、豊かな見た目はいかにも会津らしい印象なのだが
その味わいが素晴らしい。
白い味わいが口中でふくらむ。濃くなる。
会津の在来種の美味しさが仙北の土で凝縮されたような蕎麦だ。
5枚目「階上早生」
おっ 今回はじめての平打ちであります。
やや濃いめのみずみずしい肌が、ゆるやかにやわらかそうに重なっている。
これも二八らしい甘い香りが濃厚。
つるんっつるんっの肌を噛みしめると伸びるようなコシがあるが
平打ちのためしなやか、やさしい歯ざわり。
味わいがすっきり澄んでいるので余計に香り立つ印象だ。
「田舎らしさを出すには階上だべ!」
という声が聞こえてきたので、
これが仙北の人にとっての「田舎らしい蕎麦」なのかもしれない。
田沢湖のようにすっきり澄んでみずみずしい、つるつるの田舎だ。
6枚目「高嶺ルビー」
出たー!
赤い花をつける珍しい蕎麦「高嶺ルビー」。
そうめんで作られたお花の飾りが添えられて運ばれてきた。
見るからにみずみずしく、透明感に満ちた粗い肌。
透明感があるだけにその粒子ひとつぶひとつぶが余計に際立って美しく見える。
むわぁーと濃厚にただよう甘い香りもいいのだが、
なにより食べてみてからが驚きである。
ぷるんぷるんっ、ちゅるにゅるっとしたやさしいやわらかなコシをのんきに噛みしめると
突然グワァーと激しいほどに強い、野性的な味わいが溢れ出すのだ。
よく在来種の蕎麦の味わいの要素に「苦み」とか「渋み」が含まれているが
それにも少し似ているかもしれない。
なんという味わいの強さ、濃さ。
試しに汁につけて食べてもみたが
(私は汁につけると蕎麦の味がわからなくなってしまう蕎麦音痴なのだが)
これはまったく汁の中に味が埋もれない。
この個性の強さからか、会終了後、参加者一人ひとりから感想をいただいた中で
圧倒的一番人気はこの「高嶺ルビー」であった。
デザートは「そばおやき」。
「農家のそば屋 一助」さんが育てた「階上早生」を使って
作られたやわらかぁ〜いそばおやき。
すぐそこで作られた素材で、この近所の人が作った作りたてを、今ここで食べるよろこび。
あったかいおやきではないけど、あったまるなあ〜、心が。
心あたたまると言えば本当にこの会では心あたたまりっぱなしで、
何より同じ市内の同業者がこれだけ力を合わせ、助け合い
(その一緒に話し合ったり作業したりする姿がまたたまらなくいいのですよ・・)
こんなに意義のある面白い会を開催したことはすごいことだと思う。
この会のおかげで、東京にいては絶対に食べられない
仙北育ちのならではの実に珍しい味わいを持った蕎麦を
私はいっぺんに6種類も食べ比べることができたのだ。
しかも何より嬉しいことは、この会に参加したお蕎麦屋さん達が
会が終わって尚一層やる気満々、次はどうすべ!こうすべ!と
ウキウキワクワクしてるんです・・
ひゃー!その時までに「どこでもドア」買ってこなくっちゃ!
どこに売ってるのかなぁー(^^)
最後に・・
<本日の丸抜きさんコーナー>
この記事へのトラックバック
「キタワセ」の緑が鮮明ですが、「高嶺ルビー」もなかなか、でしょう?
後者については、「信州大そば」を栽培して5年以上になると思いますが、
開発者の方の関係なのでしょうか、大そばの種を選別しつつ播種すると、
何本かは赤い花を結び、実の付き初めは赤い実が生ります。
念のため赤い身のソバに目印をしておいてみましたが、褐変してしまえば
他の大そばと同じ実になってしまいました。
食味についてもあまり変わり映えは無いような気がしています。
しかし、花が咲き、実を結ぶ頃に眺めるととても綺麗なので、当方は好きです。
1,000円とはお安い!(笑
いいな〜いいな〜蕎麦がいっぱい食べれて
自分は今日、市川国府台の「いさと」に行き臨時休業でたべられず絶対また行く行ってやる
絶対美味しいに決まってる
そのあと本屋さんに、「蕎麦春秋」を買いに行ったのだが・・・なかった
絶対見つける
前向きにがんばります
実際に見て「キタワセ」が一番緑がきれいでした。
高嶺ルビーは何が不思議って、蕎麦の花が赤いだけで蕎麦きりは赤くなる訳ないと言われているのにどこか赤みがかって見えることです。これは以前にも何回もありました。不思議すぎます。
23才さま
「いさと」臨時休業痛かったですね〜〜!私としてはなにかあったのかと心配にもなりますがいつもお元気な「いさと」さんだからきっと大丈夫。次回また行かれて最高のお蕎麦を食べてくださいね!蕎麦春秋もありがとうございます。本屋さんでお待ちしています(^o^)
>古聖さん
>
>仙北市の「そばきり 長助」の蕎麦前、恐れ入りました。こんなに工夫された、しかも地元産の食材で、お見事です。お隣の青い森に住んでいますので、機会があったら行ってみたいと思います。