2012年11月27日
神田「眠庵」八種もりの会
毎回本当に楽しみな「眠庵」の八種もりの会だが、
今回はいつも以上にわくわくどきどき。
私が個人的に思い入れのある蕎麦や
事前にものすごい蕎麦との評判を聞いていた蕎麦が出るということで
友達のライブにでも来た気分なのだ。
いつも通り、お店のおつまみの「おから」「とうふ」、
そして参加者持ち寄りのおつまみやお酒を楽しみつつ蕎麦を待つ。
なにせ選りすぐりの美味しいもの、お酒ばかりが集まっているので
蕎麦までに食べ過ぎ、飲みすぎにならないよう
いかにそれらをセーブするかがこの会の楽しさでもある。
お酒だけでもこんなに!(しかも今回は少ない方)
案の定、蕎麦までにすっかりハジケまくってスーパー大変身しちゃった楽しい方がいらして
私は気を抜くと笑い死にしそうで大変でした!(^^;;)
和やかを通り越して大爆笑のテーブルに現れた、一枚目。
いつも通り、1枚目のみお店の「プロ盛り」、
2枚目以降は小鉢に盛られてきたものを
各自がパカッと笊の上にひっくり返す「セルフ盛り」である。
1枚目「秋田・仙北」2012年新蕎麦、品種は「富士一号」。
ごく繊細ながら凛と落ち着き、どこか枯れたような情緒をたたえた姿。
野性的な香りが最初はさわやかに、あとからどんどんふくらむように豊かになってくる。
実はこの蕎麦、私がご縁ある方からお預かりした「富士一号」という
大変珍しい品種の蕎麦である。
事前に丸抜き(皮を剥いた蕎麦の実)をかじる機会があったのだが
その時なんとニラのような個性的な香りが強く感じられて驚いた。
しかしその丸抜きがこの眠庵で製粉され、こうして蕎麦切りとなってみると
あれほど強烈だったニラのような香りはほとんどしない。
よーくよーく見つめてみればかすかに感じられるかなーという程度である。
それよりもこの蕎麦は、噛みしめたその味わいが凄い。
ちょっと珍しいほど濃い、苦味にも似た野生的でたくましい味わいが
ギューッと舌の上に染み渡るように広がるのだ。こんな蕎麦は初めて食べた。
しっとりぴたぴたと繊細な肌から溢れ続ける、蕎麦という穀物の力強い美味しさ。
秋田は米どころのイメージが強い場所だが、
こんなふうにずっと昔から大切に育てられている品種があるのだ。
2枚目「新潟・津南」2012年新蕎麦、在来種。
ほんわりしっとり、やさしい風情。
姿に違わぬ、まるいやわらかい香りがふわぁ〜と鼻腔を抜け、
(表現はあまりよくないが)粘土をイメージさせる滋味なる味わいがひろがる。
そしてなんと、この新潟も苦みに似た強い野生の味わいを感じたのには驚いた。
一枚目の「秋田・仙北の富士一号」の強い野性味が舌に残って敏感になってしまったのか、
と何度も思ったが違うらしい。
こんなに一度に、各地の野性味あふれる美味しいお蕎麦が食べられてしまうなんてすご過ぎる。
ふっくら美しいコシ、どんどん深まる味わい・・しあわせー
3枚目「長野・松本」2010年(2年熟成)、品種は「信濃一号」。
たまりません、このスモーキーなかぐわしさ!
2年熟成ならではなのか、蕎麦のかぐわしさをぎゅっと濃縮して燻したような
すばらしい香りだ。
それに対して味わいの最初の印象は、ほんのりやさしく清澄・・・
だったのだが、あとからこの「長野」にもまた苦みに似た野生を感じた。
もう今日は私の舌がおかしいのかもと思ったが
同じことを感じていた人が他にもいて、ほっとしたようなますます不思議なような。
でもくれぐれも書いておきたいのだがその苦みに似た野性味を含めて
大変美味しいのである。
4枚目「栃木・益子」2012年新蕎麦、品種は「常陸秋そば」。
衝撃の青緑。
何ですかこの澄み渡るような色は・・・・
美しすぎるブルーグリーン!
カメラがおかしくなったのではないかと思うほどの青緑だが
下の笊の色はそのままであることにご注目いただきたい。
そして私は壊れました。
この蕎麦の全ての素晴らしさに壊れ、
興奮を通り越して心がスーッと落ち着きました。
(ついに蕎麦で涅槃の境地に・・?)
あまりにも、全てが満たされる。
かぐわしい香りの全てが全方向から私を包み、
完全な美味しい味わいの上でもう私は何も考えない。
考えないと言ったそばから何であるが
あまりにも美味しいので、この時間が少しでも長く続いたらいいのにと思う。
繊細な束感が口中をめぐり、私は欲張って舌の前の方、後ろの方、全部で
この蕎麦の美味しさを味わいたいと思う。
これはつい先日「ら すとらあだ」でも大感激したのと同じ蕎麦なのです
栃木・益子の常陸秋そばなのです
はあああ・・・なんだかもう頭がぱーなのですが
このお蕎麦を作ってくださった方に、ただただ感謝であります
素晴らしすぎます・・
5枚目「北海道・音威子府」2012年新蕎麦。
力強くたくましい香り。
これもまた苦みに似た強い野性味があるが、全体の印象としては
甘味も少なく味わいは澄んですっきりさわやかだ。
比較的はっきりとした輪郭線が流麗なラインを描いているだけあって
口に含むと一本一本がハラハラと独立している感じがある。
しかし噛み締めたコシはごくごくやさしいのはやはり「眠庵」だ。
6枚目「秋田・羽後」2012年新蕎麦、品種は「階上早生」。
なんという鮮やかな緑・・・
この「秋田・羽後」も今日とても楽しみにしていた蕎麦だったのだが、
期待を遥か越えた眺めに私は息を飲んだ。
先程の「栃木」の澄んだ青緑とはまた違った、重みのある濃い緑。
こんな凄い発色は初めて見た。
「これは絶対にものすごく美味しい!」という津波のような予感と興奮に
私は固まったようになり、その見事な姿に見入った。
もう、素晴らしすぎて食べられないと思った。(何年かに一度こう思う)
と言いながら食べたのだが、
おいしい〜 やっぱりおいしい〜 これは、おいしすぎる!!!
ふっくらとまるく濃くたちのぼるような、最高の香り。
香りだけでも十分腰砕けなのに、味わいの素晴らしさがまた容赦ない。
たくましさ、力強さ、野性味を限りなくフレッシュな美しさがくるんでいる。
その全てがストレートにやってきて、しかもフェイドアウトすることなく
ずーっと口の中に味わいが残る。
7枚目「徳島」2008年(4年熟成)、在来種。
出ました、眠庵の熟成蕎麦。
今日は新蕎麦が続いただけに4年熟成のワイルドさが際立つ。
ガッツリと濃厚で、煙るように深い香ばしさ。
しかし味わいはすーっときれいで、まるくやさしくのびていくように続く。
4年間眠っていた蕎麦が、その夢を私に見せてくれているかのようだ。
8枚目「福井・大野」2011年(1年熟成)、在来種。
なんだか今日はあまりの個性派揃いで目まぐるしく
感動メーター振り切りすぎでトランス状態もいいところなのだが・・
いつもこの会のトリを飾る名蕎麦はさすがの貫禄。
ムハァーッと濃厚なかぐわしさ。
暴れん坊ながらキリッとした端正さもあり、香りも味わいも最高で
ああ もう今日は、本当に降参です・・・
壊れつつ、本日の丸抜きさんたちをご紹介。
野性味あふれる蕎麦は丸抜きからして野性的、
鮮やかな緑の蕎麦は丸抜きも驚くほど青々としているんですよ〜
「秋田・仙北」の「富士一号」
「栃木・益子」の「常陸秋そば」
「秋田・羽後」の「階上早生」
「福井・大野」の在来種。
2012年9月の「八種もりの会」
2012年7月の「八種もりの会」
2012年5月の「八種もりの会」
2012年3月の「八種もりの会」
2012年2月の「八種もりの会」
2011年12月の「八種もりの会」
神田「眠庵」
神田「眠庵」(豆のスープ)
2011年11月の「八種もりの会」
2011年9月の「八種もりの会」
2011年7月の「六種もりの会」
2011年5月の「眠庵」手挽き蕎麦
2011年3月の「眠庵」
2011年2月の「八種もりの会」
2010年11月の「八種もりの会」
2010年9月の「八種もりの会」
2010年7月の「八種もりの会」
2010年4月の「八種もりの会」
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一見、階上早生の方の緑色が濃く、打ちあがりもそうなのではないか?と予想させますが、実際は常陸の方が打ちあがりは鮮やかに見える。いや、同じ程度なのかもしれませんね...隣において比較対照したわけではないでしょうし、カメラが全く同一条件でとらえているかどうかは不明だし...
しかし、緑色と味わいがマッチするというのはまた別の次元のこと。色は一つの要素に過ぎないと言ってもいいかもしれません。
でも、でもですね、告白すれば私、メンクイなんです!!
(…なんだ、皆と同じだった。。。
うふふー、よしのさまは本当に丸抜きがお好きですね(^^)♪
打ちあがりの実物の印象は、栃木の方が透き通ってひんやり軽いブルーグリーン、階上はズシッとあざやかなグリーンと言う感じでした。濃さ、鮮やかさという表現ですと階上の方が上でしょう。青さ、美しさという言葉だと栃木でした!
KTGさま
ウワーンKTGさま夜だったのですね!お会いしそこねましたぁ(>_<)でもものすごく楽しい「大変」でした。今度モノマネ披露しますよ!